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PC-9821Afとは

NEC PC-9800シリーズ 32ビットパソコン PC-9821Af/U9W 3.5インチ FDDモデル

 PC-9821Afは、PC-9800シリーズのフラグシップモデルとして 1993年 8月に国産パソコンとして初めて第五世代 x86 CPUの Pentiumプロセッサを搭載し、主流の PC-9800型番で初めてメモリ 14.6MBの壁を破った記念すべき PCで、それを示すかのごとくキャッチコピーも「PentiumTM Processor, User's MemoryMax 79.6MB, SecondCacheMemory 256KB」というスペックを強調した文章で登場しました。

 当時、国産 PCとしていち早く最新のプロセッサを搭載し最高の性能で注目を集めましたが、OSとして MS-DOS5.0A-Hとフロッピィーメディア版 Windows3.1が添付されていたとはいえ、バブル崩壊で景気が冷え込んでいく中に於いて標準価格が 120万円と極めて高価だったことに加え、Pentiumの初期ロットの浮動小数点演算ユニットにバグがあり当初仕様として交換に応じなかった Intelの対応の悪さが注目を集めた事からあまり普及せず、翌年 5月に価格を抑えた PC-9821Anが登場したために、出荷数が少なく幻の A MATEになってしまいました。

 そして、この PC-9821Afは、動作電圧 5Vの Pentium (P5) と言う一般的に知られている Pentiumとは仕様の異なる CPUを採用しているため、パワーアップが極めて困難な機体となり、一部に熱狂的なマニアがいるものの一般的には嫌遠されがちで、絶対数が少なく入手が困難ですが意外に中古の相場は低く 3千円以下で購入できます。(^-^)

PC-9821Afのラインナップ

型番 CPU メモリ FDD HDD CD-ROM グラフィックチップ 標準価格 (税別)
PC-9821Af/U9W Intel Pentium 60MHz 7.6MB 3.5インチ× 1 IDE 510MB オプション S3 86C928 1,200,000円
PC-9821Af/M9W 5インチ× 1 IDE 510MB オプション S3 86C928 1,200,000円

CPUとメモリ

● 搭載 CPU

 PC-9821Afに搭載されている CPUはサブボードに搭載されています。Intel製の第五世代 32ビット x86CPUの Pentium (P5コア) 60MHzで、マザーボードのベースクロックも 60MHzです。この CPUは、Pentiumの中でも最も初期のもので、後の Pentium (P54/P54Cコア) とは、動作電圧が 5Vと高いだけでは無くコアの構造も若干異なります。

 この高い動作電圧のために動作時にかなりの発熱があり、本体の向かって左側の CPU室には吸気用と排気用の 2つのファンがあり、騒音が大きめで筐体も他の A MATEシリーズとは異なり、PC-H98 model105と良く似た構造でキーボードよりも横に長く他の 98MATEには無い迫力があります。(^ ^;;

 P5コアの Pentiumは CPUの形状も 3.3V版の P54/P54Cコアの Pentiumより一回り大きくピン配置が異なります。100MHz以上のセラミックパッケージ版 (P54C) とは違い、CPU中央部に放熱板があり金メッキされています。PC-9821Afの後期ロットでは、ヒートスプレッダが無いタイプを搭載している機体も有ります。

Intel Pentium 60MHz Intel Pentium 90MHz

 この Pentiumの初期ロットには、浮動小数点演算ユニットにバグがあり (FDIVバグ) 或る特定の浮動小数点演算を実行すると答えを間違えるというものです。ベクターにその有無をチェックするソフトがあります。この事実が発覚した当時 (現在は不明です) は、NECは無償交換に応じていました。

 修正版の Pentiumに交換された本体、若しくは元から修正版を搭載している本体には「L」と書かれた白いくて丸いシールが貼られます。後期ロットからは製造番号の最後に「L」が付きます。次の画像はPC-9821Anの物ですが PC-9821Afでも同様です。

バグ無し Pentium搭載の証 その1 バグ無し Pentium搭載の証 その2

 ちなみに、自分の PC-9821Afは、あるソフトでチェックした所、バグ無しでした。\(^-^)/

 CPU内蔵の一次キャッシュメモリは命令用が 8KB、データ用が 8KBの合計 16KBで、従来オプションで有ることが多かった浮動小数手演算処理を専門に行うコプロセッサ機能は、浮動小数点演算ユニットとして CPUに内蔵されるようになりました。ただし、PC-9821Afのような初期の Pentium搭載機は、60MHzと言う高いシステムクロックでの動作の安定化の為にメモリに多くのウェイトが入るため、Pentiumの性能が十分引き出せて居るとは言えません。特に、メモリへの書き込みに関しては、PC-9801FA (i486SX-16) よりも遅いです (フリーウェアの「PFM486 (Daisankeihin氏)」で確認)。

● セカンドキャッシュメモリ

 セカンドキャッシュは、標準で CPUボード上にライトバック対応のバースト SRAMタイプのものを 256KB搭載しています。なお、98MATE Xシリーズのように後からの増設、交換はできません。

 CPUの隣に CPUに良く似た大きなチップ (キャッシュコントローラ: i82496-66) が載っています。このチップは発熱するので、486用のヒートシンクを熱伝導テープなどで貼り付けると気分的に安心です。

 他に、PC-9821Afの CPUボードには幾つか種類があり、キャッシュコントローラと、セカンドキャッシュが 66MHz対応の場合と、片方または両方が 60MHz対応の場合があります。特に、クロックアップを考えている方以外は気にしなくて良いでしょう。ちなみに、自分の PC-9821Afは、両方とも 66MHz対応品でした。

 Pentium登場初期の構成としては、CPUとアドバンスド・キャッシュ・コントローラ「i82496」、キャッシュ・メモリ「82492」という構成が一般的でした。当時 PCIチップセットの「i430」が登場していましたが、ISAバスを搭載したPC/AT互換機専用だったので、PC-98採用されるのはもう少し先になります。

● CPUソケット

 PC-9821Afの CPUソケットは、5V仕様の Socket 4です。この後、すぐに登場した 75/ 90/ 100MHz版 Pentiumは、動作電圧が 3.3Vに変更になったため、Socket 4は Intelにすぐに見捨てられました。このため、対応する CPUアクセラレータがありません。
 なお、Socket 4用の Pentium ODPがありますが、PC-9821Afには対応していないだけでなく、実際に搭載しても無改造では正常動作しません。

● メモリ

 メモリは、標準で 7.6MB内蔵しています。メモリ専用スロットに、オプションの 8MBのメモリボード「PC-9821AF-B01」(親亀ボード) を増設し、さらにそのボード上に一枚 16MBまでのパリ付き FP (Fast Page Mode) SIMMを増設することで最大 79.6MBまで増設できます。なお、SIMMの増設には Pentium機なので 64ビットの外部データバス幅に合わせるため必ず同容量で同種の SIMMを 2枚一組で増設します。
 ちなみに、パリとは、パリティチェックの略で、データの読み出しや書き込みにチェックの為のデータを追加してエラーを検出するものです。通常めったに有りませんが、エラーを検出するとデータを破壊する前にシステムを停止させます。

 また、PC-9801FA以前や、初代 98MATE A等に採用されている 61 SIMMは、同じ形ですが、仕様が全く異なるので使えません。間違って使用すると発熱する他、最悪、ショートや発火してメモリやマザーボードを破壊します。くれぐれもご注意ください。

補助記憶装置

● フロッピーディスクドライブ (FDD)

 FDDは 3.5インチ FDD搭載モデルでは、PC/AT互換機で一般的な 1.44MBフォーマットに対応した 1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 3モード対応の 2HDタイプ (NEC製 FD1138T) が搭載されています。コネクタは、従来の PC-9801用とは異なり電源が一緒になっている 26ピンの特殊なものです。
 コストダウンも有って構造が FD1137Dより単純化したため分解清掃時のメンテナンスがし易くなりました。不具合という不具合は有りませんが、経年劣化でモーターの軸が固着してしまったり、ヘッドが微妙にずれてしまったり、コンデンサの液もれで読み書きが不安定になる事例があります。

 5インチモデルでは、1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 2モードタイプ (NEC製 FD1158C) が搭載されています。コネクタは 34ピン、電源は 3.5インチ機器用と同じタイプの小型の物です。フロントマスクを外しやすくする観点から従来の FD1155Dとは違いヘッドを下す際にはボタンを押し込むタイプになりました。これが曲者で FDメディアが完全に奥まで挿入されていない状態や、メディアを挿入しない状態で強く押し込むと奥で金具が曲がってしまい故障してしまいます。メディアを挿入する際には必ず「カチッ」という感触が有るまで奥に挿入した事を確かめてからボタンを押し込むようにしましょう。
 このドライブでは、ヘッドのシールドカバーが脱落する事はなくなりましたが、コンデンサの液漏れでヘッドを動かすモーターが誤動作を起こす事で有名です。

 98MATEでは、VFO (簡単に言えばヘッドの微妙なずれからデータの読み書きを安定させる回路) 回路が本体側に搭載されているので FDDに VFO回路は有りません。

 PC-9821Af/U9W (3.5インチ)、PC-9821Af/M9W (5インチ) 共に 1ドライブ搭載しています。FDDを後から増設して 2ドライブ仕にするにはファイルスロットを使用します。

 5インチ FDDは当初メディアの単価が安かったのですが、3.5インチドライブの普及が本格化してメディアの単価が安くなり、記憶容量も 1.44MBと多くなった事から、5インチモデルは徐々に縮小していきます。ちなみに、メディアの記録データの耐久性は記録密度の低い 5インチの方が有利です。もっと言うと 8インチの方が有利です。

 ただし、磁気フィルムの最大の敵はカビで一度カビが生えてしまうとデータの読み出しは不可能でメディアは使用不能になります。仮に拭き取っても読み込む事は出来ません。この様なメディアからデータを救おうと FDDに読み込ませると磁気ヘッドにカビの胞子が付き、他の正常なメディアにカビの胞子を塗りつけ汚染を広げるので危険です。プラスチックのケースに入れておくとカビが生えやすくなるので注意が必要です。

● ハードディスクドライブ (HDD)

 PC-9821Af/U9W、PC-9821Af/M9Wは、専用固定ディスク I/F仕様でカートリッジタイプの 510MBタイプの HDDを 1ドライブ内蔵しています。IDEタイプのドライブで Western Digital製 Caviar2540または、Conner (Quantumを経て Seagate) 製 CFA540や CP30544が多いです。Windows 3.1と MS-DOS 5.0A-Hがプリインストールされています。

 PC-9821Afに接続可能な IDEタイプの HDDは、BIOSの制限により一台の最大容量 544MB (未フォーマット時) までのもの限ります。

 HDDは、IDE仕様のドライブを搭載していますが、インターフェース側が厳密に IDE仕様を満たしていない為、全てのIDE機器が使用できる訳では無いのでご注意ください。

 PC-9821Afに於ける HDDの交換については、電算機第一研究室 98MATE Aシリーズ編 PC-9821Apネタ 内蔵ハードディスクの換装や、PC-9821Ap2ネタ Cバス E-IDEボードで IDE機器の内蔵 A MATE編を参考にどうぞ。

 PC-9821Afでは、従来の SCSI仕様の HDDも内蔵出来ます。ただし、SCSI HDDを使用する際には、専用 SCSI I/Fボードスロットに対応した SCSIボード (PC-9821A-E10など) が必要になります。

 PC-9821Afは、筐体が大変凝った作りになっていて両サイドのボタンを押しながら手前に引く事で簡単にフロントマスクが外せるため、HDDの増設や交換が簡単にできます。ただし、ホットスワップには非対応ですのでご注意ください。交換の際は必ず電源を繰る必要があります。

 バックアップディスクが付属しているので再インストールが可能ですが、注意点として本体に搭載されているグラフィックアクセラレータボードの Windows3.1用ドライバは、添付のメディアに付属していますが、Windows3.1製品版には付属が無くサイトからのダウンロードもできないので、メディアを失くすと再インストール後に使えなくなります。

グラフィック、サウンド機能

● グラフィック機能

 グラフィック機能は、従来の 640 x 400ドット (4096色中 16色: Enhanced Graphic Charger) に加え、98MATE (A MATE) シリーズで新たに追加された、Windows、MS-DOS両方で利用できるプレーンアクセスモードの 640×480ドット (1677万色中 256色: PEGC) を搭載しています。よって、標準でも Windows画面の表示が可能ですが、Windowsを快適に利用するためには、別途グラフィックアクセラレータボード (ウィンドウアクセラレータボード) を Cバスまたは、ローカルバスに増設することをお勧めします。

 他に、PC/AT互換機とは異なり、漢字 ROMを搭載しているため、MS-DOSや BASIC上で、高速な漢字表示が行えます。

 モニター出力の水平同期周波数を 24kHzと 31kHzから選択できます。選択の方法は、電源投入後もしくは、リセットボタンを押してから「GRAPH」 キーと 「1」 (24kHz) または 「2」 (31kHz, デフォルト) を押します。
 ただし、従来の水平同期周波数 24kHzで描画タイミングを調整しているソフトウェアでは誤動作する事があるのでご注意ください。

 PC-9821Afでは、フルカラーウィンドウアクセラレータボード A「PC-9821A-E09」を 第 4スロットに搭載しています。グラフィックチップには、当時高性能で人気のあった S3製 86C928 (Vision928、Direct Draw対応)を採用、VRAMは 2MBで最大1280×1024ドットで 1677万色中 256色の表示が可能です。別売りオプションの増設 VRAMボード「PC-9821A-E09-01」をボード上のソケットに取り付けることで 4MBに増設が可能です。4MBに増設すると純正ローカルバス GAでは、唯一 1024×768ドットでフルカラー (1677万色) 表示が可能になります。

 VRAMを増設すると拡張ボード 2枚分の消費電力を消費することになります。ボードのスロットをすべて埋めると電力不足で動作が不安定になる場合があります。他に、本体搭載のグラフィックアクセラレータの Windows3.1用ドライバは、Windows3.1製品版には付属していないので、添付の FDセットから再インストールしないと使えなくなりますので注意が必要です。

● ハイレゾモードに対応

 オプションの 98ハイレゾボード 「PC-9821A-E02」を増設することにより PC-98RL、PC-98XL、PC-98XA互換のハイレゾモードで、最大 1120×750ドット、4096色中16色の画面を MS-DOS、Windows 3.1で利用できます。なお、PC-H98シリーズ (ハイパー98) の 256色モードは非対応です。ですので、Windows95には対応しません。
 ハイレゾモードでは、MS-DOS画面のフォントが24 x 24ドットの明朝体に変わり、メモリは 128KB減少します。このモードを有効にする場合、ソフトウェアディップスイッチ画面でハイレゾモードを選択します。なお、このモードではメモリマップ等が変わるためハイレゾ対応のソフトウェアやハードウェア以外では正常動作しません。詳しくは、それぞれの機器の説明書でご確認ください。

 また、このボードを増設することによりハイレゾ、ノーマル関係なく本体標準のプリンタポートは使用不可になり「PC-9821A-E02」ボード側のプリンタポートを使います。詳しくは、本体マニュアル参照してください。

● サウンド機能

 サウンド機能は、YM2608チップを内蔵し、PC-9801-86相当の FM音源機能 (FM 6音、リズム 6音、SSG 3音) と PCM録音再生機能を標準で搭載しています。ただし、使用する OSが Windows95の場合は PCM音源再生時に CPUに負荷が掛かり、システムの動作が若干遅くなったり、音飛びしたりするので気になる場合は、故 Q-Vison製「WaveStar」等のサードパーティー製 86互換ボードや、「PC-9801-118」を増設しましょう。なお、サウンドボードを増設する際には予めセットアップメニューでサウンド機能を切り離しておく必要があります。

 EMS方式のメモリを使用する場合は、サウンド BIOSと併用できないので本体のセットアップメニューでサウンド BIOSを無効にします。

 残念ながら ATARI (MSX) 仕様ジョイスティック用コネクタはありませんが、マウス I/Fに変換ケーブル「PC-98DO/P-11」を接続し、再起動することにより使用できるようになります。なお、この場合マウスとの同時使用はできません。

 ちなみに、音源チップである YAMAHA YM2608B (YM2203Cでも可能) のピン配置が分かっていれば、YM2608の足に直接 D-Sub 9pinオスコネクタを配線して増設する方法もあります。「PC-98DO/P-11」の入手が難しく、ネット上に回路図が載っていますが、バスマウスとの同時使用が可能でコストも安いので腕に自信のある方は自己責任でどうぞ。(^ ^;;

インターフェースと拡張スロット

● 本体のコネクタ

位置 種類 形状
本体前部 キーボード ミニ Din 8pin
バスマウス D-Sub 9pin
ヘッドフォン出力 ステレオミニジャック
マイク入力 モノラルミニジャック
本体後部 アナログ RGB D-Sub 15pin。24kHz、31kHz両対応
LINE入力 ステレオミニジャック
LINE出力 ステレオミニジャック
1MB FDD I/F アンフェノール 50pin
RS-232Cシリアル I/F D-Sub 25pin, 最高 19,200bpsまで対応。
プリンタ I/F アンフェノール 14pin、双方向非対応

 この中で特に、PC-9821Ap/ As/ Ae以降の PC-9821系とでは、バスマウス、アナログ RGB、プリンタのコネクタの形状が違うので注意が必要です。

● 拡張スロット

 拡張スロットは、Cバス (汎用拡張スロット) が 4スロットで、うち下の 2スロットが 32ビットローカルバスと兼用になっています。フルカラーウィンドウアクセラレータボード A (PC-9821A-E09)で第 4スロットを占有済みですがボードの交換は可能です。

 32bitローカルバスは、16ビットの Cバスに比べ、バス幅が倍の 32ビットになり、バスマスタ転送に加え供給クロックも上がっているので、より高速に多くのデータのやり取りができます。理論上のデータ転送速度は PCIバスに匹敵します。これに対応するボードは、グラフィックアクセラレータやビデオキャプチャ、98ハイレゾボード等があります。
 ただし、PC-H98/ SV-H98シリーズ用の NESAバススロットとは互換性がまったくないのでご注意ください。ここに挿すと本体や拡張ボードが壊れます。特に、中古品やジャンク品などで、NESAバス用ボードがローカルバス用として間違って売られている場合があります。ご注意ください。(^ ^;;

 専用 SCSI I/Fボードスロットを搭載しています。一部のファイルスロット機器や、SCSI仕様の HDDを内蔵する際には、必ずこのスロットに対応した SCSIボード「PC-9821A-E10」や相当品が必要になります。

● ファイルスロット

 PC-9821Afでは、PC-9801FA/ FS/ FXから受け継いだファイルベイの前身?であるファイルスロットが付いており、CD-ROMドライブや HDD、MO (光磁気ディスク)、テープストリーマ、メモリカードリーダ/ ライタ、3.5または 5インチ FDDが内蔵でき、接続はコネクタで行われるためケーブルを繋が無くて良いので必要に応じて入れ替える事が出来ます。ただし、活栓挿抜 (ホットスワップ) には対応していないので交換の際には電源を切る必要があります。

本体ディップスイッチの設定

 PC-9821Afでは、内蔵 HDDの切り離し等の設定が画面上で設定できるセットアップメニュー (ソフトウェアディップスイッチ) を採用しています。呼び出し方は、電源投入後もしくは、リセットボタンを押してから「HELP」 キーを押します。

 これとは別に本体前面のカバー内にスイッチが 2つ有ります。それぞれ以下のようになっています。赤い部分がデフォルトです。

● CPU動作速度の切り替え (左側)

表示 電源ランプ 動作速度
H 緑色 Pentium 60MHz
M 黄色 i486SX 33MHz相当
L 赤色 V30 8MHz相当

 V30エミュレーションモードでは、640KB以上のメモリは全て無視され 640KB固定になります。100%完全互換では無いので、V30を必要とするソフトウェアや拡張ボードでは、正常動作しない場合が稀にあるので注意が必要です。
 また、動作モードがハイレゾモードに設定されていると、98ハイレゾボードの有無にかかわらず V30エミュレーションモードは選択できなくなります。

 RS-232Cの通信設定、メモリの容量の変更、起動するドライブの順番変更、初期画面の色の変更などは、MS-DOSの「SWITCH.EXE」等でメモリスイッチの設定を変える必要があります。変更後は、セットアップメニューでメモリスイッチの状態を「保持する」に変更します。バックアップ電池が切れるとこの設定も消えます。
 特に RS-232Cでシリアル通信を行う場合は、必ず送信側と受信側で設定を合わせる必要があります。通信ができなかったりデータ化けする時は、RS-232C I/Fの故障を疑う前にまずこの点をチェックしましょう。常識ですが、念のため。(^ ^;;

● 動作モードの切り替え (右側)

表示 動作モード
N ノーマルモード
H ハイレゾモード (98ハイレゾボード搭載時に選択可能)

 ハイレゾモードの設定は、98ハイレゾボードが無い状態でハイレゾ側に設定していると動作速度の切り替えで不具合が生じるので、必ずノーマル側にしておきましょう。

● フルカラーウィンドウアクセラレータボード A (PC-9821A-E09)

 PC-9821Afの Windowsモデルに標準装備されているグラフィックアクセラレーションボードのディップスイッチ設定です。PC-9821Ap/ As/ Aeに搭載されているウィンドウアクセラレータボード A (PC-9821A-E01) と共通です。その他に、増設 VRAMサブボードコネクタの傍に VRAM容量設定スイッチが有ります。

スイッチ番号 機能 ON OFF
1 CRTディスプレイの操作方式 ノンインタレース インタレース
2 未使用 (常に ON)
3 未使用 (常に ON)
4 未使用 (常に ON)
5 CPUアドレス空間の設定 ON , ON : F00000h〜 F0FFFFh, F80000h〜 F80FFFh
ON , OFF: F20000h〜 F2FFFFh, F88000h〜 F88FFFh
OFF, ON : F40000h〜 F4FFFFh, F90000h〜 F90FFFh
OFF, OFF: F60000h〜 F6FFFFh, F98000h〜 F98FFFh
6
7 未使用 (常に ON)
8 未使用 (常に ON)

 増設 VRAMサブボードを取りつけた際に VRAM容量設定スイッチを変更する必要があります。シルク印刷で「2M」と「4M」と書かれています。デフォルトは「2M」です。VRAMを増設したときは「4M」に設定します。

その他の特徴

 他にこのパソコンの特徴として、筐体が大変凝った作りになっており、簡単にフロントマスクが外せるため、HDDの増設や交換が簡単にできます。

 ちなみに、ドライバーが無くてもコインでネジが回せるため、簡単にルーフカバーが外せるという心憎い工夫もなされています。(^-^)

CPUのパワーアップ

 ここでは、CPUの換装について記述します。PC-9821Afには正式に対応する ODPや CPUアクセラレータがありません。よって、CPU交換によるパワーアップには保証外の方法しかなくメーカーの禁止している改造行為に当たるので自己責任で行ってください。
 なお、PC-9821Afは初期の Pentiumモデルと云う事も有りロットによって、カタログ性能以外の部分で差が激しいので、全ての PC-9821Anで同様に上手く行くとは限りません。たとえ動かなかったとしても、こちらに文句を言わないでください。
 また、何の前触れもなくいきなり不安定になったり、最悪マザーボードや電源ユニットが壊れることも考えられますので十分ご注意ください。詳しくは注意事項をお読みください。

● はじめに

 さて、だいたい PC-9821Afのことが分かったところで CPUの換装です!と言いたいところですが、PC-9821Afに搭載されている CPUソケットは Socket 4と云う 5V仕様の Pentium用のソケットなので、動作電圧の異なるより高クロックの Pentiumに対応していません。
 また、Socket 4が Intelに早々に見切りをつけられた事に加え、PC-9821Af自体のカタログ性能以外での個体差が激しいため、サードパーティー製 CPUアクセラレータも有りません。

 一応、Socket4用の PentiumODP (PODP5V133) はありますが、PC-9821Afでは CPUのパワーアップが想定されていなかったので公式には非対応です。

 他に、Socket 4用電圧変換ソケット (下駄) の PowerLeap製「PL-P54C/MMX」もありますが、この下駄は Intel製 i430LX (Mercury) マザー用のため、PCIチップセットを搭載していない PC-9821Afでは、数十ヶ所の配線と幾つかの部品を追加しないと CPUが生きている証の 「ピポ」 すら言いません。また、AMD製 K6シリーズ等は、さらに難易度が上がり本体の BIOSを焼きなおさない限り搭載できません。(T_T)

 よって、PC-9821Afでは、CPUを高性能なものに交換することができません。(T_T)

● 結論

 このことは PC-9821Afに限らず、同じ Socket 4を搭載している PC-9821Bf、PC-9821Cf、PC-9821Xfにも言えることです (EPSON製 98互換機 PC-586系では動作するものもあるそうです)。これらの機種では、CPUのパワーアップはせずメモリの増設や HDDの高速化など他の面でパワーアップしましょう。

 ちなみに、PC-9821Afで Socket 4用 ODPを使用するには本体の改造が必要です。また、AMD製 K6シリーズ等は、さらに本体の BIOSを焼きなおさない限り搭載できません。(T_T)

 なお、PC-9821Afに ODPを搭載する方法については、危険な改造が伴うため、第二研究室の PC-9821Af 120MHz化で詳しく述べています。

メモリの増設

● はじめに

 さて、CPUの交換はできませんが、メモリを大量に消費する Windowsを快適に使うためには、メモリを増設しましょう。この PC-9821Afでは、PC-9800型番 (PC-H98は一般的では無いので除く) で初めて 14.6MB以上のメモリを搭載できるようになりました。
 メモリの増設の仕方は、PC-9821Af専用メモリボード (親亀ボード) を使い、ボード上の 4カ所の空き SIMMスロットに 72pinパリ付きの FP (ファーストページモード: Fast Page Mode) SIMMで増設します。

● メモリ専用スロット用メモリ

 まず、PC-9821Afでメモリを増設する際に必要になるものが専用メモリボードです。NEC純正の 「PC-9821AF-B01」や、IO DATA製の 「AF34」があります。両者ともに直接ボード上に 8MB載っており、パリ付きの FP SIMM 4枚で容量を 79.6MBまで増やすことができます。

代表的な PC-9821Af専用メモリ (親亀) ボード

メーカー 製品名 容量 標準価格(税別) 備考
NEC PC-9821AF-B01 8MB 36,000円
I-O DATA AF34 8MB 55,000円

 残念ながらメモリ専用ボードは 2001年 5月現在、生産終了で手に入れるには中古在庫を探すしか有りませんが、PC-9821Af自体が普及しなかったためにボード単体では滅多に出てきません。 (^ ^;;) なお、パリ付きの FP SIMMは現在でも販売されていますが、16bit DRAMの需要が減っため、価格が高騰しています。

● パリ付き 72ピン FP SIMM

 PC-9821Afで使用できる SIMMは、パリティチェック (パリ) 付き 72ピン FP SIMMです。パリ無しのを装着すると起動時に「PARITY ERROR」が出て起動しません。PC-9821正式対応品を選ぶのがベストですが、規格化されているのでよほど変わった構成で無い限り PC/AT互換機用、Mac用でも使用できます。

 SIMMの増設の注意点として、Pentiumの外部データバス幅に合わせるため必ず同容量で同種の SIMMを 2枚一組で Cバススロットに近い側のソケットから順番に増設します。上側から SIMMソケットに 1、2、3、4と番号を振ったとすると 1と 2、3と 4と言う組み合わせになっています。なお、容量や規格の違う SIMMを 2枚組で取り付けると「SIMM SETTING ERROR」になり起動しません。

 また、1スロット当たり 16MBまでの容量しか認識でき無いと云う制限があります。ここへ 32MBの SIMMを取り付けても 16MB以上の分は無視されます。(^ ^;;

 パリ付きメモリとパリ無しメモリの見分け方はチップの個数で見分けます。パリ無しはチップ 2個で一組み、パリ付きはチップ 3個で一組です。一枚の SIMMに DRAMチップが 8個載っている物は 2×4 = 8でパリ無し、DRAMチップが 9個載っている物は 3×3 = 9でパリ付きです。稀にパリティビット付きの DRAMがありますが、その場合は 2個一組になります。

 似た SIMMメモリに PC-9801-61及び互換 SIMMがありますが仕様が違うので動作しません。ECC付き EDO SIMMは、一見正常動作するように見えますが、MS-DOSの画面描画が乱れると云った不具合が出る事があります。EDOか FPの大まかな見分け方としては、DRAMチップの型番の初めの 4〜 7桁の数字の並びの末尾が「05」の物はほぼ EDO DRAMです。
 同じパリ付き FP SIMMでも NECの PC-9821XA-B01/ B02は正常動作しない事があります。他に駄目な例として、サーバ用メモリで 72ピン SIMMに似て非なる 144ピンのメモリも有りますのでご注意ください。

 SIMMには、PC/AT互換機用でよく見かける端子が銀色のシルバーコンタクトと金メッキの物があります。どちらでも構いませんが、SIMMソケットが金メッキの場合は、異種金属同士を接触させるとノイズが発生する事があるので金メッキの方を選ぶとノイズの影響を受けにくくなります。他にも SIMMにはモジュールの高さがまちまちです。I-O DATAのメモリボードを使用する際には、高さ制限がありますのでご注意ください。

 FPM対応 DRAMチップには 60nsの物と 70nsの物がありますが、 PC-98に於いてはどちらを使ってもデータ転送速度が速くなるといったメリットは有りませんし、両者が混在しても動作に大きな影響は有りません。

 メルコ (バッファロー) 製の一部の SIMMに搭載されているパリティジェネレータとは、本来必要なパリティチェック用 DRAMを搭載せずに、代わりにパリティチェック用のデータを生成するチップを装着して起動時にエラーで弾かれないように細工したものです。当時 DRAMチップが高かったので価格を安く抑えるためこの様な技術が登場しました。この SIMMを利用する場合は、パリティジェネレータ搭載の SIMMで統一する必要があります。パリ付き SIMMを混入すると正常動作しない場合があります。

代表的なメモリサブボード (パリ付きの 72ピン FP SIMM)

メーカー 製品名 容量 枚数 標準価格(税別) 備考
NEC PC-9821A-B02L/ B03L/ B04L 4〜16MB 1枚 30,000〜140,000円
メルコ/
バッファロー
EMF 8〜16MB 1枚 5,000円〜12,000円
EMW 16〜32MB 2枚 8,000円〜22,000円
EMF-P 8〜16MB 1枚 4,000円〜11,800円 パリティジェネレータ搭載
EMW-P 16〜32MB 2枚 6,000円〜19,800円 パリティジェネレータ搭載
I-O DATA NE-SIMXA 16〜32MB 2枚 オープン価格
ADTEC AD-P32M72 32MB 2枚 44,000円

 パリ付き 72ピン FP SIMMは店頭での入手は中古品でもほぼ不可能です。一時期 16ビット DRAMの需要が減っために価格が高騰したことがありました。2012年現在は、ジャンク品で有れば数百円で買えますが、動作チェック済みの物は 1,000円から 2,500円程度とやや高めです。

● セカンドキャッシュメモリ

 セカンドキャッシュは、簡単に言うと高速で動作する CPUとメモリの間のデータ転送速度の差を埋めるものです。この機種では、始めからマザーボードに最大容量の 256KBを搭載しています。増設はできませんがこれ以上増やせたとしても殆ど効果は有りませんので、気にする必要は有りません。発熱があるので気になる方は、小さいヒートシンクを付けると安心です。

PC-9821Afでの SCSIボードのスルー化

 PC-9801FAネタで、SCSIボードのスルー化を紹介しています。A MATEでも同じ方法でスルー化ができますが、PC-9821Afに限って本体の仕様で若干手順が異なります。
 というのも、PC-9821Afでは、ソフトウェアディップスイッチで、「内蔵固定ディスク」の項目で、「切り離す」を指定すると、内蔵も外付けも関係無く全て切り離され、認識されなくなってしまうからです。始めにその事実を知らなかったので、かなり悩みました。(^ ^;;

 そこで、今回、用意したボードは、PC-9801FAの時に失敗した、Logitec製「LHA-15FA」と故緑電子製「MDC-926Rs」です。「MDC-926Rs」は、2001年 6月現在、秋葉原の某店にてボードのみの新品が 1,800円 (税別) で販売されていました。Fast SCSI対応でメモリの容量に関係なく使用できるバスマスタ転送の SCSI I/Fに、最高 230,400bpsのシリアル I/Fがついたボードでお買い得だと思います。(^-^)

 ボードの設定は、「LHA-15FA」側を BIOSを切り離すだけで、その他は変更せずに「MDC-926Rs」側の SCSI ID、割り込み、DMAチャネル、ROMアドレス、I/Oアドレスを重複しないように変更しました。次の表は、設定の一例です。

  MDC-926Rs LHA-15FA
ボードの SCSI ID 5 7
割り込み(INT) INT 0 INT 3
DMAチャネル #3 #0
ROMアドレス D4000-D4FFF DC000-DCFFF
BIOS ROM ON OFF
I/Oアドレス 0CD0 0CC0

LHA-15FAのディップスイッチ設定 (0:OFF 1:ON)

ボード LHA-15FA
SW 1 11111000
SW 2 01101111
SW 3 1-2ショート
SW 4 1-2ショート
SW 5 2-3ショート

 MDC-926Rsの設定は、パソコン起動時に「CTRL」 + 「SHIFT」キーを押して BIOSメニューを起動するか、添付のメディアから BIOSメニューを起動して設定します。

 PC-9821Af以外の A MATEや PC-9801FA/ FS/ FXでは、本来ならここでソフトウェアディップスイッチの設定の中の「内蔵固定ディスク」の項目を「切り離す」に指定するのですが、PC-9821Afでは変更する必要ありません。
 PC-9821Afでは、標準の IDE HDDユニットを取り外すことで、自動的に IDE I/Fが切り離され INT 3が開放されます。

 あとは、SCSI HDDに交換し「MDC-926Rs」と「LHA-15FA」をケーブルで繋ぐだけでスルー化が完了します。

フロッピーディスクの内蔵

 PC-9821Afでは、PC-9821Ap/ As/ Aeのように 2ドライブ目を認識させる手段が無い (恐らくマザーボードの改造が必要) のでファイルスロットを利用しない限り、FDDを 2ドライブ仕様にすることはできません。

 FDDを 2ドライブ使用したい時や、その他のモデルでも本体実装と違うタイプの FDD (例えば U9Wモデルにに 5インチ FDD等) を利用したい場合には、ファイルスロット内蔵用または、外付け用のドライブを接続することで利用できるようになります。以下は純正オプションの一例です。

 標準で 1MBタイプ増設 FDDインターフェースを搭載しています。外付け FDDを使用することも可能です。

対応コネクタ 型番 種類 対応機種 補足
ファイルスロット 内蔵用 PC-9801-F04 3.5" 2モード FDD PC-9801FA, FS, FX
A MATE全機種
5" FDDモデルで、3.5" FDDを使いたい場合に使用。
PC-FD511F 5" 2HD FDD 3.5" FDDモデルで、5" FDDを使いたい場合に使用。
PC-FD321F 3.5" 3モード FDD A MATE全機種 5" FDDモデルで、3.5" FDDを使いたい場合に使用。
外付け用 PC-FD512R 5" 2HD FDD 1MB FDD I/F搭載機 5" FDDドライブユニット。
PC-FD312R 3.5" 2モード FDD 3.5" FDDドライブユニット。

PC-9821Afの保守

PC-9821Afは 2012年で製造から 20年程度経過しています。今後も正常に使用するにあたって幾つかのポイントを挙げておきます。

● FDD

NEC製 5インチ FDDの FD1158C  NEC製 3.5インチ FDDの FD1138T

 PC-9821Af/M9W で使用されている FDDは、NEC製の「FD1158C」という VFO無しの 1MB、640KB両対応の 5インチドライブです (画像左)。このドライブは、コンデンサの液漏れによってセンサーのパターンが破断してモーターが焼ける事があります。電源を入れると大きな異音がするので分かります。

 対策としては、液漏れしてパターンが切れる前にコンデンサを交換することです。パターンが切れてしまっている場合は、繋いで様子を見ますが、モーターが焼けている場合はドライブを交換する以外に有りません。

 PC-9821Af/U9Wの NEC製「FD1138T」VFO無し 1MB、640KB両対応の 3.5インチドライブ (画像右) でもコンデンサの液漏れが発生する事がありますが、読み取りが弱くなるぐらいであまり大きな影響は出ない事も有って気が付かない事が多いです。液漏れしていたら、基板を洗浄してコンデンサを換えておくとよいでしょう。

 FD1138Tは、コンデンサ以外にモーターの軸部分が埃などで固着する例が多いです。FDD本体を裏返して円盤部分を指で回転させようとすると抵抗を感じる場合は、固着しています。グリスを軸部分に注入して指で回転させ、指で弾くような感じで触り数秒回転するようであればいいでしょう。ただし、5-56は NGです。樹脂を侵すうえ、揮発するので一週間程度で効果が無くなります。

 3.5インチドライブを交換する際は、PC-9821Anで使用されている FD1148Tも使用可能です。ただし、MATE Xで使用されている FDDには 34ピンコネクタの物があるのでご注意ください。

● カレンダ時計バックアップ電池

Panasonic製 リチウム二次電池の VL2330

 PC-9821Afで使用されている電池は、Panasonicの「VL2330」という 3V 50mAhの充電可能なリチウム二次電池です。場所は電源ユニットの下あたりに 3ピンのコネクタで実装されています。幸い 20年程度で液漏れする例は殆どありません。この電池を充電するには一昼夜電源を入れたままにするといいようです。充電できない場合は、起動毎に日付と時刻、セットアップメニューの設定、メモリスイッチの設定をやり直す必要があります。

 VL2330は 2012年現在でも製造されており入手は比較的容易です。形状が同じだからと言って PC/AT互換機のマザーボードで使用されている市販のリチウム一次電池 (使い切りタイプ) は絶対に使用しないでください。これを PC-9821Afに取り付けると本来充電禁止の一次電池を充電することになるので非常に危険です。

 某オークションなどでは出品者が良く分からずにこの様な改造を行って本体を出品している事があります。仮にダイオードを噛ましていても、長期間使用していると劣化等で知らないうちに壊れている可能性があります。万が一ショートモードで壊れると電池側に電流が流れ大変危険です。リチウム電池は取り扱いを誤ると発火や破裂が比較的容易に起こりますのでご注意ください。
 また、ダイオードの性質として順方向降下電圧 (VF) があります。一般的なダイオードでは 0.6〜0.7V程度降下しますのでこの点にも注意が必要です。

 ちなみに、一般的な整流用ダイオードでは 1V程度降下するので、この性質を利用してダイオードを数珠繋ぎにして冷却ファンへの供給電圧を下げて静音化する改造が流行りました。(^ ^;;

 カレンダ時計バックアップ電池が必要な方は、所内売店保守部品フロアへどうぞ。新品の物を 1個 1,000円から 1,280円でお分けします。

● マザーボードのコンデンサ

 この機種では、面実装タイプの四級塩電解コンデンサを使用しているのでコンデンサの液漏れで故障する例が非常に多いです。特有の症状としてはカレンダ時計機能の不良、FDDの読み取り不良と云った症状が出ます。現時点で、正常に動作していても近い将来確実に故障します。

 その上マザーボードに埃がたまっているてそこに電解液が染み込むと、端子の間に過電流が流れてショートし発火する恐れがあります。ショート状態なので電源を入れようとすると電源ユニットの保護回路が働いてすぐに切れる状態になります。この時は非常に危険ですので、修理するまで電源を投入してはいけません。

 対策としては、マザーボードを洗浄し、コンデンサを換える以外に有りません。詳細は、企画課 第5回 電解コンデンサの液漏れを参考にしてください。

● 電源ユニット

 PC-9821Afでは、電源にトーキン製 (TOKIN、現:NECトーキン) PU726を使用しています。この電源は負荷によって電圧を調整するタイプの電源で昨今の ATX電源とは異なり電源出力も余裕があるとは言えません。

 経年劣化でコンデンサの容量抜けで半導体が劣化して +12V系供給電圧が下がって補助記憶装置が作動不良を起こす事はあります。特に、CPUアクセラレータや大容量の HDDを内蔵する、拡張ボードでスロットを埋めるような負荷が大きい状態では動作が不安定になる事も有ります。出力電圧が安定しない場合はコンデンサの交換で復活できますが、+12V系の電圧が極端に下がるような症状は半導体までやられている可能性が高く復活は不可能です。

 電源が入らなくなってしまうとコンデンサの交換で回復する例は少なく、電源ユニットを交換するしか有りませんが、ただでさえ本体の入手が難しい中に於いて電源のみを入手することはほぼ不可能に近いです。ATX電源を改造して外付けにするか、SFX電源をばらして元の電源ユニットに組み込む以外に直す方法は無いと思います。

 ちなみに、動作不良やコンデンサ、電池交換でお困りの場合は、技術部にて修理や保守を承りますのでご相談ください。

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PC-9800, PC-9821, PC-9801, 98MATE, PC-98は NEC社の商標または登録商標です。

Pentiumは Intel社の商標または登録商標です。

Windows, MS-DOSは Microsoft社の商標または登録商標です。

この他、製品名、型番等は、一般に各メーカーの商標または登録商標です。