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PC-9821Ap2とは

 NECは当時、PC-H98シリーズ普及政策の失敗によりシェアを奪われた PC/AT互換機 (俗に言う DOS/V機) に巻き返しを図るため、1993年 2月に登場した、新世代の PC-9800シリーズ、「PC-9821」デスクトップモデルとして颯爽と登場した98MATE (俗称:A MATE) の PC-9821Ap/ As/ Aeは、オプションながらハイレゾモードを使用できる事で従来ハイレゾモードのハイエンドモデル PC-98RLと PC-H98model105、ノーマルモード専用の PC-9801FAと別れていたラインナップが整理統合され、価格も抑えたことでベストセラーとなりました。この年、NECは A MATEシリーズの普及にかなり力を入れていました。それを物語るかのように、A MATEシリーズのカタログは、今までの A4版 2ページから A4版 4ページに増やされ NECの本気を感じます。
 NECはこの流れを掴もうと同年 7月に国内初の Pentiumを搭載したモデル PC-9821Afに続き、11月には普及し始めた Windows3.1向けにチューンし進化させた二代目 98MATEとして PC-9821Ap2は、PC-9821As2と共に、「プロフェッショナル クオリティ。」というキャッチコピーで登場しました。このモデルで従来 PC-9821FA/ FS/ FXのように CPUの性能により 3モデル用意していましたが、PC-9801FS (i386SX 16MHz) と PC-9801FX (i386SX 12MHz)や PC-9821As (i486DX 33MHz)と PC-9821Ae (i486SX 25MHz) のように大きな性能差が無いためラインナップが整理され PC-9821Aeが消え 2モデルに削減されています。

 初代 A MATEに比べ、CPUに変更はありませんでしたが、Windows3.1以降 OSが大容量のメモリを要求するようになった事からハードウェアの壁であった 16MB (ユーザーが使用できるのは 14.6MB) を破るメモリを搭載でき、高速なデータ処理をサポートするセカンドキャッシュメモリを上位モデルで内蔵するなど、容量、データ転送速度の両面でメモリ周りが大幅にパワーアップされました。
 補助記憶装置も HDDから起動する Windowsでは必要性が低くなった 2ドライブ目の FDDと外付け用 1MB FDD I/Fをオプションにする一方、安価で大容量の CD-ROMメディアが本格的に普及が始まった事から最上位モデルでファイルスロットに SCSI接続の CD-ROMドライブ (PC-CD60F相当) を内蔵しています。
 細かい変更としては Windowsプリインストールモデルではローカルバススロットにグラフィックアクセラレーションボードが搭載されていましたがこれをシュリンクしサブボード形式でマザーボードに統合されたことで、これらのモデルでも拡張スロットが 4スロット使えるようになり利便性が上がっています。  さらに、企業、産業向けモデルと従来バラバラだったハードウェアを PC-9821Ap2/ As2ベースで共通化することでマザーボードやパーツのコストダウンを図る事に成功し、PC-9821Ap2の CD-ROMドライブ搭載の最上位モデル PC-9821Ap2/C9Wでも 70万円と標準価格も低めに抑える事ができました。この事から初代に続いてヒットし、民生、企業問わずベストセラーとなりました。その影響も有って、PC-98最強のエロゲーマシンという称号を得ています。(^ ^;;

 人気を得た一方で、初期のロットではメモリ回りのバグが取りきれていない事や、年が更新されないバグ付きのカレンダ時計 IC「uPD4993」を搭載していた事から、後の PC-9821Xsとの絡みも有り PC-9821自体を忌避するユーザーも増え始めてしまいます。

 少し遅れた 12月に PC-9821Ap2に 2D描画では最高速の Matrox MGA-IIを搭載したグラフィックアクセラレーションボードと 4MBのメモリボード、SCSI接続の CD-ROMドライブを内蔵した最上位モデルの PC-9821Ap2/C9Tが発売されています。このモデルは当初発売の予定が無かったためか、初版の PC-9821Ap2/ As2のガイドブック (取扱説明書) には記載がありません。

NEC PC-9800シリーズ 32ビットパソコン PC-9821Ap2/C9T MGA-II、CD-ROMドライブ内蔵モデル

 これら 486系の機種は 2004年頃まで中古在庫がかなりダブついていて 1万円を大きく割り込む値段で購入できましたが、コンデンサの液漏れによる動作不良で正常に稼働する個体が急速に減り続けている状況で、ハイレゾモードを利用する企業ユーザーの購入が旺盛と言う事も有り 2008年以降相場が上昇し始めています。PC-9800シリーズの MS-DOS資産を活かすためにも 1台用意しておくと良いでしょう。(^-^)

 ちなみに、中古で買う際に注意すべき点は PC-9821Ap2で、PC-9821Ap2/C9Wとして売っているものの中に PC-9821Ap2/C9Tから標準のグラフィックアクセラレータボード A2 (PC-9821A-E11) が抜かれたものがあります。本来の C9Wモデルとは違い、A MATE画面 (640×480ドット、256色) のみでグラフィックアクセラレータ機能は持っていませんので、Windows等を快適に使いたい場合には、別途グラフィックアクセラレータボードを増設する必要があります。

 PC-9821Ap2/ As2のラインナップ

型番 CPU FPU メモリ FDD HDD CD-ROM グラフィックチップ 標準価格 (税別)
PC-9821Ap2/C9T Intel iDX2 66MHz 内蔵 7.6MB 3.5インチ× 1 IDE 510MB SCSI 2倍速 MATROX MGA-II 800,000円
PC-9821Ap2/C9W 5.6MB IDE 510MB SCSI 倍速 S3 86C928 700,000円
PC-9821Ap2/U8W IDE 340MB オプション S3 86C928 580,000円
PC-9821Ap2/U2 3.6MB 3.5インチ× 2 オプション オプション オプション 448,000円
PC-9821Ap2/M2 5インチ× 2 オプション オプション オプション 462,000円
PC-9821As2/U8W Intel i486SX 33MHz オプション 5.6MB 3.5インチ× 1 IDE 340MB オプション S3 86C928 458,000円
PC-9821As2/U7W IDE 120MB オプション S3 86C928 410,000円
PC-9821As2/U2 3.6MB 3.5インチ× 2 オプション オプション オプション 328,000円
PC-9821As2/M2 5インチ× 2 オプション オプション オプション 342,000円

 民生向けに登場した PC-9821Ap2/As2でしたが、コストダウンを兼ねてハードウェアの共通化が推し進められたモデルでもあります。これら二代目 A MATEのハードウェアを採用している 企業向けモデルは以下の物がありました。

 PC-H98の基となった機体のオフィスコンピュータ N5200シリーズは、専用 OSの PTOSとセットで専用モデルを提供していました。NECも低コスト路線に切り替えるため PC-9821Ap2/As2以降は、一般のデスクトップやノートモデルの一つとして専用モデルの提供を終了し、PC型番の PTOSモデルに統合されました。

 もうひとつ、オフィスコンピュータ「システム 7200」シリーズのオフィスサーバとして、OP-98シリーズも、従来は PC-H98ベースのハードウェアでしたが、OP-98X/10W、OP-98X/20Wでは、PC-9821Ap2/ As2と共通のハードウェアになっています。機体前面のロゴが違うだけで、外観、中身は全く同一です。これらのモデルでは、主な OSは A-VXですが、OP-98X/20W以降は Windows3.1や Windows95も正式にサポートするようになりました。

 他には、ワープロであるドキュメントプロセッサ文豪シリーズで、こちらも企業向けにはデスクトップタイプの専用ハードがありましたが、文豪 DP-60から PC-9821ハードウェアと共通化されました。OSは Windows3.1ベースの DP-OFFICEを搭載し、キーボードも文豪と共通の配列の物です。

 一方で新しい用途の開拓と言う意味で新たに登場した店舗向けのストアコンピュータの SC-9821Aシリーズです。ストアコンピュータは端末 (レジスター) とサーバで構成されていて売り上げの集計や商品の在庫管理を一括で行えるシステムです。従来 PC-98のデスクトップをオプションでレジスターとして構成することはできましたが、SC-9821Aシリーズでは専用として提供するものです。OSはストアコンピュータ向けにカスタマイズされた物でベースは PC-PTOSと Windows3.1です。2種の OS毎に 6モデル有り、いずれもハードウェアは PC-9821Ap2/ As2と同じものです。外見は、SC-9821Aのロゴがあり FDDに防塵カバー等がついています。主な OSは PC-PTOSです。

 PC-9821Ap2/ As2は PC-9821Anと共に、社外に OEM供給もされています。主な物は AMADA社の NC旋盤等の制御に使われる AMACOM APシリーズです。この機体は、98ハイレゾボード (PC-9821A-E02)、増設シリアルインターフェース (PC-9801-101) と、ソフトのコピー防止のため AMADA社のハードウェアプロテクト ROMボードを組み合わせた物です。

 これらの事情があり、PC-9821Ap2/ As2 (PC-9821Anも) のマザーボードは 97年頃までの長い間生産が続いていました。

 企業向けモデルの詳細は、企画課 第3回 歴代 PC-98シリーズ一覧 OFFICE/STORE Typeにまとめてありますので興味のある方は参考にどうぞ。

CPUとメモリ

● 搭載 CPU

 PC-9821Ap2に搭載されている CPUは、ベストセラーとなった Intelの 32ビット x86 CPUの iDX2 (66MHz) で、CPUボード (G8PHF) のソケットに搭載されています。データキャッシュメモリを 8KB内蔵し、動作クロック (コアクロック) をシステムクロック (33MHz) の 2倍速に引き上げるクロックダブラーを搭載しているため、従来の 386機や 486機よりも高速な処理を実現しています。
 さらに、コプロセッサも CPUに内蔵されています。コプロセッサは、現在の CPUの浮動小数点演算ユニットにあたり、CPUと共に動作して関数計算などを専門に担当します。当時は、CPU自体が高価だったためオプション扱いでした。

Intel iDX2

● セカンドキャッシュメモリ

 PC-9821Ap2では PC-98の 486デスクトップとしては初めて、非同期 SRAMタイプのセカンドキャッシュを標準で 128KB CPUボード上に搭載しています。また、オプションの「PC-9821A2-B01」で、最大 256KBまで増設できます。
 セカンドキャッシュはデータ転送の高速な CPU内部と速度の低いメモリの間に入って速度の違いを埋めるもので、繰り返し演算で威力を発揮します。セカンドキャッシュの有無での処理速度の差ははっきりと出ますが、容量を増やしてもあまり効果が出ません。

● CPUソケット

 CPUソケットは Socket 3で、DX4ODPと PentiumODP5V83Sに対応しています。また、この機種は、製造時期によりメモリ周りにバグがあるためとセカンドキャッシュの影響で、正式に対応する CPUアクセラレータが非常に少ないです。

 ちなみに、PC-9821As2では、CPUボードに QFPパッケージの i486SX-33が搭載されていて、ODP用ソケット (Socket 3) と、セカンドキャッシュ用ソケットが 2つあります。PC-9821Ap2と PC-9821As2の違いは CPUボードだけなので、PC-9821As2用と PC-9821Ap2用は互換性があります。PC-9821As2ユーザーにとって増設用のセカンドキャッシュメモリボードの入手は難しいですが、128KBのセカンドキャッシュメモリの載った PC-9821Ap2の CPUボードは比較的入手し易いので交換すると云う手も有ります。

● メモリ

 PC-9821Ap2の Windows3.1プリインストールモデルでは、メモリをノーマルで 5.6MB内蔵しています。 FDDモデルでは 3.6MBです。専用のメモリ増設 (親亀) ボード「PC-9821A2-B01」を利用することにより、72pin パリ付き FP (Fast Page Mode) SIMMで、公式には最大 73.6MB (FDDモデルは 71.6MB) まで、非公式では最大 125.6MB (FDDモデルは 123.6MB) まで増設可能になりました。

 なお、PC-9821Ap2/C9Tは、標準でメモリ増設ボードを実装し、ノーマルで 7.6MB搭載、最大で 71.6MBまで増設可能です。

 PC-9821Ap2/As2では、ファストページモードに対応していて従来のメモリよりもデータの読み書きが高速化されています。また、メモリのパリティチェックに対応し、データの読み出しや書き込みにチェックの為のデータを追加してエラーを検出します。これは放射線や宇宙線等の粒子がメモリモジュールの DRAM内部に侵入した時にデータを狂わせる (データ化け) 事があるので、長時間連続稼働させるコンピュータで信頼性を確保するためにに必要なものです。通常は滅多に有りませんが、エラーを検出するとデータを破壊する前にシステムを停止させデータの破壊を食い止めます。
 ちなみに、この機能は DRAMチップやメモリモジュールの不良や故障からデータを保護する機能ではありませんのでお間違えなく。(^ ^)b

補助記憶装置

● フロッピーディスクドライブ (FDD)

 FDDは 3.5インチ FDD搭載モデルでは、PC/AT互換機で一般的な 1.44MBフォーマットに対応した 1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 3モード対応の 2HDタイプ (NEC製 FD1138T) が搭載されています。コネクタは、従来とは異なり電源が一緒になっている 26ピンの特殊なものです。
 コストダウンも有って構造が単純化したため分解清掃時のメンテナンスがし易くなりました。不具合という不具合は有りませんが、経年劣化でモーターの軸が固着してしまったり、ヘッドが微妙にずれてしまったり、コンデンサの液もれで読み書きが不安定になる事例があります。

 5インチモデルでは、1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 2モードタイプ (NEC製 FD1158C) が搭載されています。コネクタは 34ピン、電源は 3.5インチ機器用と同じタイプの小型の物です。フロントマスクを外しやすくする観点から従来の FD1155Dとは違いヘッドを下す際にはボタンを押し込むタイプになりました。これが曲者で FDメディアが完全に奥まで挿入されていない状態や、メディアを挿入しない状態で強く押し込むと奥で金具が曲がってしまい故障してしまいます。メディアを挿入する際には必ず「カチッ」という感触が有るまで奥に挿入した事を確かめてからボタンを押し込むようにしましょう。
 このドライブでは、ヘッドのシールドカバーが脱落する事はなくなりましたが、コンデンサの液漏れでヘッドを動かすモーターが誤動作を起こす事で有名です。

 98MATEでは、VFO (簡単に言えばヘッドの微妙なずれからデータの読み書きを安定させる回路) 回路が本体側に搭載されているので FDDに VFO回路は有りません。

 PC-9821Ap2/U2と PC-9821As2/U2 (3.5インチ)、PC-9821Ap2/M2と PC-9821As2/M2 (5インチ) の FDDモデルでは 2ドライブを、Windowsモデルでは 1ドライブを搭載しています。このモデル以降ファイルスロットを使わなくても専用オプション (後述) で FDDを後から増設して 2ドライブ仕様にすることが出来るようになっています。

 FDDモデルの PC-9821Ap2/U2PC-9821Ap2/M2には、OSは付属しません。

 5インチ FDDは当初メディアの単価が安かったのですが、3.5インチドライブの普及が本格化してメディアの単価が安くなり、記憶容量も 1.44MBと多くなった事から、5インチモデルは徐々に縮小していきます。ちなみに、メディアの記録データの耐久性は記録密度の低い 5インチの方が有利です。もっと言うと 8インチの方が有利です。

 ただし、磁気フィルムの最大の敵はカビで一度カビが生えてしまうとデータの読み出しは不可能でメディアは使用不能になります。仮に拭き取っても読み込む事は出来ません。この様なメディアからデータを救おうと FDDに読み込ませると磁気ヘッドにカビの胞子が付き、他の正常なメディアにカビの胞子を塗りつけ汚染を広げるので危険です。プラスチックのケースに入れておくとカビが生えやすくなるので注意が必要です。

● ハードディスクドライブ (HDD)

 ハードディスク (HDD) 搭載モデルの PC-9821Ap2/U8W、PC-9821Ap2/C9W、PC-9821Ap2/C9Tは、専用固定ディスク I/F仕様でカートリッジタイプの HDDを 1ドライブ内蔵しています。PC-9821Ap2/C9W、PC-9821Ap2/C9Tでは 510MBの Western Digital製 Caviar2540または Conner (Quantumを経て Seagate) 製 CFA540を、PC-9821Ap2/U8Wでは 340MBの Westan Digital製 Caviar2340または Conner製の IDEタイプのドライブ (一台の最大容量 544MB (未フォーマット時) までのものが内蔵可) で Windows 3.1と MS-DOS 5.0A-Hがプリインストールされています。

 HDDは、IDE仕様のドライブを搭載していますが、インターフェース側が厳密に IDE仕様を満たしていない為、全てのIDE機器が使用できる訳では無いのでご注意ください。

 PC-9821Ap2では、従来の SCSI仕様の HDDも内蔵出来ます。ただし、SCSI HDDを使用する際には、専用 SCSI I/Fボードスロットに対応した SCSIボード (PC-9821A-E10など) が必要になります。

 PC-9821Ap2は、筐体が大変凝った作りになっていて両サイドのボタンを押しながら手前に引く事で簡単にフロントマスクが外せるため、HDDの増設や交換が簡単にできます。ただし、ホットスワップには非対応ですのでご注意ください。交換の際は必ず電源を繰る必要があります。

 なお、バックアップディスク等は別売りになっているので、初回起動時に必ずバックアップを取ります。特に、本体内蔵のグラフィックアクセラレータの Windows3.1用ドライバは、Windows3.1製品版には付属が無くサイトからのダウンロードもできないので、ここでバックアップを取らないと再インストール後に使えなくなります。

● CD-ROMドライブ

 CD-ROMドライブ搭載モデルの PC-9821Ap2/C9W、PC-9821Ap2/C9Tには、SCSI仕様で倍速の「PC-CD60F」をファイルスロットに搭載し、SCSI I/Fボードの「PC-9821A-E10」を専用 SCSI I/Fボードスロットに搭載しています。

グラフィック、サウンド機能

● グラフィック機能

 グラフィック機能は、従来の 640 x 400ドット (4096色中 16色: Enhanced Graphic Charger) に加え、98MATE (A MATE) シリーズで新たに追加された、Windows、MS-DOS両方で利用できるプレーンアクセスモードの 640×480ドット (1677万色中 256色: PEGC) を搭載しています。よって、標準でも Windows画面の表示が可能ですが、Windowsを快適に利用するためには、別途グラフィックアクセラレータボード (ウィンドウアクセラレータボード) を Cバスまたは、ローカルバスに増設することをお勧めします。

 他に、PC/AT互換機とは異なり、漢字 ROMを搭載しているため、MS-DOSや BASIC上で、高速な漢字表示が行えます。

 モニター出力の水平同期周波数を 24kHzと 31kHzから選択できます。選択の方法は、電源投入後もしくは、リセットボタンを押してから「GRAPH」 キーと 「1」 (24kHz) または 「2」 (31kHz, デフォルト) を押します。
 ただし、従来の水平同期周波数 24kHzで描画タイミングを調整しているソフトウェアでは誤動作する事があるのでご注意ください。

 Windowsモデルでは、標準で 32ビットローカルバス対応のグラフィックアクセラレーション機能を標準で内蔵しています。PC-9821Ap2/C9W、PC-9821Ap2/U8Wは PC-9821A-E01同等の機能をマザーボード上 (Cバスユニットの下辺りの専用コネクタ) にオンボードローカルバス接続で搭載しています。グラフィックチップに S3製 86C928 (Vision928、Direct Draw対応)を採用、1MBの VRAMを内蔵しています。画面モードは最大 1024×768ドット 256色です。VRAMの増設はできません。

 PC-9821Ap2/C9Tでは、ウィンドウアクセラレータボード A2「PC-9821A-E11」を 第 4スロットに搭載しています。このボードは、当時最高速の MATROX製 MGA-II (Direct Draw非対応) と VRAMを 2MB搭載し、最大 1,280 x 1,024ドットで 1677万色中 256色の表示が可能です。ちなみに、テキスト表示は、ローカルバス最高峰でお馴染みの Canopus製のグラフィックアクセラレータボード「Power Window 964LB」より比較にならないほど速いです。逆に Direct Drawは比較にならないほど遅いです。(^ ^;;

● ハイレゾモードに対応

 オプションの 98ハイレゾボード 「PC-9821A-E02」を増設することにより PC-98RL、PC-98XL、PC-98XA互換のハイレゾモードで、最大 1120×750ドット、4096色中16色の画面を MS-DOS、Windows 3.1で利用できます。なお、PC-H98シリーズ (ハイパー98) の 256色モードは非対応です。ですので、Windows95には対応しません。
 ハイレゾモードでは、MS-DOS画面のフォントが24 x 24ドットの明朝体に変わり、メモリは 128KB減少します。このモードを有効にする場合、ソフトウェアディップスイッチ画面でハイレゾモードを選択します。なお、このモードではメモリマップ等が変わるためハイレゾ対応のソフトウェアやハードウェア以外では正常動作しません。詳しくは、それぞれの機器の説明書でご確認ください。

 また、このボードを増設することによりハイレゾ、ノーマル関係なく本体標準のプリンタポートは使用不可になり「PC-9821A-E02」ボード側のプリンタポートを使います。詳しくは、本体マニュアル参照してください。

● サウンド機能

 サウンド機能は、YM2608チップを内蔵し、PC-9801-86相当の FM音源機能 (FM 6音、リズム 6音、SSG 3音) と PCM録音再生機能を標準で搭載しています。ただし、使用する OSが Windows95の場合は PCM音源再生時に CPUに負荷が掛かり、システムの動作が若干遅くなったり、音飛びしたりするので気になる場合は、故 Q-Vison製「WaveStar」等のサードパーティー製 86互換ボードや、「PC-9801-118」を増設しましょう。なお、サウンドボードを増設する際には予めセットアップメニューでサウンド機能を切り離しておく必要があります。

 EMS方式のメモリを使用する場合は、サウンド BIOSと併用できないので本体のセットアップメニューでサウンド BIOSを無効にします。

 残念ながら ATARI (MSX) 仕様ジョイスティック用コネクタはありませんが、マウス I/Fに変換ケーブル「PC-98DO/P-11」を接続し、再起動することにより使用できるようになります。なお、この場合マウスとの同時使用はできません。

 ちなみに、音源チップである YAMAHA YM2608B (YM2203Cでも可能) のピン配置が分かっていれば、YM2608の足に直接 D-Sub 9pinオスコネクタを配線して増設する方法もあります。「PC-98DO/P-11」の入手が難しく、ネット上に回路図が載っていますが、バスマウスとの同時使用が可能でコストも安いので腕に自信のある方は自己責任でどうぞ。(^ ^;;

インターフェースと拡張スロット

● 本体のコネクタ

位置 種類 形状
本体前部 ヘッドフォン出力 ステレオミニジャック
マイク入力 モノラルミニジャック
本体後部 キーボード ミニ Din 8pin
バスマウス ミニ Din 9pin
アナログ RGB D-Sub 15pin。24kHz、31kHz両対応
LINE入力 ステレオミニジャック
LINE出力 ステレオミニジャック
RS-232Cシリアル I/F D-Sub 25pin, 最高 19,200bpsまで対応。
プリンタ用双方向パラレル I/F アンフェノールハーフ 36pin、変換アダプタ付属。
SCSI I/F アンフェノールハーフ 50pin (C9W, C9Tのみ)

 この中で特に、PC-9801型番等の旧型機とは、プリンタのコネクタが異なるためプリンタインタフェース変換アダプタ (PC-9821-K02) が付属しています。また、MATE X系とでは、アナログディスプレイのコネクタの形状が違うので注意が必要です。

 このモデル以降外付け用 1MB FDD I/Fはオプションになっているのでご注意ください。A MATE用は「PC-9821A2-E02」です。

● 拡張スロット

 拡張スロットは、Cバス (汎用拡張スロット) が 4スロットで、うち下の 2スロットが 32ビットローカルバスと兼用になっています。PC-9821Ap2/C9Tに限りウィンドウアクセラレータボード A2 (PC-9821A-E11)で第 4スロットを占有済みですがボードの交換は可能です。

 32bitローカルバスは、16ビットの Cバスに比べ、バス幅が倍の 32ビットになり、バスマスタ転送に加え供給クロックも上がっているので、より高速に多くのデータのやり取りができます。理論上のデータ転送速度は PCIバスに匹敵します。これに対応するボードは、グラフィックアクセラレータやビデオキャプチャ、98ハイレゾボード等があります。
 ただし、PC-H98/ SV-H98シリーズ用の NESAバススロットとは互換性がまったくないのでご注意ください。ここに挿すと本体や拡張ボードが壊れます。特に、中古品やジャンク品などで、NESAバス用ボードがローカルバス用として間違って売られている場合があります。ご注意ください。(^ ^;;

 専用 SCSI I/Fボードスロットを搭載しています。CD-ROM内蔵モデルの PC-9821Ap2/C9W、PC-9821Ap2/C9Tでは、PC-9801-92同等品の「PC-9821A-E10」を標準で搭載しています。一部のファイルスロット機器や、SCSI仕様の HDDを内蔵する際には、必ずこのスロットに対応した SCSIボード「PC-9821A-E10」や相当品が必要になります。

 なお、PC-9821Ap2/ As2は、Windows95で採用されたリソースを自動で設定する機構のプラグ&プレイ (PnP) には非対応です。PnP対応の Cバスボードは、全て非 PnPモードで設定をする必要があります。

● ファイルスロット

 PC-9821Ap2/ As2では、ファイルスロットが付いており、CD-ROMドライブや HDD、MO (光磁気ディスク)、テープストリーマ、メモリカードリーダ/ ライタ、3.5または 5インチ FDDが内蔵でき、接続はコネクタで行われるためケーブルを繋が無くて良いので必要に応じて入れ替える事が出来ます。ただし、活栓挿抜 (ホットスワップ) には対応していないので交換の際には電源を切る必要があります。
 実際に自分は CD-ROMドライブと FDDを必要に応じて入れ替えて使っています。

本体ディップスイッチの設定

● セットアップメニュー

 PC-9821Ap2にはハードウェアディップスイッチは有りません。内蔵 HDDの切り離し等の設定は、セットアップメニューと言うソフトウェアディップスイッチで設定します。呼び出し方は、電源投入後もしくは、リセットボタンを押してから 「HELP」 キーを押します。

 セットアップメニューで動作速度を変更する際、V30エミュレーションモードでは、640KB以上のメモリは全て無視され 640KB固定になります。100%完全互換では無いので、V30を必要とするソフトウェアや拡張ボードでは、正常動作しない事があるので注意が必要です。
 また、動作モードがハイレゾモードに設定されていると、98ハイレゾボードの有無にかかわらず V30エミュレーションモードは選択できなくなります。

 RS-232Cの通信設定、メモリの容量の変更、起動するドライブの順番変更、初期画面の色の変更などは、MS-DOSの「SWITCH.EXE」等でメモリスイッチの設定を変える必要があります。変更後は、セットアップメニューでメモリスイッチの状態を「保持する」に変更します。バックアップ電池が切れるとこの設定も消えます。
 特に RS-232Cでシリアル通信を行う場合は、必ず送信側と受信側で設定を合わせる必要があります。通信ができなかったりデータ化けする時は、RS-232C I/Fの故障を疑う前にまずこの点をチェックしましょう。常識ですが、念のため。(^ ^;;

● FDD設定ジャンパスイッチ

 フロントマスクを外すと本体前面中央部に FDD設定変更用ジャンパスイッチが有ります。左側が 2FDD内蔵モデル用 (FDDモデルはデフォルト) 、右側が 1FDD内蔵モデル用 (Windowsモデルではデフォルト) の設定です。

● ウィンドウアクセラレータボード A2 (PC-9821A-E11)

 PC-9821Ap2/C9Tモデルに標準装備されているグラフィックアクセラレーションボードのディップスイッチ設定です。

スイッチ番号 機能 ON OFF
1 未使用 (常に ON)
2 未使用 (常に ON)
3 CPUアドレス空間の設定 ON , ON : F0F80000h〜 F0F83FFFh
ON , OFF: F4F80000h〜 F4F83FFFh
OFF, ON : F8F80000h〜 F8F83FFFh
OFF, OFF: FCF80000h〜 FCF83FFFh
4
5 未使用 (常に ON)
6 未使用 (常に ON)
7 未使用 (常に ON)
8 未使用 (常に ON)

● SCSIボードの設定

 CD-ROMドライブ内蔵モデルに搭載されている PC-9821A-E10相当のボードの設定は以下の様になっています。8連ディップスイッチが 2組み、シャンパスイッチが 3個あります。通常は変更する必要は有りませんが、SW5の転送モードを BUFFERモードに変更すると CPUの負荷が増しますが転送速度が向上します。

スイッチ 番号 機能 ON OFF
SW1 1 ボードのSCSI ID番号
デフォルトは ON-ON-ON, ID= 7 (変更禁止)
1 0
2 2 0
3 4 0
4 割り込みレベル
INT0: OFF-OFF-OFF, INT1: ON-OFF-OFF
INT2: OFF-ON-OFF, INT3: ON-ON-OFF (デフォルト)
INT5: OFF-OFF-ON, INT6: ON-OFF-ON
5
6
7 DMAチャネル
DMA #0: OFF-OFF (デフォルト), 設定禁止: ON-OFF
DMA #2: OFF-ON, DMA #3: ON-ON
1 0
8 2 0
SW2 1 ROMメモリアドレスと本体機種の設定
ノーマルモード専用機: OFF-ON-ON-OFF-ON-ON-ON (デフォルト)
¥DC000h〜¥DDFFFh
ハイレゾモード対応機: OFF-ON-ON-OFF-ON-OFF-ON
¥DC000h〜¥DDFFFh (ノーマルモード時)
¥EC000h〜¥EDFFFh (ハイレゾモード時)
2
3
4
5
6
7
8 BIOS ROMアクセス 有効 無効
SW3SW4 I/Oポートアドレスの設定
01-0201-02 CC0h〜 CC4h
02-0301-02 CD0h〜 CD4h
01-0202-03 CE0h〜 CE4h
02-0302-03 CF0h〜 CF4h
SW5 01-02 DMAモード (DMA転送モード)
02-03 BUFFERモード (CPU転送モード)

● CD-ROMドライブの ID設定

 CD-ROMドライブ内蔵モデルに搭載されている PC-CD60F相当のファイルスロット用 CD-ROMドライブの ID設定は以下の様になっています。6連ディップスイッチが CD-ROMドライブの背面に有ります。

スイッチ 番号 機能 ON OFF
SW1 1 SCSI ID番号
デフォルトは OFF-ON-ON, ID= 6
1 0
2 2 0
3 4 0
4 未使用 (常に OFF)
5 SCSIコマンド切り替え (常に OFF) SCSI-1 SCSI-2
6 未使用 (常に OFF)

その他の特徴

 他にこのパソコンの特徴として、筐体が大変凝った作りになっており、簡単にフロントマスクが外せるため、HDDの増設や交換が簡単にできます。

 ちなみに、ドライバーが無くてもコインでネジが回せるため、簡単にルーフカバーが外せるという心憎い工夫もなされています。(^-^)

 そして、最大の特徴として、PC-9821Ap2/ As2には、製造時期により数々の問題があります。(T_T)

CPUのパワーアップ

● はじめに

 さて、だいたいPC-9821Ap2のことが分かったところで CPUの換装です。(^ ^;;) この CPUが載っているソケットは、「Socket 3」と呼ばれ、オーバードライブプロセッサ (ODP) に正式に対応しています。
 PC-9821As2も QFP版の i486SXを搭載していますが、別に ODP用として Socket 3を搭載しています。ただし、CPUソケットでは無いので、ここに通常の CPUを搭載しても正常動作しません。

 CPUの換装では、CPUアクセラレータ、または、オーバードライブプロセッサ (ODP) を使います。通常の CPUと交換する方法も有りますが、iDX2以上の性能を持つ物は動作電圧が異なるので電圧を変換するソケット (下駄) が別に必要になります。CPUアクセラレータを入手した方がコストが安いです。
 ただし、購入する場合は、PC-9821Ap2に正式に対応しているものを選びましょう。特に、486機用アクセラレータでは、CPU内蔵キャッシュメモリのライトバック動作とセカンドキャッシュメモリの相性が悪い事が多く、メルコ (バッファロー) 製の「HAS-33QP」(Am486DX5 133MHz搭載) では、PC-9821Ap2標準装備のセカンドキャッシュメモリの影響で対応機種から外されています。

 なお、対応機種から外れている CPUアクセラレータを使うと保証から外れるのでご注意下さい。特に、PC-9821Ap2/ As2では、メモリ周りのバグにより機体個々の状況によって正常に動作しない場合があります。詳しくは注意事項をお読みください。

 ここで、実際に使用したものは、Intel製の DX4ODPと PentiumODP (PODP5V83S)という ODP二種と、I-O DATA製「PK-A586/98」です (仕様は以下の表参照)。これらの製品は全て生産終了です。「PK-A586/98」も長いことカタログに載っていましたが、1999年 7月についに消えました。と云うよりは、A MATE自体カタログのメモリ対応一覧表から消えました。(T_T)

 ちなみに、ODP、OverDriveProcessorは Intel社の登録商標です。混同しないように注意しましょう。(^ ^;;

PC-9821Ap2/ As2で動作を保証している製品の代表例 (コプロセッサは全て CPU内蔵。◎:正式対応。○:保証外で使用可能。×:使用不可)

メーカー 商品名 種類 クロック
倍率
動作
クロック
搭載
CPU
内部
キャッシュ
対応機種 価格
Ap2 As2
NEC PC-9821A-E04/L ODP 2倍 66MHz Intel iDX2 8KB 21,800円
PC-9821-E02 3倍 100MHz Intel iDX4 16KB 27,800円
PC-9821-E03 2.5倍 83MHz Intel Pentium (P24T) 32KB 39,800円
Intel DX2ODP ODP 2倍 66MHz Intel iDX2 8KB  
DX2ODP (R) 2倍 66MHz Intel iDX2 8KB ×  
DX4ODP 3倍 100MHz intel DX4 16KB  
DX4ODP (R) 3倍 100MHz intel DX4 16KB ×  
PODP5V83 S 2.5倍 83MHz intel Pentium (P24T) 32KB  
メルコ/ バッファロー CPUアクセラレータ HAS-33T 3倍 100MHz Intel iDX4 16KB 46,000円
HAS-33TP 3倍 100MHz Cyrix Cx5x86 16KB  
HAS-33QP 4倍 133MHz AMD Am5x86P75 16KB 24,800円
I-O DATA CPUアクセラレータ PK-A586/98 4倍 133MHz AMD Am5x86P75 16KB 24,800円

 メルコ (バッファロー) 製品は、セカンドキャッシュとの併用を保証していません。標準でセカンドキャッシュを搭載している PC-9821Ap2では非対応となっています。PC-9821As2は対応機種に含まれますが、セカンドキャッシュを増設すると保証外になります。ご注意ください。

● DX4ODPについて

 DX4ODP (NEC純正品型番、PC-9821-E02) は、iDX2と iDX4では動作電圧が前者が 5V、後者が 3Vと違うのでそのまま載せかえると壊れてしまいます。そこで、iDX4に電圧変換機構を組み込み冷却用にヒートシンクを付けたもので、それ以外は元の iDX4と同一です。

 なお、DX4ODPには、(R) が付く物と、付かない物があります。(R) と言うのは、CPU置き換え型 (Replace) を表し、PC-9821Ap2で動作保証があるのは (R) の方です。CPUを交換できない PC-9821As2では無印の方を使います。PC-9821Ap2ではどちらでも動作しますが、PC-9821As2では (R) が付く物は正常動作しませんので購入の際にはご注意ください。

● PentiumODP5V83Sについて

 一方、PentiumODP5V83S (NEC純正品型番、PC-9821-E03) は、第 5世代 CPUの Pentiumを搭載していますが 搭載されている Pentium (P24T) は元の Pentium (P5、P54C) とは随分違うものです。まず、動作電圧が、iDX2が 5V、Pentiumが 3.3Vと違うので、電圧変換機構が組み込まれています。

 次に、486系とは、32ビットと 64ビットで外部データバスの幅が違うので、そのまま載せ換えることは不可能です。そこで、ODPにバス変換機構が内蔵されています。また、バス変換機構を組み込むとデータの変換の際に、どうしてもそこでウェイトが入ってきてしまいます。そこで、内蔵キャッシュメモリ容量を倍の 32KB搭載し、変換のロスをある程度カバーできるようにしています。

 さらに、内蔵キャッシュメモリのライトバック制御 (キャッシュメモリのデータを書き換え、結果をメモリに渡すことで遅いメモリアクセスを減らす) により、BIOSがこの機能に対応する本体では、更なる高速化ができます。Windowsを使う場合、486系の本体では、ライトバック動作をさせた PODP5V83Sが最適だと思います。

 なお、PC-9821Ap2では、PODPV83Sを載せる際に不具合が発生する可能性があるので注意が必要です。これは後で説明します。また、PC-9821Ap2はライトバック非対応 (ライトスルー) なので、PODPの全ての能力を引き出すことができません。ライトスルーでは、整数演算処理能力と浮動小数点演算処理能力が 2割ほど落ちてしまいます。

 ちなみに、強制的にライトバック動作をさせることも改造により可能ですが、FDDや HDDのデータが壊れるなど DMA転送時にキャッシュメモリとメインメモリとの間でデータの不整合が起きて問題が発生するので、やめたほうが良いでしょう。(^ ^;;

 最後に、PODP5V83には、Sタイプと Kタイプがあります。両者の違いは、Kタイプには、ODPに薄い基板が取りつけられていて、Sタイプにはそれがありません。Kタイプは、PC-9821Xs、Xe専用で、それ以外では、Sタイプを使います。Kタイプを入手した場合でも PODPの基板を外せば Sタイプとして使えます。

● PK-A586/98 について

 PC-9821Ap2/ As2のようなライトバック非対応機の場合、I-O DATA製の「PK-A586/98」という CPUアクセラレータが最強となります。これには、QFP (CPUの周囲に足が出ているタイプ) パッケージの AMD (Advanced Micro Device) 製 Am5x86-P75を搭載し、DX4ODPや PODP5V83Sより高速です。枝番の P75とは、対 Pentium比で 75MHz相当の意味を表します。なお、実際の動作クロックは 133MHzです。

 また、「PK-A586/98」では、ライトバック制御に必要なキャッシュコントローラをハードウェア上で制御しているので、MS-DOSや Windows95以外の OSでも高速で動作させることができます。
 さらに、これらの製品の中で唯一セカンドキャッシュとの併用を許可しています。ただし、1999年 6月現在、すでに生産終了で店頭在庫のみとなっていて入手は困難ですが、こちらをお勧めします。中古では、4,000円前後といったところです。

 なお、類似の物に「PK-A586/DV」がありますが、これは PC/AT互換機専用です。下駄に搭載されているキャッシュコントロールプログラムの影響で PC-98では正常動作しません。外見からは判断しにくいのですが、裏の丸いシールの色で見分けがつくそうです。緑が PC-98、黄色が PC/AT互換機用だそうです。

● CPUの換装

 さて、ODP、CPUアクセラレータ共に取り付けは非常に簡単です。ルーフカバーを開け、向かって左側に有る CPUボードとメモリボードの上にある金属製の蓋を外し、向かって手前側に付いている CPUボード取り出します。PC-9821Ap2は「G8PHF」、PC-9821As2は「G8QAR」です。

PC-9821Ap2の CPUボード「G8PHF」

 取り出したら、ヒートシンクと標準の i486DX2を外してから、CPUソケットには必ず 1ピンの印があるので、これに CPUの切り欠きを合わせるように向きに注意 (間違って挿すと、CPUや PCが壊れます) して、ソケットに ODP、CPUアクセラレータ本体を取り付けレバーを下ろして固定します。

 取り付けた後、CPUボード、ルーフカバー等を元通り取り付け、電源を入れて「ピポッ」と鳴れば成功です。今までが嘘のようにとはいきませんが高速に動作します。(^-^)

 なお、キャッシュコントロールユーティリティーは、ODPでは、PODPであっても制御の仕方が Intel製の 486系 CPUと同じライトスルーなのでインストールする必要はありません。
 また、「PK-A586/98」でもアクセラレータ上でキャッシュを制御しているのでインストールする必要はありません。

● 結果

 最後に、これらの ODPや CPUアクセラレータを使って MS-DOS Ver 6.2上と Windows95上でベンチマークを取ってみましたので参考にしてください。使用ソフトは、I-O DATAの「INSPECT Ver 1.03」と「HDBENCH Ver 2.420」です。

  CPU 動作倍率 動作周波数 Dhrystone(点) Whetstone(点) 総合(点)
i486DX2 i486DX2 2倍 66MHz 21276 18775 24940
DX4ODP iDX4 2倍 100MHz 31578 27925 37080
PODP5V83S Pentium (P24T) 1.5倍 83MHz 36585 41322 44760
PK-A586/98 Am5x86P75 3倍 133MHz 43478 37735 50940

 参考までに、「INSPECT Ver 1.03」のデータベースでは、ノーマルの PC-9821Af (Pentium 60MHz) が総合で 40000点です。 Windows 95上では、次のようになりました。

★ ★ ★ HDBENCH Ver 2.420 ★ ★ ★
使用機種 PC-9821Ap2/C9T
Processor
解像度 640x480 256色(8Bit)
Display [X]スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821 シリーズ)
Display ウィンドウ アクセラレータ ボード A2 (Matrox)
Memory 47,540KByte
OS Windows 95 4.0 (Build: 950)
Date 1999/ 7/23 17:56

SCSI = MIDORI ELEC. SCSI-2 I/F MDC-926Rs(PnP-OFF)
HDC = スタンダード IDE ハード ディスク コントローラ

A = GENERIC IDE DISK TYPE00
B = GENERIC NEC FLOPPY DISK
C = GENERIC NEC FLOPPY DISK
D = NEC CD-ROM DRIVE 4 M Rev 1.0

  ALL Text Scroll DD Read Write Cache Drive 備考
i486DX2 1466 1787 2794 1362 287 998 22 0 1469 1487 2989 A:10MB GA: Standard display
HDC: Standard IDE
DX4ODP 2064 2648 4947 1626 436 1165 22 0 1495 1525 4716 A:10MB GA: Standard display
HDC:Standard IDE
PODP5V83S 4172 4149 4858 9719 2855 6555 215 1 2644 2387 3540 A:10MB GA: PC-9821A-E11
HDC: IDE-98
PK-A586/98 4898 3784 5542 10857 3456 10396 215 2 2819 2121 3658 A:10MB GA: PC-9821A-E11
HDC: IDE-98

 測定当時、メモリは純正品で 47.6MBに増設していました。現在の機器の構成については、電算機管理室の項を参照してください。

 感想としては、DX4ODPと PODP5V83では、両者とも Intel純正 ODPということもあり、非常に動作が安定していますが、動作クロックが 66MHzから 83MHzまたは、100MHzと少ししか上がっていないので Windows95上ではあまり変化は感じられませんでした。MS-DOS上では、動作クロックがものを言うため、 DX4ODPの方が動作クロックが速い分高速に感じました。
 また、 DX4ODPと PODPでは、PC-9821Ap2はライトバック非対応ということもあり、後者の浮動小数点演算が速いですが、差はほとんど感じられませんでした。

 一方、CPUアクセラレータの 「PK-A586/98」では、PC-9821Ap2でも CPU内蔵キャッシュメモリのライトバック動作が可能なので動作が機敏になったように感じました。PC-9821Ap + EUA-QPとの INSPECTの数値の比較では確かにライトバックが有効 (CPUIDから調べる事も可能、モデル No.が「F」ならライトバック) になっているようです。ただ、CPUの発熱は QFPタイプといえどもそこそこあり、冷却が小さいヒートシンクのみなのでその点が少し気になります。(^ ^;;

メモリの増設

● はじめに

 さて、CPUアクセラレータを使って高速化したら、さっそく、メモリを増設しましょう。メモリの増設の方法は、Ap2専用メモリボード (親亀ボード) を使い、ボード上の 4カ所の空き SIMMスロットに、72ピンでパリ付きの FP (ファーストページ) SIMMで増設します。
 これら、メモリ専用ボードでは、NEC純正の 「PC-9821A2-B01」やメルコ製の 「EACシリーズ」、I-O DATA製の 「AP34シリーズ」があります。

● メモリ専用スロット用メモリ

純正「PC-9821A2-B01」とメルコ製「EACシリーズ」

 NEC純正ボードや「EACシリーズ」は、直接ボード上にメモリが 4MB (EAC-8Mは 8MB) 載っており、公式には 16MBまでのパリ付きの FP SIMM 4枚で容量を 73.6MBまでとなっていますが、実際には 32MBの SIMMも認識できます。

SIMMを斜めに挿すメルコ製 EAC

 これらのボードには SIMMを斜めに取り付けるため、背の高い 32MBの SIMMが装着できます。ただし、4つのスロットの全てに、32MBの SIMMを取り付けると、BIOSにより最後の 16MBが無視されるので 32MB×3 + 16MB増設し、ボード上の 4MBとマザーボード上の 5.6MBと合わせて最大 121.6MBまで (EAC-8Mでは 125.6MBまで) 増やすことができます。
 なお、PC-9821Ap2/C9Tには標準で「PC-9821A2-B01」が実装済みなので、改めてメモリボードを用意する必要はありません。ボード上の 4MBとマザーボード上の 3.6MBと合わせて最大 119.6MBまで増やすことができます。メモリボードを EAC-8Mに交換すれば、限界の 123.6MBまで搭載可能です。

I-O DATA製 「AP34シリーズ」

 一方、I-O DATA製の「AP34シリーズ (下の画像) 」では、親亀ボード上に 4〜16MBの SIMMが載っており、パリ付きの FP SIMM 4枚で容量を 81.6MBまで増やすことができます。ただし、こちらは、SIMMを垂直に装着するので、背の高い 32MBの SIMMは、CPUボードに接触し、装着できない場合があるため、保証外になっています。なお、32MBの SIMMでも背の低い SIMMであれば、問題無く使用できます。

SIMMを垂直に挿す I-O DATA製 AP34

 ちなみに、PC-9821Ap2の場合は一旦 CPUボードも外し、背の高い SIMMを挿した AP34を先に本体に取り付け、後から CPUボードを取り付ければ、ぎりぎり装着できます (下の画像参照) 。PC-9821As2の場合は CPUボードの裏に QFPの i486SX-33が取り付けて有るのでこの CPUを剥さない限り不可能です。(^ ^;;

AP34と背の高い SIMM

代表的な PC-9821Ap2/ As2専用メモリ (親亀) ボード

メーカー 製品名 容量 標準価格(税別) 備考
NEC PC-9821A2-B01 4MB 36,000円
メルコ EACシリーズ 4MB, 8MB 19,800円
I-O DATA AP34シリーズ 4MB, 8MB, 16MB 35,000円  SIMMの高さ制限あり

 残念ながらメモリ専用ボードは 1999年 10月現在、純正品以外は生産終了で手に入れるには中古在庫を探すしか有りませんが、個体数は多くネット上では見つかり易いです。価格は動作未チェックのもであれば 1,000円〜 2,000円程度です。

● パリ付き 72ピン FP SIMM

 PC-9821Ap2/ As2で使用できる SIMMは、パリティチェック (パリ) 付き 72ピン FP SIMMです。パリ無しのを装着すると起動時に「PARITY ERROR」が出て起動しません。PC-9821正式対応品を選ぶのがベストですが、規格化されているのでよほど変わった構成で無い限り PC/AT互換機用、Mac用でも使用できます。

Buffalo EMF-32M

 パリ付きメモリとパリ無しメモリの見分け方はチップの個数で見分けます。パリ無しはチップ 2個で一組み、パリ付きはチップ 3個で一組です。一枚の SIMMに DRAMチップが 8個載っている物は 2×4 = 8でパリ無し、DRAMチップが 9個載っている物は 3×3 = 9でパリ付きです。稀にパリティビット付きの DRAMがありますが、その場合は 2個一組になります。

 似た SIMMメモリに PC-9801-61及び互換 SIMMがありますが仕様が違うので動作しません。ECC付き EDO SIMMは、一見正常動作するように見えますが、MS-DOSの画面描画が乱れると云った不具合が出る事があります。EDOか FPの大まかな見分け方としては、DRAMチップの型番の初めの 4〜 7桁の数字の並びの末尾が「05」の物はほぼ EDO DRAMです。
 同じパリ付き FP SIMMでも NECの PC-9821XA-B01/ B02は正常動作しない事があります。他に駄目な例として、サーバ用メモリで 72ピン SIMMに似て非なる 144ピンのメモリも有りますのでご注意ください。

 SIMMには、PC/AT互換機用でよく見かける端子が銀色のシルバーコンタクトと金メッキの物があります。どちらでも構いませんが、SIMMソケットが金メッキの場合は、異種金属同士を接触させるとノイズが発生する事があるので金メッキの方を選ぶとノイズの影響を受けにくくなります。他にも SIMMにはモジュールの高さがまちまちです。I-O DATAのメモリボードを使用する際には、高さ制限がありますのでご注意ください。

 FPM対応 DRAMチップには 60nsの物と 70nsの物がありますが、 PC-98に於いてはどちらを使ってもデータ転送速度が速くなるといったメリットは有りませんし、両者が混在しても動作に大きな影響は有りません。ほとんど存在しませんが、64Mビット DRAM搭載の物は PC-9821Ap2/ As2では正常に容量を認識しません。

 メルコ (バッファロー) 製の一部の SIMMに搭載されているパリティジェネレータとは、本来必要なパリティチェック用 DRAMを搭載せずに、代わりにパリティチェック用のデータを生成するチップを装着して起動時にエラーで弾かれないように細工したものです。当時 DRAMチップが高かったので価格を安く抑えるためこの様な技術が登場しました。この SIMMを利用する場合は、パリティジェネレータ搭載の SIMMで統一する必要があります。パリ付き SIMMを混入すると正常動作しない場合があります。

代表的なメモリサブボード (パリ付きの 72ピン FP SIMM)

メーカー 製品名 容量 枚数 標準価格(税別) 備考
NEC PC-9821A-B02L/ B03L/ B04L 4〜16MB 1枚 30,000〜140,000円
SV-98/2-B01/ B02 16〜32MB 1枚 160,000〜330,000円
PC-9821BF-B01 32MB 1枚 310,000円
メルコ/
バッファロー
EMF 8〜32MB 1枚 5,000円〜21,000円
EMW 16〜64MB 2枚 8,000円〜42,000円
EMF-P 8〜32MB 1枚 4,000円〜19,800円 パリティジェネレータ搭載
EMW-P 16〜64MB 2枚 6,000円〜37,800円 パリティジェネレータ搭載
I-O DATA NE-SIMXA 16〜64MB 2枚 オープン価格
NE-SIM36 32MB 1枚 14,000円

 パリ付き 72ピン FP SIMMは店頭での入手は中古品でもほぼ不可能です。一時期 16ビット DRAMの需要が減っために価格が高騰したことがありました。2012年現在は、ジャンク品で有れば数百円で買えますが、動作チェック済みの物は 1,000円から 2,500円程度とやや高めです。

● セカンドキャッシュメモリ

 セカンドキャッシュメモリは、簡単に言うと高速で動作する CPUの内蔵キャッシュメモリと CPUから見て遅いマザーボード上のメモリの間のデータ転送速度の差を埋めるものです。x86系 CPUでは第 4世代の i486から正式にサポートされるようになりました。PC-9821Ap2では標準で 128KB搭載し PC-9821As2ではオプションです。どちらの機種も 128KBのサブボードで最大 256KBまで増設できます。セカンドキャッシュメモリの有る無しでは、処理能力が体感で分かるほど違います。無い場合は 128KBでも良いので増設することをお勧めします。

 ただし、すでに 128KB搭載している場合は、あえて追加増設する必要はありません。256KBまで増やしてもほとんど処理速度に違いが出ず投資の割に効果がありません。これも今や、全て生産終了で手に入れるには中古在庫を探すしか有りませんが、見つけることは難しいでしょう。

 PC-9821As2を使用している場合は、セカンドキャッシュメモリを初めから 128KB搭載している PC-9821Ap2の CPUボードと交換すると云う手も有ります。PC-9821Ap2/ As2はコンデンサの不良が原因で廃棄される本体が多く、セカンドキャッシュ単体で探すよりも見つかりやすいです。

代表的なセカンドキャッシュメモリサブボード

メーカー 製品名 容量 標準価格(税別)
NEC PC-9821A2-B02 128KB 30,000円
メルコ/ バッファロー ECA-128J 128KB 19,800円
I-O DATA NE-AP 128KB 24,000円

PC-9821Ap2のバグ

● カレンダーのバグ

 PC-9821Ap2/ As2には有名な 2つの欠陥があります。まず一つ目はカレンダ時計 ICの「NEC uPD4993」のバグで、年を越す瞬間に、電源が入っていないと年数に 1が加えられず 1998/12/31 → 1998/1/1となってしまうことです。現在、NECから MS-DOS、Windows対応の対策ソフトが出ていますが、最も確実なのは、MS-DOS等で日付を設定し直すことです。
 また、どうしても気持ちが悪い、MS-DOSと WIndows以外の OSを使用していると云うのであれば、NECに交渉して中古であっても無償で改修してくれるそうです。カレンダ時計 ICは電源ユニットの下、バックアップ電池の近くに有ります。チップの型番が「NEC uPD4993A」で有ればバグ無しです。

 改修後は、カレンダ時計 ICがバグの無い「NEC uPD4993A」に換わります。

 なお、カレンダーバグのメリットとしては、永久に 2000年問題 (死語) がやってこない、期限付き体験版ソフトがずっと使える等があります。(^ ^;;

● メモリ周りのバグ

 もう一つのバグとして、メモリ周りのバグで、

  • 製造番号の先頭 2桁が 40, 41, 42, 43, 44である
  • メモリを増設している
  • セカンドキャッシュメモリを搭載または増設している
  • PentiumODPを搭載している

 という条件がそろった場合に、ハングアップしたり、正常に動作しなくなる事が起こると云うものです。この症状は、特に、セカンドキャッシュを増設すると強く影響が現れ、PentiumODP以外でも I-O DATA製 「PK-A586/98」でも動作が怪しくなることが有ります。原因は、メモリ周りの電源供給不足によるノイズの影響と考えられます。
 自身の経験では、セカンドキャッシュメモリの容量が 128KBの場合には「PK-A586/98」は正常に動作していましたが、256KBに増設すると動作が不安定になり、Windows95が起動しなくなる事が有りました。

 ただし、これは非常に微妙な問題で確実な物ではなく、これらの条件全てが該当していても症状が現れない個体もあります。この様な不具合が起こり得るので、サードパーティー製の CPUアクセラレータでは、対応機種から PC-9821Ap2を外したり、PC-9821As2の様な対応機種で有ってもセカンドキャッシュメモリとの併用を認めていなかったりします。

 なお、これについても、NECでは中古であっても無償で改修して貰えるので、この症状が出て困る場合は、メーカーで修理して貰いましょう。ちなみに、所有する本体では大丈夫なのか気になる場合も NECでは症状の判定をしてくれるそうなので、相談すると良いでしょう (2004年で PC-98のサポートが終了しているため、現在対応してくれるかどうかは不明です)。

 マザーボードの改修を受けると、ICチップに数個のタンタルコンデンサが追加されます。下がその画像です。左が未改修のマザーボード、右が改修を受けたマザーボードです。

PC-9821Ap2未改修マザーボード PC-9821Ap2改修マザーボード

 現在手もとの改修を受けたマザーボードでは「PK-A586/98」 + セカンドキャッシュ 256KBでもトラブルがなく正常に動作しています。(^-^)

 ちなみに、製造番号 46以降の後期マザーボードでは、パターンの設計が変更され初めからタンタルチップコンデンサが追加されています。

内蔵ハードディスクの換装

● はじめに

 PC-9821Ap2/ As2の Windowsモデルでは使っているうちに容量が足らなくなりより大きい容量のドライブに交換したいと思う事も有ると思います。また、HDD故障で交換という事も有るでしょう。そこで、今回は、PC-9821Ap2/ As2の様な旧式の専用固定ディスクインターフェース搭載モデルで HDDを交換する際の注意事項をまとめておきます。
 なお、SCSI仕様の HDDへの交換や SCSIのスルー化については PC-9801FAネタのSCSIボードのスルー化 その 2Cバス SCSIボードで SCSI機器の内蔵 PC-9801FA編、企画課の第4回 PC-98 Cバス SCSIボードの活用を参考にしてください。

● HDD交換時の注意点

 交換するドライブは、古いタイプの物で大容量のドライブは、消費電力が高い物があります。極端に消費電力が高いドライブに交換すると、拡張ボードをフルに実装した状態では電力供給不足で HDDの動作が不安定になったり、電源ユニットが故障する事がありますのでご注意ください。交換して動作が怪しい時は外付けケースに入れて繋いでチェックしてみてください。そこで異常がない場合は、電源容量不足が考えられます。

 HDDカートリッジ (通称:籠) には IDEタイプと、SCSIタイプの二種類があります。98MATEでは両方とも使用可能です。両者の見分け方はカートリッジの背面を見たときに、カードエッジがカートリッジから外へ飛び出している物が IDEタイプ、飛び出して居ないのが SCSIタイプです。

 換装できる HDDは、基本的には PC-98または AT互換機用のIDE仕様で、容量が未フォーマット時に 544MBまでのドライブです。544MB以上 4.56GB未満のドライブは接続してもハングアップしませんがシェアウェアの IDEドライバが無いと正常に動作しません。4.56GBを超えるドライブを接続するとメモリカウント後にハングアップします。2012年現在、新品で入手することはまず不可能なので、コンパクトフラッシュや SDカードを流用する手も有ります。企画課第6回 PC-98の SSD化を参考にどうぞ。

● HDDの初期化

 HDDを初期化する際は、以前 PC/AT互換機で使用されていたドライブの場合、MS-DOS起動時にハングアップする事があります。この様な場合は、Windows95、Windows98の起動ディスクを使用して「DISKINIT」で初期化し、「FDISK」で領域確保、「FORMAT」でフォーマットする回避できます。

 交換後は、FDから MS-DOSを起動し HDDを「FORMAT」コマンド等でフォーマットします。正常に初期化、領域確保が終われば終了です。

● 544MB以上の HDDを使うには

 一番簡単な方法は、I-O DATAの IDE-98を使用する方法です。これを使用すると 8.4GBまでのドライブが使用可能になります (後述)。

 ROMライタをお持ちの方は、ITF ROMを修正したり、SCSIや NIC等の BIOS ROMにパッチを当てる事で大容量ドライブを使用する事が可能になるという方法も有ります。大熊猫氏の「大熊猫のぺぇじ」や、まりも氏のサイトが詳しいので参考にしてください。通信課のリンクよりどうぞ。

Cバス E-IDEボードで IDE機器の内蔵 A MATE編

 HDDの交換は、自己責任で行ってください。SCSIタイプではある程度規格がはっきりしているのであまりトラブルはありませんが、98の IDE HDD接続用端子 (正式には、内蔵固定ディスク端子) は、独自のものなので、HDDによっては動かなかったり、認識しなかったりする場合があります。動かなかったとしても仕様なので当研究所やメーカーに文句を言わないでください。
 また、IDE-98は PC-9821An/ Ap2/ As2/ Ap/ As/ Aeには非対応です。保証期間内であっても保証外となる他に、データの破損や何の前触れもなくいきなり不安定になって最悪壊れることも考えられますので、重要なデータは、常にバックアップを取る等、十分ご注意ください。こちらも自己責任でお願いします。詳しくは
注意事項をお読みください。

● はじめに

 ここでは、IDE-98を使った内蔵ハードディスクの換装について紹介します。

 PC-9821Ap2の専用固定ディスク I/Fでは、1ドライブ辺り 4.56MB (未フォーマット時) までの HDDが接続できますが、544MB (未フォーマット時) を越えるドライブについては、BIOSの制限によりそのままでは本体で認識できずに使用できません。この場合には、ここでは詳しく述べませんがシェアウェアの IDEドライバを利用すれば制限をクリアできます。

 しかし、PC-9821Ap2の専用固定ディスク I/Fは、転送速度が遅く IDE仕様の HDDを 1ドライブしか接続できません。その二つをクリアする方法として、I-O DATA製のCバス対応 Enhanced IDE I/Fボード IDE-98を使う方法があります。初代及び二代目 A MATEでは HDDを内蔵するスペースの問題で正式には対応していませんが、保証外で使えます。

 この IDE-98を使うと、8.3GB (未フォーマット時) までの HDDドライブが 4台接続できるようになり、ディスクアクセスも高速になるのでお勧めです。ATAPI仕様の CD-ROMドライブもドライブによっては保証外ながら接続できます。さらに、外付け HDD用 I/Fがついているので、同社製の「HDPシリーズ」や、一部の i-Connect対応製品が接続できるのでお勧めです。

 A MATEでは HDDの固定と電源供給のために A MATE用ハードディスクユニット (IDE籠または、SCSI籠) が必要になります。ちなみに、PC-9821Ap2/U8W、C9W、C9Tモデル等に搭載されている IDE枠の方がケーブルの引き回しがしやすくて便利です。
 なお、2000年 9月現在、カタログ落ちしたので、流通在庫のみとなっています。今の所、手放す方が少ないので中古でもなかなか見つけづらく値段も高価です。

● 必要なパーツと手順

 まず、必要なものは、IDE-98、IDEケーブル、IDEタイプのハードディスク、IDE籠 (枠) です。あらかじめ、IDE-98をスロット# 1に挿し、正常に使えるように割り込みなど、各種設定をしておきます。

 次に、フロントマスクを外して HDDカートリッジ (IDE籠) を取り出します。IDE籠の前後合わせて 4本のねじを外して IDE籠の向かって外側の蓋を外します。IDE枠ではその蓋部分が元から無いので必要ありません。そうしたら HDDに繋がっている電源、信号線の各ケーブルを外し HDDを取り出します。このとき、一旦、IDE籠内の小基板を外すと操作がし易くなります。

 HDDを取り出したら、新しい HDDの設定 (マスタ、スレーブ等) をジャンパ等で行い、この HDDに電源、IDEの各ケーブルを取り付け、ねじで固定します。続いて、IDEケーブルを傷つけないように IDE籠を取り付け (ケーブルは籠とフレームの隙間から引き出す)、HDDからのケーブルを IDE-98に繋ぎます。
 ここで、もう一度各コネクタ、HDDの設定等を確認します。良ければ、本体の電源を入れ、IDE-98の BIOSでドライブが正常に認識されている事が確認できればひとまず OKです。

● HDDの初期化

 後は、新しい HDDの場合には、FDから MS-DOSを起動し HDDを「FORMAT」コマンド等でフォーマットし、正常に初期化、領域確保が終われば終了です。これで容量が増え、シーク時間も短縮できます。

 ちなみに、すでに HDDに OSがインストールしてある場合でも、特にフォーマットしなくても、IDE-98側に繋ぎ換えるだけで問題は無いようです。

● アクセスランプについて

 以上の操作で HDDを換装できた訳ですが、そのままでは本体の HDDアクセスランプが点灯しません。点灯させる方法は、IDE-98のボード上の IDEコネクタの 39ピン (-IDEACT) と本体側の専用固定ディスク I/Fの 39ピン同士を適当なビニール線等で接続すれば OKです。これで本体のアクセスランプが点灯するようになります。

● HDDを 2ドライブ以上内蔵する場合

 IDE-98が有ればファイルスロット用 SCSI籠やノート用の 2.5インチドライブと 3.5インチ変換アダプタを利用する事でうまくスペースが確保できれば、A MATEでも IDE仕様の HDDを 2ドライブ以上内蔵できます。3.5インチ変換アダプタを利用する場合は、電源分岐ケーブルが必要です。

グラフィックアクセラレータ「Matrox MGA-II」の解像度を増やす

 この方法では、「system.ini」等の Windows95を動かすために重要なシステムファイルを書き替えるので事前に必ずバックアップを行っておいてください。なお、画面が表示され無くなったり、データの破損や動作が不安定になったりしてもこちらに文句を言わないでください。また、この件についてメーカーに問い合わせたりしないでください。全て自己責任でお願いします。m(_ _)m

● はじめに

 PC-9821Ap2、PC-9821An等の C9Tモデルに搭載されているグラフィックアクセラレータボード「PC-9821A-E11」は、640×480、1024×768、1280×1024ドットの 256色と 640×480、1024×768の 32bitフルカラーモードにしか対応していません。この画面モードを DirectX3以降のドライバをインストールしていれば、設定ファイルに細工をすることで増やすことができます。他に、標準で MATOROX製 MGA-IIグラフィックチップを搭載している機種 (PC-9821Xa、 PC-9821Xt等) でも同様に画面モードが増やせます。

ウィンドウアクセラレータボード A2「PC-9821A-E11」

 ただし、S3製 Vision928搭載する U8W、C9Wモデルではこの手は通用しないのでご注意ください。なお、搭載するチップが Vision928の場合や C9Tモデル以外の機種では「PC-9821A-E11」を増設すれば可能になります。

● DirectX3以降のインストール

 まず、予め DirectX3以降をインストールしておきます。 DirectX3以降では PC-9821A-E11用の DirectDraw対応ドライバにハイカラー (65535色) モードが追加されています。ここでは、 Windows95のバージョン 4.00.950a (OSR1)と DirectX5の組み合わせについて書きます。

● infファイルの書き換え

 Direct Xをインストールしたら、「マイコンピュータ」→「表示」→「オプション」の「表示」で「すべてのファイルを表示する」にチェックを入れて全てのファイルを表示するように設定します。

 Windows95の Windowsフォルダの中にある infフォルダに、「oemx.inf」が追加されます。「x」は通し番号で環境によって変わります。OSR1では、後から追加された infにはすべて 「oemx.inf」と言う名前が割り振られるので、下の書き換えセクションの項目を見て、必要なデータが入っているものを選び出して下さい。そうしたら、これを書き換えるので、適当な場所にコピーして名前を「dxnmga.inf」としておきます。

 コピーが出来たらコピーした infファイルを書き換えます。このファイルはテキスト形式になっているのでメモ帳やテキストエディタで開きます。このファイルは、グラフィックアクセラレータの情報を Windows 95に追加するための設定ファイルなので、このファイルに PC-9821A-E11で Windows 95上で 800 x 600ドット、65535色などを使えるようにする設定を追加します。具体的には、[NECMGA2.AddReg] のセクションに以下の部分を付け足します。

[NECMGA2.AddReg]

HKR,"MODES\8\800,600"
HKR,"MODES\16\640,480"
HKR,"MODES\16\800,600"
HKR,"MODES\16\1024,768"
HKR,"MODES\32\800,600"

付け足したら、上書き保存します。

● system.iniファイルの書き換え

 次に、Windowsフォルダにある Windows95のシステム設定ファイル「system.ini」を書き換えます。以下の [atlsxx.drv] のセクションを iniファイルの最後に追加します。このファイルも必ずバックアップを取っておきましょう。

[atlsxx.drv]

BPP8=ON
BPP16=ON
BPP32=ON
XY640x480=ON
XY800x600=ON
XY1024x768=ON
XY1280x1024=ON

追加したら、上書き保存します。これらのファイルの書き換えが終わったら、書き換えた infファイルを使ってグラフィックドライバを再インストールします。

● 解像度を増やす

 まず、「画面のプロパティ」 を開き、「ディスプレイの詳細」→「詳細プロパティ」で「ディスプレイアダプタの変更」を選び「ディスク使用」で書き換えた「dxnmga.inf」を指定します。そこで、「フルカラーウインドウアクセラレーターボードA2 (Matrox)」を選びます。するとドライバの場所を聞いてくるので、Windowsフォルダの systemフォルダを指定します。
 ドライバの組み込み完了後に「今すぐ再起動しますか?」と聞いてきますが、ここでは「いいえ」を選び、「システムのプロパティ」→「デバイスマネージャ」で、グラフィックアクセラレータにきちんとメモリ空間等のリソースが割り振られているか確認しておきます (稀にリソースが変わって他のデバイスと競合したり、割り振られていない事が有るようです)。これが正常なら、Windows 95を再起動します。

● 結果

 再起動後、「ディスプレイの詳細」でハイカラー (65535色) や 800 x 600ドットを指定して、きちんと表示できるようになっていれば成功です。うまくいかない場合や正常に起動しなくなった場合は、一度「Safeモード」で起動し、変更前の解像度に戻してから書き替えたファイルをもう一度確認してみてください。

● Direct Drawの問題と対策

 この方法で解像度を増やし、増やした解像度 (例えば 800 x 600ドット、65535色) で Direct Drawの画面を表示 (HDBENCH等) しようとすると画面がグチャグチャになって正常に表示できません。その理由は、このボードが搭載する MATROX製 MGA-IIは、Direct Drawに非対応だからです。DirectXの設定「dxdiag」で「Direct Drawのハードウェア機能」を OFF (disable) にすると正常に表示できるようになり、若干ですが描画速度が向上します。(^-^)

グラフィックアクセラレータ「Matrox MGA-II」の高速化

 この方法では、Windows95を動かすために重要なシステムファイル「system.ini」を書き替えるので事前に必ずバックアップを行っておいてください。なお、画面が表示され無くなったり、データの破損や動作が不安定になったりしてもこちらに文句を言わないでください。また、この件についてメーカーに問い合わせたりしないでください。全て自己責任でお願いします。m(_ _)m

● はじめに

 PC-9821Ap2、PC-9821An等の C9Tモデルに搭載されているグラフィックアクセラレータボード「PC-9821A-E11」は Windows 95で使用する際に、説明書に載っていない隠し設定を弄ることでオーバークロックが可能で、これにより描画速度を高速化させることできます。ただし、高速化と引き換えに発熱が多くなりチップの寿命が縮みます。なお、説明書に載っていないため、当然メーカー保証外です。

● system.iniファイルの書き換え

 Windows 95の「system」フォルダの中の「system.ini」の [ATLS.DRV] セクションに、

AtlsClock=78

と記述して再起動します。数値は任意の数です。環境や個体差によって最適な数字や上限が違ってきます。ちなみに上限は殆どの場合 85ぐらいです。
 この数字を大きくし過ぎると、画面にゴミが出たり、描画が崩れたりするようになります。また、下手をすると Windowsが起動しなくなったり、最悪グラフィックチップが焼損してボードが壊れる可能性があるので、いきなり大きな値を入力せず注意して設定してください。

● 結果

 これだけで描画が速くなります。元に戻したい場合は、追加した記述を削除すれば OKです。

フロッピーディスクの内蔵

 PC-9821Ap2/ As2の Windowsモデルで FDDを 2ドライブ使用したい時や、その他のモデルでも本体実装と違うタイプの FDD (例えば U2モデルにに 5インチ FDD等) を利用したい場合には、ファイルスロット内蔵用または、外付け用のドライブを接続することで利用できるようになります。以下は純正オプションの一例です。

 なお、全モデルで 1MBタイプ増設 FDDインターフェースは有りません。外付けの FDDを接続する場合は、1MBフロッピィディスクインタフェースボード「PC-9821A2-E02」が必要になります。注意としては、このボード単体では FDD I/Fとして機能しません。本体の FDD I/Fから信号を引き出し、10ピンの補助ケーブルと共にボードに接続する必要があります。ファイルスロット用 FDDユニットを増設する場合は、インターフェースボードは要りません。

対応コネクタ 型番 種類 対応機種 補足
本体内蔵用 PC-9821A2-E01 3.5" 3モード FDD PC-9821An/ Ap2/ As2/ Ap3/ As3
その他、OP-98X/10W、OP-98X/20W、文豪 DP-60/ 70Fでも使用可能
Windowsモデルで、3.5" FDDを増設する場合に使用。
ファイルスロット 内蔵用 PC-9801-F04 3.5" 2モード FDD PC-9801FA, FS, FX
A MATE全機種
5" FDDモデルで、3.5" FDDを使いたい場合に使用。
PC-FD511F 5" 2HD FDD 3.5" FDDモデルで、5" FDDを使いたい場合に使用。
PC-FD321F 3.5" 3モード FDD A MATE全機種 5" FDDモデルで、3.5" FDDを使いたい場合に使用。
外付け用 PC-FD512R 5" 2HD FDD 1MB FDD I/F搭載機 5" FDDドライブユニット。
PC-FD312R 3.5" 2モード FDD 3.5" FDDドライブユニット。

 ※ 本体の仕様上、3.5" 2ドライブ搭載のマシンでは、増設した 5" ドライブで 2DDのフォーマットができない。フリーソフトで回避可能。

● Windowsモデルに FDDを増設する

 PC-9821Ap2/ As2以降の FDDが 1ドライブのモデルでは、FDDパネルが交換可能となり専用オプションで 2ドライブ目の FDDを増設できるようになっています。なお、98MATE Aシリーズでは、他のモデルとは異なりフロントマスクを外してジャンパの設定を行う必要があります。正しく設定しないと FDDが正常動作しないばかりか故障の原因になるのでご注意ください。

 PC-9821Ap2/ As2では、増設用 3.5インチフロッピィディスクドライブ「PC-9821A2-E01」が対応しています。これは、2ドライブの FDDパネルとケーブル FDD、ネジがセットになったものです。

 FDDの増設方法は、ルーフカバーとフロントマスクを開け HDDカートリッジを外します。2ドライブ目の目隠し金具を外し、FDDドライブを挿入し正面の二箇所と側面の一箇所をネジ止めして、ケーブルを二股の物に取り換えます。続いてフロントマスクの FDDパネルを 2FDD用に交換します。

 最後に、FDD設定変更用ジャンパスイッチがフロントマスクを外すと本体前面中央部に有るので、ショートポストを右から左に移します。

PC-9821Ap2の保守

PC-9821Ap2/ As2 2012年で製造から 20年程度経過しています。今後も正常に使用するにあたって幾つかのポイントを挙げておきます。

● FDD

NEC製 5インチ FDDの FD1158C  NEC製 3.5インチ FDDの FD1138T

 PC-9821Ap2/M2 で使用されている FDDは、NEC製の「FD1158C」という VFO無しの 1MB、640KB両対応の 5インチドライブです (画像左)。このドライブは、コンデンサの液漏れによってセンサーのパターンが破断してモーターが焼ける事があります。電源を入れると大きな異音がするので分かります。

 対策としては、液漏れしてパターンが切れる前にコンデンサを交換することです。パターンが切れてしまっている場合は、繋いで様子を見ますが、モーターが焼けている場合はドライブを交換する以外に有りません。

 PC-9821Ap2/U2他、Windowsモデルの NEC製「FD1138T」VFO無し 1MB、640KB両対応の 3.5インチドライブ (画像右) でもコンデンサの液漏れが発生する事がありますが、読み取りが弱くなるぐらいであまり大きな影響は出ない事も有って気が付かない事が多いです。液漏れしていたら、基板を洗浄してコンデンサを換えておくとよいでしょう。

 FD1138Tは、コンデンサ以外にモーターの軸部分が埃などで固着する例が多いです。FDD本体を裏返して円盤部分を指で回転させようとすると抵抗を感じる場合は、固着しています。グリスを軸部分に注入して指で回転させ、指で弾くような感じで触り数秒回転するようであればいいでしょう。ただし、5-56は NGです。樹脂を侵すうえ、揮発するので一週間程度で効果が無くなります。

 3.5インチドライブを交換する際は、PC-9821Anで使用されている FD1148Tも使用可能です。ただし、MATE Xで使用されている FDDには 34ピンコネクタの物があるのでご注意ください。

● カレンダ時計バックアップ電池

FDK製 リチウム二次電池の ML2430

 PC-9821Ap2/ As2で使用されている電池は、三洋 (現 FDK) の「ML2430」という 3V 100mAhの充電可能なリチウム二次電池です。場所は電源ユニットの下あたりに 3ピンのコネクタで実装されています。幸い 20年程度で液漏れする例は殆どありません。この電池を充電するには一昼夜電源を入れたままにするといいようです。充電できない場合は、起動毎に日付と時刻、セットアップメニューの設定、メモリスイッチの設定をやり直す必要があります。

 ML2430は 2012年現在でも FDKが製造していて入手は比較的容易です。形状が同じだからと言って PC/AT互換機のマザーボードで使用されている市販のリチウム一次電池 (使い切りタイプ) は絶対に使用しないでください。これを PC-9821Ap2/ As2に取り付けると本来充電禁止の一次電池を充電することになるので非常に危険です。

 機種によってPanasonicの「VL2330」が使われている事も有ります。こちらは 3V 50mAhです。両者は充電時の電圧がML2430は 3.1V±0.15V、VL2330は3.4V±0.15Vと異なりますが、3ピンコネクタのマイナス接続ピンを換える事で両方とも使えるようになっています。

 某オークションなどでは出品者が良く分からずにこの様な改造を行って本体を出品している事があります。仮にダイオードを噛ましていても、長期間使用していると劣化等で知らないうちに壊れている可能性があります。万が一ショートモードで壊れると電池側に電流が流れ大変危険です。リチウム電池は取り扱いを誤ると発火や破裂が比較的容易に起こりますのでご注意ください。
 また、ダイオードの性質として順方向降下電圧 (VF) があります。一般的なダイオードでは 0.6〜0.7V程度降下しますのでこの点にも注意が必要です。

 ちなみに、一般的な整流用ダイオードでは 1V程度降下するので、この性質を利用してダイオードを数珠繋ぎにして冷却ファンへの供給電圧を下げて静音化する改造が流行りました。(^ ^;;

 カレンダ時計バックアップ電池が必要な方は、所内売店保守部品フロアへどうぞ。新品の物を 1個 1,000円から 1,280円でお分けします。

● マザーボードのコンデンサ

 この機種では、面実装タイプの四級塩電解コンデンサを使用しているのでコンデンサの液漏れで故障する例が非常に多いです。特有の症状としては FDDの読み取り不良、サウンドの音量の低下、音が出ないと云った症状が出ます。現時点で、正常に動作していても近い将来確実に故障します。

 その上マザーボードに埃がたまっているてそこに電解液が染み込むと、端子の間に過電流が流れてショートし発火する恐れがあります。ショート状態なので電源を入れようとすると電源ユニットの保護回路が働いてすぐに切れる状態になります。この時は非常に危険ですので、修理するまで電源を投入してはいけません。

 対策としては、マザーボードを洗浄し、コンデンサを換える以外に有りません。詳細は、企画課 第5回 電解コンデンサの液漏れを参考にしてください。

● 電源ユニット

 PC-9821Ap2/ As2 /Ap3/ As3では、電源に PU729を使用しています。この電源は、トーキン製 (TOKIN、現:NECトーキン) と ASTEC (現:エンベデットパワー Embedded Power) 製、タムラ製作所製が有ります。いずれも電源が入らなくなるような故障は以前のモデルに比べて少ないです。画像はトーキン製 PU729。

PC-9821Ap2の電源 PU729 (TOKIN製)

 経年劣化でコンデンサの容量抜けで半導体が劣化して +12V系供給電圧が下がって補助記憶装置が作動不良を起こす事はあります。特に、CPUアクセラレータや大容量の HDDを内蔵する、拡張ボードでスロットを埋めるような負荷が大きい状態では動作が不安定になる事も有ります。出力電圧が安定しない場合はコンデンサの交換で復活できますが、+12V系の電圧が極端に下がるような症状は半導体までやられている可能性が高く復活は不可能です。

 他に、タムラ製作所製の電源では、劣化すると画面に波を打つようなノイズが載ることがあります。こちらもコンデンサの交換では治りません。

 その場合は電源を交換するしか有りません。なお、コネクタの形状が同じですが、PC-9821Ap/ As/ Ae、PC-9801FA/ FS/ FXの電源「PU716」は使用できません。取り付けて電源を入れると保護回路が働いて電源が入りません。

● CD-ROMドライブ

 PC-9821Ap2/C9W、PC-9821Ap2/C9Tでは、ファイルスロット仕様の NEC PC-CD60Fを搭載しています。このドライブではイジェクトボタンを押してもトレイが出てこない、途中で引っかかるケースが増えてきています。

 内部のイジェクト機構のモーターの回転を伝える樹脂製 (経年劣化により黄色みがかった色で、一見ゴムのような質感) のギアが潤滑油を吸ってしまうため摩擦で回転しにくくなることが原因です。ここに潤滑油を注せば回復する可能性があります。

 この樹脂製のギアは潤滑油の影響で触っただけで砕けるほど非常に脆くなっています。トレイが何かに引っかかって正常動作しないときに無理に強制イジェクトピンでトレイを引き出そうとするとその力で砕けて回復不能になります。こうした症状が出た時は絶対にトレイを無理やり動かさないようにしてください。

 使用する潤滑油はホーザン 浸透ルブ Z-296等の粘度が低く樹脂に影響の出ないものにしてください。CRC 5-56は樹脂を溶かすのでこのような用途に絶対に使用してはいけません。

 なお、すでに歯が欠けてしまっていたり砕けてしまっている場合は残念ながら回復は不可能です。油分のため接着できません。3Dプリンタを使って複製するぐらいしか手はないと思います。(^ ^;;

 ちなみに、動作不良やコンデンサ、電池交換でお困りの場合は、技術部にて修理や保守を承りますのでご相談ください。

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PC-9800, PC-9821, PC-9801, 98MATE, PC-98は NEC社の商標または登録商標です。

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Windows, MS-DOSは Microsoft社の商標または登録商標です。

この他、製品名、型番等は、一般に各メーカーの商標または登録商標です。