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PC-9821Ap3とは

NEC PC-9800シリーズ 32ビットパソコン PC-9821Ap3/C8W CD-ROMドライブ内蔵モデル
 PC-9821Ap3、それは最強の 486デスクトップ

 1993年 11月に NECはハイエンドデスクトップとして 98MATE Aシリーズ (本来は 98MATEで MATE Aや A MATEは俗称) の PC-9821Ap2/ As2を発売しました。こちらは、ローカルバスやファイルスロット等の PC-98専用パーツ、SCSI機器を使用していたのでコストが高く値段も高かったのですが、量産された汎用パーツの組み合わせを使って低コスト化した低価格の PC/AT互換機 (DOS/V) の攻勢に対抗すべく、その一方で、98MATE Aシリーズからサウンド機能やローカルバス、ファイルスロットを削り、安価なグラフィックアクセラレータチップを採用して、コストと価格を抑えたビジネス向け Windowsマシンの 98MATE Bシリーズの PC-9821Bp /Bs/ Beを発表しました。当初 PC-9801BA2/ BS2/ BX2との違いがウィンドウアクセラレータの有無のみなので、あまり注目されることも無く印象の薄いモデルでしたが、機能を絞っても安く Windows3.1を使いたいというユーザーからはそれなりのニーズが有りました。
 結果的に、この機能を絞ってコストを削減した Windowsモデルは成功し、従来の DOSから Windowsまで何でもこなせる高価な 98MATE Aシリーズは終息し、98MATE Bシリーズの後継として 1994年 7月に Windows向けにチューンされた新 98MATEシリーズの 98MATE Xシリーズ PC-9821Xa、PC-9821Xt、PC-9821Xn、PC-9821Xp、PC-9821Xs、PC-9821Xe、(PC-9821Xfは 11月) が登場。ハイエンドからエントリーまでを置き換えました。この変化は、ある意味 PC-98の PC/AT互換機化とも言えます。

 三代目 MATE Aこと PC-9821Ap3/ As3は、MATE Xシリーズから少し遅れた 1994年 10月に A MATEの最終モデルとして「時代を受け継ぐ多才な 98です。」というキャッチコピーで登場しました。

 二代目 MATE Aの PC-9821Ap2/ As2との違いは、上位モデルで Intel純正 486系で最強の iDX4-100が採用され、BIOSでキャッシュメモリのライトバック機能や、プラグアンドプレイ (PnP) が正式にサポートされるなど、Windows95を意識した細かなパワーアップが行われました。

 また、PC-9821Ap3/C9W、PC-9821Ap3/C8W、PC-9821As3/C8Wと云った CD-ROMドライブ搭載モデルで、従来のファイルスロットに代わり、ファイルベイ (5インチベイ) が採用され、IDE機器を複数台内蔵できるようになりました。

 さらに、FDDモデルを含む全モデルで、当時最高の性能を持っていた S3製 Vision864 (86C864)が標準で採用された一方で、従来の A MATEに採用されていた、VRAMアクセスモードのプレーンアクセスモードとパックトピクセルモードのうち、コストを抑えるため Windowsに必要無いプレーンアクセスモードが廃止になりました。このため、この機能を利用するソフトウェアは正常動作しません。

 このように、PC-9821Ap3/ As3では、今までのハイエンドモデルという純粋な MATE Aと云うよりも MATE Xと足して二で割ったような仕上がりになっています。このマシンは、初代 98MATE Xシリーズと競合しますが、当時、ハイレゾモードや 5インチフロッピィディスクドライブの需要がまだ多かったため、これらのユーザーへのサポートと言う意味合いが強かったのではないかと思います。

 ちなみに、PC-9821Ap3/M2, PC-9821As3/M2は、PC-98史上、最後の 5インチ FDDモデルでもあります。

 これら、三代目 MATE Aは、486機の中でも後発ということもあり、486機ながらかなりの性能を秘めているので、中古でも人気があり、2000年 5月現在、店頭では 1万 5千円前後で取引されています。ちなみに、これに、故 NECホームエレクトロニクス (NEC HE) 製「マニア向け (爆)」ゲーム機の PC-FX用ソフトを動作させる「PC-FXGA」を増設するのが当時の流行でした。(^ ^;;

 PC-9821Ap3/ PC-9821As3のラインナップ

型番 CPU FPU L2
キャッシュ
メモリ FDD HDD CD-ROM 5インチベイ グラフィック
チップ
標準価格
(税別)
PC-9821Ap3/C9W Intel
iDX4
100MHz
内蔵 128KB 8MB 3.5インチ
× 1
IDE 510MB ATAPI
2倍速
ファイル
ベイ
S3
Vision864
(86C864)
600,000円
PC-9821Ap3/C8W IDE 340MB ATAPI
2倍速
560,000円
PC-9821Ap3/U2 4MB 3.5インチ
× 2
オプション オプション ファイル
スロット
448,000円
PC-9821Ap3/M2 5インチ
× 2
オプション オプション 462,000円
PC-9821As3/C8W Intel
ライトバック
エンハンスド
DX2
66MHz
内蔵 オプション 8MB 3.5インチ
× 1
IDE 340MB ATAPI
2倍速
ファイル
ベイ
458,000円
PC-9821As3/U2 4MB 3.5インチ
× 2
オプション オプション ファイル
スロット
362,000円
PC-9821As3/M2 5インチ
× 2
オプション オプション 348,000円

CPUとメモリ

● 搭載 CPU

 PC-9821Ap3に搭載されている CPUは Intelの第四世代 32ビット x86CPUの iDX4でシステムクロック 33MHzの 3倍速である 100MHzで動作します。iDX4は、内蔵キャッシュメモリの容量が従来の iDX2に比べ、倍の 16KBに増え、コプロセッサ (浮動小数点演算ユニット) も CPUに内蔵 (今時当たり前ですが) されています。

Intel iDX4 100MHz

 標準の iDX4はキャッシュメモリのライトバック動作非対応ですが、本機では一次キャッシュのライトバック制御をサポートし、この機能に対応した CPUを搭載することで標準 (ライトスルー) より演算処理を高速に行うことができます。なお、通常、この機能は Intel製 CPUや ODPにのみ有効になります。

 一方、PC-9821As3では、ライトバック動作に対応した Intel製ライトバックエンハンスド (WBE) iDX2-66を採用しています。PC-9821As3では、Socket 3搭載なので、DX4ODPや PentiumODPに正式に対応しています。

● セカンドキャッシュメモリ

 PC-9821Ap3では、システムクロックの低いマシンで威力を発揮する 128KBの非同期 SRAMタイプで、ライトバック対応のセカンドキャッシュを標準装備し最大 256KBまで増設できます。

 PC-9821As3では、オプションになっていますが最大 256KBまで増設できます。

● CPUソケット

 PC-9821Ap3の CPUソケットは Socket 6で、Socket 3とは違い iDX2、i486DX等の CPUでは 5Vに、iDX4、Am486DX5、Cx5x86では 3.3Vに自動で電圧を調節できます。この Socket 6は、Socket 3に比べ穴が 1個少ないので、正式に対応する ODPはありません。

● メモリ

 メモリは標準で、CD-ROMドライブ搭載モデルPC-9821Ap3/C9W、PC-9821Ap3/C8W、PC-9821As3/C8Wでは 8MB、FDDモデルでは 4MB搭載しています。従来のサブボードを増設した上に SIMMを増設する仕組みとは異なり、直接マザーボード上のソケットに 72pinのパリ付き FP SIMMを全部で 4枚増設できます。SIMMの追加や挿し替えによって最大 128MBまで増設できます。

 ちなみに、パリとは、パリティチェックの略で、データの読み出しや書き込みにチェックの為のデータを追加してエラーを検出するものです。通常めったに有りませんが、エラーを検出するとデータを破壊する前にシステムを停止させます。

補助記憶装置

● フロッピーディスクドライブ (FDD)

 FDDは 3.5インチ FDD搭載モデルでは、PC/AT互換機で一般的な 1.44MBフォーマットに対応した 1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 3モード対応の 2HDタイプ (NEC製 FD1148T) が搭載されています。コネクタは、従来とは異なり電源が一緒になっている 26ピンの特殊なものです。
 コストダウンも有って構造が単純化したため分解清掃時のメンテナンスがし易くなりました。不具合という不具合は有りませんが、経年劣化でモーターの軸が固着してしまったり、ヘッドが微妙にずれてしまったり、コンデンサの液もれで読み書きが不安定になる事例があります。

 5インチモデルでは、1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 2モードタイプ (NEC製 FD1158C) が搭載されています。コネクタは 34ピン、電源は 3.5インチ機器用と同じタイプの小型の物です。フロントマスクを外しやすくする観点から従来の FD1155Dとは違いヘッドを下す際にはボタンを押し込むタイプになりました。これが曲者で FDメディアが完全に奥まで挿入されていない状態や、メディアを挿入しない状態で強く押し込むと奥で金具が曲がってしまい故障してしまいます。メディアを挿入する際には必ず「カチッ」という感触が有るまで奥に挿入した事を確かめてからボタンを押し込むようにしましょう。
 このドライブでは、ヘッドのシールドカバーが脱落する事はなくなりましたが、コンデンサの液漏れでヘッドを動かすモーターが誤動作を起こす事で有名です。

 98MATEでは、VFO (簡単に言えばヘッドの微妙なずれからデータの読み書きを安定させる回路) 回路が本体側に搭載されているので FDDに VFO回路は有りません。

 PC-9821Ap3/U2と PC-9821As3/U2 (3.5インチ)、PC-9821Ap3/M2と PC-9821As3/M2 (5インチ) の FDDモデルでは 2ドライブを、Windowsモデルでは 1ドライブを搭載しています。このモデル以降ファイルスロットを使わなくても専用オプション (後述) で FDDを後から増設して 2ドライブ仕様にすることが出来るようになっています。

 FDDモデルの PC-9821Ap3/U2PC-9821Ap3/M2には、OSは付属しません。

 5インチ FDDは当初メディアの単価が安かったのですが、3.5インチドライブの普及が本格化してメディアの単価が安くなり、記憶容量も 1.44MBと多くなった事から、5インチモデルはこのモデルを最後に終息しました。ちなみに、メディアの記録データの耐久性は記録密度の低い 5インチの方が有利です。もっと言うと 8インチの方が有利です。

 ただし、磁気フィルムの最大の敵はカビで一度カビが生えてしまうとデータの読み出しは不可能でメディアは使用不能になります。仮に拭き取っても読み込む事は出来ません。この様なメディアからデータを救おうと FDDに読み込ませると磁気ヘッドにカビの胞子が付き、他の正常なメディアにカビの胞子を塗りつけ汚染を広げるので危険です。プラスチックのケースに入れておくとカビが生えやすくなるので注意が必要です。

● ハードディスクドライブ (HDD)

 Windows3.1プリインストールモデルの PC-9821Ap3/C8W、PC-9821Ap3/C9W、PC-9821As3/C8Wは、専用固定ディスク I/F仕様でカートリッジタイプの HDDを 1ドライブ内蔵しています。PC-9821Ap3/C9Wでは 510MBの Western Digital製 Caviar2540または Conner (Quantumを経て Seagate) 製 CFA540を、PC-9821Ap3/C8W、PC-9821As3/C8Wでは 340MBの Westan Digital製 Caviar2340または Conner製の IDEタイプのドライブを搭載しています。PC-9821Ap3/ As3に接続できる HDDは、最大容量 4.56GB (未フォーマット時) までのものです。Windows 3.1と MS-DOS 5.0A-Hがプリインストールされています。

 HDDは、IDE仕様のドライブを搭載していますが、インターフェース側が厳密に IDE仕様を満たしていない為、全てのIDE機器が使用できる訳では無いのでご注意ください。

 PC-9821Ap3/ As3では、従来の SCSI仕様の HDDも内蔵出来ます。ただし、SCSI HDDを使用する際には、専用 SCSI I/Fボードスロットに対応した SCSIボード (PC-9821A-E10など) が必要になります。

 PC-9821Ap3は、筐体が大変凝った作りになっていて両サイドのボタンを押しながら手前に引く事で簡単にフロントマスクが外せるため、HDDの増設や交換が簡単にできます。ただし、ホットスワップには非対応ですのでご注意ください。交換の際は必ず電源を繰る必要があります。

 なお、バックアップディスク等は別売りになっているので、初回起動時に必ずバックアップを取ります。特に、本体内蔵のグラフィックアクセラレータの Windows3.1用ドライバは、Windows3.1製品版には付属が無くサイトからのダウンロードもできないので、ここでバックアップを取らないと再インストール後に使えなくなります。

● CD-ROMドライブ

 CD-ROMドライブ搭載モデルの PC-9821Ap3/C9W、PC-9821Ap3/C8W、PC-9821As3/C8Wには、ATAPI仕様で倍速の「PC-CD60D」をファイルベイに搭載しています。

 このCD-ROMドライブ搭載モデルでは、従来のファイルスロット機器を使用するには、オプションのファイルスロットアダプタ「PC-9821A3-E02」が必要になります。

グラフィック、サウンド機能

● グラフィック機能

 グラフィック機能は、従来の 640×400ドット (4096色中 16色: Enhanced Graphic Charger) に加え、98MATE (A MATE) シリーズ共通の 640×480ドット (1677万色中 256色) の画面モードを搭載していますが、コストの削減から Windowsに必要無いプレーンアクセスモードが廃止になったため、この機能を使う従来の 98MATE Aシリーズ専用のソフトウェアでは、正常に動作しないので注意が必要です。

 他に、PC/AT互換機とは異なり、漢字 ROMを搭載しているため、MS-DOSや BASIC上で、高速な漢字表示が行えます。

 モニター出力の水平同期周波数を 24kHzと 31kHzから選択できます。選択の方法は、電源投入後もしくは、リセットボタンを押してから「GRAPH」 キーと 「1」 (24kHz) または 「2」 (31kHz, デフォルト) を押します。
 ただし、従来の水平同期周波数 24kHzで描画タイミングを調整しているソフトウェアでは誤動作する事があるのでご注意ください。

 全てのモデルで、標準で 32ビットローカルバス接続のグラフィックアクセラレーション機能を標準で内蔵しています。グラフィックチップは、当時描画性能の高さで定評のあった S3製 Vision864 (86C864) で DirectDrawに対応しています。VRAMは 2MB搭載していますが、VRAMの増設はできません。Vision864はローカルバス最高峰でお馴染みの Canopus製のグラフィックアクセラレータボード「Power Window 964LB (Vision964)」に次ぐ能力を持っているのでボードの増設の必要性は感じられません。

 画面表示は、Windows上では最大 1,280×1,024ドットで 26万色中 256色、DOS上では最大 640×480ドットで 1,677万色中 256色の表示が可能です。

● ハイレゾモードに対応

 オプションの 98ハイレゾボード 「PC-9821A-E02」を増設することにより PC-98RL、PC-98XL、PC-98XA互換のハイレゾモードで、最大 1120×750ドット、4096色中16色の画面を MS-DOS、Windows 3.1で利用できます。なお、PC-H98シリーズ (ハイパー98) の 256色モードは非対応です。ですので、Windows95には対応しません。
 ハイレゾモードでは、MS-DOS画面のフォントが24×24ドットの明朝体に変わり、メモリは 128KB減少します。このモードを有効にする場合、ソフトウェアディップスイッチ画面でハイレゾモードを選択します。なお、このモードではメモリマップ等が変わるためハイレゾ対応のソフトウェアやハードウェア以外では正常動作しません。詳しくは、それぞれの機器の説明書でご確認ください。

 また、このボードを増設することによりハイレゾ、ノーマル関係なく本体標準のプリンタポートは使用不可になり「PC-9821A-E02」ボード側のプリンタポートを使います。詳しくは、本体マニュアル参照してください。

● サウンド機能

 サウンド機能は、YM2608チップを内蔵し、PC-9801-86相当の FM音源機能 (FM 6音、リズム 6音、SSG 3音) と PCM録音再生機能を標準で搭載しています。ただし、使用する OSが Windows95の場合は PCM音源再生時に CPUに負荷が掛かり、システムの動作が若干遅くなったり、音飛びしたりするので気になる場合は、故 Q-Vison製「WaveStar」等のサードパーティー製 86互換ボードや、「PC-9801-118」を増設しましょう。なお、サウンドボードを増設する際には予めセットアップメニューでサウンド機能を切り離しておく必要があります。

 EMS方式のメモリを使用する場合は、サウンド BIOSと併用できないので本体のセットアップメニューでサウンド BIOSを無効にします。

 残念ながら ATARI (MSX) 仕様ジョイスティック用コネクタはありませんが、マウス I/Fに変換ケーブル「PC-98DO/P-11」を接続し、再起動することにより使用できるようになります。なお、この場合マウスとの同時使用はできません。

 ちなみに、音源チップである YAMAHA YM2608B (YM2203Cでも可能) のピン配置が分かっていれば、YM2608の足に直接 D-Sub 9pinオスコネクタを配線して増設する方法もあります。「PC-98DO/P-11」の入手が難しく、ネット上に回路図が載っていますが、バスマウスとの同時使用が可能でコストも安いので腕に自信のある方は自己責任でどうぞ。(^ ^;;

インターフェースと拡張スロット

● 本体のコネクタ

位置 種類 形状
本体前部 ヘッドフォン出力 ステレオミニジャック
マイク入力 モノラルミニジャック
本体後部 キーボード ミニ Din 8pin
バスマウス ミニ Din 9pin
アナログ RGB D-Sub 15pin。24kHz、31kHz両対応
LINE入力 ステレオミニジャック
LINE出力 ステレオミニジャック
RS-232Cシリアル I/F D-Sub 25pin, 最高 19,200bpsまで対応。
プリンタ用双方向パラレル I/F アンフェノールハーフ 36pin、変換アダプタ付属。

 この中で特に、PC-9801型番等の旧型機とは、プリンタのコネクタが異なるためプリンタインタフェース変換アダプタ (PC-9821-K02) が付属しています。また、MATE X系とでは、アナログディスプレイのコネクタの形状が違うので注意が必要です。

 このモデル以降外付け用 1MB FDD I/Fはオプションになっているのでご注意ください。A MATE用は「PC-9821A2-E02」です。

● 拡張スロット

 拡張スロットは、Cバス (汎用拡張スロット) が 4スロットで、うち下の 2スロットが 32ビットローカルバスと兼用になっています。PC-9821Ap2/C9Tに限りウィンドウアクセラレータボード A2 (PC-9821A-E11)で第 4スロットを占有済みですがボードの交換は可能です。

 32bitローカルバスは、16ビットの Cバスに比べ、バス幅が倍の 32ビットになり、バスマスタ転送に加え供給クロックも上がっているので、より高速に多くのデータのやり取りができます。理論上のデータ転送速度は PCIバスに匹敵します。これに対応するボードは、グラフィックアクセラレータやビデオキャプチャ、98ハイレゾボード等があります。
 ただし、PC-H98/ SV-H98シリーズ用の NESAバススロットとは互換性がまったくないのでご注意ください。ここに挿すと本体や拡張ボードが壊れます。特に、中古品やジャンク品などで、NESAバス用ボードがローカルバス用として間違って売られている場合があります。ご注意ください。(^ ^;;

 専用 SCSI I/Fボードスロットを搭載しています。CD-ROM内蔵モデルの PC-9821Ap2/C9W、PC-9821Ap2/C9Tでは、PC-9801-92同等品の「PC-9821A-E10」を標準で搭載しています。一部のファイルスロット機器や、SCSI仕様の HDDを内蔵する際には、必ずこのスロットに対応した SCSIボード「PC-9821A-E10」や相当品が必要になります。

 なお、PC-9821Ap3/ As3は、Windows95で採用されたリソースを自動で設定する機構のプラグ&プレイ (PnP) に対応しています。PnP対応の Cバスボードは、全て非 PnPモードで設定をする必要があります。

 ちなみに、PC-9821Ap3/ As3等 PCIバス非搭載機では、「STAR ALPHA 2」を搭載していないため、X MATEや、R MATE等、最近の機種に比べ、内蔵 IDE I/Fや Cバスのデータ転送が速く、性能をフルに引き出すことができます。(^-^)

● ファイルスロットとファイルベイ

 この三代目 A MATEの大きな特徴の一つとして、ファイルスロット機器とファイルベイ機器のどちらか一方を選択して利用出来るようになった点が挙げられます。

 Windows3.1プリインストールモデルの PC-9821Ap3/C8W、PC-9821Ap3/C9W、PC-9821As3/C8Wでは、PC/AT互換機で一般的なファイルベイを搭載しています。CD-ROMドライブや HDD、MOドライブと云った多彩な機器が使用できる点がメリットですが、FDDは使用できません。また、CD-ROMドライブを MOにと云った必要に応じて入れ替えることができないデメリットがあります。

 FDDモデルの PC-9821Ap3/M2、PC-9821Ap3/U2、PC-9821As3/M2、PC-9821As3/U2では、従来通りのファイルスロットが付いており、CD-ROMドライブや HDD、MO (光磁気ディスク)、テープストリーマ、メモリカードリーダ/ ライタ、3.5または 5インチ FDDが内蔵でき、接続はコネクタで行われるためケーブルを繋が無くて良いので必要に応じて入れ替える事が出来ます。ただし、活栓挿抜 (ホットスワップ) には対応していないので交換の際には電源を切る必要があります。

 Windows3.1プリインストールモデルの PC-9821Ap3/C8W、PC-9821Ap3/C9W、PC-9821As3/C8Wでファイルスロット機器を利用する場合には、ファイルスロットアダプタ「PC-9821A3-E02」を、FDDモデルの PC-9821Ap3/M2、PC-9821Ap3/U2、PC-9821As3/M2、PC-9821As3/U2でファイルベイ機器を利用する場合には、ファイルベイアダプタ「PC-9821A3-E01」を使用します。これらのオプションには、バックボードと金属製のフレームがセットになっています。画像は左がファイルベイアダプタ、右がファイルスロットアダプタです。

PC-9821A3-E01 ファイルベイアダプタ PC-9821A3-E02 ファイルスロットアダプタ

 ファイルベイアダプタで CD-ROMドライブ等を利用する際に SCSI仕様の場合は、「PC-9821A3-K01」、ATAPI (IDE) 仕様の場合は、「PC-9821A3-K02」のケーブルセットが必要になります。これらのケーブルセットは、電源ケーブルと信号ケーブルがセットになったものです。

本体ディップスイッチの設定

● セットアップメニュー

 PC-9821Ap3にはハードウェアディップスイッチは有りません。内蔵 HDDの切り離し等の設定は、セットアップメニューと言うソフトウェアディップスイッチで設定します。呼び出し方は、電源投入後もしくは、リセットボタンを押してから 「HELP」 キーを押します。

 CPUの動作モードについて PC-9821Ap3/As3では、従来の V30エミュレーションモード削除され Highと Lowのみになりました。Lowモードでは、i486SX 16MHz相当の動作となります。但し、Windows3.1、Windows NT3.1等の一部の環境では、正常動作しないので注意が必要です。

 RS-232Cの通信設定、メモリの容量の変更、起動するドライブの順番変更、初期画面の色の変更などは、MS-DOSの「SWITCH.EXE」等でメモリスイッチの設定を変える必要があります。変更後は、セットアップメニューでメモリスイッチの状態を「保持する」に変更します。バックアップ電池が切れるとこの設定も消えます。
 特に RS-232Cでシリアル通信を行う場合は、必ず送信側と受信側で設定を合わせる必要があります。通信ができなかったりデータ化けする時は、RS-232C I/Fの故障を疑う前にまずこの点をチェックしましょう。常識ですが、念のため。(^ ^;;

● FDD設定ジャンパスイッチ

 フロントマスクを外すと本体前面中央部に FDD設定変更用ジャンパスイッチが有ります。左側が 2FDD内蔵モデル用 (FDDモデルはデフォルト) 、右側が 1FDD内蔵モデル用 (Windowsモデルではデフォルト) の設定です。

その他の特徴

 他にこのパソコンの特徴として、筐体が大変凝った作りになっていて簡単にフロントマスクが外せ、ハードディスクの増設、交換が簡単にできます。 

 ちなみに、ドライバーが無くてもコインでネジが回す事が出来ルーフカバーが外せるという心憎い工夫もなされています。(^-^)

CPUのパワーアップ (Socket 6編)

 対応機種から外れている ODPや CPUアクセラレータを使うとメーカーの保証外になるので万が一故障しても保証が受けられなくなります。自己責任で行ってください。また、CPUソケットを改造すると保証期間内であっても改造扱いで保証外となります。詳しくは注意事項をお読みください。

● はじめに

 さて、だいたい PC-9821Ap3の事が分かったところで CPUの換装です。(^ ^;;) 本機に搭載されている CPUソケットは Socket 6と呼ばれ載せた CPUによって供給電圧を 5Vと 3.3Vに自動で変換できる機能を持っていますが、元々Intelの 486系 CPUとしては最後で最高性能の iDX4の為のソケットなので ODP (オーバードライブプロセッサ) を使用することは考慮されていません。故に PC-9821As3の Socket 3とは違いピンが 1本少ないので Pentium ODP (オーバードライブプロセッサ) は非対応です。
 CPUアクセラレータでは、セカンドキャッシュメモリの相性も有って多くのメーカーが非対応としている中で唯一 I-O DATA製の「PK-A586/98」が対応しています。なお、PC-9821As3対応としている CPUアクセラレータもセカンドキャッシュとの併用を禁止している製品が殆どですのでご注意ください。

三代目 A MATEの主な仕様

型番 CPU セカンドキャッシュ CPUソケット ODP
PC-9821Ap3 iDX4-100 128KB Socket 6 非対応
PC-9821As3 ライトバックエンハンスド iDX2-66 オプション Socket 3 DX4ODP、PODP5V83Sに対応

 そこで、PC-9821Ap3はライトバック対応ということもあり、今回は Socket 6非対応の PentiumODPを使いました。(爆) 仕様は以下の表を参照してください。これらの製品は全て生産終了です。「PK-A586/98」も長いことカタログに載っていましたが、1999年 7月についに消えました。というより、A MATE自体がカタログのメモリ対応一覧表から消えました。(T_T)

PC-9821Ap3/ As3で動作を保証している製品の代表例 (コプロセッサは全て CPU内蔵。◎:正式対応。○:保証外で使用可能。×:使用不可)

メーカー 商品名 種類 クロック
倍率
動作
クロック
搭載
CPU
内部
キャッシュ
対応機種 価格
Ap3 As3
NEC ODP PC-9821-E02 3倍 100MHz Intel iDX4 16KB 27,800円
PC-9821-E03 2.5倍 83MHz Intel Pentium (P24T) 32KB × 39,800円
Intel ODP DX4ODP 3倍 100MHz intel DX4 16KB  
DX4ODP (R) 3倍 100MHz intel DX4 16KB  
PODP5V83 S 2.5倍 83MHz intel Pentium (P24T) 32KB ×  
メルコ/ バッファロー CPUアクセラレータ HAS-33T 3倍 100MHz Intel iDX4 16KB 46,000円
HAS-33TP 3倍 100MHz Cyrix Cx5x86 16KB  
HAS-33QP 4倍 133MHz AMD Am5x86P75 16KB 24,800円
I-O DATA CPUアクセラレータ PK-A586/98 4倍 133MHz AMD Am5x86P75 16KB 24,800円

● ライトバックについて

 本項で度々出てくる「ライトバック」とは何ぞやと云うことで少々説明します。ここで言うライトバックとは、CPU内部にあるキャッシュメモリの仕様の事です。従来 (ライトスルー方式) では、CPUで演算処理を行う際に CPUの外にあるメモリからデータを読み出し CPU内部のキャッシュメモリにデータをコピー、演算処理でキャッシュメモリのデータを書き換えるたびにメモリのデータも書きかえると云う動作をしていました。この方法ではキャッシュメモリと外部メモリとの間でデータの不整合が無く安全なのですが頻繁に外部メモリにアクセスすることになるので処理速度はあまり向上しません。
 そこで新たに考えだされたのがライトバックです。ライトバックでは、演算処理で CPUのキャッシュメモリに外部メモリのデータを読み込むと演算処理時にキャッシュメモリ内のデータのみを書き換え、ある特定のタイミングで一度に外部メモリにデータを書きこむことで外部メモリとのアクセスを減らし高速化を実現するというものです。高速なキャッシュメモリ内で完結する繰り返し演算で高速化ができると云うメリットがあります。このライトバック方式では従来より 10〜 25%程度処理が高速化しています。もちろん、ライトバック方式にはデメリットもあり、この方式では一時的であれキャッシュメモリのデータと外部メモリのデータが異なることになります。よって DMAアクセスと云った CPUを介さず直接に外部メモリのデータへアクセスすると不整合となりエラーが発生する可能性があります。
 この様な問題点も有りますが、適切にキャッシュメモリと外部メモリのデータの受け渡しをできるようパソコンの BIOSが対応していればユーザー側が意識する事も無いので、Pentium以降の CPUではこの方式が一般化しています。ちなみに、キャッシュメモリのライトバックによる高速化については x86CPUでは Cyrix製 CPUではいち早く導入されました。Cyrix製 CPUに載せ換える際に、キャッシュコントロールドライバが必要になるのはこのためです。CPU以外でも HDDや MOと云った外部記憶装置とのデータの受け渡しについても現在ではライトバック方式が一般化しています。

 PC-9821Ap3や PC-9821Xsの様な 486機としては後発ですが、ライトバック対応と云う点で見ると初期の部類なので、ライトバックとメインメモリより高速なセカンドキャッシュメモリとの間でトラブルが起こることが間々あります。よって、CPUアクセラレータを製造しているメーカーでは、トラブルを避けるためセカンドキャッシュとの併用を保証しない製品が多いのです。

● PentiumODPについて

 PentiumODP (PODP5V83) は、CPUコアに Pentiumコア (P24T) を使用していますが、搭載されている Pentiumは元の Pentiumコア (P5、P54C) とは異なる点が大きく二つあります。
 まず、486系 CPUと Pentiumとでは、外部データバス幅が 32bitと 64bitで違うのでそのまま載せ換えることは不可能です。そこで、PentiumODPにはバス変換機構が内蔵されています。また、バス変換機構を組み込むとどうして変換時にウェイトが入ってきてしまいます。そこで内蔵キャッシュメモリの容量を従来の 16KBから 2倍の 32KBに増強し、バス変換時のロスをある程度抑えるようにしています。
 次に、動作電圧が従来の iDX2が 5Vに対し、Pentiumが 3.3Vと違うので、PentiumODPにはコア電圧を下げる電圧変換機構が組み込まれています。また、発熱の多い Pentiumでは CPUクーラが必要なのでファンによる冷却機構の無い 486機の為に CPUクーラーも取り付けられています。

 さらに、Petiumコアはキャッシュメモリのライトバック方式に対応しているので、PC-9821Ap3、PC-9821Xsの様なライトバック方式に対応した BIOSを搭載するパソコンでは更なる高速化ができます。PC-9821Ap2と云った旧式の 486機で PentiumODPを搭載しても本領を発揮しないと云うのはこのライトバック方式によるものです。特に、浮動小数点演算では、ライトバック動作をさせた PODP5V83が動作クロック 83MHzと低いながら AMD製 486互換 CPUである Am5x86P75の動作クロック 133MHzよりも高速です。

 なお、PODP5V83には、Sタイプと Kタイプがあります。両者の違いは、Kタイプには ODPのピンに薄い基板が取りつけられていて、Sタイプにはそれがありません。対応機種は、PC-9821Xs、PC-9821Xeでは Kタイプを、それ以外では Sタイプを使います。

 ちなみに、ODP、OverDriveProcessor は Intel社の登録商標です。注意しましょう。(^ ^;;

 PentiumODPはかなりの能力を持っていますが、バス変換機構がある故にオーバークロック耐性が低いという点が残念なところです。Intelの Pentium推進戦略が大きな要因ですが実際に動作クロックが 83MHz以上の製品は登場しませんでした。耐性については諸説ありますが 83MHz版でも良くて 90MHz辺りが良いところです。当方が実験した限りでは 63MHz版を 83MHzで動作させると二、三分でフリーズしました。

● Socket 6の改造

 Socket 6は Socket 3に比べてソケット右下隅の穴が 1個所少なく 236ヶ所です。一方、PODP5V83Sはピンの数が 237本と一本多いので、そのままでは Socket 6に物理的に取り付けることができません。そこで、載せるにあたり以下の三つの方法があります。

  • PODP5V83Sの余分なピンを折る (動作上問題無い)。
  • マザー上の Socket 6に穴を 1個開ける。
  • 237ピンの ICソケットを入手し Socket 6から Socket 3への変換下駄を作る。

 この中でもっとも賢明な方法は 3番目ですが、ソケットの入手が面倒 (一応、電子部品を扱う店で購入可能) なので、後でパテ埋めすれば良いと云う事で 2番目の方法を採用しました。不可逆な改造なので、どちらかというと第二研究室向きの内容です。(^ ^;;

 まず、Socket 6上のヒートシンクと iDX4を外します。外した iDX4はトラブル発生時の原因の切り訳に必要なので大切に保管しておきます。外したところで、ソケットレバーを下ろしておきます。

 さて、CPUソケットに穴を開ける訳ですが、最も簡単な方法は適当な大きさのペーパクリップを伸ばしてペンチで摘まみ、伸ばした先をライター等で赤熱するまで加熱し、マザーボード上の CPUソケットの任意の位置に真っ直ぐ上からグッと押し付けます。すると、熱でソケットの樹脂が解けて穴が開きます。一度で上手く行かない時は、加熱時間を長くし何度か繰り返します。

 ポイントは、加熱する前に伸ばしたクリップをしっかりペンチで固定する点です。ぐらついていると真っ直ぐ刺さらなかったり、思わぬところに穴があいたり、最悪やけどする場合があります。次の画像は、加工後のソケットです。左上隅の赤い丸で囲った部分が穴が開けた場所です。

Socket 6 改造後

● PODP5V83Sの搭載

 次に、ソケットのレバーを半固定の状態にし、PODP5V83Sをソケットに挿します。完全に刺さったところで、レバーを倒して固定します。

Socket 6に PODP5V83S

 あとは、取り付けた後、ルーフカバー等を元通り取り付け、電源を入れて「ピーポッ」と若干間延びした音が鳴れば、成功です。今までが嘘のようにとはいきませんが処理速度が向上します。なお、手元の PC-9821Ap3では、自動で PentiumODPを認識しライトバックが ONに成りましたが、念の為、適当なソフトでチェックすることをお勧めします。

 なお、PC-9821Ap3/ As3を含む PC-9821Xp/ Xs/ Xe以降の機種では Intel製 CPUや ODPであれば BIOSで制御できるのでキャッシュコントローラをインストールする必要はありません。

● 結果

 最後に、PODPを使い MS-DOS Ver 6.2上と Windows95上でベンチマークを取ってみましたので、参考にしてください。使用ソフトは、I-O DATAの 「INSPECT Ver 1.03」 と 「HDBENCH Ver 2.610」です。

製品名 CPUコア 動作倍率 動作周波数 Dhrystone(点) Whetstone(点) 総合(点)
iDX4 iDX4 3倍 100MHz 31914 28034 37500
PODP5V83S P24T 2.5倍 83MHz 44117 43859 52860

 参考までに「INSPECT Ver 1.03」のデータベースでは、ノーマルの PC-9821Af (Pentium 60MHz) が総合で 40000点です。

 Windows95上では、次のようになりました。

★ ★ ★ HDBENCH Ver 2.610 ★ ★ ★
使用機種 PC-9821Ap3/C8W
Processor PODP83 83.5MHz [GenuineIntel family 15 model 3 step 2]
解像度 800x600 65536色(16Bit)
Display [X]スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821 シリーズ)
Display PC-9821 As3,Ap3,Xs,Xp,Xn (S3)
Memory 39,356Kbyte
OS Windows 95 4.0 (Build: 950)
Date 2000/ 5/23 13:29

SCSI = I-O DATA SC-98V(非PnPモード)
HDC = スタンダード IDE ハード ディスク コントローラ

A = GENERIC IDE DISK TYPE00
B = GENERIC NEC FLOPPY DISK
C = GENERIC NEC FLOPPY DISK
D = NEC CD-ROM DRIVE:260 Rev 2.05

ALL Text Scroll DD Read Write Cache Drive
3007 4839 5110 4444 3121 2075 59 2 2076 2333 4631 A:10MB

 測定当時、メモリは純正品で 40MBに増設していました。現在の機器の構成については、電算機管理室の項を参照してください。感想としては、セカンドキャッシュとの相性が若干気になっていましたが、負荷をかけてもトラブルは無く動作自体は Intel純正 ODPということもあり非常に安定しています。
 また、ライトバック対応ということも有り、浮動小数点演算処理が物を言う Windows95上では若干の高速化が体感できます。逆に、動作クロックが元の iDX4の 100MHzより低いため、クロック周波数が物を言う MS-DOSアプリケーションでは若干遅くなりました。

● 486互換 CPUの搭載

 これら、CPUの換装は、改造行為となり保証外になるので自己責任で行ってください。詳しくは注意事項をお読みください。

 また、PC-9821As3では、電圧変換のできない Socket 3なので電圧変換ソケット (下駄) が必要になります。そのまま換装すると CPUやマザーボードを壊す可能性があるのでくれぐれもご注意ください。

 PC-9821Ap3では、電圧変換ができるので、PC-9821As3とは違い CPUアクセラレータや PentiumODP以外でも AMD製や、Cyrix製 486互換 CPUがそのまま搭載できます。以下が、代表的な 486互換 CPUです。

 代表的な 486互換 CPUです (コプロセッサの内蔵と動作電圧 3Vは共通)

メーカー 商品名 クロック倍率 動作クロック 内部キャッシュ (合計) WB 特徴 (詳しくは 企画課へ)
AMD Am486DX4 3倍 100MHz 8KB 対応 iDX4と互換性が高く、ライトバック機能を追加したCPU。
Am5x86P75
(Am486DX5)
4倍 133MHz 16KB 対応 486の高クロック版で、コアの改良が行われ、整数演算処理が PODP5V83より高速。
Cx5x86 Cyrix 3/4倍 100/ 133MHz 16KB (統合) 対応 Pentiumに近く、同クロックの AMD製品より高速。ただし、互換性が低く PC-9821Ap3では、安定動作しないことが多い。

 PC-9821Ap3の 486互換 CPUへの換装についての注意点は、AMD製ではライトバック (WB) を有効にするために、BIOSにソフトウェアで WB有効を通知する必要があります。このソフトウェアについては、「WBTOOL」等があります。A-MATEr's HomepageVectorよりダウンロード可能です。

 一方、Cyrix製 Cx5x86では、CPU内部の構造の違いもさることながらライトバック方式の互換性が Intelや AMDと比べて低いので、パソコン側のライトバックを有効にせずキャッシュコントロールドライバで制御する方が無難です。

メモリの増設

 さて、ODPを使って高速化したら、早速メモリを増設しましょう。メモリの増設の方法は、マザーボード上の 4カ所の SIMMソケットに増設または標準のものと交換します。1枚辺り 32MBまでの SIMMを使い、メモリ容量を最大 128MBまで増やすことができます。
 本機では、PC-9821Ap2等の旧機種でありがちな専用メモリボードが必要ないので、特に面倒な事も無く、そのままパリ付きの 72pin FP (ファーストページモード: Fast Page Mode) SIMM を直接マザーボード上に増設できます。

 メモリの増設には、Cバススロットに近い側のソケットから順番に増設します。取り付けるスロットを間違えると正常動作しません。

 PC-9821Ap3/ As3ではコスト削減のため従来のようにマザーボードにメモリチップが搭載されていないので SIMMソケットにメモリモジュールを取り付けないで起動すると「MEMORY ERROR」とモザイクを表示して正常起動しません。ご注意ください。

● メインメモリについて

 PC-9821Ap3/ As3で使用できる SIMMは、パリティチェック (パリ) 付き 72ピン FP SIMMです。パリ無しのメモリを装着すると起動時に「PARITY ERROR」が出て起動しません。PC-9821正式対応品を選ぶのがベストですが、JEDEC規格に対応しているのでよほど変わった構成で無い限り PC/AT互換機用、Mac用でも使用できます。

Buffalo EMF-32M

 パリ付きメモリとパリ無しメモリの見分け方はチップの個数で見分けます (後述)。

 似た SIMMメモリに PC-9801-61及び互換 SIMMがありますが仕様が違うので動作しません。ECC付き EDO SIMMは、一見正常動作するように見えますが、MS-DOSの画面描画が乱れると云った不具合が出る事があります。EDOか FPの大まかな見分け方としては、DRAMチップの型番の初めの 4〜 7桁の数字の並びの末尾が「05」の物はほぼ EDO DRAMです。
 サーバ用メモリで 72ピン SIMMに似て非なる 144ピンのメモリが有りますのでご注意ください。モジュールにピン番号が書いて有るのでそれで判断できます。

 SIMMには、PC/AT互換機用でよく見かける端子が銀色のシルバーコンタクトと金メッキの物があります。どちらでも構いませんが、SIMMソケットが金メッキの場合は、異種金属同士を接触させるとノイズが発生する事があるので金メッキの方を選ぶとノイズの影響を受けにくくなります。

 FPM対応 DRAMチップには 60nsの物と 70nsの物がありますが、PC-98に於いてはどちらを使ってもデータ転送速度が速くなるといったメリットは有りませんし、両者が混在しても動作に大きな影響は有りません。ほとんど存在しませんが、64Mビット DRAM搭載の物は PC-9821Ap3では正常に容量を認識しません。

 メルコ (バッファロー) 製の一部の SIMMに搭載されているパリティジェネレータとは、本来必要なパリティチェック用 DRAMを搭載せずに、代わりにパリティチェック用のデータを生成するチップを装着して起動時にエラーで弾かれないように細工したものです。当時 DRAMチップが高かったので価格を安く抑えるためこの様な技術が登場しました。この SIMMを利用する場合は、パリティジェネレータ搭載の SIMMで統一する必要があります。パリ付き SIMMを混入すると正常動作しない場合があります。

代表的なメモリサブボード (パリ付きの 72ピン FP SIMM)

メーカー 製品名 容量 枚数 標準価格(税別) 備考
NEC PC-9821A-B02L/ B03L/ B04L 4〜16MB 1枚 30,000〜140,000円
SV-98/2-B01/ B02 16〜32MB 1枚 160,000〜330,000円
PC-9821BF-B01 32MB 1枚 310,000円
メルコ/
バッファロー
EMF 8〜32MB 1枚 5,000円〜21,000円
EMW 16〜64MB 2枚 8,000円〜42,000円
EMF-P 8〜32MB 1枚 4,000円〜19,800円 パリティジェネレータ搭載
EMW-P 16〜64MB 2枚 6,000円〜37,800円 パリティジェネレータ搭載
I-O DATA NE-SIMXA 16〜64MB 2枚 オープン価格
NE-SIM36 32MB 1枚 14,000円

 パリ付き 72ピン FP SIMMは店頭での入手は中古品でもほぼ不可能です。一時期 16ビット DRAMの需要が減っために価格が高騰したことがありました。2012年現在は、ジャンク品で有れば数百円で買えますが、動作チェック済みの物は 1,000円から 2,500円程度とやや高めです。

● セカンドキャッシュについて

 さて、セカンドキャッシュは、簡単に言うと高速で動作する CPUとメモリの間のデータ転送速度の差を埋めるものです。特に頻繁にメモリの内容を書き換える繰り返し演算の高速化に威力を発揮します。本機では 最大 256KBまで増設できます。セカンドキャッシュメモリの有る無しでは、処理能力が体感で分かるほど違います。PC-9821As3の様に (PC-9821Ap3でもジャンクで買ったら抜かれていた等 (^ ^;;) 無い場合は 128KBの増設をお勧めします。
 ただし、すでに、128KB搭載している PC-9821Ap3 (中古で PC-9821As3を買ったらラッキーなことに 128KB増設されていた等) のような場合は、あえて追加増設する必要はありません。256KBまで増やしても殆ど処理速度に違いが出ないのでコストを掛ける程の意味はありません。これも今や全て生産終了で手に入れるには中古在庫を探すしか有りませんが、見つけることは難しいでしょう。

代表的なセカンドキャッシュ

メーカー 製品名 容量 標準価格(税別)
NEC PC-9821A3-B01 128KB 30,000円
メルコ/ バッファロー SA3-128J 128KB 19,800円

パリ付きと無しの FP SIMMの見分け方

 SIMMの価格の高騰から中古品やジャンク品の入手を検討する方もいらっしゃると思います。その時に意外と見分けるのが難しいのが、パリ付きとパリ無しの SIMMです。そこでここでは、Oh!PCの 98年 5月 1日号の P.72を参考に簡単な見分け方を紹介します。

 ちなみに、ECC対応 EDO SIMMと ECC非対応 EDO SIMMといった SIMMだけでなく、最近の DDR SDRAM DIMMでの ECCの対応と非対応の見分け方も同じです。

  1. パリ無し SIMMは、SIMMを構成する DRAMの最小単位が 2個なので、2、4、8、16、32個の DRAMチップが載っている。
  2. パリ付き SIMMは、SIMMを構成する DRAMの最小単位が 3個なので、3、9個の DRAMチップが載っている。
  3. 2と 3の公倍数と同じ数の 6、12、18、24、36個の DRAMチップが載っている SIMMについては、チップの構成からパリ付き SIMM。
  4. ただし、パリティジェネレータ搭載 SIMMや、ダミーチップの載った SIMM等の特殊な SIMMはこの限りではない。

 ちなみに、PC-H98 model105と PC-H98 modelT専用 SIMMである「PC-H98-B14」は、パリ付きですが DRAMチップは 2の倍数である 8個です。これはパリティ分の 1ビットを追加した特殊な DRAMチップを使用しているからです。(^ ^)b

 また、「PC-9801-61」やその互換の SIMMは、パリ付きなのである程度は見分けがつきます。(^-^)

内蔵グラフィックアクセラレータの解像度を増やす

● 解像度の拡張について

 PC-9821Ap3/ As3に搭載されているグラフィックアクセラレータは、ローカルバス対応チップとしてはかなり能力の高い S3製 Vision864 (86C864) を採用しています。それ故にグラフィックボード拡張の必要性がないのですが、残念なことに画面モードが 640×480、1024×768、1280×1024ドットの 256色と 640×480、1024×768の 32bitフルカラーにしか対応していません。ですがこの画面モードを DirectX3以降のドライバをインストールして、設定ファイルに細工をすることで増やすことができます。

 なお、詳しい方法は、同じグラフィックチップを搭載している PC-9821Xsのグラフィックアクセラレータの項を参考にしてください。

 ただし、高解像度にするとロットによっては、画面がボケたり、ゴーストがかかったり、全く表示できない場合があります。ボケる程度であれば、アナログ RGBコネクタの途中に有るフェライトビーズを外すことで改善する可能性があります。ただし、その周辺にノイズをばら撒くことになるのでご注意ください。全く表示されない場合には、諦めるか、ダメ元で別の PC-9821Ap3に買い換えるしかありません。(^ ^;;

● 結果

 ちなみに、自分の場合は、800×600ドットにするとわずかにボケます。また、1024×768ドットの Highcolorと 800×600 Fullcolorは表示できませんでした。 (T_T)

 そのほか、SCSIボードのスルー化は PC-9801FAと同様に、I-O DATA製 Cバス対応 E-IDEボード IDE-98での IDE HDDの搭載は PC-9821Ap2と同様なので、ここでは省略します。(^ ^;;

フロッピーディスクの内蔵

 PC-9821Ap3/ As3の Windowsモデルで FDDを 2ドライブ使用したい時や、その他のモデルでも本体実装と違うタイプの FDD (例えば U2モデルにに 5インチ FDD等) を利用したい場合には、ファイルスロット内蔵用または、外付け用のドライブを接続することで利用できるようになります。以下は純正オプションの一例です。

 なお、Windowsモデルでファイルスロット用 FDDを使用する際には、ファイルスロットアダプタ「PC-9821A3-E02」が必要になります。

 全モデルで 1MBタイプ増設 FDDインターフェースは有りません。外付けの FDDを接続する場合は、1MBフロッピィディスクインタフェースボード「PC-9821A2-E02」が必要になります。注意としては、このボード単体では FDD I/Fとして機能しません。本体の FDD I/Fから信号を引き出し、10ピンの補助ケーブルと共にボードに接続する必要があります。ファイルスロット用 FDDユニットを増設する場合は、インターフェースボードは要りません。

対応コネクタ 型番 種類 対応機種 補足
本体内蔵用 PC-9821A2-E01 3.5" 3モード 2HD FDD PC-9821An/ Ap2/ As2/ Ap3/ As3
その他、OP-98X/10W、OP-98X/20W、文豪 DP-60/ 70Fでも使用可能
Windowsモデルで、3.5" FDDを増設する場合に使用。
ファイルスロット 内蔵用 PC-9801-F04 3.5" 2HD FDD PC-9801FA, FS, FX
A MATE全機種
5" FDDモデルで、3.5" FDDを使いたい場合に使用。
PC-FD511F 5" 2HD FDD 3.5" FDDモデルで、5" FDDを使いたい場合に使用。※1
PC-FD321F 3.5" 3モード 2HD FDD A MATE全機種 5" FDDモデルで、3.5" FDDを使いたい場合に使用。
ファイルベイ 内蔵用 PC-FD511D 5" 2HD FDD PC-9821Ap3/C8W、PC-9821Ap3/C9W、PC-9821As3/C8W
98MATE X全機種、98MATE R全機種等
ファイルベイモデルで 5" FDDを使いたい場合に使用。※1 ※2
外付け用 PC-FD512R 5" 2HD FDD 1MB FDD I/F搭載機 5" FDDドライブユニット。
PC-FD312R 3.5" 2HD FDD 3.5" FDDドライブユニット。

 ※1 本体の仕様上、3.5" 2ドライブ搭載のマシンでは、増設した 5" ドライブで 2DDのフォーマットができない。フリーソフトで回避可能。

 ※2 PC-9821Ap3/C8W、PC-9821Ap3/C9W、PC-9821As3/C8Wでは、専用接続ケーブル「PC-9821A3-K03」が必要。

● Windowsモデルに FDDを増設する

 PC-9821Ap2/ As2以降の FDDが 1ドライブのモデルでは、FDDパネルが交換可能となり専用オプションで 2ドライブ目の FDDを増設できるようになっています。なお、98MATE Aシリーズでは、他のモデルとは異なりフロントマスクを外してジャンパの設定を行う必要があります。正しく設定しないと FDDが正常動作しないばかりか故障の原因になるのでご注意ください。

 PC-9821Ap3/ As3では、増設用 3.5インチフロッピィディスクドライブ「PC-9821A2-E01」が対応しています。これは、2FDDパネルとケーブル FDD、ネジがセットになったものです。

 FDDの増設方法は、ルーフカバーとフロントマスクを開け HDDカートリッジを外します。2ドライブ目の目隠し金具を外し、FDDドライブを挿入し正面の二箇所と側面の一箇所をネジ止めして、ケーブルを二股の物に取り換えます。続いてフロントマスクの FDDパネルを 2FDD用に交換します。

 最後に、FDD設定変更用ジャンパスイッチがフロントマスクを外すと本体前面中央部に有るので、ショートポストを右から左に移します。

PC-9821Ap3の保守

PC-9821Ap3/ As3 2012年で製造から 20年程度経過しています。今後も正常に使用するにあたって幾つかのポイントを挙げておきます。

● FDD

NEC製 5インチ FDDの FD1158C  NEC製 3.5インチ FDDの FD1148T

 PC-9821Ap3/M2で使用されている FDDは、NEC製の「FD1158C」という VFO無しの 1MB、640KB両対応の 5インチドライブです (画像左)。このドライブは、コンデンサの液漏れによってセンサーのパターンが破断してモーターが焼ける事があります。電源を入れると大きな異音がするので分かります。

 対策としては、液漏れしてパターンが切れる前にコンデンサを交換することです。パターンが切れてしまっている場合は、繋いで様子を見ますが、モーターが焼けている場合はドライブを交換する以外に有りません。

 PC-9821Ap3/U2他、Windowsモデルの NEC製「FD1148T」VFO無し 1MB、640KB両対応の 3.5インチドライブ (画像右) でもコンデンサの液漏れが発生する事がありますが、読み取りが弱くなるぐらいであまり大きな影響は出ない事も有って気が付かない事が多いです。液漏れしていたら、基板を洗浄してコンデンサを換えておくとよいでしょう。

 FD1148Tは、コンデンサ以外にモーターの軸部分が埃などで固着する例が多いです。FDD本体を裏返して円盤部分を指で回転させようとすると抵抗を感じる場合は、固着しています。グリスを軸部分に注入して指で回転させ、指で弾くような感じで触り数秒回転するようであればいいでしょう。ただし、5-56は NGです。樹脂を侵すうえ、揮発するので一週間程度で効果が無くなります。

 3.5インチドライブを交換する際は、PC-9821Ap2/ As2で使用されている FD1138Tも使用可能です。ただし、MATE Xで使用されている FDDには 34ピンコネクタの物があるのでご注意ください。

● カレンダ時計バックアップ電池

FDK製 リチウム二次電池の ML2430

 PC-9821Ap3/ As3で使用されている電池は、三洋 (現 FDK) の「ML2430」という 3V 100mAhの充電可能なリチウム二次電池です。場所は電源ユニットの下あたりに 3ピンのコネクタで実装されています。幸い 20年程度で液漏れする例は殆どありません。この電池を充電するには一昼夜電源を入れたままにするといいようです。充電できない場合は、起動毎に日付と時刻、セットアップメニューの設定、メモリスイッチの設定をやり直す必要があります。

 ML2430は 2012年現在でも FDKが製造していて入手は比較的容易です。形状が同じだからと言って PC/AT互換機のマザーボードで使用されている市販のリチウム一次電池 (使い切りタイプ) は絶対に使用しないでください。これを PC-9821Ap2/ As2に取り付けると本来充電禁止の一次電池を充電することになるので非常に危険です。

 機種によってPanasonicの「VL2330」が使われている事も有ります。こちらは 3V 50mAhです。両者は充電時の電圧がML2430は 3.1V±0.15V、VL2330は3.4V±0.15Vと異なりますが、3ピンコネクタのマイナス接続ピンを換える事で両方とも使えるようになっています。

 某オークションなどでは出品者が良く分からずにこの様な改造を行って本体を出品している事があります。仮にダイオードを噛ましていても、長期間使用していると劣化等で知らないうちに壊れている可能性があります。万が一ショートモードで壊れると電池側に電流が流れ大変危険です。リチウム電池は取り扱いを誤ると発火や破裂が比較的容易に起こりますのでご注意ください。
 また、ダイオードの性質として順方向降下電圧 (VF) があります。一般的なダイオードでは 0.6〜0.7V程度降下しますのでこの点にも注意が必要です。

 ちなみに、一般的な整流用ダイオードでは 1V程度降下するので、この性質を利用してダイオードを数珠繋ぎにして冷却ファンへの供給電圧を下げて静音化する改造が流行りました。(^ ^;;

 カレンダ時計バックアップ電池が必要な方は、所内売店保守部品フロアへどうぞ。新品の物を 1個 1,000円から 1,280円でお分けします。

● マザーボード

 この機種では、マザーボードが他の MATE Aシリーズとは世代が変わり通常のアルミ電解コンデンサに代わっていて、トラブルを起こす面実装タイプの四級塩電解コンデンサを使用していないので液漏れでマザーボードが故障する例はかなり少ないのですが、94年後半から95年 1月期製の前期型はジャンパ線が非常に多いためかどこかしらで不良を起こして起動不能になることが有ります。画面出力は有るものの大抵は「ピポ」音までたどり着かない為に何処に不良があるのか原因が掴めません。直せるには直せますがゲフンゲフン…(^ ^;;

 某オクでは比較的高値が付く機種ですがジャンパの多い前期型で未チェックないし通電チェックのみの物は経験上不良率が極端に高いです。この点で痛い目を見たくない方は最低限「ピポ」音が鳴るものを選ぶようにしましょう。PC-98ではどの機種でもビープ音が鳴るかどうかは非常に重要です。(^ ^)b

 グラフィックサブ基板ではチップタンタルコンデンサが使われていますがごく稀に焼損する事が有ります。異常を感じたらすぐに電源を切りましょう。このモデルはグラフィック周りでコストダウンの影響か画面にノイズが載りやすい印象を受けます。

 また、四級塩電解コンデンサを使用していない割には「EXTEND VIDEO RAM ERROR」、「KANJI CG RAM ERROR」と云ったグラフィック周りの不良も他の MATE Aシリーズに比べて出やすい印象です。該当する RAMを交換しても直らないのでグラフィック系のチップに何か弱点があるのかもしれません。

● サウンドサブ基板

PC-9821Ap3のサウンドサブ基板

 先に述べたとおりマザーボード自体には面実装タイプの四級塩電解コンデンサを使用していないのですが、残念な事に PC-9821An同様にオーディオアンプ類が載ったサウンドサブ基板に形は違いますが問題のコンデンサが大量に使われています。特に 4個ある 16V 200μFはその大きさから漏れる量も半端ないです。こちらの画像は PC-9821Ap3の物で電源の下辺りに実装されています。シャープの某 X68000で猛威をふるっているチップ電解コンデンサタイプです。(^ ^;;

 これらの液漏れでサウンドにノイズが載る、ステレオの片側のみ音が出る、ビープ音が鳴らない等の音声出力に不具合が出ます。進行の度合いはそれぞれ異なりますが、どの個体でもいずれは液漏れして不具合が出るので不具合が無くても早いうちに交換しましょう。ある程度進行してしまい基板全体が濡れた様な状態にまで液漏れが進んでしまうと ICチップやハンダが錆でダメージを受けてしまいコンデンサの交換だけでは治りません。最悪はサブ基板ごと交換になります。

 このサブ基板はパターンが弱く剥がれ易いのでご注意ください。交換するにはニッパーで電解コンデンサの円筒部分をブチブチ切って残った足を鏝で外す方がパターンへのダメージが少ないですが、大サイズの電解コンデンサは上手くやらないとパッドごと剥がれます。

 使用するコンデンサは音響用を使いたくなりますが、この真上に電源ユニットが来る事を考慮しましょう。背の高い電解コンデンサは頭が天井に閊えるので NGです。

 他にサウンド絡みの不具合では、電源の+12V系の不良でサウンドに雑音が出ると云った症状が稀に出ます。

● 電源ユニット

 PC-9821Ap2/ As2 /Ap3/ As3では、電源に PU729を使用しています。この電源は、トーキン製 (TOKIN、現:NECトーキン) と ASTEC (現:エンベデットパワー Embedded Power) 製、タムラ製作所製が有ります。いずれも電源が入らなくなるような故障は以前のモデルに比べて少ない (無い訳では無い) です。画像はトーキン製 PU729。

PC-9821Ap2の電源 PU729 (TOKIN製)

 経年劣化でコンデンサの容量抜けで半導体が劣化して +12V系供給電圧が下がって補助記憶装置が作動不良を起こす事はあります。特に、CPUアクセラレータや大容量の HDDを内蔵する、拡張ボードでスロットを埋めるような負荷が大きい状態では動作が不安定になる事も有ります。出力電圧が安定しない場合はコンデンサの交換で復活できますが、+12V系の電圧が極端に下がるような症状は半導体までやられている可能性が高く復活は不可能です。

 その場合は電源を交換するしか有りません。なお、コネクタの形状が同じですが、PC-9821Ap/ As/ Ae、PC-9801FA/ FS/ FXの電源「PU716」は使用できません。取り付けて電源を入れると保護回路が働いて電源が入りません。

● CD-ROMドライブ

 PC-9821Ap3、PC-9821As3ではファイルベイ仕様の NEC PC-CD60Dを搭載しています。このドライブではイジェクトボタンを押してもトレイが出てこない、途中で引っかかるケースが増えてきています。

 内部のイジェクト機構のモーターの回転を伝える樹脂製 (経年劣化により黄色みがかった色で、一見ゴムのような質感) のギアが潤滑油を吸ってしまうため摩擦で回転しにくくなることが原因です。ここに潤滑油を注せば回復する可能性があります。

 この樹脂製のギアは潤滑油の影響で触っただけで砕けるほど非常に脆くなっています。トレイが何かに引っかかって正常動作しないときに無理に強制イジェクトピンでトレイを引き出そうとするとその力で砕けて回復不能になります。こうした症状が出た時は絶対にトレイを無理やり動かさないようにしてください。

 使用する潤滑油はホーザン 浸透ルブ Z-296等の粘度が低く樹脂に影響の出ないものにしてください。CRC 5-56は樹脂を溶かすのでこのような用途に絶対に使用してはいけません。

 なお、すでに歯が欠けてしまっていたり砕けてしまっている場合は残念ながら回復は不可能です。油分のため接着できません。3Dプリンタを使って複製するぐらいしか手はないと思います。(^ ^;;

 ちなみに、動作不良やコンデンサ、電池交換でお困りの場合は、技術部にて修理や保守を承りますのでご相談ください。

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