PC-9821An Power Up
PC-9800シリーズ デスクトップパソコン PC-9821Anのパワーアップについてまとめたページです
2016/ 1/ 25 更新
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PC-9821Anは、1994年 5月に「Pentiumプロセッサ搭載。それは、きわだつ高性能。」というキャッチコピーで登場しました。国産パソコンとして初めて Pentiumプロセッサを搭載したフラグシップモデルの PC-9821Af (1993年 8月発売) の後継機です。
先代と比較するとメモリが最大 128MBに増加し直接マザーボードにメモリサブボードを搭載できるようになったことや、ハイレゾ・ノーマルモード切り替えスイッチがメモリスイッチに統合されたこと、専用固定ディスク I/Fが Enhanced IDE互換に変更され 4.56GBまでのドライブが搭載可能になったこと、BIOS (ITF) ROMが書き換え可能になったと云うような若干の変更のみで、仕様としてはそれ以外の目立った変更は有りません。
仕様上大きな変化はありませんが、内部に目を向けると従来マザーボードの 1/6程度を占めていたサウンド部が一枚の小さなサブボードに凝縮されたことで電源ユニットの下に収まるほどコンパクトになっています。その結果、メモリサブボード、CPUサブボードも不要になり PC-9821Afの様な横長の筺体から PC-9821Ap2と同じサイズの筺体にコンパクト化しました。
発表当時の標準価格で最上位モデルの PC-9821An/C9Tは 900,000円と非常に高価でしたがローカルバス最高性能の MGA-II搭載グラフィックボードに、CD-ROMドライブ、SCSIボードが搭載され PC-9821Af/U9Wと比較するとかなり思い切った価格となっています。PC/AT互換機の低価格化からこの後、1994年 12月に価格改定がありました。標準価格の高さ、Pentiumの初期ロットに存在していた浮動小数点演算バグの影響もあって一般のユーザには普及しませんでしたが、オフコン N5200シリーズの後継として PTOSモデル (PC-9821An/U8P) が用意されたほか、ハイレゾモードでのみ動作する CADや CAMの分野では PC-9821Ap2/ As2と並んで広く普及し、98MATE Xが主流となった 1997年頃までアマダ (AMADA) 社に長期間 OEM供給される等、主に企業向けに普及しました。
この機種は 98MATE A (A-MATE) シリーズでは性能の高さとレア度から最高峰と言われ、マニアの中で人気が高いだけでなく、ハイレゾモード専用ソフトを動作させる必要がある産業分野での需要が多いため、相場が高騰している現在でも中古で出るとすぐに売れてしまう程、入手が困難なモデルの一つとなっています。
ちなみに、PC-9821Anには C9Wモデルは存在しませんので中古で買う際にはご注意下さい。C9Wとして売っているものは C9Tから標準のグラフィックアクセラレータボード (PC-9821A-E11) を抜いたもので、PC-9821Ap2等の C9Wモデルとは異なり A MATE画面 (640×480ドット、256色) のみでグラフィックアクセラレータ機能は持っていません。Windowsを快適に使いたい場合、別途グラフィックアクセラレータボードを増設する必要があります。
PC-9821An ラインナップ
型番 | CPU | メモリ | FDD | HDD | CD-ROM | グラフィックチップ | 標準価格 (税別) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
PC-9821An/C9T | Intel Pentium 90MHz | 8MB | 3.5インチ× 1 | IDE 510MB | SCSI 2倍速 | MATROX MGA-II | 900,000円 → 700,000円 |
PC-9821An/U8W | IDE 340MB | オプション | S3 86C928 | 720,000円 → 610,000円 | |||
PC-9821An/U8P | IDE 340MB | オプション | S3 86C928 | 610,000円 | |||
PC-9821An/U2 | 3.5インチ x2 | オプション | オプション | オプション | 590,000円 → 500,000円 | ||
PC-9821An/M2 | 5インチ x2 | オプション | オプション | オプション | 604,000円 → 514,000円 |
PC-9821Anに搭載されている CPUは一頃騒がれた Intel製の第五世代 32ビット x86CPUの Pentium (90MHz) で、マザーボードのシステムクロック 60MHzの 1.5倍速で動作します。
Pentiumの初期ロットには、浮動小数点演算ユニットにバグがあり (FDIVバグ) 或る特定の浮動小数点演算を実行すると答えを間違えるというものです。ベクターにその有無をチェックするソフトがあります。このバグの影響はそれだけではなく、ベンチマーク上で浮動小数点演算の値が正常品に比べ 2〜 3割ほど低くなります。この事実が発覚した当時 (現在は不明です) は、NECは無償交換に応じていました。
修正版の Pentiumに交換された本体、若しくは元から修正版を搭載している本体には「L」と書かれた白いくて丸いシールが貼られます (画像左)。後期ロットからは製造番号の最後に「L」が付きます (画像右)。
ちなみに、自分が入手した PC-9821Anは、あるソフトでチェックした所、バグ付 Pentiumでした。
この Pentiumは同じ Pentiumの中でも旧式のもので、100MHz以上のセラミックパッケージとは違い、CPU中央部に金メッキされたヒートスプレッダ (放熱板) が付いています。75MHz版、100MHz版にもこのパッケージの物が存在します。
CPU内蔵の一次キャッシュメモリは命令用が 8KB、データ用が 8KBの合計 16KBで、従来オプションで有ることが多かった浮動小数手演算処理を専門に行うコプロセッサ機能は、浮動小数点演算ユニットとして CPUに内蔵されるようになりました。ただし、PC-9821Anのような初期の Pentium搭載機は、動作の安定化の為にメモリに多くのウェイトが入るため、Pentiumの性能が十分引き出せて居るとは言えません。特に、メモリへの書き込みに関しては、PC-9801FA (i486SX-16) よりも遅いです (フリーウェアの「PFM486 (Daisankeihin氏)」で確認)。
PC-9821Anは ライトバック対応でバースト SRAMタイプのセカンドキャッシュを標準で 256KBマザーボード上に搭載しています。
セカンドキャッシュはデータ転送の高速な CPU内部と速度の低いメモリの間に入って速度の違いを埋めるもので、繰り返し演算で威力を発揮します。セカンドキャッシュの有無での処理速度の差ははっきりと出ますが、容量を増やしてもあまり効果が出ません。
Pentium登場初期の構成としては、CPUとアドバンスド・キャッシュ・コントローラ「i82497」、キャッシュ・メモリ「82492」という構成が一般的でした。当時 PCIチップセットの「i430」が登場していましたが、ISAバスを搭載したPC/AT互換機専用だったので、PC-98採用されるのはもう少し先になります。
CPUソケットは Socket 5相当 (画像左) で、穴が Pentiumと同じ 296個しか空いていないのでピン数の多い Pentium ODP 3V、MMXテクノロジ Pentium ODPには対応していません。比較用に PC-9821Xa9/C8の CPUソケット Socket5の画像 (画像右) を挙げておきます。上下箇所の内周 1列分ピン数が少ないのが分かると思います。
また、この機種は、改造の上で個体差が非常に激しく、正式に対応する CPUアクセラレータが殆どありません。ちなみに、CPUの隣に CPUに良く似た大きなチップ(キャッシュコントローラ: i82497-60)が載っています。このチップは発熱するので、486用のヒートシンクを熱伝導テープなどで貼り付けると、気分的に安心です。(^-^)
メモリは、標準で 4MB (C9Tは 8MB) 内蔵し、4箇所の SIMMスロットに、72pin パリ付き FP (Fast Page Mode) SIMMを追加または、差し替えることによって、最大 128MBまで増設できます。なお、メモリの増設には、Pentiumの外部データバス幅に合わせるため必ず同容量で同種の SIMMを 2枚一組で増設します。
ちなみに、パリとは、パリティチェックの略で、データの読み出しや書き込みにチェックの為のデータを追加してエラーを検出するものです。通常めったに有りませんが、エラーを検出するとデータを破壊する前にシステムを停止させます。
この機種以降、コスト削減も有ってメモリはマザーボード上に用意された SIMMソケットに増設することが主流となり、従来のようにマザーボードにメモリチップが搭載される事はなくなりました。それ故に SIMMソケットにメモリモジュールを取り付けないで起動すると「MEMORY ERROR」とモザイクを表示して正常起動しません。ご注意ください。
FDDは 3.5インチ FDD搭載モデルでは、PC/AT互換機で一般的な 1.44MBフォーマットに対応した 1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 3モード対応の 2HDタイプ (NEC製 FD1148T) が搭載されています。コネクタは、従来の PC-9801用とは異なり電源が一緒になっている 26ピンの特殊なものです。
コストダウンも有って構造が FD1138Tより単純化したため分解清掃時のメンテナンスがし易くなりました。不具合という不具合は有りませんが、経年劣化でモーターの軸が固着してしまったり、ヘッドが微妙にずれてしまったり、コンデンサの液もれで読み書きが不安定になる事例があります。
5インチモデルでは、1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 2モードタイプ (NEC製 FD1158C) が搭載されています。コネクタは 34ピン、電源は 3.5インチ機器用と同じタイプの小型の物です。フロントマスクを外しやすくする観点から従来の FD1155Dとは違いヘッドを下す際にはボタンを押し込むタイプになりました。これが曲者で FDメディアが完全に奥まで挿入されていない状態や、メディアを挿入しない状態で強く押し込むと奥で金具が曲がってしまい故障してしまいます。メディアを挿入する際には必ず「カチッ」という感触が有るまで奥に挿入した事を確かめてからボタンを押し込むようにしましょう。
このドライブでは、ヘッドのシールドカバーが脱落する事はなくなりましたが、コンデンサの液漏れでヘッドを動かすモーターが誤動作を起こす事で有名です。
98MATEでは、VFO (簡単に言えばヘッドの微妙なずれからデータの読み書きを安定させる回路) 回路が本体側に搭載されているので FDDに VFO回路は有りません。
PC-9821An/U2 (3.5インチ)、PC-9821An/M2 (5インチ) の FDDモデルでは 2ドライブを、Windowsモデルでは 1ドライブを搭載しています。このモデル以降ファイルスロットを使わなくても専用オプション (後述) で FDDを後から増設して 2ドライブ仕様にすることが出来るようになっています。
FDDモデルの PC-9821An/U2、PC-9821An/M2には、OSは付属しません。
5インチ FDDは当初メディアの単価が安かったのですが、3.5インチドライブの普及が本格化してメディアの単価が安くなり、記憶容量も 1.44MBと多くなった事から、5インチモデルは徐々に縮小していきます。ちなみに、メディアの記録データの耐久性は記録密度の低い 5インチの方が有利です。もっと言うと 8インチの方が有利です。
ただし、磁気フィルムの最大の敵はカビで一度カビが生えてしまうとデータの読み出しは不可能でメディアは使用不能になります。仮に拭き取っても読み込む事は出来ません。この様なメディアからデータを救おうと FDDに読み込ませると磁気ヘッドにカビの胞子が付き、他の正常なメディアにカビの胞子を塗りつけ汚染を広げるので危険です。プラスチックのケースに入れておくとカビが生えやすくなるので注意が必要です。
ハードディスク (HDD) 搭載モデルの PC-9821An/U8W、PC-9821An/C9Tは、専用固定ディスク I/F仕様でカートリッジタイプの HDDを 1ドライブ内蔵しています。PC-9821An/C9Tでは 510MB (PC-HD510A相当、平均シーク時 12ms) の Western Digital製 Caviar2540または Conner (Quantumを経て Seagate) 製 CFA540を、PC-9821An/U8Wでは 340MB (PC-HD340A相当、平均シーク時 14ms) の Westan Digital製 Caviar2340または Conner製の IDEタイプのドライブ (一台の最大容量 4.56GB (未フォーマット時) までのものが内蔵可) で Windows 3.1と MS-DOS 5.0A-Hがプリインストールされています。
HDDは、IDE仕様のドライブを搭載していますが、インターフェース側が厳密に IDE仕様を満たしていない為、全てのIDE機器が使用できる訳では無いのでご注意ください。
PC-9821Anでは、従来の SCSI仕様の HDDも内蔵出来ます。ただし、SCSI HDDを使用する際には、専用 SCSI I/Fボードスロットに対応した SCSIボード (PC-9821A-E10など) が必要になります。
PC-9821Anは、筐体が大変凝った作りになっていて両サイドのボタンを押しながら手前に引く事で簡単にフロントマスクが外せるため、HDDの増設や交換が簡単にできます。ただし、ホットスワップには非対応ですのでご注意ください。交換の際は必ず電源を繰る必要があります。
なお、バックアップディスク等は別売りになっているので、初回起動時に必ずバックアップを取ります。特に、本体内蔵のグラフィックアクセラレータの Windows3.1用ドライバは、Windows3.1製品版には付属が無くサイトからのダウンロードもできないので、ここでバックアップを取らないと再インストール後に使えなくなります。
CD-ROMドライブ搭載モデルの PC-9821An/C9Tには、SCSI仕様で倍速の CD-ROMドライブ「PC-CD60F」をファイルスロットに搭載し、SCSI I/Fボードの「PC-9821A-E10」を専用 SCSI I/Fボードスロットに搭載しています。
グラフィック機能は、従来の 640 x 400ドット (4096色中 16色: Enhanced Graphic Charger) に加え、98MATE (A MATE) シリーズで新たに追加された、Windows、MS-DOS両方で利用できるプレーンアクセスモードの 640×480ドット (1677万色中 256色: PEGC) を搭載しています。よって、標準でも Windows画面の表示が可能ですが、Windowsを快適に利用するためには、別途グラフィックアクセラレータボード (ウィンドウアクセラレータボード) を Cバスまたは、ローカルバスに増設することをお勧めします。
他に、PC/AT互換機とは異なり、漢字 ROMを搭載しているため、MS-DOSや BASIC上で、高速な漢字表示が行えます。
モニター出力の水平同期周波数を 24kHzと 31kHzから選択できます。選択の方法は、電源投入後もしくは、リセットボタンを押してから「GRAPH」 キーと 「1」 (24kHz) または 「2」 (31kHz, デフォルト) を押します。
ただし、従来の水平同期周波数 24kHzで描画タイミングを調整しているソフトウェアでは誤動作する事があるのでご注意ください。
Windowsモデルでは、標準で 32ビットローカルバス対応のグラフィックアクセラレーション機能を標準で内蔵しています。PC-9821An/U8Wは PC-9821A-E01同等の機能をマザーボード上 (Cバスユニットの下辺りの専用コネクタ) にオンボードローカルバス接続で搭載しています。グラフィックチップに S3製 86C928 (Vision928、Direct Draw対応)を採用、1MBの VRAMを内蔵しています。画面モードは最大 1024×768ドット 256色です。VRAMの増設はできません。
PC-9821An/C9Tでは、ウィンドウアクセラレータボード A2「PC-9821A-E11」を 第 4スロットに搭載しています。このボードは、当時最高速の MATROX製 MGA-II (Direct Draw非対応) と VRAMを 2MB搭載し、最大 1,280 x 1,024ドットで 1677万色中 256色の表示が可能です。ちなみに、テキスト表示は、ローカルバス最高峰でお馴染みの Canopus製のグラフィックアクセラレータボード「Power Window 964LB」より比較にならないほど速いです。逆に Direct Drawは比較にならないほど遅いです。(^ ^;;
ちなみに、PC-9821A-E11を Windows95/ 98で使用する場合に画面解像度の追加や、オーバークロックによる高速化が出来ます。詳しくは、PC-9821Ap2ネタのグラフィックアクセラレータ「Matrox MGA-II」の解像度を増やす、グラフィックアクセラレータ「Matrox MGA-II」の高速化をご覧ください。
オプションの 98ハイレゾボード 「PC-9821A-E02」を増設することにより PC-98RL、PC-98XL、PC-98XA互換のハイレゾモードで、最大 1120×750ドット、4096色中16色の画面を MS-DOS、Windows 3.1で利用できます。なお、PC-H98シリーズ (ハイパー98) の 256色モードは非対応です。ですので、Windows95には対応しません。
ハイレゾモードでは、MS-DOS画面のフォントが24 x 24ドットの明朝体に変わり (上記画像参照) 、メモリは 128KB減少します。このモードを有効にする場合、ソフトウェアディップスイッチ画面でハイレゾモードを選択します。なお、このモードではメモリマップ等が変わるためハイレゾ対応のソフトウェアやハードウェア以外では正常動作しません。詳しくは、それぞれの機器の説明書でご確認ください。
また、このボードを増設することによりハイレゾ、ノーマル関係なく本体標準のプリンタポートは使用不可になり「PC-9821A-E02」ボード側のプリンタポートを使います。詳しくは、本体マニュアル参照してください。
ちなみに、ハイレゾ、ノーマルの両方に対応する MS-DOSはバージョン 5.0以降です。それ以前の MS-DOSでは、ハイレゾ専用のバージョンが必要になります。
サウンド機能は、YM2608チップを内蔵し、PC-9801-86相当の FM音源機能 (FM 6音、リズム 6音、SSG 3音) と PCM録音再生機能を標準で搭載しています。ただし、使用する OSが Windows95の場合は PCM音源再生時に CPUに負荷が掛かり、システムの動作が若干遅くなったり、音飛びしたりするので気になる場合は、故 Q-Vison製「WaveStar」等のサードパーティー製 86互換ボードや、「PC-9801-118」を増設しましょう。なお、サウンドボードを増設する際には予めセットアップメニューでサウンド機能を切り離しておく必要があります。
EMS方式のメモリを使用する場合は、サウンド BIOSと併用できないので本体のセットアップメニューでサウンド BIOSを無効にします。
残念ながら ATARI (MSX) 仕様ジョイスティック用コネクタはありませんが、マウス I/Fに変換ケーブル「PC-98DO/P-11」を接続し、再起動することにより使用できるようになります。なお、この場合マウスとの同時使用はできません。
ちなみに、音源チップである YAMAHA YM2608B (YM2203Cでも可能) のピン配置が分かっていれば、YM2608の足に直接 D-Sub 9pinオスコネクタを配線して増設する方法もあります。「PC-98DO/P-11」の入手が難しく、ネット上に回路図が載っていますが、バスマウスとの同時使用が可能でコストも安いので腕に自信のある方は自己責任でどうぞ。(^ ^;;
位置 | 種類 | 形状 |
---|---|---|
本体前部 | ヘッドフォン出力 | ステレオミニジャック |
マイク入力 | モノラルミニジャック | |
本体後部 | キーボード | ミニ Din 8pin |
バスマウス | ミニ Din 9pin | |
アナログ RGB | D-Sub 15pin。24kHz、31kHz両対応 | |
LINE入力 | ステレオミニジャック | |
LINE出力 | ステレオミニジャック | |
RS-232Cシリアル I/F | D-Sub 25pin, 最高 19,200bpsまで対応。 | |
プリンタ用双方向パラレル I/F | アンフェノールハーフ 36pin、変換アダプタ付属。 | |
SCSI I/F | アンフェノールハーフ 50pin (C9Tのみ) |
この中で特に、PC-9801型番等の旧型機とは、プリンタのコネクタが異なるためプリンタインタフェース変換アダプタ (PC-9821-K02) が付属しています。また、MATE X系とでは、アナログディスプレイのコネクタの形状が違うので注意が必要です。
このモデル以降外付け用 1MB FDD I/Fはオプションになっているのでご注意ください。A MATE用は「PC-9821A2-E02」です。
拡張スロットは、Cバス (汎用拡張スロット) が 4スロットで、うち下の 2スロットが 32ビットローカルバスと兼用になっています。PC-9821An/C9Tに限りウィンドウアクセラレータボード A2 (PC-9821A-E11)で第 4スロットを占有済みですがボードの交換は可能です。
32bitローカルバスは、16ビットの Cバスに比べ、バス幅が倍の 32ビットになり、バスマスタ転送に加え供給クロックも上がっているので、より高速に多くのデータのやり取りができます。理論上のデータ転送速度は PCIバスに匹敵します。これに対応するボードは、グラフィックアクセラレータやビデオキャプチャ、98ハイレゾボード等があります。
ただし、PC-H98/ SV-H98シリーズ用の NESAバススロットとは互換性がまったくないのでご注意ください。ここに挿すと本体や拡張ボードが壊れます。特に、中古品やジャンク品などで、NESAバス用ボードがローカルバス用として間違って売られている場合があります。ご注意ください。(^ ^;;
専用 SCSI I/Fボードスロットを搭載しています。CD-ROM内蔵モデルの PC-9821An/C9Tでは、PC-9801-92同等品の「PC-9821A-E10」を標準で搭載しています。一部のファイルスロット機器や、SCSI仕様の HDDを内蔵する際には、必ずこのスロットに対応した SCSIボード「PC-9821A-E10」や相当品が必要になります。
PC-9821Anは、Windows95で採用されたリソースを自動で設定する機構のプラグ&プレイ (PnP) には非対応ですが、BIOS (ITF) ROMに新しく書き換え可能な Intel製フラッシュ ROMを搭載しているので NECのプラグアンドプレイサポートソフトウェア (An, Np) 「PS98-1222-31/51」(6,000円程度) を使用してフラッシュ ROMを書き換えることで PnP対応に変更することができます。PnP対応に書き換えるとリビジョンが「0.21」から「0.51」に変ります。
なお、一度アップデートを行うと元のバージョンに戻す事はできません。
ちなみに、PC-9821Anでは有りませんが、PC-9821Xn、PC-9821V7等の Intel製 PCIチップセット搭載モデル向けの MMX Pentium対応化のための BIOSのアップデートは、Intelが提供するものですので NECからは入手できません。
PC-9821Anでは、ファイルスロットが付いており、CD-ROMドライブや HDD、MO (光磁気ディスク)、テープストリーマ、メモリカードリーダ/ ライタ、3.5または 5インチ FDDが内蔵でき、接続はコネクタで行われるためケーブルを繋が無くて良いので必要に応じて入れ替える事が出来ます。ただし、活栓挿抜 (ホットスワップ) には対応していないので交換の際には電源を切る必要があります。
実際に自分は CD-ROMドライブと FDDを必要に応じて入れ替えて使っています。
PC-9821Anにはハードウェアディップスイッチは有りません。内蔵 HDDの切り離し等の設定は、セットアップメニューと言うソフトウェアディップスイッチで設定します。呼び出し方は、電源投入後もしくは、リセットボタンを押してから 「HELP」 キーを押します。
セットアップメニューで動作速度を変更する際、V30エミュレーションモードでは、640KB以上のメモリは全て無視され 640KB固定になります。100%完全互換では無いので、V30を必要とするソフトウェアや拡張ボードでは、正常動作しない事があるので注意が必要です。
また、動作モードがハイレゾモードに設定されていると、98ハイレゾボードの有無にかかわらず V30エミュレーションモードは選択できなくなります。
RS-232Cの通信設定、メモリの容量の変更、起動するドライブの順番変更、初期画面の色の変更などは、MS-DOSの「SWITCH.EXE」等でメモリスイッチの設定を変える必要があります。変更後は、セットアップメニューでメモリスイッチの状態を「保持する」に変更します。バックアップ電池が切れるとこの設定も消えます。
特に RS-232Cでシリアル通信を行う場合は、必ず送信側と受信側で設定を合わせる必要があります。通信ができなかったりデータ化けする時は、RS-232C I/Fの故障を疑う前にまずこの点をチェックしましょう。常識ですが、念のため。(^ ^;;
フロントマスクを外すと本体前面中央部に FDD設定変更用ジャンパスイッチが有ります。左側が 2FDD内蔵モデル用 (FDDモデルはデフォルト) 、右側が 1FDD内蔵モデル用 (Windowsモデルではデフォルト) の設定です。
このジャンパスイッチは、プラグアンドプレイサポートソフトウェア (An, Np) を使って本体の フラッシュ ROMを書き換える際にも使用します。詳しくは、ソフトウェア付属の説明書をご確認ください。
PC-9821An/C9Tモデルに標準装備されているグラフィックアクセラレーションボードのディップスイッチ設定です。
スイッチ番号 | 機能 | ON | OFF |
---|---|---|---|
1 | 未使用 (常に ON) | ― | ― |
2 | 未使用 (常に ON) | ― | ― |
3 | CPUアドレス空間の設定 | ON , ON : F0F80000h〜 F0F83FFFh ON , OFF: F4F80000h〜 F4F83FFFh OFF, ON : F8F80000h〜 F8F83FFFh OFF, OFF: FCF80000h〜 FCF83FFFh |
|
4 | |||
5 | 未使用 (常に ON) | ― | ― |
6 | 未使用 (常に ON) | ― | ― |
7 | 未使用 (常に ON) | ― | ― |
8 | 未使用 (常に ON) | ― | ― |
CD-ROMドライブ内蔵モデルに搭載されている PC-9821A-E10相当のボードの設定は以下の様になっています。8連ディップスイッチが 2組み、シャンパスイッチが 3個あります。通常は変更する必要は有りませんが、SW5の転送モードを BUFFERモードに変更すると CPUの負荷が増しますが転送速度が向上します。
スイッチ | 番号 | 機能 | ON | OFF |
---|---|---|---|---|
SW1 | 1 | ボードのSCSI ID番号 デフォルトは ON-ON-ON, ID= 7 (変更禁止) |
1 | 0 |
2 | 2 | 0 | ||
3 | 4 | 0 | ||
4 | 割り込みレベル INT0: OFF-OFF-OFF, INT1: ON-OFF-OFF INT2: OFF-ON-OFF, INT3: ON-ON-OFF (デフォルト) INT5: OFF-OFF-ON, INT6: ON-OFF-ON |
― | ― | |
5 | ― | ― | ||
6 | ― | ― | ||
7 | DMAチャネル DMA #0: OFF-OFF (デフォルト), 設定禁止: ON-OFF DMA #2: OFF-ON, DMA #3: ON-ON |
1 | 0 | |
8 | 2 | 0 | ||
SW2 | 1 | ROMメモリアドレスと本体機種の設定 ノーマルモード専用機: OFF-ON-ON-OFF-ON-ON-ON (デフォルト) ¥DC000h〜¥DDFFFh ハイレゾモード対応機: OFF-ON-ON-OFF-ON-OFF-ON ¥DC000h〜¥DDFFFh (ノーマルモード時) ¥EC000h〜¥EDFFFh (ハイレゾモード時) |
― | ― |
2 | ― | ― | ||
3 | ― | ― | ||
4 | ― | ― | ||
5 | ― | ― | ||
6 | ― | ― | ||
7 | ― | ― | ||
8 | BIOS ROMアクセス | 有効 | 無効 |
SW3 | SW4 | I/Oポートアドレスの設定 |
---|---|---|
01-02 | 01-02 | CC0h〜 CC4h |
02-03 | 01-02 | CD0h〜 CD4h |
01-02 | 02-03 | CE0h〜 CE4h |
02-03 | 02-03 | CF0h〜 CF4h |
SW5 | 01-02 | DMAモード (DMA転送モード) |
---|---|---|
02-03 | BUFFERモード (CPU転送モード) |
CD-ROMドライブ内蔵モデルに搭載されている PC-CD60F相当のファイルスロット用 CD-ROMドライブの ID設定は以下の様になっています。6連ディップスイッチが CD-ROMドライブの背面に有ります。
スイッチ | 番号 | 機能 | ON | OFF |
---|---|---|---|---|
SW1 | 1 | SCSI ID番号 デフォルトは OFF-ON-ON, ID= 6 |
1 | 0 |
2 | 2 | 0 | ||
3 | 4 | 0 | ||
4 | 未使用 (常に OFF) | ― | ― | |
5 | SCSIコマンド切り替え (常に OFF) | SCSI-1 | SCSI-2 | |
6 | 未使用 (常に OFF) | ― | ― |
他にこのパソコンの特徴として、筐体が大変凝った作りになっており、簡単にフロントマスクが外せるため、HDDの増設や交換が簡単にできます。
ちなみに、ドライバーが無くてもコインでネジが回せるため、簡単にルーフカバーが外せるという心憎い工夫もなされています。(^-^)
ここでは、CPUの換装について記述します。PC-9821Anには正式に対応する ODPや CPUアクセラレータがありません。よって、CPU交換によるパワーアップには保証外の方法しかなくメーカーの禁止している改造行為に当たるので自己責任で行ってください。
なお、PC-9821Anは初期の Pentiumモデルと云う事も有りロットによって、カタログ性能以外の部分で差が激しいので、全ての PC-9821Anで同様に上手く行くとは限りません。たとえ動かなかったとしても、こちらに文句を言わないでください。
また、何の前触れもなくいきなり不安定になったり、最悪マザーボードや電源ユニットが壊れることも考えられますので十分ご注意ください。詳しくは注意事項をお読みください。
さて、だいたい PC-9821Anのことが分かったところで CPUの換装です。 (^-^) PC-9821Anに搭載の CPUソケットは Socket5相当で、Pentiumと同じ 296個の穴しか空いていないので、Pentium用オーバードライブプロセッサ (ODP) に対応していません。
また、CPUアクセラレータも有りませんので、CPUを高性能なものに交換したい場合は、新しい CPUと必要に応じて変換ソケット (下駄) を使います。
ただし、PC-9821Anは CPUのパワーアップが想定されていないので、CPUソケット周りのスペースが筐体フレームのせいで非常に狭くなっているので物理的に下駄が載せられない場合が殆どです。次の画像を見て頂くと分かると思います。
さらに、同じ PC-9821Anでも改造に関しては、個体差が激しくその本体によって成功しない場合があるので難易度は高めです。代表的な CPUと PC-9821Anでの成功率を次の表にまとめました。
代表例 (動作クロックはシステムクロック 60MHzの場合)
商品名 | メーカー | MMX | 最大クロック倍率 | 動作クロック | 内部キャッシュメモリ (合計) | 電圧調整 | 細工 | PC-9821Anでの成功率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Pentium | Intel | × | 3倍 | 180MHz | 16KB | 必要なし | 必要 | 高い |
MMX Pentium | Intel | ○ | 3.5倍 | 210MHz | 32KB | 必要 | 必要 | 極めて低い |
6x86 | Cyrix | × | 2倍 | 120MHz | 16KB (統合) | 必要なし | 必要 | 高い |
6x86L | Cyrix | × | 3倍 | 180MHz | 16KB (統合) | 必要 | 必要 | 高い |
6x86MX | Cyrix | ○ | 3.5倍 | 210MHz | 64KB (統合) | 必要 | 必要 | 高い |
M II | Cyrix | ○ | 3.5倍 | 210MHz | 64KB (統合) | 必要 | 必要 | 高い |
K6-2 (旧コア) | AMD | ○ | 5.5倍 | 330MHz | 64KB | 必要 | 必要 | 低い |
K6-2 (新コア) | AMD | ○ | 6倍 | 360MHz | 64KB | 必要 | 必要 | 低い |
K6-III | AMD | ○ | 6倍 | 360MHz | 64KB + 256KB | 必要 | 必要 | 低い |
K6-2+ | AMD | ○ | 6倍 | 360MHz | 64KB + 128KB | 必要 | 必要 | 低い |
K6-III+ | AMD | ○ | 6倍 | 360MHz | 64KB + 256KB | 必要 | 必要 | 低い |
WinChip | IDT | ○ | 3倍 | 180MHz | 32KB | 必要なし | 必要なし | 高い |
各 CPUの性能の詳細や違いは、企画課の特別企画第 2回 PC-98シリーズと CPUにまとめてありますのでご参照ください。
現在の CPUは、昔の 386や 486SX/ DX等と違い、CPU内部でシステムクロック(PC-9821Anでは 60MHz)を数倍化にする機能を持っています。これを設定することによって演算処理速度が上がり、パソコン全体の性能を引き上げることができます。
ただし、PC-9821Anのような、初期の Pentium搭載モデルでは動作の安定化のためにメモリ周りにウェイトが多いため、これが足を引っ張るので思ったほどには上がりません。(T_T)
PC-9821Anで今まで最も簡単と云われていたものが、より高クロックで動作する Pentium (P54C) に置き換えるものです。置き換えると言ってもそのまま載せ換えると元と同じ 90MHz動作になってしまうので、クロック倍率 (内部逓倍) 設定を変更しなければなりません。
この場合は、クロック倍率変換下駄 (MTC製 MTC-40001等) というものを使います。PC-9821Anで MTC-40001を使う場合、下駄の脇にある倍率設定ピンが、スピーカの金属フレームにぶつかるので、折り取って除き代わりにハンダ鏝を使ってビニール線を配線して設定します。
ただし、この方法では、動作クロックが 3倍速の 180MHz止まりで、特に 200MHz版に載せかえると電源供給の影響で動作が安定しない事があるようです。
なお、メルコ (バッファロー) 社では、パワーアップを対象としたパーツを MTCブランドとして販売していますが、A20ピンマスク機能を追加した魔法の下駄こと MTSA-M1T (生産終了、メーカー在庫無し) やクロック変換下駄の MTC-40001等を初期不良の交換のみ保証で販売していますがこれらはサポート体制が「BUFFALO」ブランド製品と全く違いうので、分からないことがあってもメルコ社には電話やメール等で絶対に問い合わせないでください。詳しくは MTC製品のサイト (リンク切れ) をご覧ください。
次に簡単な方法が Cyrix製の Pentium互換 CPUの Cx6x86に載せ換える方法です。Cx6x86は同クロックの Pentiumに比べ、高度な技術を搭載し整数演算は極端に速いが、浮動小数点演算が遅く、動作時の発熱が凄いため (T_T)、オーバークロック耐性が低いという特徴を持っています。
Cx6x86には、もう一つ、Cx6x86Lと言う物が有りますが、これは、コア電圧と I/O電圧の異なるデュアルボルテージ対応の Socket 7用 CPUなので、ここで紹介する方法では使えません。ご注意ください。実物の画像と、ラインナップは以下のようになっています。
名称 | 最大クロック倍率 | 対応システムクロック | 実動作クロック | Pentium比 |
---|---|---|---|---|
Cx6x86-GP120+ | 2倍 | 50MHz | 100MHz | 120MHz相当 |
Cx6x86-GP133+ | 2倍 | 60MHz | 120MHz | 133MHz相当 |
Cx6x86-GP166+ | 3倍 | 50MHz | 150MHz | 166MHz相当 |
Cx6x86に換装するためには、P54Cと CPUの制御の仕方が異なるので、CPUの他に「魔法下駄」と言う特殊な機能を持った変換ソケットが必要になります。PC-9821Anで使用できるものは、MTC製の MTSA-M1T、または、I-O DATA製の CPUアクセラレータ PK-686P125の下駄 (ソケット) 部分と、それぞれに付属するキャッシュコントロールソフト、さらに、強力な CPUクーラーが必要になります。
本来、MTSA-M1Tや PK-686P125は PC-9821Xa7、PC-9821Xa7e、PC-9821V7等のシステムクロック 50MHz機用で、PC-9821Anで使用することは想定されていませんが、動作する場合が多いようです。
ただし、この下駄とキャッシュコントロールソフトのセットは、既に生産が終了して中古でもまず出てこないレアな物なので、今となっては入手は困難と言うより絶望的です。(T_T)
Cx6x86については、実際に、MTSA-M1Tで試してみました。用意したものは、100MHz版の Cyrix製 Cx6x86-GP120+ (Pentium 120MHz相当) と、MTC製 MTSA-M1T、同社製 MTCL-Sという CPUクーラーです。MTCL-Sは、山洋製の Socket5, 7用クーラー SAN ACE MCと固定金具をセットにしたもので、下駄を使うときのために長めの固定金具がセットになっています。
残念ながら、PC-9821Anの CPUクーラ固定用の爪とSocet 5との爪の位置が合いませんので、金具は使えませんが「SAN ACE MCシリーズ」のクーラーを使うと、標準装備のクーラーの電源ケーブルを流用できるので便利です。
まず、運良く MTSA-M1Tを入手できたら、この下駄の倍率設定ピンがソケット脇のフレームに当たるので折って取り除きます。ここで、倍率の設定は、残った配線パターンに適当な細い電線をハンダ付けで配線して設定します。設定後に、金属フレームと接触しないようにビニールテープ等で絶縁しておきます。ちなみに、折ったままだと動作速度は 2倍速になります。
次に、Cx6x86を方向に注意して、ピンの保護シート (黒いスポンジ) を付けたままの下駄にあてがい、かなり固いので上から少しづつ力を加えて CPUと下駄のすき間がほとんど無くなるくらいまで押し込みます。ここで下手に急いで力を加えると CPUや下駄のピンを折ってしまうので要注意です。
これに、CPUクーラーを熱伝導両面テープやシリコングリス+接着剤等で接着し、これらを標準の CPUと載せ換えます。載せ換えたら電源を入れ「ピポッ」と鳴り、メモリーカウントが終了し OSが正常に起動すれば成功です。
最後に、Pentiumと Cx6x86とでは、CPUの内部キャッシュの構造が違うので付属のキャッシュコントローラをインストールすれば、Windowsが少し快適になります。(^-^)
今回用意できた CPUは、システムクロック 50MHz用で 2倍速の 6x86-GP120+ (実動作クロック100MHz) だったので、システムクロック 60MHzの PC-9821Anでは 120MHzのオーバークロック動作となってしまい発熱が凄すぎて Windows 95が起動出来ましたが、10分と持たずにフリーズしてしまいベンチマークテストができませんでした。定格クロックであれば問題有りません。
前項の方法では、最高でも 180MHz動作で今や常識のマルチメディア命令セットの MMX機能も使えません。そこで、MMX機能を持った Intel製 MMXテクノロジ Pentium (P55C)や Cyrix製 Cx6x86MXと MII、AMD製 K6シリーズに載せ換えるという方法があります。これらは、通称 MMX化と呼ばれています。
これらの方法では、入手が非常に困難な魔法下駄と呼ばれる MTC製の MTSA-M1Tや I-O DATA製の PK-686P125の下駄部分が必要になるだけで無く 動作電圧が Pentiumと異なりデュアルボルテージ対応 (コア部と I/O部の動作電圧が違うということ) なので、電圧を変換する下駄 (パワーリープ製 PL-Pro NBや PL-Pro MMX PLUS!等) も必要になるので難易度はぐっと上がります。
PC-9821An個別の問題として CPUソケット周辺スペースの都合上、PL-Pro NBでは丁度 CPUソケットのスペースに納まり使用可能ですが、それ以外のものでは、電圧変換部分が正面側金属フレームとぶつかってしまい下駄が物理的に載せられないので、機能の無い下駄(スペーサ)で 1cm程度嵩上げして高さを稼ぐか、本体の金属フレームを削るなど大改造になってしまいます。
なお、この方法で、改造を行うと電源供給に重大な問題が発生する可能性があります。詳しくは、電算機第二研究室の PC-9821Anの K6-2化または、報告者のまりも氏のサイト (当該記事は公開終了) を参考にしてください。
この中で、特に PK-686P125の下駄部分と電圧降下下駄の PL-Pro NBとの組み合わせでの動作が成功率が高いです。Cyrix系 CPUで必要になるキャッシュ制御用ドライバについては、製品付属の Cx6x86用キャッシュコントローラをそのまま使用すると CPUチェックで弾かれてしまうのでそれを回避するために、毎黒仮節渡万氏が作成されたパッチを当てることで使用できるようになります。
なお、MMXテクノロジ Pentiumでは、電源ユニットの調整で成功した例が僅かに有りますが動作が非常に不安定だそうです。
Pentiumの互換性を最重視して設計された IDT製の Winchip C6では、動作電圧が単一でそのまま載せ換えることができますが、3.52Vと Pentiumより動作電圧がやや高いため DOSの起動や動作までは行くものの CPUの負荷が高い Windows 95では、起動中にハングアップするなど、電源供給の面で難が有り成功例が少ないです。逆に言うと電源供給がうまくいけば正常動作するものと思われます。
この CPUに交換する際の注意点としては、元の Pentiumと比べてヒートスプレッダ分の高さが低いので元の CPUクーラでは接触が甘く冷却が不十分になる可能性があります。熱伝導性テープとシリコングリスの併用がお勧めです。
AMD製の Socket 7互換 CPUである K6シリーズでのMMX化の方法は、Cyrix系 CPU同様に A20ピンマスク機能の違いと動作電圧の違い、CPUキャッシュ制御の違いの三つをクリアしなければいけません。PC-9821Anの金属フレームを削る必要があり、とんでもなく面倒なことになるので、あまりお勧めできません。次の画像は、PC-9821Anに無理やり K6-2を搭載した際の画像です。
K6シリーズの中で K6-2では、本体の金属フレームを削り PK-686P125の下駄部分と電圧降下下駄の PL-Pro MMX PLUS!の組み合わせで、旧コアでは比較的成功率が高く、現在流通している新コアでは、「CACHE ERROR」が出て動作するものの 386相当の速度に落ちてしまいます。
この様に不可逆な改造になってしまうので、旧コア K6-2については第二研究室の PC-9821Anの K6-2化で、K6-IIIについては PC-9821Anの 480MHz化を参考にどうぞ。
ちなみに、モバイル K6-2+、モバイル K6-III+については K6-IIIとほぼ同じ挙動を示しますが、PK-686P125の下駄部分や MTSA-M1Tとの相性が悪く正常動作させることはできないようです。GALチップが載ったサブボードの無い後期ロットのマザーボードと メルコ (バッファロー) の HK6-MS600P-NV4で動作したと云う報告があります。これについては今後の研究課題です。
ここでは、CPUの換装について記述します。PC-9821Anには正式に対応する ODPや CPUアクセラレータがありません。よって、CPU交換によるパワーアップには保証外の方法しかなくメーカーの禁止している改造行為に当たるので自己責任で行ってください。
なお、PC-9821Anは初期の Pentiumモデルと云う事も有りロットによって、カタログ性能以外の部分で差が激しいので、全ての PC-9821Anで同様に上手く行くとは限りません。たとえ動かなかったとしても、こちらに文句を言わないでください。
また、何の前触れもなくいきなり不安定になったり、最悪マザーボードや電源ユニットが壊れることも考えられますので十分ご注意ください。詳しくは注意事項をお読みください。
さて、CPUの換装が難しい PC-9821Anに救世主というか、PC-9821Anの為に作られたとも云える存在の CPUが現れました。それが IDT製 WinChip2です。Winchip2は Pentiumの互換性を最重視して設計された Winchip C6を改良したもので、従来よりも安定性が増しています。この CPUを使えば MMXテクノロジだけでなく、AMDが提唱した 3D画像処理に威力を発揮する 3D Now!テクノロジにも対応させることができます。(^-^)
Winchip2は、動作電圧がコア部と I/O部の動作電圧が同じ 3.52Vの単一電源 (シングルボルテージ) なので、Pentiumの 3.3Vより電圧が若干高めなのでやや電圧不足になりますがそのまま載せ換えられるので、電圧変換下駄が要らず CPUの制御も Pentiumに非常に近いので、MTSA-M1T等の魔法下駄やキャッシュコントローラも必要有りません。
しかも、動作クロックの設定について Pentiumでの 1.5倍設定は、WinChip2では 4倍設定となっているので、システムクロック 60MHzの 1.5倍の 90MHzで動作する PC-9821Anでは載せかえるだけ (直載せ) で 240MHzで動作します。これが現在、最も簡単で成功率の高いパワーアップ法です。
なお、アセットコアより PC-9821Anに正式対応した AC98D-240Anという 240MHz版 WinChip2を搭載した CPUアクセラレータが発売されました。この CPUアクセラレータでは、PC-9821An用にコンパクトな電圧変換機構を搭載し CPUソケットの電圧を 3.52Vに調整して CPUに供給しているので動作が安定しています。もし、直載せで安定しない場合や起動しない本体の場合は、こちらを購入することをお勧めします。ただし、現在では入手はほぼ不可能です。
ここでは、自分が試みた IDT製のシステムクロック 60MHz対応 4倍クロック動作の WinChip2と言う CPU (仕様は以下の表参照) を使った方法を紹介します。
商品名 | メーカー | 種類 | クロック倍率 | 動作クロック | 内部キャッシュ | コプロセッサ | 電圧調整 | 細工 | Anでの成功率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
WinChip2 | IDT | CPU | 2〜4倍 | 120〜240MHz | 64KB | CPU内蔵 | 必要なし | 必要なし | 高い |
WinChip2 Rev.A | IDT | CPU | 2〜3.5倍 | 120〜210MHz | 64KB | CPU内蔵 | 必要なし | 必要なし | 高い |
この製品は現在、後継のシステムクロック 100MHzに対応した Rev.Aが販売されています。Rev.Aはクロック倍率が最大 3.5倍なので 210MHz動作になります。残念な事にこの CPU製造元である IDT社が x86 CPU部門から撤退し VIAへ売却しました。Winchip2は元々供給体制が弱く中古でも非常に品薄になっており、今や幻のチップとなってしまいました。(T_T)
では、実際の手順です。取り付けは非常に簡単です。ルーフカバーを開け CPUクーラーを外し、CPUソケット上の金に輝く Pentiumをレバーを上げて外し、WinChip2に載せ換えます。
次に、熱伝導を良くするためシリコングリスを塗ってから、CPUクーラーを取り付けます。シリコングリスを塗るコツは、CPU表面にほんの少し (米粒大) 取り、その上から CPUクーラーを円を描くように動かして塗り広げ、余ったシリコングリスを押し出していきます。シリコングリスは厚塗りしてはいけません。厚塗りしてしまうと逆に効果が落ちてしまいます。
なお、今回の改造で自分が使った CPUクーラーは標準のものをそのまま利用しています。大体はこれで大丈夫のようですが、もし Windows等で負荷を掛けてフリーズするなど冷却が足りないようでしたら、山洋電気製の SAN ACE MCシリーズの Pentium用クーラーを使うと標準クーラーの電源ケーブルを流用できるので便利です。
ただし、あまり大きいものではクーラーのヒートシンク部がソケット脇のフレームにぶつかって固定できなくなるので注意が必要です。電源を外部から取る必要がある場合は、HDD籠から分岐して取り出すと良いでしょう。
CPUを取り付けた後、電源を入れて「ピヨッ」 (若干音程が高くなります) と鳴れば成功です。もし正常動作しないときは、すぐに電源を切って手順に誤りが無いか確認しましょう。以上が無ければルーフカバー等を元通り取り付けます。
これで、今までが嘘のようにとても高速に動作します。PC-9821Anはシステムクロックが 60MHzなのと、メモリ周り (特に、書き込み) にウェイトか多くて足を引っ張りますが、Windows 95も「HOVER!」も余裕でバリバリ (死語) 動かせるようになります。DOSでの動作も速すぎる以外に特に問題有りません (^-^)。しかも、MMXテクノロジはおろか 3D Now!テクノロジにまで対応します。でも、PC-9821Anではこれらの新技術に対応してもこれらの機能を使う術がありません。(^ ^;;
最後に、WinChip2使い、MS-DOS Ver 6.2上でベンチマークを取ってみましたので、参考にしてください。と思ったら速すぎて測定不能でした。使用ソフトは、I-O DATAの 「INSPECT Ver 1.03」 です。
CPU | 動作周波数 | Dhrystone(点) | Whetstone(点) | 総合(点) |
---|---|---|---|---|
Pentium (P54C) | 90MHz | 50000 | 47438 | 59480 |
WinChip 2 | 240MHz | - | - | 測定不能 |
測定不能なので、HDBENCH Ver 2.420の結果を載せておきます。
★ ★ ★ HDBENCH Ver 2.420 ★ ★ ★
使用機種 PC-9821An/C9T
Processor WinChip2 240MHz [CentaurHauls family 5 model 8 step 5]
解像度 800x600 65536色(16Bit)
Display [X]スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821
シリーズ)
Display ウィンドウ アクセラレータ ボード A2 (Matrox)
Memory 129,380Kbyte
OS Windows 95 4.0 (Build: 950)
Date 1999/ 6/30 19:20
SCSI = SCSI = ICM IF-2769 SCSI-2 Board
HDC = スタンダード IDE ハード ディスク
コントローラ
A = GENERIC IDE DISK TYPE00
B = GENERIC NEC FLOPPY DISK
C = GENERIC NEC FLOPPY DISK
D = NEC CD-ROM DRIVE 4 M Rev 1.0
CPU | ALL | 浮 | 整 | 矩 | 円 | Text | Scroll | DD | Read | Write | Cache | Drive |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
P54C 90MHz バグ無し | 4620 | 5112 | 5492 | 7223 | 2687 | 9881 | 68 | 8 | 1424 | 1600 | 8096 | A:10MB |
WinChip2 240MHz | 8514 | 12608 | 14378 | 10279 | 4186 | 11115 | 68 | 15 | 1505 | 1654 | 20833 | A:10MB |
測定当時、メモリは、I-O DATAの NE-SIMXAで 128MB (新品なので高かった (T_T)) に増設していました。現在の機器の構成については、電算機管理室の項を参照してください。結果としては、MS-DOSや Windows 95の動作ではフリーズしたりせず全く問題有りません。非常に安定していて快適そのものです。一時期、CPUの動作周波数だけは、主力の PC-9821Xa16/W30 (当時 MMXテクノロジ Pentium 233MHz) を抜いてトップでした。 (^ ^;;
この方法で、改造を行うと電源供給に重大な問題が発生する可能性があります。詳しくは、第二研究室の PC-9821Anの K6-2化または、元ネタのまりも氏のサイトを参考 (現在は公開終了) にしてください。http://homepage1.nifty.com/marimono/
ここでも、CPUの換装について書かれていますが、メーカーの禁止している改造行為に当たるので自己責任で行ってください。また、最悪壊れることも考えられますので十分ご注意ください。詳しくは注意事項をお読みください。
現在、手元の PC-9821An (1994年 6月製造) は WinChip2で 240MHzで安定動作しています。その後、PC-9821Xa16/W30のためにメルコ (バッファロー) 製の K6-III搭載の CPUアクセラレータである「HK6-MS400-N2」を購入したので PC-9821Anで動くかどうか試してみました。(^ ^;;
このCPUアクセラレータは、通称 N2下駄という電圧変換機能とPC-9821で動作するように A20ピンマスク機能 (魔法機能) を搭載したソケットに AMD製の K6-IIIが載っています。この HK6-MS400-N2に使われている N2下駄は、K6-IIIのために電圧を 2.4V (固定されているので設定変更不可) に降圧しているだけでなく、主に PCIチップセットに VLSI製 Wildcatや Intel i430FX等を搭載した PC-9821シリーズへの K6-III搭載時に起こる色々な問題を解決するために魔法機能 (これは解除不可) と云う特別な回路を下駄に搭載しています。今まで入手が難しいと言われていた魔法下駄と電圧変換下駄が一緒になっている便利なものです。
まず、ルーフカバーを開け CPUクーラーと CPUを外しました。しかし、そのままでは、スピーカのフレームに引っかかって HK6-MS400-N2を取り付けられません。そこで、スピーカのフレームも外しました。ただし、動作確認のための「ピポ」音が聞けなくなるので、電源ランプとスピーカの配線は繋いだままにしておきました。
この状態で、まず PC-9821Anの CPUソケットに HK6-MS400-N2を直接載せました。ファイルスロットのフレーム部にかなり接近しますが、載せること自体は問題なく可能でした。次に、HK6-MS400-N2の電源を確保するため向かって右側の HDDユニットを外し、代わりに空の HDDユニット (IDE籠) を取り付け、そこから電源を確保しました。以上の手順を確認して、ルーフカバーを開けたままで電源コードを本体に繋いで電源を入れました。
結果は、「ピポ」音はせず、画面には何も表示されず沈黙したままでした。また、電源を入れ直したり、リセットボタンを押してみたりしましたが、結果は変わらずでした。このとき、CPUクーラーのファンは回っていたので、HK6-MS400-N2に電源は来ているようです。
続いて、PC-9821Anでの動作例が多い MTSA-M1T (ジャンパは折り、削ってあります)と組み合わせてみました。まず、MTSA-M1Tの上に HK6-MS400-N2を取り付けました。
このままだと、今度は、パソコン本体前面のフレームに干渉し CPUソケットに取り付けられないので、MTSA-M1Tと同様にジャンパ部分を折り、削った、MTC-40001を高さを稼ぐために使いました。MTC-40001は、クロック倍率変換下駄というもので、CPUの内部逓倍設定を換えるものです。それ以外は、何もしていないので高さ稼ぎに使えます。
そこで、MTC-40001の上に MTSA-M1Tを、さらにその上にHK6-MS400-N2という状態で CPUソケットに取り付け、電源を HK6-MS400-N2に繋ぎました。以上の手順を確認して、ルーフカバーを開けたままで電源コードを本体に繋いで電源を入れました。
結果は、やはり「ピポ」音はせず、画面には何も表示されず沈黙したままで、電源を入れ直したり、リセットボタンを押してみたりしましたが、結果は変わらずでした。
と言う訳で、自分の場合 PC-9821Anに HK6-MS400-N2と言うよりは、N2下駄で K6-IIIを搭載する実験は玉砕でした。(T_T) 敗因としては、N2下駄の魔法機能と MTSA-M1Tの魔法機能が被っていることが原因と考えられます。
なお、最近では、PC-9821Anで、メルコ (バッファロー) のクロックマルチプライヤという機能を持った下駄で、システムクロックを下駄上で 1.5倍から 2倍にできる他に、電圧や動作倍率等の細かい設定が色々できる N3下駄を使い K6シリーズで 400MHzをクリアーした方がいます。また、N2下駄でも「CACHE ERROR」が出るものの動作に成功している方がいます。
ただ、K6-IIIは、非常に電力を必要とするので、PC-9821Anではどうやって安定した電力供給ができるかが問題になると思います。
あとは、WinChip2の後継チップである WinChip3の登場を待つのでしたが、IDTは x86系 CPU部門から撤退し、WinChip3の開発は中止となりました(^ ^;;
さて、CPUを交換して高速化したら、早速メモリを増設しましょう。メモリの増設の方法は、マザーボード上の 4カ所の SIMMソケットに増設または標準のものと交換します。メモリ容量は最大 128MBまでです。
この機種以降では、PC-9821Ap2等の旧機種でありがちな専用メモリボードが必要ないので、特に面倒な事も無く、そのままパリ付きの 72pin FP (ファーストページモード: Fast Page Mode) SIMM を直接マザーボード上に増設できます。
メモリの増設には、Pentiumの外部データバス幅に合わせるため必ず同容量で同種の SIMMを 2枚一組で Cバススロットに近い側のソケットから順番に増設します。奥から SIMMソケットに 1、2、3、4と番号を振ったとすると 1と 2、3と 4と言う組み合わせになっています。なお、容量や規格の違う SIMMを 2枚組で取り付けると「SIMM SETTING ERROR」になり起動しません。
PC-9821Anではコスト削減のため従来のようにマザーボードにメモリチップが搭載されていないので SIMMソケットにメモリモジュールを取り付けないで起動すると「MEMORY ERROR」とモザイクを表示して正常起動しません。ご注意ください。
PC-9821Anで使用できる SIMMは、パリティチェック (パリ) 付き 72ピン FP SIMMです。パリ無しのメモリを装着すると起動時に「PARITY ERROR」が出て起動しません。PC-9821正式対応品を選ぶのがベストですが、JEDEC規格に対応しているのでよほど変わった構成で無い限り PC/AT互換機用、Mac用でも使用できます。
パリ付きメモリとパリ無しメモリの見分け方はチップの個数で見分けます。パリ無しはチップ 2個で一組み、パリ付きはチップ 3個で一組です。一枚の SIMMに DRAMチップが 8個載っている物は 2×4 = 8でパリ無し、DRAMチップが 9個載っている物は 3×3 = 9でパリ付きです。稀にパリティビット付きの DRAMがありますが、その場合は 2個一組になります。
似た SIMMメモリに PC-9801-61及び互換 SIMMがありますが仕様が違うので動作しません。ECC付き EDO SIMMは、一見正常動作するように見えますが、MS-DOSの画面描画が乱れると云った不具合が出る事があります。EDOか FPの大まかな見分け方としては、DRAMチップの型番の初めの 4〜 7桁の数字の並びの末尾が「05」の物はほぼ EDO DRAMです。
サーバ用メモリで 72ピン SIMMに似て非なる 144ピンのメモリが有りますのでご注意ください。モジュールにピン番号が書いて有るのでそれで判断できます。
SIMMには、PC/AT互換機用でよく見かける端子が銀色のシルバーコンタクトと金メッキの物があります。どちらでも構いませんが、SIMMソケットが金メッキの場合は、異種金属同士を接触させるとノイズが発生する事があるので金メッキの方を選ぶとノイズの影響を受けにくくなります。
FPM対応 DRAMチップには 60nsの物と 70nsの物がありますが、PC-98に於いてはどちらを使ってもデータ転送速度が速くなるといったメリットは有りませんし、両者が混在しても動作に大きな影響は有りません。ほとんど存在しませんが、64Mビット DRAM搭載の物は PC-9821Anでは正常に容量を認識しません。
メルコ (バッファロー) 製の一部の SIMMに搭載されているパリティジェネレータとは、本来必要なパリティチェック用 DRAMを搭載せずに、代わりにパリティチェック用のデータを生成するチップを装着して起動時にエラーで弾かれないように細工したものです。当時 DRAMチップが高かったので価格を安く抑えるためこの様な技術が登場しました。この SIMMを利用する場合は、パリティジェネレータ搭載の SIMMで統一する必要があります。パリ付き SIMMを混入すると正常動作しない場合があります。
代表的なメモリサブボード (パリ付きの 72ピン FP SIMM)
メーカー | 製品名 | 容量 | 枚数 | 標準価格(税別) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
NEC | PC-9821A-B02L/ B03L/ B04L | 4〜16MB | 1枚 | 30,000〜140,000円 | ― |
SV-98/2-B01/ B02 | 16〜32MB | 1枚 | 160,000〜330,000円 | ― | |
PC-9821BF-B01 | 32MB | 1枚 | 310,000円 | ― | |
メルコ/ バッファロー |
EMF | 8〜32MB | 1枚 | 5,000円〜21,000円 | ― |
EMW | 16〜64MB | 2枚 | 8,000円〜42,000円 | ― | |
EMF-P | 8〜32MB | 1枚 | 4,000円〜19,800円 | パリティジェネレータ搭載 | |
EMW-P | 16〜64MB | 2枚 | 6,000円〜37,800円 | パリティジェネレータ搭載 | |
I-O DATA | NE-SIMXA | 16〜64MB | 2枚 | オープン価格 | ― |
NE-SIM36 | 32MB | 1枚 | 14,000円 | ― |
パリ付き 72ピン FP SIMMは店頭での入手は中古品でもほぼ不可能です。一時期 16ビット DRAMの需要が減っために価格が高騰したことがありました。2012年現在は、ジャンク品で有れば数百円で買えますが、動作チェック済みの物は 1,000円から 2,500円程度とやや高めです。
セカンドキャッシュは、簡単に言うと高速で動作する CPUとメモリの間のデータ転送速度の差を埋めるものです。特に頻繁にメモリの内容を書き換える繰り返し演算の高速化に威力を発揮します。この機種では、始めからマザーボードに最大容量の 256KBを搭載しています。増設はできませんがこれ以上増やせたとしても殆ど効果は有りませんので、気にする必要は有りません。発熱があるので気になる方は、小さいヒートシンクを付けると安心です。
ちなみに、AMDの K6-IIIといったセカンドキャッシュ内蔵 CPUとの相性は、そもそも「CACHE ERROR」で弾かれますが、起動後に有効にしてもエラーが発生しにくいので PCIチップセットに i430HXを搭載したモデルと比べると安定度はこちらの方が上です。
さて、72pinの SIMMにはもう一つ EDO SIMMというものがあります。EDO SIMMは、FP SIMMに比べメモリアクセスが高速化されていますが、メモリアクセスの仕様が若干違います。そこで、この EDO SIMMは PC-9821Anで使えるかどうか実験してみました。使用したものは、メルコ (Buffalo) の EMH-E 32MBで ECC対応 EDO SIMMです。これは、FP SIMMでいう所のパリ付きに当たります。
これを取り付け電源を入れると、意外にも何事もないように「ピポッ」と言いメモリカウントが始まり、Windows 95が起動しました。別に変わった所はなく安定動作していましたが、Windowsを終了すると「Windowsを終了しています」でフリーズしてしまい正常に終了できませんでした。あとで分かったことですが、Windows 95で「MS-DOSモードで再起動する」を選択すると必ず 「PARYTY ERROR」の文字が出て停止することが分かりました。というわけで、ECC対応 EDO SIMMは、PC-9821Anでは使わないほうがいいようです。(^ ^;;
さて、98MATE Aシリーズでは、NECの PC-9801FA-35 (40MB) や PC-9801FA-37 (100MB) 等の SCSIタイプの他、PC-HD510A (510MB) 、PC-HD340A (340MB) 等の IDEタイプの HDDが内蔵できます。PC-9821Anの Windowsモデルでは初めから510MBタイプか、340MBタイプのドライブが搭載されていますが、いずれも最大で 510MBと少なく使っているうちに容量が足らなくなり、より大きい容量のドライブに交換したいと思う事も有ると思います。または HDDの故障で交換という事も有るでしょう。そこで、今回は、PC-9821Anの様な比較的旧式の専用固定ディスクインターフェース搭載モデルで HDDを交換する際の注意事項をまとめました。
なお、SCSI仕様の HDDへの交換や SCSIのスルー化については PC-9801FAネタのSCSIボードのスルー化 その 2やCバス SCSIボードで SCSI機器の内蔵 PC-9801FA編、企画課の第4回 PC-98 Cバス SCSIボードの活用を参考にしてください。
HDDの交換は自己責任で行ってください。SCSIタイプではある程度規格がはっきりしているのであまりトラブルはありませんが、PC-98の 専用固定ディスク I/Fは、IDE、E-IDE I/Fに完全互換では無いので、動かなかったり正常に認識しなかったりする事があります。動かなかったとしても当方に文句を言わないでください。また、データの破損や何の前触れもなくいきなり不安定になったり、最悪壊れることも考えられますので、重要なデータはバックアップを取るなど十分にご注意ください。詳しくは注意事項をお読みください。
交換するドライブは、古いタイプの物で大容量のドライブは消費電力が高い物があります。極端に消費電力が高いドライブに交換すると拡張ボードをフルに実装した状態では電力供給不足で HDDの動作が不安定になるだけでなく、電源ユニットが故障する事がありますのでご注意ください。交換して動作が怪しい時は、拡張ボードをすべて外してチェックするか、外付けケースに入れて繋いでチェックしてみてください。それで異常が無ければ電源容量不足が考えられます。
HDDカートリッジ (通称:籠) には IDEタイプと、SCSIタイプの二種類があります。98MATEでは両方とも使用可能です。両者の見分け方はカートリッジの背面を見たときに、カードエッジがカートリッジから外へ飛び出している物が IDEタイプ、飛び出して居ないのが SCSIタイプです。
A MATE用の内蔵ハードディスク (IDE籠とも言われる) は生産終了で、中古でもかなり手に入りにくくなっています。相場は 1,000〜 2,000円程度です。SCSI籠の方はもうプラス 1,000円程度高くなります。
PC-9821Anで使用可能なハードディスクは、E-IDE (Enhanced IDE) タイプで 1ドライブ辺り 4.56GB (未フォーマット時)を越える物については、そのままでは本体で認識できず使用できません。通常は有りませんが、ごく稀に初期の本体で 544MB以上は認識されない場合があるそうです。(当方では未確認)
4.56GBを超えるドライブを接続するとメモリカウント後にハングアップします。2012年現在、新品で入手することはまず不可能なので、コンパクトフラッシュや SDカードを流用する手も有ります。企画課第6回 PC-98の SSD化を参考にどうぞ。
今回の HDD交換で用意した物は、PC-9821Xa16/W30に内蔵されていた IBMの DAQA-33240という 3GBの E-IDEタイプの HDDと純正の PC-HD340Aという HDDユニットです。この方法だと SCSIタイプのように本体の HDDアクセスランプが点灯しなくなる事はありません。
なお、似たような形の PC-9801FA用内蔵 HDDユニットでは SCSIタイプなので IDEタイプには交換できません。見分け方は、HDDユニット背面の端子がユニットより出ているのが IDEタイプ、出ていないのが SCSIタイプです。
手順としては、まず、フロントマスクを外し、HDDカートリッジ (IDE籠)を取り出します。HDDカートリッジの前後合わせて 4本のねじを外して蓋を開け HDDを固定しているねじ 4本を外します。次に、HDDにつながっている電源ケーブル、IDEコネクタを外し HDDを取り出します。
HDDを取り出したら、新しい HDDの設定 (PC-9821Anではマスターのみ有効です。2台内蔵してのスレーブ接続では使えません) をジャンパ等で行い、この HDDに電源、IDEコネクタを逆刺しに注意して取り付け、ネジで固定します。ここで、もう一度各コネクタ、設定等を確認します。良ければケースの蓋を閉じネジを締めます。そして、換装した HDDユニットを本体に取り付け本体の電源を入れ、MS-DOS等で認識しているのが確認できればひとまず OKです。
HDDを初期化する際は、以前 PC/AT互換機で使用されていたドライブの場合、MS-DOS起動時にハングアップする事があります。この様な場合は、Windows95、Windows98の起動ディスクを使用して「DISKINIT」で初期化し、「FDISK」で領域確保、「FORMAT」でフォーマットする回避できます。
交換後は、FDから MS-DOSを起動し HDDを「FORMAT」コマンド等でフォーマットします。正常に初期化、領域確保が終われば終了です。
一番簡単な方法は、筺体の構造上の理由で PC-9821Anは非対応ですが、I-O DATA製の IDE-98を使用する方法です。これを使用すると 8.4GBまでのドライブが使用可能になります。特に後者ではディスクアクセスも高速になるのでお勧めです。
PC-9821Ap2ネタの Cバス E-IDEボードで IDE機器の内蔵 A MATE編を参考にどうぞ。
ROMライタをお持ちの方は、ITF ROMを修正したり、SCSIや NIC等の BIOS ROMにパッチを当てる事で大容量ドライブを使用する事が可能になるという方法も有ります。大熊猫氏の「大熊猫のぺぇじ」や、まりも氏のサイトが詳しいので参考にしてください。通信課のリンクよりどうぞ。
PC-9821Anの Windowsモデルで FDDを 2ドライブ使用したい時や、その他のモデルでも本体実装と違うタイプの FDD (例えば U2モデルにに 5インチ FDD等) を利用したい場合には、ファイルスロット内蔵用または、外付け用のドライブを接続することで利用できるようになります。以下は純正オプションの一例です。
なお、全モデルで 1MBタイプ増設 FDDインターフェースは有りません。外付けの FDDを接続する場合は、1MBフロッピィディスクインタフェースボード「PC-9821A2-E02」が必要になります。注意としては、このボード単体では FDD I/Fとして機能しません。本体の FDD I/Fから信号を引き出し、10ピンの補助ケーブルと共にボードに接続する必要があります。ファイルスロット用 FDDユニットを増設する場合は、インターフェースボードは要りません。
対応コネクタ | 型番 | 種類 | 対応機種 | 補足 |
---|---|---|---|---|
本体内蔵用 | PC-9821A2-E01 | 3.5" 3モード FDD | PC-9821An/ Ap2/ As2/ Ap3/ As3 その他、OP-98X/10W、OP-98X/20W、文豪 DP-60/ 70Fでも使用可能 |
Windowsモデルで、3.5" FDDを増設する場合に使用。 |
ファイルスロット 内蔵用 | PC-9801-F04 | 3.5" 2モード FDD | PC-9801FA, FS, FX A MATE全機種 |
5" FDDモデルで、3.5" FDDを使いたい場合に使用。 |
PC-FD511F | 5" 2HD FDD | 3.5" FDDモデルで、5" FDDを使いたい場合に使用。※ | ||
PC-FD321F | 3.5" 3モード FDD | A MATE全機種 | 5" FDDモデルで、3.5" FDDを使いたい場合に使用。 | |
外付け用 | PC-FD512R | 5" 2HD FDD | 1MB FDD I/F搭載機 | 5" FDDドライブユニット。 |
PC-FD312R | 3.5" 2モード FDD | 3.5" FDDドライブユニット。 |
※ 本体の仕様上、3.5" 2ドライブ搭載のマシンでは、増設した 5" ドライブで 2DDのフォーマットができない。フリーソフトで回避可能。
PC-9821Ap2/ As2以降の FDDが 1ドライブのモデルでは、FDDパネルが交換可能となり専用オプションで 2ドライブ目の FDDを増設できるようになっています。なお、98MATE Aシリーズでは、他のモデルとは異なりフロントマスクを外してジャンパの設定を行う必要があります。正しく設定しないと FDDが正常動作しないばかりか故障の原因になるのでご注意ください。
PC-9821Anでは、増設用 3.5インチフロッピィディスクドライブ「PC-9821A2-E01」が対応しています。これは、2FDDパネルとケーブル FDD、ネジがセットになったものです。
FDDの増設方法は、ルーフカバーとフロントマスクを開け HDDカートリッジを外します。2ドライブ目の目隠し金具を外し、FDDドライブを挿入し正面の二箇所と側面の一箇所をネジ止めして、ケーブルを二股の物に取り換えます。続いてフロントマスクの FDDパネルを 2FDD用に交換します。
最後に、FDD設定変更用ジャンパスイッチがフロントマスクを外すと本体前面中央部に有るので、ショートポストを右から左に移します。
PC-9821Anは 2012年で製造から 20年程度経過しています。今後も正常に使用するにあたって幾つかのポイントを挙げておきます。
PC-9821An/M2 で使用されている FDDは、NEC製の「FD1158C」という VFO無しの 1MB、640KB両対応の 5インチドライブです (画像左)。このドライブは、コンデンサの液漏れによってセンサーのパターンが破断してモーターが焼ける事があります。電源を入れると大きな異音がするので分かります。
対策としては、液漏れしてパターンが切れる前にコンデンサを交換することです。パターンが切れてしまっている場合は、繋いで様子を見ますが、モーターが焼けている場合はドライブを交換する以外に有りません。
PC-9821An/U2、PC-9821An/U8W、PC-9821An/C9Tの NEC製「FD1148T」VFO無し 1MB、640KB両対応の 3.5インチドライブ (画像右) でもコンデンサの液漏れが発生する事がありますが、読み取りが弱くなるぐらいであまり大きな影響は出ない事も有って気が付かない事が多いです。液漏れしていたら、基板を洗浄してコンデンサを換えておくとよいでしょう。
FD1148Tは、コンデンサ以外にモーターの軸部分が埃などで固着する例が多いです。FDD本体を裏返して円盤部分を指で回転させようとすると抵抗を感じる場合は、固着しています。グリスを軸部分に注入して指で回転させ、指で弾くような感じで触り数秒回転するようであればいいでしょう。ただし、5-56は NGです。樹脂を侵すうえ、揮発するので一週間程度で効果が無くなります。
3.5インチドライブを交換する際は、PC-9821Ap2/ As2で使用されている FD1138Tも使用可能です。同じ FD1148Tでも MATE Xで使用されている FDDには 34ピンコネクタの物があるのでご注意ください。
PC-9821Anで使用されている電池は、三洋 (現 FDK) の「ML2430」という 3V 100mAhの充電可能なリチウム二次電池です。場所は電源ユニットの下あたりに 3ピンのコネクタで実装されています。幸い 20年程度で液漏れする例は殆どありません。この電池を充電するには一昼夜電源を入れたままにするといいようです。充電できない場合は、起動毎に日付と時刻、セットアップメニューの設定、メモリスイッチの設定をやり直す必要があります。
ML2430は 2012年現在でも FDKが製造していて入手は比較的容易です。形状が同じだからと言って PC/AT互換機のマザーボードで使用されている市販のリチウム一次電池 (使い切りタイプ) は絶対に使用しないでください。これを PC-9821Anに取り付けると本来充電禁止の一次電池を充電することになるので非常に危険です。
ロットによってPanasonicの「VL2330」が使われている事も有ります。こちらは 3V 50mAhです。両者は充電時の電圧がML2430は 3.1V±0.15V、VL2330は3.4V±0.15Vと異なりますが、3ピンコネクタのマイナス接続ピンを換える事で両方とも使えるようになっています。
某オークションなどでは出品者が良く分からずにこの様な改造を行って本体を出品している事があります。仮にダイオードを噛ましていても、長期間使用していると劣化等で知らないうちに壊れている可能性があります。万が一ショートモードで壊れると電池側に電流が流れ大変危険です。リチウム電池は取り扱いを誤ると発火や破裂が比較的容易に起こりますのでご注意ください。
また、ダイオードの性質として順方向降下電圧 (VF) があります。一般的なダイオードでは 0.6〜0.7V程度降下しますのでこの点にも注意が必要です。
ちなみに、一般的な整流用ダイオードでは 1V程度降下するので、この性質を利用してダイオードを数珠繋ぎにして冷却ファンへの供給電圧を下げて静音化する改造が流行りました。(^ ^;;
カレンダ時計バックアップ電池が必要な方は、所内売店の保守部品フロアへどうぞ。新品の物を 1個 1,000円から 1,280円でお分けします。
この機種では、面実装タイプの四級塩電解コンデンサを使用しているのでコンデンサの液漏れで故障する例が有ります。ただ PC-9821An自体の製造が 94年後半と比較的遅くコンデンサに何か対策がされているようで PC-9821Ap2、PC-9821As2ほどの激しい液漏れは経験上少ない印象です。液漏れの際の特有の症状としてはカレンダ時計機能の不良、FDDの読み取り不良と云った症状が出ます。
パソコンは冷却ファンで外気を取り込んでいるため、マザーボードに埃が溜まりやすくそこに電解液が染み込むと端子の間に過電流が流れてショートし発火する恐れがあります。ショート状態なので電源を入れようとすると電源ユニットの保護回路が働いてすぐに切れる状態になります。この時は非常に危険ですので修理するまで電源を投入してはいけません。
液漏れしてしまった場合の対策としては、マザーボードを洗浄しコンデンサを換える以外に有りません。詳細は、企画課 第5回 電解コンデンサの液漏れを参考にしてください。
これらの液漏れでサウンドにノイズが載る、ステレオの片側のみ音が出る、ビープ音が鳴らない等の音声出力に不具合が出ます。進行の度合いはそれぞれ異なりますが、どの個体でもいずれは液漏れして不具合が出るので不具合が無くても早いうちに交換しましょう。ある程度進行してしまい基板全体が濡れた様な状態にまで液漏れが進んでしまうと ICチップやハンダが錆でダメージを受けてしまいコンデンサの交換だけでは治りません。最悪はサブ基板ごと交換になります。
このサブ基板はパターンが弱く剥がれ易いのでご注意ください。交換するにはニッパーで電解コンデンサの円筒部分をブチブチ切って残った足を鏝で外す方がパターンへのダメージが少ないですが、大サイズの電解コンデンサは上手くやらないとパッドごと剥がれます。
使用するコンデンサは音響用を使いたくなりますが、この真上に電源ユニットが来る事を考慮しましょう。背の高い電解コンデンサは頭が天井に閊えるので NGです。
PC-9821Anでは、電源にタムラ製作所製 PU732を使用しています。この電源は負荷によって電圧を調整するタイプの電源で昨今の ATX電源とは異なり電源出力も余裕があるとは言えません。コンデンサが液漏れする以前に負荷によって半導体が劣化して電源が入らなくなる事が多いです。
電源が入らなくなってしまうとコンデンサの交換で回復する例は少なく、電源ユニットを交換するしか有りませんが、ただでさえ本体の入手が難しい中に於いて電源のみを入手することはほぼ不可能に近いです。ATX電源を改造して外付けにするか、SFX電源をばらして元の電源ユニットに組み込む以外に直す方法は無いと思います。
PC-9821An/C9Tでは、ファイルスロット仕様の NEC PC-CD60Fを搭載しています。このドライブではイジェクトボタンを押してもトレイが出てこない、途中で引っかかるケースが増えてきています。
内部のイジェクト機構のモーターの回転を伝える樹脂製 (経年劣化により黄色みがかった色で、一見ゴムのような質感) のギアが潤滑油を吸ってしまうため摩擦で回転しにくくなることが原因です。ここに潤滑油を注せば回復する可能性があります。
この樹脂製のギアは潤滑油の影響で触っただけで砕けるほど非常に脆くなっています。トレイが何かに引っかかって正常動作しないときに無理に強制イジェクトピンでトレイを引き出そうとするとその力で砕けて回復不能になります。こうした症状が出た時は絶対にトレイを無理やり動かさないようにしてください。
使用する潤滑油はホーザン 浸透ルブ Z-296等の粘度が低く樹脂に影響の出ないものにしてください。CRC 5-56は樹脂を溶かすのでこのような用途に絶対に使用してはいけません。
なお、すでに歯が欠けてしまっていたり砕けてしまっている場合は残念ながら回復は不可能です。油分のため接着できません。3Dプリンタを使って複製するぐらいしか手はないと思います。(^ ^;;
ちなみに、動作不良やコンデンサ、電池交換でお困りの場合は、技術部にて修理や保守を承りますのでご相談ください。
PC-9800, PC-9821, PC-9801, 98MATE, PC-98は NEC社の商標または登録商標です。
Pentiumは Intel社の商標または登録商標です。
Windows, MS-DOSは Microsoft社の商標または登録商標です。
この他、製品名、型番等は、一般に各メーカーの商標または登録商標です。