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PC-9821Apとは

 NECのパソコン PC-9800シリーズで初めて PC-9821という型番で登場した機種は、1992年 11月に発売された、98MULTIシリーズ PC-9821modelS1と PC-9821modelS2です。Windows3.0に合わせてノーマルモード専用機で初めて標準で 640×480ドット、256色の画面が使用可能となり、サウンド機能も YM2608を搭載して FM音源に加えて PCM音源も使用可能になりました。従来の NEC製品ではこれだけの機能を搭載すると結構な金額になりますが、CPUは i386SXを採用することでコストが抑えられています。これらのモデルは、主にホビーユースを想定し 98MULTi CanBeシリーズへと繋がっていきます。

 バブル期も終わりにさしかかった当時、NECは一台 100万円近いハイレゾモード搭載のハイエンドモデル PC-H98 (ハイパー 98) 普及戦略を推進していましたが、一方で当時、Compaq (現 HP) から低価格 PCが登場し、その価格の安さからコンパックショックとも呼ばれ IBM等と急速にシェアを伸ばす PC/AT互換機 (当時の俗称: DOS/V) の猛威にさらされ、PC-98ユーザー離れが深刻化していました。

 そこで、PC-H98シリーズを打ち切り、1993年 2月に一般のデスクトップモデルの新シリーズ 98MATEシリーズとして、PC-9821Apは PC-9821As、PC-9821Aeと共に、「ウィンドウ環境での利用に最適。ハイコストパフォーマンスを実現した高機能 98登場。」というキャッチコピーで、颯爽と登場しました。

 この頃から、PC-9800シリーズは、用途によってシリーズが細分化され、PC-9821型番は、フラグシップの 98MATEと、ホビー向け 98MULTI (Iが小文字になったのは、二代目から)、PC-9801型番は、エントリーモデルとして 98FELLOWという愛称がつき、筐体のデザインが、米国 IDEO社と共同開発した新デザインに変更されました。このデザインは、最終モデルの PC-9821Ra43まで使用されています。

NEC PC-9800シリーズ 32ビットパソコン PC-9821Ap/U2 3.5インチ FDDモデル NEC PC-9800シリーズ 32ビットパソコン PC-9821Ap/M2 5インチ FDDモデル

 この初代 98MATE (俗称:A MATE) シリーズは、ハイエンドの PC-H98model105と PC-9801FA/ FS/ FXの後継に当たります。従来に比べてシステムクロックが 1.5倍から 2倍に高速化し、上位機種で、当時最強の CPU「i486DX2-66」を採用するなど、大幅に強化されました。拡張バスも 32ビットに拡張されバスマスタ転送に対応したローカルバスを搭載。98ハイレゾボード「PC-9821A-E02」を搭載することで PC-98RL相当のハイレゾモード 1120×750ドット 16色を使用する事が出来ます。

 さらに、次期 OSの Windows3.1 (1993年当時) を意識し、PC/AT互換機同様、標準で、640 x 480ドット 256色の画面モードを搭載。また、マルチメディアには欠かせないサウンド機能も、86音源相当 (PCM音源 + FM音源) に強化されされた一方で、HDDモデルでは当時普及し始めていた IDEタイプ (専用固定ディスクインターフェース) の HDDを採用し、FDDを 1ドライブ削ることでコストダウンが図られると云う NECの本気を感じさせるマシンとなりました。

 後に、1993年 5月には、Windowsモデルとして、PC-9821Ap/U7W、PC-9821Ap/U9W、PC-9821Ap/M7Wが登場しました。これらのモデルでは、Windows 3.1と MS-DOS5.0A-Hに、S3社製 86C928を搭載したローカルバス対応グラフィックアクセラレータボード「PC-9821A-E01」、4MBのメモリ、マイク、マウスをセットにして登場しました。価格も PC-9821Ap/U7、PC-9821Ap/U9、PC-9821Ap/M7の各モデル (PC-9821Apの場合) との差額が 52,000円とお買い得でした。

 この NECの戦略転換は功を奏し、PC-H98と PC-9801FAで陰りの見えた PC-98でしたが、98MATE、98FELLOWで再び盛り返し、民生、企業問わず非常に良く売れたマシンでした。2012年現在でも後述するコンデンサの不良による故障で稼働出来る個体数が急速に減っていますが、ハイレゾモードで動作できるマシンとして主に企業で人気があります。

 ちなみに、当研究所では FDDが故障した PC-9801FA/U2の後継として PC-9821Ap/U2を購入しましたが、PC-9801RX21歴が長く 5インチメディアがメインだったので、PC-9821Ap/M2にとって代わられました。

初代 98MATE (A MATE) ラインナップ

型番 CPU FPU メモリ FDD HDD 標準価格 (税別)
PC-9821Ap/U2 Intel iDX2 66MHz 内蔵 3.6MB 3.5インチ 3モードタイプ x2 オプション 550,000円
PC-9821Ap/U7 3.5インチ 3モードタイプ x1 120MB 600,000円
PC-9821Ap/U9 3.5インチ 3モードタイプ x1 510MB 830,000円
PC-9821Ap/M2 5インチ 2HDタイプ x2 オプション 564,000円
PC-9821Ap/M7 5インチ 2HDタイプ x1 120MB 607,000円
PC-9821As/U2 Intel i486DX 33MHz 内蔵 3.6MB 3.5インチ 3モードタイプ x2 オプション 448,000円
PC-9821As/U7 3.5インチ 3モードタイプ x1 120MB 498,000円
PC-9821As/U8 3.5インチ 3モードタイプ x1 510MB 580,000円
PC-9821As/M2 5インチ 2HDタイプ x2 オプション 462,000円
PC-9821As/M7 5インチ 2HDタイプ x1 120MB 505,000円
PC-9821Ae/U2 Intel i486SX 25MHz 無し 1.6MB 3.5インチ 3モードタイプ x2 オプション 358,000円
PC-9821Ae/U7 3.6MB 3.5インチ 3モードタイプ x1 120MB 438,000円
PC-9821Ae/M2 1.6MB 5インチ 2HDタイプ x2 オプション 372,000円
PC-9821Ae/M7 3.6MB 5インチ 2HDタイプ x1 120MB 445,000円

初代 98MATE (A MATE) Windowsモデルのラインナップ

型番 CPU FPU メモリ FDD HDD 標準価格 (税別)
PC-9821Ap/U7W Intel iDX2 66MHz 内蔵 7.6MB 3.5インチ 3モードタイプ x1 120MB 650,000円
PC-9821Ap/U9W 3.5インチ 3モードタイプ x1 510MB 882,000円
PC-9821Ap/M7W 5インチ 2HDタイプ x1 120MB 659,000円
PC-9821As/U7W Intel i486DX 33MHz 内蔵 7.6MB 3.5インチ 3モードタイプ x1 120MB 550,000円
PC-9821As/U8W 3.5インチ 3モードタイプ x1 510MB 630,000円
PC-9821As/M7W 5インチ 2HDタイプ x1 120MB 557,000円
PC-9821Ae/U7W Intel i486SX 25MHz 無し 5.6MB 3.5インチ 3モードタイプ x1 510MB 488,000円
PC-9821Ae/M7W 5インチ 2モードタイプ x1 120MB 498,000円

 Windows3.1、MS-DOS5.0A-H、ウィンドウアクセラレータボード A (PC-9821A-E01)、増設 RAMボード (4MB) (PC-9821A-B01)、マイクロホン (PC-9821A-U01)、マウス (PC-H98-U01) のセット商品。

CPUとメモリ

● 搭載 CPU

PC-9821Apの CPU、Intel iDX2 66MHz

 PC-9821Apに搭載されている CPUは、ベストセラーとなった Intelの 32ビット x86 CPUの iDX2 (66MHz) で、CPUボード (G8MVS) のソケットに搭載されています。データキャッシュメモリを 8KB内蔵し、動作クロック (コアクロック) をシステムクロック (33MHz) の 2倍速に引き上げるクロックダブラーを搭載しているため、従来の 386機や 486機よりも高速な処理を実現しています。
 さらに、コプロセッサも CPUに内蔵されています。コプロセッサは、現在の CPUの浮動小数点演算ユニットにあたり、CPUと共に動作して関数計算などを専門に担当します。当時は、CPU自体が高価だったためオプション扱いでした。

● CPUソケット

 CPUソケットは、Socket 2の黒いソケットで CPUボード上に有ります。5V系の 486 CPU、オーバードライブプロセッサ (ODP)、CPUアクセラレータが利用できますが、PentiumODP5V83はソケット側のピン穴の数が足らないのでそのままでは物理的に装着できません。

● メモリ

 メモリは標準で 3.6MB内蔵し、CPUボードの後ろに有るメモリ専用スロットで、オプションの 4MBのメモリボード「PC-9821A-B01 (親亀ボード)」上に 2MBのメモリサブボード 「PC-9801-61/ 61U/ 61R」で最大 14.6MBまで増設できます。
 PC-9821Aeの FDDモデルがあるので PC-9821A-B01には SIMMソケットが 5本有りますが、14.6MB以上のメモリは増設しても無視されます。上限以上のメモリを搭載しているとグラフィックアクセラレータを搭載した際に誤動作の可能性があるので外しておきましょう。

 注意としてメモリサブボードは、その型番から俗称 61 SIMMと言う独自仕様の 72pinの SIMMで、形は似ていますが FP SIMMや EDO SIMMとは仕様が全く違う物なので使えません。間違って取り付けると最悪メモリが燃えたり、マザーボードが壊れます。

 Windowsモデルでは、標準で 4MBのメモリボードを搭載し、7.6MBになっています。

 ちなみに、セカンドキャッシュメモリは搭載できません。搭載できないおかげで CPUアクセラレータ搭載時にトラブルが少なく、製品の選択肢が広くなっています。(^ ^;;

 先代の PC-9801FAでは、フロントマスクを外すことでファイルスロット、 HDDの交換のみならず、メモリやコプロセッサの取り付けまで可能だったのですが、メモリボードや CPUの盗難の恐れがある事から本モデルからは、メモリと CPUの交換の際にはルーフカバーを開けないと交換できないようになりましたが、ドライバーが無くてもコインでネジが回せるため、簡単にルーフカバーが外せるという心憎い工夫がされています。(^-^)

補助記憶装置

● フロッピーディスクドライブ (FDD)

 FDDは 3.5インチ FDD搭載モデルでは、PC/AT互換機で一般的な 1.44MBフォーマットに新たに対応し、1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 3モード対応の 2HDタイプ (NEC製 FD1138T) が搭載されています。コネクタは、従来とは異なり電源が一緒になっている 26ピンの特殊なものです。
 コストダウンも有って構造が単純化したため分解清掃時のメンテナンスがし易くなりました。不具合という不具合は有りませんが、経年劣化でモーターの軸が固着してしまったり、ヘッドが微妙にずれてしまったり、コンデンサの液もれで読み書きが不安定になる事例があります。

 5インチモデルでは、1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 2モードタイプ (NEC製 FD1158C) が搭載されています。コネクタは 34ピン、電源は 3.5インチ機器用と同じタイプの小型の物です。フロントマスクを外しやすくする観点から従来の FD1155Dとは違いヘッドを下す際にはボタンを押し込むタイプになりました。これが曲者で FDメディアが完全に奥まで挿入されていない状態や、メディアを挿入しない状態で強く押し込むと奥で金具が曲がってしまい故障してしまいます。メディアを挿入する際には必ず「カチッ」という感触が有るまで奥に挿入した事を確かめてからボタンを押し込むようにしましょう。
 このドライブでは、ヘッドのシールドカバーが脱落する事はなくなりましたが、コンデンサの液漏れでヘッドを動かすモーターが誤動作を起こす事で有名です。

 98MATEでは、VFO (簡単に言えばヘッドの微妙なずれからデータの読み書きを安定させる回路) 回路が本体側に搭載されているので FDDに VFO回路は有りません。

 PC-9821Ap/U2 (3.5インチ) 、PC-9821Ap/M2 (5インチ) の FDDモデルでは 2ドライブを、HDDモデル、Windowsモデルでは、1ドライブを搭載しています。なお、このモデルでは、後のモデルのようにオプションで FDDを後から増設して 2ドライブ仕様にすることは、ファイルスロットを使わない限りできません。

● ハードディスクドライブ (HDD: 固定ディスクドライブともいう)

 HDD搭載モデルでは、専用固定ディスク I/F仕様でカートリッジタイプの HDDを 1ドライブ内蔵しています。容量は、PC-9821Ap/U7、PC-9821Ap/M7モデルでは 120MB、 PC-9821Ap/U9モデルでは、510MBです。また、日本語 MS-DOS Ver5.0A-Hがプリインストールされています。
 HDDは、IDE仕様のドライブを搭載していますが、インターフェース側が厳密に IDE仕様を満たしていない為、全てのIDE機器が使用できる訳では無いのでご注意ください。

 PC-9821Apでは、従来の SCSI仕様の HDDも内蔵出来ます。ただし、SCSI HDDを使用する際には、専用 SCSI I/Fボードスロットに対応した SCSIボード (PC-9821A-E10など) が必要になります。

 PC-9821Apは、筐体が大変凝った作りになっていて両サイドのボタンを押しながら手前に引く事で簡単にフロントマスクが外せるため、HDDの増設や交換が簡単にできます。ただし、ホットスワップには非対応ですのでご注意ください。交換の際は必ず電源を繰る必要があります。

グラフィック、サウンド機能

● グラフィック機能

 グラフィック機能は、従来の 640 x 400ドット (4096色中 16色: Enhanced Graphic Charger) に加え、98MATE (A MATE) シリーズで新たに追加された、Windows、MS-DOS両方で利用できるプレーンアクセスモードの 640×480ドット (1677万色中 256色: PEGC) を搭載しています。よって、標準でも Windows画面の表示が可能ですが、Windowsを快適に利用するためには、別途グラフィックアクセラレータボード (ウィンドウアクセラレータボード) を Cバスまたは、ローカルバスに増設することをお勧めします。

 他に、PC/AT互換機とは異なり、漢字 ROMを搭載しているため、MS-DOSや BASIC上で、高速な漢字表示が行えます。

 モニター出力の水平同期周波数を 24kHzと 31kHzから選択できます。選択の方法は、電源投入後もしくは、リセットボタンを押してから「GRAPH」 キーと 「1」 (24kHz) または 「2」 (31kHz, デフォルト) を押します。
 ただし、従来の水平同期周波数 24kHzで描画タイミングを調整しているソフトウェアでは誤動作する事があるのでご注意ください。

 Windowsモデルでは、標準で 32ビットローカルバス対応のウィンドウアクセラレータボード A (PC-9821A-E01) を第 4スロットに搭載しています。グラフィックチップは、S3製 86C928 (Vision928)で 1MBの VRAMを内蔵しています。画面モードは最大 1024×768ドット 256色です。VRAMの増設はできません。

● ハイレゾモードに対応

 オプションの 98ハイレゾボード 「PC-9821A-E02」を増設することにより PC-98RL、PC-98XL、PC-98XA互換のハイレゾモードで、最大 1120×750ドット、4096色中16色の画面を MS-DOS、Windows 3.1で利用できます。なお、PC-H98シリーズ (ハイパー98) の 256色モードは非対応です。ですので、Windows95には対応しません。
 ハイレゾモードでは、MS-DOS画面のフォントが24 x 24ドットの明朝体に変わり、メモリは 128KB減少します。このモードを有効にする場合、本体正面のスイッチでハイレゾモード (H) に切り替えます。なお、このモードではメモリマップ等が変わるためハイレゾ対応のソフトウェアやハードウェア以外では正常動作しません。詳しくは、それぞれの機器の説明書でご確認ください。

 また、このボードを増設することによりハイレゾ、ノーマル関係なく本体標準のプリンタポートは使用不可になり「PC-9821A-E02」ボード側のプリンタポートを使います。詳しくは、本体マニュアル参照してください。

● サウンド機能

 サウンド機能は、YM2608チップを内蔵し、PC-9801-86相当の FM音源機能 (FM 6音、リズム 6音、SSG 3音) と PCM録音再生機能を標準で搭載しています。ただし、使用する OSが Windows95の場合は PCM音源再生時に CPUに負荷が掛かり、システムの動作が若干遅くなったり、音飛びしたりするので気になる場合は、故 Q-Vison製「WaveStar」等のサードパーティー製 86互換ボードや、「PC-9801-118」を増設しましょう。なお、サウンドボードを増設する際には予めセットアップメニューでサウンド機能を切り離しておく必要があります。

 EMS方式のメモリを使用する場合は、サウンド BIOSと併用できないので本体のセットアップメニューでサウンド BIOSを無効にします。

 残念ながら ATARI (MSX) 仕様ジョイスティック用コネクタはありませんが、マウス I/Fに変換ケーブル「PC-98DO/P-11」を接続し、再起動することにより使用できるようになります。なお、この場合マウスとの同時使用はできません。

 ちなみに、音源チップである YAMAHA YM2608B (YM2203Cでも可能) のピン配置が分かっていれば、YM2608の足に直接 D-Sub 9pinオスコネクタを配線して増設する方法もあります。「PC-98DO/P-11」の入手が難しく、ネット上に回路図が載っていますが、バスマウスとの同時使用が可能でコストも安いので腕に自信のある方は自己責任でどうぞ。(^ ^;;

インターフェースと拡張スロット

● 本体のコネクタ

位置 種類 形状
本体前部 キーボード ミニ Din 8pin
バスマウス D-Sub 9pin
ヘッドフォン出力 ステレオミニジャック
マイク入力 モノラルミニジャック
本体後部 アナログ RGB D-Sub 15pin。24kHz、31kHz両対応
LINE入力 ステレオミニジャック
LINE出力 ステレオミニジャック
1MB FDD I/F アンフェノール 50pin
RS-232Cシリアル I/F D-Sub 25pin, 最高 19,200bpsまで対応。
プリンタ I/F アンフェノール 14pin、双方向非対応

 この中で特に、PC-9821Ap/ As/ Ae以降の PC-9821系とでは、バスマウス、アナログ RGB、プリンタのコネクタの形状が違うので注意が必要です。

● 拡張スロット

 拡張スロットは、Cバス (汎用拡張スロット) が 4スロットで、うち下の 2スロットが 32ビットローカルバスと兼用になっています。Windowsモデルに限りウィンドウアクセラレータボード A (PC-9821A-E01)で第 4スロットを占有済みですがボードの交換は可能です。

 32bitローカルバスは、16ビットの Cバスに比べ、バス幅が倍の 32ビットになり、バスマスタ転送に加え供給クロックも上がっているので、より高速に多くのデータのやり取りができます。理論上のデータ転送速度は PCIバスに匹敵します。これに対応するボードは、グラフィックアクセラレータやビデオキャプチャ、98ハイレゾボード等があります。
 ただし、PC-H98/ SV-H98シリーズ用の NESAバススロットとは互換性がまったくないのでご注意ください。ここに挿すと本体や拡張ボードが壊れます。特に、中古品やジャンク品などで、NESAバス用ボードがローカルバス用として間違って売られている場合があります。ご注意ください。(^ ^;;

 専用 SCSI I/Fボードスロットを搭載しています。一部のファイルスロット機器や、SCSI仕様の HDDを内蔵する際には、必ずこのスロットに対応した SCSIボード「PC-9821A-E10」や相当品が必要になります。

● ファイルスロット

 PC-9821Ap/ As/ Aeでは、PC-9801FA/ FS/ FXから受け継いだファイルベイの前身?であるファイルスロットが付いており、CD-ROMドライブや HDD、MO (光磁気ディスク)、テープストリーマ、メモリカードリーダ/ ライタ、3.5または 5インチ FDDが内蔵でき、接続はコネクタで行われるためケーブルを繋が無くて良いので必要に応じて入れ替える事が出来ます。ただし、活栓挿抜 (ホットスワップ) には対応していないので交換の際には電源を切る必要があります。

本体ディップスイッチの設定

 PC-9821Apでは、内蔵 HDDの切り離し等の設定が画面上で設定できるセットアップメニュー (ソフトウェアディップスイッチ) を採用しています。呼び出し方は、電源投入後もしくは、リセットボタンを押してから「HELP」 キーを押します。

 これとは別に本体前面のカバー内にスイッチが 2つ有ります。それぞれ以下のようになっています。赤い部分がデフォルトです。

● CPU動作速度の切り替え (左側)

表示 電源ランプ 動作速度
H 緑色 i486DX2 66MHz
M 黄色 i486SX 16MHz相当
L 赤色 V30 8MHz相当

 V30エミュレーションモードでは、640KB以上のメモリは全て無視され 640KB固定になります。100%完全互換では無いので、V30を必要とするソフトウェアや拡張ボードでは、正常動作しない場合が稀にあるので注意が必要です。
 また、動作モードがハイレゾモードに設定されていると、98ハイレゾボードの有無にかかわらず V30エミュレーションモードは選択できなくなります。

 RS-232Cの通信設定、メモリの容量の変更、起動するドライブの順番変更、初期画面の色の変更などは、MS-DOSの「SWITCH.EXE」等でメモリスイッチの設定を変える必要があります。変更後は、セットアップメニューでメモリスイッチの状態を「保持する」に変更します。バックアップ電池が切れるとこの設定も消えます。
 特に RS-232Cでシリアル通信を行う場合は、必ず送信側と受信側で設定を合わせる必要があります。通信ができなかったりデータ化けする時は、RS-232C I/Fの故障を疑う前にまずこの点をチェックしましょう。常識ですが、念のため。(^ ^;;

● 動作モードの切り替え (右側)

表示 動作モード
N ノーマルモード
H ハイレゾモード (98ハイレゾボード搭載時に選択可能)

 ハイレゾモードの設定は、98ハイレゾボードが無い状態でハイレゾ側に設定していると動作速度の切り替えで不具合が生じるので、必ずノーマル側にしておきましょう。

● ウィンドウアクセラレータボード A (PC-9821A-E01)

 PC-9821Ap/ As/ Aeの Windowsモデルに標準装備されているグラフィックアクセラレーションボードのディップスイッチ設定です。PC-9821Afに搭載されているフルカラーウィンドウアクセラレータボード A (PC-9821A-E09) と共通です。

スイッチ番号 機能 ON OFF
1 CRTディスプレイの操作方式 ノンインタレース インタレース
2 未使用 (常に ON)
3 未使用 (常に ON)
4 未使用 (常に ON)
5 CPUアドレス空間の設定 ON , ON : F00000h〜 F0FFFFh, F80000h〜 F80FFFh
ON , OFF: F20000h〜 F2FFFFh, F88000h〜 F88FFFh
OFF, ON : F40000h〜 F4FFFFh, F90000h〜 F90FFFh
OFF, OFF: F60000h〜 F6FFFFh, F98000h〜 F98FFFh
6
7 未使用 (常に ON)
8 未使用 (常に ON)

CPUのパワーアップ

● はじめに

 さて、だいたい PC-9821Apのことが分かったところで CPUの換装です。(^ ^;;

 PC-9821Ap/ As/ Aeでは、CPUはサブボードに搭載されています。実装位置はスピーカの裏側です。マザーボードはメモリの少ない PC-9821Aeの FDDモデルを除いて全モデルで同じですが、CPUボードは PC-9821Ap/ As/ Aeでそれぞれ違います。表にまとめると次のようになります。

機種 型番 CPU 動作クロック 搭載ソケット 水晶発振器 CPUの交換
PC-9821Ap G8MVS Intel iDX2 66MHz Socket2 66MHz 可能
PC-9821As G8MVSA Intel i486DX 33MHz Socket2 + ODP Socket 66MHz 可能
PC-9821Ae G8MVV Intel i486SX 25MHz ODP Socket 50MHz 不可

 PC-9821Aeは、システムクロック 25MHzですが、CPUボード上の水晶発振器でシステムクロックを生成しているのでこれを 66MHzに交換するか、PC-9821Apや PC-9821Asの CPUボードに交換すれば、システムクロック 33MHzにクロックアップが可能です。

 PC-9821Ap/ Asの CPUが載っているソケットは Socket 2の黒いソケットで、「DX4ODP (R)」や CPUアクセラレータが利用できます。次の画像は、PC-9821Asの CPUボード G8MVSAです。PC-9821Apの CPUボード G8MVSは ODPソケットが空きパターンになっています。ただし、PC-9821Asは ODP Socketを利用しないと保証から外れる場合があります。購入する場合は、PC-9821Ap/ As/ Aeに正式に対応しているものを選ぶ方が無難です。

PC-9821Asの CPUボード G8MVSA

 なお、対応機種から外れている CPUアクセラレータを使うと保証外になるのでご注意下さい。詳しくは注意事項をお読みください。

 各 CPUや ODPのスペックや機能などの詳細については、企画課の特別企画第 2回をご参照ください。

● i486系CPUと 486互換 CPU

 PC-9821Ap/ Asの CPUソケット Socket2には、5V動作の i486および互換 CPUを載せる事が出来ます。PC-9821As/ Aeの ODPソケットに通常の CPUと搭載すると ODPと違い、元々の i486DX/ SXを眠らせるための制御ピンが無いので、電源を入れると画面が黒のままで「ピポ」音もせず正常動作しません。このピンを外部から設定すれば良いのですが PC-9821Asにはジャンパや空きパターン等は有りませんでした。

 iDX4や 486互換 CPUの AMD Am5x86P75、Cyrix Cx5x86については、動作する電圧が 3.3Vで i486SX/ DX/ DX2の 5Vと違うのでそのままでは載せられません。動作電圧を合わせるために電圧変換ソケット (通称:下駄) という物を CPUとソケットの間に挟めば載せられますが、PC-9821Apでは筺体上部の金具とボードが近いので背が高い物は引っ掛かってしまい物理的に載せられません。
 なお、66MHz以上のクロックで動作する CPUでは放熱用ヒートシンクまたは CPUクーラーの取り付けが必須です。

 PC-9801FA等の初期の i486搭載機とは違い不具合が出る事は稀ですが、実装できない事があるので対応する CPUアクセラレータの使用をお勧めします。

 PC-9821Ap/ Asに搭載できる CPUの代表例 (標準搭載の CPUを除き動作保証無し)

メーカー 商品名 クロック
倍率
動作
クロック
内部
キャッシュ
コプロセッサ 備考
Intel i486DX 等倍 33MHz 8KB CPU内蔵
iDX2 2倍 66MHz 8KB CPU内蔵
iSX2 2倍 66MHz 8KB なし
iDX4 3倍 100MHz 16KB CPU内蔵 電圧変換下駄必須
AMD Am486DX 等倍 33MHz 8KB CPU内蔵
Am486DX2 2倍 66MHz 8KB CPU内蔵 一部で電圧変換下駄必須
Am486SX2 2倍 66MHz 8KB なし
Am486DX4 3倍 100MHz 8KB CPU内蔵 電圧変換下駄必須
Am5x86P75 4倍 133MHz 16KB CPU内蔵 電圧変換下駄必須、動作倍率の設定要
Cyrix Cx486DX2 2倍 66MHz 8KB CPU内蔵 一部で電圧変換下駄必須
Cx486DX4 3倍 100MHz 16KB CPU内蔵 電圧変換下駄必須
Cx5x86 4倍 133MHz 16KB CPU内蔵 電圧変換下駄必須、動作倍率の設定要

●オーバードライブプロセッサ (ODP)

 オーバードライブプロセッサ (ODP) はパソコンのパワーアップの方法として CPUアクセラレータの需要の多さに Intelが着目してパワーアップ用に製造した製品です。OverDriveは Intelの商標なので他社製品を ODPと呼んではいけません。
 ODPは、CPUソケットや Over Drive Readyソケットに搭載することで元の CPUの代わりに動作する仕組みなので、通常の CPUとは違いピンが 1本多いのですが、もう一つの製品として元々載っている CPUと交換できるように ODP (R) という物が有ります。Rは Replaceの略です。このタイプの ODPはピンの本数が通常の CPUと同数なので、ODPソケットに取り付けると正常動作しません。PC-9821As/ Aeで使用する際には入手時に CPU表面の刻印を良く確認しましょう。

 PC-9821Apで動作保証があるのは (R) の方です。無印の方は ODPソケット用で PC-9821As/ Aeではこちらを使います。PC-9821Apではどちらでも動作しますが、購入の際にはご注意ください。NEC純正オプションとしては、PC-9821-E02が対応します。

 ODPの構造は、iDX2相当のセラミックパッケージの CPUにヒートシンクや CPUクーラーが接着されたものです。DX4ODP、PentiumODPのように元々の CPUが 3V動作の物では電圧変換機構も搭載しています。

 ちなみに、Pentiumのオーバードライブプロセッサである PODP5V83 (83MHz)、PODP5V63 (63MHz) は他の ODPに比べ CPUクーラーの電源供給と外部キャッシュ制御用のピンが外周一列分増えているので PC-9821Ap/ As/ Aeで使用するには、下駄を使って余分なピンを浮かせるか、全て切る必要があります。ただし、CPUクーラーが回ら無い場合はリミッターが掛かって、動作速度が等速 (33MHz) になってしまいます。(^ ^;;

ODPの例 (◎:正式対応。○:保証外で使用可能。×:動作するが改造が必要)

メーカー 商品名 クロック
倍率
動作
クロック
内部
キャッシュ
コプロセッサ 対応機種 備考
Ap As Ae
Intel ODP486SX 2倍 66MHz 8KB CPU内蔵 PC-9821A-E03 (Ae用)、PC-9821A-E04 (As用)
ODP(R)486DX 2倍 66MHz 8KB CPU内蔵 ×
DX2ODP 2倍 66MHz 8KB CPU内蔵 PC-9821A-E03L (Ae用)、PC-9821A-E04L (As用)
DX2ODP(R) 2倍 66MHz 8KB CPU内蔵
DX4ODP 3倍 100MHz 16KB CPU内蔵 PC-9821-E01 (Ae対応)
DX4ODP(R) 3倍 100MHz 16KB CPU内蔵 × PC-9821-E02 (Ap/ As対応)
PODP5V83 2.5倍 83MHz 32KB CPU内蔵 × × × 余分なピンの処理が必要。PC-9821-E03 (非対応)

 ここで、実際に使用したものは、Intel製の「DX4ODP (R)」 という ODPです。これらの製品は全て生産終了で、年々手に入りにくくなっています。

● CPUアクセラレータ

 486機の Socket 2、ODPソケット用 CPUアクセラレータは、i386DX用と同様に沢山の種類がありますが、搭載している CPUにより大きく 3つに分かれます。

 一つ目は、iDX4及び互換品を搭載した物で、性能的には DX4ODPと変わりません。これには、メルコ (バッファロー) 製「HAS-33T」等が該当します。

 二つ目は、Cyrix製 Cx5x86 (IBM 5x86C、SGSトムソン It's 5x86も同じ) を採用した物です。Cx5x86は PentiumODPに近い構造で、同クロックの 486系 CPUの中では最強を誇り、その性能は Pentium 100MHzに迫ると言われています。
 また、ソフトウェアから、キャッシュメモリのライトバック動作等、CPU内部の設定ができるため人気がありました。(詳しくは、企画課を参照)
 ただし、先進の構造が仇となり、Intel純正 CPUとの互換性が低く、安定動作させるためにはそれなりの知識が必要でした。これには、I-O DATA製「PK-586x3」、メルコ (バッファロー) 製「HAS-33TP」等が該当します。

 三つ目は、AMD (Advanced Micro Device) 製 Am5x86 (Am486DX5) を採用した物です。Am5x86は iDX4と互換性の高い Am486DX4を高クロック動作するように改良した物で、486系 CPUの中では最高速を誇ります。(詳しくは、企画課を参照) キャッシュメモリは、ライトバック制御に対応しており、133MHz動作では Pentium 75MHzに迫る性能を持ちます。
 Intel製品と互換性が高く安定動作しますが、Cx5x86とは異なり、ソフトウェアからライトバック動作等、CPU内部の設定をすることはできません。よって、PC本体側でライトバック動作に対応していない場合はパフォーマンスが落ちてしまいます。これには、I-O DATA製「PK-A586/98」、メルコ (バッファロー) 製「HAS-33QP」等が該当します。

 他に、アセットコアから、PC-9821Ap/ As/ Aeのようにソケット側にピン穴が足らず、PODP5V83が物理的に装着できないマシンでも PODP5V83を利用できるように、物理的な問題をクリアした CPUアクセラレータ「PNT-33」を発売していました。

 なお、これらの CPUアクセラレータの構造に共通することは、採用 CPUの動作電圧が、iDX2の 5Vと違うので、小さい基板 (通称:下駄) に電圧変換機構が組み込まれています。また、ライトバック対応の CPUを採用している物では、ライトバック制御の機能を持っている物もあります。

 この中で、PC-9821Ap/ As/ Aeのようなライトバック非対応機の場合、I-O DATA製の 「PK-A586/98」 という CPUアクセラレータが最強となります。これは、AMD製 Am5x86P75 (対 Pentium比で 75MHz相当の意味、実際の動作クロックは 133MHz) を搭載し「DX4ODP」より高速な上、ライトバック対応キャッシュを下駄上で制御しているので、MS-DOSや Windows95以外の OSでも設定の変更無く高速で動作させることができます。
 残念ながら 2001年 4月現在、すでに生産終了で入手は困難ですが、CPUアクセラレータの中では、こちらをお勧めします。中古では、4,000円前後 (2012年現在) といったところです。似たような物に PK-A586/DVがありますが、PC-98には非対応です。外見からは判別しにくいので要注意です。

CPUアクセラレータの代表例

メーカー 商品名 クロック倍率 動作クロック 搭載 CPU 内部キャッシュ コプロセッサ 現状
I-O DATA PK-586x3 3倍 100MHz Cyrix Cx5x86-GP100 16KB (WB対応) CPU内蔵 生産終了
PK-A586/98 4倍 133MHz AMD Am5x86-P75 16KB (WB対応) CPU内蔵 生産終了
メルコ/ バッファロー HAS-33T 3倍 100MHz Intel iDX4 16KB (WB非対応) CPU内蔵 生産終了
HAS-33TP 3倍 100MHz Cyrix Cx5x86-GP100 16KB (WB対応) CPU内蔵 生産終了
HAS-33QP 4倍 133MHz AMD Am5x86-P75 16KB (WB対応) CPU内蔵 生産終了
アセットコア PNT-33 2.5倍 83MHz Intel PODP5V83 32KB (WB非対応) CPU内蔵 生産終了
VIPER Max Drive 586S 3倍 100MHz Cyrix Cx5x86-GP100 16KB (WB対応) CPU内蔵 生産終了
VIPER Max Drive 586L 4倍 133MHz AMD Am5x86-P75 16KB (WB対応) CPU内蔵 生産終了

 ここで、実際に使用したものは、メルコ製 「HAS-33TP」です。これらの製品は全て生産終了です。

● ハイパーメモリ CPU

 さて、初代 A MATEでは、CPUアクセラレータのさらに上を行く物があります。それが、メルコ (バッファロー) が開発した「ハイパーメモリ CPUシリーズ」と呼ばれる物です。この製品には、同社の 98ノート用メモリボードの「ENLシリーズ」用ソケットが 2つ有り、PC-9821Ap本体のメモリの最大搭載量 14.6MBを越える最大 78.6MB (14.6MB + 32MB + 32MB) まで増設できる優れ物です。
 また、追加したメモリは、ファーストページモードやバースト転送に対応するので、本体内蔵のメモリより高速です。この製品は残念ながら 1999年 4月現在生産が終了しカタログから姿を消しました。

メルコ (バッファロー) 製ハイパーメモリ CPU EUA-TP0M

EUAシリーズには以下の様な製品が有ります

メーカー 商品名 クロック倍率 動作クロック 搭載 CPU 内部キャッシュ コプロセッサ 現状
メルコ EUA-T 3倍 100MHz Intel iDX4 16KB (WB対応) CPU内蔵 生産終了
EUA-TP 3倍 100MHz Cyrix Cx5x86-GP100 16KB (WB対応) CPU内蔵 生産終了
EUA-QP 4倍 133MHz AMD Am5x86-P75 16KB (WB対応) CPU内蔵 生産終了

 ちなみに、PC-9821Ap/As/Ae用以外では、PC-9801DA/RA21/RA51用「EUDシリーズ」、PC-9801FA用 「EUFシリーズ」、PC-9801BA/BX用「EUBシリーズ」、PC-9801BA2/BS2/BX2用 「EUZシリーズ」があります。

 ここで、自分が実際に使用したものは、3倍クロックの 「EUA-TP0M」です。

● ODP、CPUアクセラレータの取り付け

 取り付け前の注意事項として、CPUアクセラレータでは、CPUソケットと、ODPソケット両方に対応するため、製品によっては、ジャンパでの設定が必要な場合がありますので、各製品付属の説明書で、設定を確認してから取り付けてください。設定が誤っていると、正常動作しない場合があります。メルコ製「HAS-33TP」等が該当します。

 さて、ODP, CPUアクセラレータ共に取り付けは非常に簡単です。ルーフカバーを開け、向かって左側の CPUボードとメモリボードの上にある金属製の蓋を外し、向かって手前側に付いている CPUボード上に引き抜いて取り出します。

 取り出したら、ヒートシンクと、標準の i486DX2を外してから、CPUソケットには、必ず 1ピンの印があるので、これに CPUの切り欠きを合わせるように向きに注意 (間違って挿すと、CPUや PCが壊れます) して、ソケットに ODP, CPUアクセラレータ本体を取り付け、レバーを下ろして固定します。

 取り付けた後、CPUボード、ルーフカバー等を元通り取り付け、電源を入れて「ピポッ」と鳴れば、成功です。今までが嘘のようにとはいきませんが高速に動作します。(^-^)

 仕上げに、各製品に付属の「キャッシュコントローラ」をインストールすれば、今までが嘘のように高速に動作します。なお、ODPでは、インストールする必要はありません。また、「PK-A586/98」は、アクセラレータ上で制御しているので、後からインストールする必要はありません。

● ハイパーメモリ CPUの取り付け

 こちらも、CPUソケットと、ODPソケット両方に対応するため、ジャンパでの設定が必要です、製品付属の説明書で、設定を確認してから取り付けてください。設定が誤っていると、正常動作しない場合があります。

 一方、ハイパーメモリ CPUの場合は、CPUボードからヒートシンクと CPUを取り出すまでは同じですが、次ぎの手順が少し異なります。

 それは、ハイパーメモリ CPU自体が CPUソケットに比べかなり大きく、CPUソケットのレバーが邪魔になって、そのままでは載せられないためです。そこで、このソケットに、ハイパーメモリ CPUに付属の黒いソケット (ハイアダプタ) を取り付け、ソケットのレバーを下ろして固定します。

 続いて、ハイパーメモリ CPUを、向きに注意して (CPUソケットには、必ず 1ピンの印があるので、これに CPUの切り欠きを合わせます) ハイアダプタ上に取り付けます。始めは、ハイアダプタの穴に、ハイパーメモリ CPUのピンを合わせて上に置き、ハイパーメモリ CPU水平を保った状態で、少しづつ力を加えて、ピンを奥まで完全に取りつけます。
 ここで、ハイパーメモリ CPUが傾いていたり、力を加えすぎると、ピンが曲がったり、折れたりして、壊れてしまいます。

 取り付けた後、CPUボード、ルーフカバー等を元通り取り付け、電源を入れて「ピポッ」 と鳴れば、まずは成功です。

 仕上げに 「DXキャッシュコントロールユーティリティ」をインストールすれば、今までが嘘のように高速に動作し、ハイパーメモリ CPU上に増設したメモリも認識されます。もっとも、いくら高速とは言っても、新型のパソコンとは比較になりませんが、ノーマルの PC-9821Xa7 (Pentium 75MHz搭載) 位になら肩を並べられるかも知れません。(^-^)

● ハイパーメモリ CPU搭載時の問題点

 ただし、注意点があります。iDX2とは違って Cx5x86や Am486DX5では CPU内部のキャッシュメモリの制御の仕方がライトバック方式に対応しています。ライトバック方式は普段はキャッシュメモリ内のデータのみ書き換える事で処理を高速化していますが、そのままではキャッシュメモリとメインメモリの間で不整合が起こります。特定のタイミングでキャッシュメモリの内容をメインメモリに転送する必要があります。本来 BIOSが対応していれば必要無いのですが、PC-9821Apでは非対応なので必ずキャッシュコントロールユーティリティ等のツールをインストールしなければなりません。
 キャッシュコントローラをインストールしないと Cx5x86や Am486DX5の本来の力が発揮されず 2割ほどパフォーマンスが落ちてしまいます。
 そして、このキャッシュコントロールユーティリティは MS-DOS、Windows3.1、Windows95でしか動作しないので、インストールできない MS-DOS以外の OS (例えば、N88-BASICやソフトメーカー独自の OS) では、動作が不安定になる場合があります。

 また、「HAS-33TP」や「EUA-TP」といった Cx5x86搭載の CPUアクセラレータを使用した場合、拡張ボードとの相性により、稀に正常動作しなくなることがあります。特に、SCSI I/Fボードで、バスマスタ転送が正常に動作しなくなります。他にも、DMAチャネルを使用するボードで、影響が強く現れます。

 ほかに、メルコ製ハイパーメモリ CPUの「EUA-QP」では、「ENL-32M」を搭載すると、Windows95上で、エラーが頻発したり、Canopus製 GAの 「PowerWindow964LB」を使用している場合に、フルカラーモードで色化けを起こすなど、動作が不安定になることがあるそうです。これについては、どろんぱ氏が自身のサイト「Moveα」(リンク切れ) で、詳しく報告されていますので参考にしてください。

 以上の事があるので、念の為、ご注意ください。また、完全な安定動作を必要とする環境の場合は、メーカー推奨の ODPである DX4ODP (R) をお使いください。

● 結果

 最後に、これらの ODPや CPUアクセラレータを使い、DOS Ver 6.2上でベンチマークを取ってみましたので、参考にしてください。使用ソフトは、I-O DATAの 「INSPECT Ver 1.03」 です。

名称 搭載 CPU 動作倍率 動作周波数 Dhrystone(点) Whetstone(点) 総合(点)
i486DX2 i486DX2 2倍 66MHz 21276 18775 24940
DX4ODP (R) iDX4 3倍 100MHz 27522 27777 33040
EUA-TP, HAS-33TP IBM 5x86C/WT 3倍 100MHz 33333 38910 41080
EUA-TP, HAS-33TP IBM 5x86C/WB 3倍 100MHz 38461 38505 46100
EUA-QP AMD Am5x86P75/WT 4倍 133MHz 30621 35211 37640
EUA-QP AMD Am5x86P75/WB 4倍 133MHz 42857 37425 50280

参考までに、「INSPECT Ver 1.03」のデータベースでは、ノーマルの PC-9821Af (Pentium 60MHz) が総合で 40000点です。

 測定当時、メモリは、純正品で 14.6MB増設していました。現在の機器の構成については、電算機管理室の項を参照してください。感想としては、動作自体は DX4ODP (R) では、Intel純正品ということもあり非常に安定していますが、クロックの上昇が 66MHzから 100MHzなので Windows95上ではあまり変化は感じられませんでした。
 一方、CPUアクセラレータの EUA-TP、HAS-33TPでは、PC-9821Apでもライトバック動作が可能になるので、グラフィック画面の表示が速く、動作が機敏になったように感じました。(^-^)

 ただし、 EUA-TP、HAS-33TPを搭載すると、故 ICM製 SCSI I/Fボート 「IF-2769」でバスマスタ転送を行うと、データ化けが発生するようになり Windows95が正常に起動しなくなりました。(T_T) これを、SMIT転送の I-O DATA製 「SC-98IIIPSB」に交換するとトラブルは無くなったので、バスマスタ転送の SCSI I/Fボードをご使用の方はご注意ください。

 EUA-QPでは、ライトスルー動作ではクロック上昇分数値が高く、ライトバック動作させると整数演算で最高の数値を叩き出しますが、浮動小数点はクロックの低い Cx5x86に及びません。Windows95では、浮動小数点演算を多用するので少々残念なところですが全体として動作が安定するのでどちらが良いかというと難しいです。

 ちなみに、ハイパーメモリ CPUシリーズの EUAシリーズは、取り付けるスペースさえ許せば、PC-9821Cx等の i486搭載機でも使用できるようです。ただし、Cx5x86のライトバックキャッシュや 16MB以上のメモリを搭載できる機種では、16MB以上のメモリを搭載しているとハイパーメモリ CPUに増設した分のメモリを認識しなくなると云った不具合が出る事があるようです。もちろん対象機種以外で使用する事は保証外なので試してみようと云う方は自己責任でお願いします。 PC-H98model105ではフレームが干渉して取り付けができません。フレームを外して試してみましたが、メモリカウント後ハングアップして駄目でした。

メモリの増設

● はじめに

 さて、CPUアクセラレータを使って高速化したら、早速メモリを増設しましょう。メモリの増設の方法は、メモリ専用スロット、ハイパーメモリ CPU上のスロットの 2つの方法があります。他にも、Cバススロット用がありますがメモリアクセスが遅いのでお勧めしません。と言うよりやめたほうがいいです。(^ ^;;

● メモリ専用スロット用メモリ

I-O DATA製専用メモリボード BA34-4M

 まず、メモリ専用スロット用メモリでは、専用メモリ (親亀) ボードが必要になります。純正品以外では、I-O DATA製の 「BA34シリーズ」 やメルコ製の 「EABシリーズ」があります。前者では、4MBのメモリをボード上に、後者では、SIMMソケット上に 4MB〜14MB搭載しており、追加で PC-9801-61/ 61U/ 61R互換の 2MBの SIMM (メモリサブボード) で容量を 14.6MBまで増設できます。

 なお、14.6MBを超えるメモリを増設しても、超えた部分は切り離されます。

 PC-9821Ap/ As/ Ae用親亀ボードと PC-9801BA/ BX用親亀ボードは共通です。PC-9801FA用親亀ボードは同じ仕様なので、保証外ですが交互に使い回しができます。
 ただし、残念ながら現在は全て生産終了で、手に入れるには中古在庫を探すしか有りませんが、割と見つかり易いく、01年 4月現在の相場は、2MB当たり 500円程度です。

代表的な専用メモリボード

メーカー 型番 メモリ容量 (標準/ 最大) 補足 価格 (税別)
NEC PC-9821A-B01 4MB/ 13MB 2MBの PC-9801-61 SIMMを 5枚取り付け可能 39,000円
メルコ/ バッファロー EABシリーズ 4MB〜12MB/ 13MB 2MBの PC-9801-61 SIMMを 5枚取り付け可能 19,800円〜72,800円
I-O DATA BA34 4MB〜14MB/ 13MB 2MBの PC-9801-61 SIMMを 5枚取り付け可能 19,800円〜83,000円

 I-O DATA製のメモリボードには機種設定用のシャンパ「F, M」があるものがあります。Fは 98FELLOW、Mが 98MATEの意味です。

 また、I-O DATA製のメモリボード「FA34」や「FS34」、「BA34」に付属している 「取り外さないでください」と表記の有る 72ピン SIMMに 4MBの「PIO-HEX-4M」と 8MBの「PIO-HEX-8M」が有りますが、8MBの物に限り保証外ですが 2MBの 61互換 SIMMとして流用できます。
 これらのメモリは、「BA34」等で 4MBを 8MBに交換したり、別のスロットに取り付けたりしても認識容量が増える事は有りません 4MBのスロットに 8MBの SIMMを取り付けても認識するのは 4MBまでです。アドレス線の配線が足りないか、SIMMスロット毎に最大認識容量が決め打ちになっているのかもしれません。

 メモリサブボードも、生産終了で手に入れるには中古在庫を探すしか有りません。なお、形は似ていますが、FP SIMMや EDO SIMMとは仕様が全く違うので使えません。間違って挿すと、メモリが燃えたり、マザーボードが壊れます。また、メモリサブボードでも 1MBの「PC-9801-53」も使えません。

 PC-9821Ap用メモリボードで使用できる NEC独自仕様の PC-9801-61と主な互換メモリモジュールです。使用されている DRAMチップは、1Mビットと 4Mビット、80nsと 70ns等がありますが、いずれも速度に違いは無く混在しても大丈夫です。中古品はジャンクで有れば一個あたり数百円で購入できます。

メーカー 型番 メモリ容量 補足 価格 (税別)
NEC PC-9801-61 2MB 100,000円
PC-9801-61U 2MB 1Mビットチップ 16個を両面に搭載 70,000円
PC-9801-61R 2MB 4Mビットチップ 4個を両面に搭載 20,000円
メルコ / Buffalo XMC-2000 2MB A〜 Dまで 4バージョンあり 6,000円
I-O DATA PIO-SIM61 2MB 6,000円

● ハイパーメモリ CPU用メモリ

メルコ (バッファロー) 製 メモリ ENLシリーズ (8MB)

 もう一つの方法は、EUA-TP、EUA-QP上のスロットで増設します。このスロットでは、ファーストページモードやバースト転送に対応するので、本体内蔵のメモリより高速に動作します。使えるメモリは、メルコ (バッファロー) 製で PC-9821Ld, Lt, Lt2, Ne3, Nd2, Na7, Nx, PC-9801 NL/A対応の「ENLシリーズ」です。1999年 1月現在、16MBタイプが生産終了となり 32MBタイプのみが販売中です。
 中古市場では、8MBや 16MBが主流で 32MBタイプはあまり多く出回ってないようでが、運よく見つけることができれば、3千円前後で買えると思います。

 なお、同じ対応機種の NEC製「PC-9821LD-B01〜 04」や、I-O DATA製「Ld34シリーズ」等では、ロットによって稀に動くものが有ります。

 というのも、EUA-TP、EUA-QP上で増設したメモリがメルコ製どうかチェックしているらしく、これに引っかからないものは動作してしまうようです。ただし、これは使えると言うだけで安定動作するかどうか分かりません。また、保証外になるので素直に「ENLシリーズ」を使いましょう。

 ちなみに、手もとの「EUF-EP (PC-9801FA用)」では NEC製 「PC-9821LD-B04」が正常動作しています。ENLが品薄だった物でついつい...(^ ^;;

 なお、先にも述べましたが、「EUA-QP」では、「ENL-32M」を搭載すると、Windows95上でエラーが頻発したり Canopus製 グラフィックアクセラレータボードの「PowerWindow964LB」を使用している場合にフルカラーモードで色化けを起こすなど、動作が不安定になることがあるそうです。くれぐれもご注意ください。

 一応参考までに主な ハイパーメモリ CPUボードに搭載できる製品には以下の様なものがあります。補足は自分が実際に実験した結果です。全ての環境で同じ結果になるとは限りません。

メーカー 型番 メモリ容量 補足 価格 (税別)
メルコ / Buffalo ENLシリーズ 4MB〜 32MB ハイパーメモリ CPU正式対応
16MB 13,000円、32MB 25,000円に価格改定あり
24,800円〜172,800円
NEC PC-9821LD-B01 4MB ハイパーメモリ CPUで認識 NG 30,000円
PC-9821LD-B02 8MB 動作不明 60,000円
PC-9821LD-B03 16MB ハイパーメモリ CPUで認識 NG 140,000円
PC-9821LD-B04 32MB ハイパーメモリ CPUで認識 OK 280,000円
I-O DATA Ld34シリーズ 4MB〜 32MB 16MB版は認識 OK。その他は不明
8MB 9,000円〜 32MB 19,000円に価格改定あり
24,000円〜172,000円
Logitec LSM-16C6FP 16MB ハイパーメモリ CPUで認識 OK

EUA-TPに Am5x86P75を載せる

● EUA-QPでのトラブル

 ハイパーメモリ CPUシリーズの「EUA-QP」では、メモリの管理の方法が従来のハードウェアからソフトウェアに変更されたため、「ENL-32M」を搭載すると Canopus製 グラフィックアクセラレータボードの「PowerWindow964LB」のフルカラーで色化けする等、環境によってトラブルが発生することがあるそうです。そのような時は、「ENL-16M」等で 16MB以下のモジュールを使用すれば回避できるそうです。

 そこで、トラブルの発生しない「EUA-TP」を入手し、ハイパーメモリ CPU上の CPUを IBM 5x86C (Cx5x86互換) から AMD Am5x86に交換し、「EUA-QP」相当品を作ってみようと思いました。(^ ^;;

 ただし、この方法では、ライトスルー動作になるので本物の「EUA-QP」より性能は若干落ちます。

 なお、CPUアクセラレータの CPUを交換すると、改造行為となり、保証対象外になるのでご注意下さい。詳しくは注意事項をお読みください。この方法により本体や、CPUアクセラレータが故障しても、こちらに責任はありませんので、文句をいわないでください。全て自己責任でお願いいたします。

 ここで、用意した物は「EUA-TP」とAMD製 CPUの Am5x86-P75 ADZです。この CPUは PC-9801DA用の「EUD-HP」に搭載されていた物で、ADZロットは熱に対する耐性が高いことで有名です。実際、PC-9801DAでは 160MHz動作にも耐えました。(^-^)

 手順は、「EUA-TP」から、IBM 5x86Cを CPUリムーバー等で取り外し、Am5x86-P75を取り付けます。ただし、このままだと 3倍速 (100MHz) で動作してしまいます。

 これを、4倍速 (133MHz) 動作させるためには、CPUのピンを細工して設定しなおさなければいけません。どうするかは、AMDのサイトから Am5x86-P75のデータシートをダウンロードしてみれば分かるのですが、簡単にいうと Am5x86-P75の「R17」ピンを GNDに落とす (Vssに接続する) ことで 4倍動作します。

 幸い、「EUA-TP」上のディップスイッチの 4番 (下の図の赤い矢印) は、CPUの「R17」ピンに繋がっているのでこれを OFFにします。これにより、4倍 (133MHz) 動作するようになります。

 ちなみに、4倍速設定を持つ Cx5x86を載せた場合も同じ操作で 133MHz動作になります。

メルコ EUA-TP0Mのディップスイッチ

 以上で終わりです。EUA-TP付属の「DXキャッシュコントロールユーティリティ」をインストールすれば、EUA-TP上のメモリが認識されるようになります。なお、このドライバでは Am5x86のキャッシュ制御は行えません。Am5x86搭載のハイパーメモリ CPU対応の「EXキャッシュコントロールユーティリティ」は、読み込み後にハングアップして使えませんでした。メモリの管理の仕方が違うので当然と云えば当然ですが。(T_T)

 では、お約束のベンチマークです。

★ ★ ★ HDBENCH Ver 2.610 ★ ★ ★
使用機種 PC-9821Ap/U2
Processor Am5x86/WT/4x [AuthenticAMD family 4 model E step 4]
解像度 800x600 65536色(16Bit)
Display Power Window 964
Memory 80,312Kbyte
OS Windows 95 4.0 (Build: 950)
Date 2001/ 3/17 17:34

SCSI = I-O DATA SC-98V(非PnPモード)

ABC = NEC DSE1700S Rev 0305
D = GENERIC NEC FLOPPY DISK
E = GENERIC NEC FLOPPY DISK
F = NEC CD-ROM DRIVE 4 M Rev 1.0

ALL Text Scroll DD Read Write Memory Drive
2839 3612 5380 5025 3052 1759 97 8 3273 517 3458 A:10MB

 これにより、ノーマルの「EUA-TP」に比べ、動作クロックが上がった分、体感では分からない物の僅かにパフォーマンスが上がりました。なお、自分が扱った上では、Am5x86がライトバックでもライトスルーでも Windows95に限って言えば大きな違いはありませんでした。(^ ^;;

 ちなみに、ハイパーメモリ CPUの基板部分に関して言えば通常の電圧変換ソケットと同様ですので、Am5x86に限らず、iDX4や PentiumODP (要改造) も動作するようです。

内蔵ハードディスクの換装

● はじめに

 PC-9821Ap/ As/ Aeの HDDモデル、Windowsモデルのうち、120MBや 340MBのモデルでは、使っているうちに容量が足らなくなりより大きい容量のドライブに交換したいと思う事も有ると思います。また、HDD故障で交換という事も有るでしょう。そこで、今回は、PC-9821Ap/ As/ Aeの様な旧式の専用固定ディスクインターフェース搭載モデルで HDDを交換する際の注意事項をまとめておきます。
 なお、SCSI仕様の HDDへの交換や SCSIのスルー化については PC-9801FAネタのSCSIボードのスルー化 その 2Cバス SCSIボードで SCSI機器の内蔵 PC-9801FA編、企画課の第4回 PC-98 Cバス SCSIボードの活用を参考にしてください。

● HDD交換時の注意点

 交換するドライブは、古いタイプの物で大容量のドライブは、消費電力が高い物があります。極端に消費電力が高いドライブに交換すると、拡張ボードをフルに実装した状態では電力供給不足で HDDの動作が不安定になったり、電源ユニットが故障する事がありますのでご注意ください。交換して動作が怪しい時は外付けケースに入れて繋いでチェックしてみてください。そこで異常がない場合は、電源容量不足が考えられます。

 HDDカートリッジ (通称:籠) には IDEタイプと、SCSIタイプの二種類があります。98MATEでは両方とも使用可能です。両者の見分け方はカートリッジの背面を見たときに、カードエッジがカートリッジから外へ飛び出している物が IDEタイプ、飛び出して居ないのが SCSIタイプです。

 換装できる HDDは PC-98または AT互換機用のIDE仕様で、容量が未フォーマット時に 544MBまでのドライブです。この容量を超えるドライブを接続するとメモリカウント後にハングアップします。2012年現在、新品で入手することはまず不可能なので、コンパクトフラッシュや SDカードを流用する手も有ります。企画課第6回 PC-98の SSD化を参考にどうぞ。

● HDDの初期化

 HDDを初期化する際は、以前 PC/AT互換機で使用されていたドライブの場合、MS-DOS起動時にハングアップする事があります。この様な場合は、Windows95、Windows98の起動ディスクを使用して「DISKINIT」で初期化し、「FDISK」で領域確保、「FORMAT」でフォーマットする回避できます。

 交換後は、FDから MS-DOSを起動し HDDを「FORMAT」コマンド等でフォーマットします。正常に初期化、領域確保が終われば終了です。

● 544MB以上の HDDを使うには

 一番簡単な方法は、I-O DATAの IDE-98を使用する方法です。これを使用すると 8.4GBまでのドライブが使用可能になります。詳しくは、PC-9821Ap2ネタを参考にしてください。

 ROMライタをお持ちの方は、ITF ROMを修正したり、SCSIや NIC等の BIOS ROMにパッチを当てる事で大容量ドライブを使用する事が可能になるという方法も有ります。大熊猫氏の「大熊猫のぺぇじ」や、まりも氏のサイトが詳しいので参考にしてください。通信課のリンクよりどうぞ。

フロッピーディスクの内蔵

 PC-9821Ap/ As/ Aeの HDDモデルや Windowsモデルで、FDDを 2ドライブ使用したい時や、本体実装と違うタイプの FDD (例えば U2モデルにに 5インチ FDD等) を利用したい場合には、ファイルスロット内蔵用または、外付け用のドライブを接続することで利用できるようになります。以下は純正オプションの一例です。

対応コネクタ 型番 種類 対応機種 補足
ファイルスロット 内蔵用 PC-9801-F04 3.5" 2モード FDD PC-9801FA, FS, FX
A MATE全機種
5" FDDモデルで、3.5" FDDを使いたい場合に使用。
PC-FD511F 5" 2HD FDD 3.5" FDDモデルで、5" FDDを使いたい場合に使用。
PC-FD321F 3.5" 3モード FDD A MATE全機種 5" FDDモデルで、3.5" FDDを使いたい場合に使用。
外付け用 PC-FD512R 5" 2HD FDD 1MB FDD I/F搭載機 5" FDDドライブユニット。
PC-FD312R 3.5" 2モード FDD 3.5" FDDドライブユニット。

 ※ 本体の仕様上、3.5" 2ドライブ搭載のマシンでは、増設した 5" ドライブで 2DDのフォーマットができない。フリーソフトで回避可能。

● HDDモデル、Windowsモデルを 2FDDに改造

 FDDモデルを使用していてマザーボードの故障などで入れ替えたい時に相手が HDDモデルや Windowsモデルでは、そのまま FDDとケーブルを移植しても 2ドライブ目は正常に動作しません。

 この様な時は保証外ですが設定を変更することで使用可能になります。ファイルスロットバックボード (G8MVW、G8MYK) を正面から見て左のコネクタ側を見ると 4ピンのジャンパがあります。このショートポストをデフォルトの「3-4」ショートから「1-2」ショートに変更します。

ファイルスロットバックボード (G8MVW) の SW1

 以上で 2ドライブとも正常に使用できるようになります。

PC-9821Apの保守

PC-9821Ap/ As/ Aeは 2012年で製造から 20年程度経過しています。今後も正常に使用するにあたって幾つかのポイントを挙げておきます。

● FDD

NEC製 5インチ FDDの FD1158C  NEC製 3.5インチ FDDの FD1138T

 PC-9821Ap/M2 で使用されている FDDは、NEC製の「FD1158C」という VFO無しの 1MB、640KB両対応の 5インチドライブです (画像左)。このドライブは、コンデンサの液漏れによってセンサーのパターンが破断してモーターが焼ける事があります。電源を入れると大きな異音がするので分かります。

 対策としては、液漏れしてパターンが切れる前にコンデンサを交換することです。パターンが切れてしまっている場合は、繋いで様子を見ますが、モーターが焼けている場合はドライブを交換する以外に有りません。

 PC-9821Ap/U2の NEC製「FD1138T」VFO無し 1MB、640KB両対応の 3.5インチドライブ (画像右) でもコンデンサの液漏れが発生する事がありますが、読み取りが弱くなるぐらいであまり大きな影響は出ない事も有って気が付かない事が多いです。液漏れしていたら、基板を洗浄してコンデンサを換えておくとよいでしょう。

 FD1138Tは、コンデンサ以外にモーターの軸部分が埃などで固着する例が多いです。FDD本体を裏返して円盤部分を指で回転させようとすると抵抗を感じる場合は、固着しています。グリスを軸部分に注入して指で回転させ、指で弾くような感じで触り数秒回転するようであればいいでしょう。ただし、5-56は NGです。樹脂を侵すうえ、揮発するので一週間程度で効果が無くなります。

 3.5インチドライブを交換する際は、PC-9821Anで使用されている FD1148Tも使用可能です。ただし、MATE Xで使用されている FDDには 34ピンコネクタの物があるのでご注意ください。

● カレンダ時計バックアップ電池

Panasonic製 リチウム二次電池の VL2330

 PC-9821Ap/ As/ Aeで使用されている電池は、Panasonicの「VL2330」という 3V 50mAhの充電可能なリチウム二次電池です。場所は電源ユニットの下あたりに 3ピンのコネクタで実装されています。幸い 20年程度で液漏れする例は殆どありません。この電池を充電するには一昼夜電源を入れたままにするといいようです。充電できない場合は、起動毎に日付と時刻、セットアップメニューの設定、メモリスイッチの設定をやり直す必要があります。

 VL2330は 2013年現在でも製造されており入手は比較的容易です。形状が同じだからと言って PC/AT互換機のマザーボードで使用されている市販のリチウム一次電池 (使い切りタイプ) は絶対に使用しないでください。これを PC-9821Ap/ As/ Aeに取り付けると本来充電禁止の一次電池を充電することになるので非常に危険です。

 某オークションなどでは出品者が良く分からずにこの様な改造を行って本体を出品している事があります。仮にダイオードを噛ましていても、長期間使用していると劣化等で知らないうちに壊れている可能性があります。万が一ショートモードで壊れると電池側に電流が流れ大変危険です。リチウム電池は取り扱いを誤ると発火や破裂が比較的容易に起こりますのでご注意ください。
 また、ダイオードの性質として順方向降下電圧 (VF) があります。一般的なダイオードでは 0.6〜0.7V程度降下しますのでこの点にも注意が必要です。

 ちなみに、一般的な整流用ダイオードでは 1V程度降下するので、この性質を利用してダイオードを数珠繋ぎにして冷却ファンへの供給電圧を下げて静音化する改造が流行りました。(^ ^;;

 カレンダ時計バックアップ電池が必要な方は、所内売店保守部品フロアへどうぞ。新品の物を 1個 1,000円から 1,280円でお分けします。

● マザーボードのコンデンサ

 この機種では、面実装タイプの四級塩電解コンデンサを使用しているのでコンデンサの液漏れで故障する例が非常に多いです。特有の症状としてはスピーカのノイズやサウンドの音量の低下、音が出ないと云った症状が出ます。現時点で、正常に動作していても近い将来確実に故障します。

 その上マザーボードに埃がたまっているてそこに電解液が染み込むと、端子の間に過電流が流れてショートし発火する恐れがあります。ショート状態なので電源を入れようとすると電源ユニットの保護回路が働いてすぐに切れる状態になります。この時は非常に危険ですので、修理するまで電源を投入してはいけません。

 対策としては、マザーボードを洗浄し、コンデンサを換える以外に有りません。詳細は、企画課 第5回 電解コンデンサの液漏れを参考にしてください。

● 電源ユニット

 PC-9821Apに限らず、PC-9801FA/ FS/ FX、PC-9821Ae/ Asでは、電源に PU716を使用しています。この電源は、トーキン製 (TOKIN、現、NECトーキン) とサンケン電気 (SANKEN) 製が有るのですが、SANKEN製はコンデンサが液漏れし易く電源が入らなくなる確率が非常に高いです。画像はトーキン製 PU716。
 なお、誤解の無いように書きますが、これは PC-98用の古い電源に限ったことです。全てのサンケン電気製品が悪いと言っている訳では有りません。

PC-9801FAの電源 PU716 (TOKIN製)

 また、SANKEN製は負荷によって供給する電力を調整するタイプで制御している半導体が劣化して +12V系供給電圧が下がって補助記憶装置が作動不良を起こしたり、電源が入らなくなったりします。運が良ければ、小容量のコンデンサの交換で復活できますが、半導体までやられているとカスタム部品で取り寄せできないので、復活は不可能です。

 その場合は電源を交換するしか有りません。PC-9821Ap/ As/ Aeで使える電源は「PU716」です。コネクタの形状が同じですが、PC-9821Ap2/ As2用の「PU729」は使用できません。取り付けて電源を入れると保護回路が働いて電源が入りません。

 ちなみに、動作不良やコンデンサ、電池交換でお困りの場合は、技術部にて修理や保守を承りますのでご相談ください。

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PC-9800, PC-9821, PC-9801, 98MATE, PC-98は NEC社の商標または登録商標です。

i486, iDX2は Intel社の商標または登録商標です。

Windows, MS-DOSは Microsoft社の商標または登録商標です。

この他、製品名、型番等は、一般に各メーカーの商標または登録商標です。