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改造に当たって

 この改造は電源ユニットを調整する為に、操作を誤るとマザーボードを破壊する可能性があります。また、電圧を測定するためにテスタ (出来ればデジタル) が必要になります。
 このページの内容はメーカーの禁止している改造行為に当たるのでメーカー保証範囲外になります。修理も受けられません。また、この改造の結果により本体やデータが破損しても、当研究所では一切の責任はとりません。試してみようという方は全て自己責任で行ってください。

 なお、このページの解説で 120MHz化の改造方法が理解できない方は、大変危険ですので参考程度に留めて置きましょう (^ ^)b

はじめに

PC-9821Af/U9W

 NEC PC-9800シリーズ 98MATE (98メイト) PC-9821Afは、1993年 8月に国産パソコンで他社に先駆けて初めて Pentiumを搭載して発売された記念すべきマシンです。MS-DOS 5.0A-H (CD-ROM Extensions付属) と Windows 3.1がプリインストールされ、当時一般に別売りだったマイクやマウスが標準で付属し、バックアップ用にフルセットのフロッピーディスク (FD) 版 Windows 3.1が付属するという豪華セットで、標準価格が 120万円とまさに標準デスクトップで最高峰でした。

 PC-9821Afは、当時最高性能の CPUに加え i82496アドバンスド・キャッシュ・コントローラ (チップセット LSIの先祖) というキャッシュコントローラチップを搭載し、256KBの二次キャッシュメモリを標準で搭載していました。Pentiumは intelの発表当時のカタログによるとスーパースケーラ技法、分岐予測機能、キャッシュ機能の強化によって同クロックのi486に比べ 80%程度性能が上がっているようです。
 Pentium (P5) は当時では最高性能であった為か PC-9821Afでのオーバードライブプロセッサ (ODP) によるアップグレードは想定されていませんでした。

Soket4版 Pentium 60MHz

 この PC-9821Afに採用されている CPUソケットは、「Socket 4」と言う 5V仕様の Pentium用のソケットで普及する間も無く、翌年には Pentiumの仕様が 3.3Vに変わり「Socket 5」に移行してしまいました。「Socket 4」と「Socket 5」は動作電圧が違うだけでなく大きさやピン配置も直列と千鳥で異なるので、75MHz以上の Pentiumに対応していません。
 また、Socket 4自体が当時としては珍しく intelに早々に見切りをつけられた事に加え、PC-9821Af自体のカタログ性能以外での個体差が激しい為か、サードパーティー製 CPUアクセラレータも無いので CPUを高性能なものに交換することができません。(T_T)

 その後、Socket 4用 PentiumODP (PODP5V133) が登場しましたが、残念なことに PC-9821Af、PC-9821Bf、PC-9821Cf、PC-9821Xf、SV-98model1では、単に非対応なだけでなくそのまま交換しても正常動作しません (SV-H98model50fは不明、EPSON製 98互換機では動作するものもあるそうです)。これらの機種では、CPUのパワーアップはせずメモリの増設や HDDの高速化など他の面でパワーアップする以外に方法はありません。
 他には、Socket 4用電圧変換ソケット (下駄) の Power Leap製「PL-P54C/MMX」もありますが、この下駄は、intel製 i430LX (Mercury) マザー用の為に、PC-9821Afでは数十ヶ所の配線と幾つかの部品を追加しないと CPUが生きている証の「ピポ」すら言いません。(^ ^;;
 ちなみに、PC-9821Afで AMD製 K6シリーズ等を動作させる為には、ハードウエアの改造に加えパソコン本体の BIOS (ITF) を焼き直さない限り搭載できません。(T_T)

 では Socket 4マシンでパワーアップする手段は全く無いのかというと PC-9821Afの場合では、電源ユニットの出力電圧を調節することにより PODPが動作する可能性が有る事がPC-98関係の掲示板「どるこむ」等の情報で分かりました。

 そこで、今回はこの情報を元に PC-9821Afの CPUを PODP5V133に換装してみようと実験しました。

使用した PC-9821Af

82496アドバンスド・キャッシュ・コントローラ    82491キャッシュ・メモリ

 今回 120MHz化に使用した本体は、93年 7月期製造で、アドバンスド・キャッシュ・コントローラ (i82496-66、写真左)、キャッシュ・メモリ (i82491、写真右) 共にシステムクロック 66MHz対応チップです。製造ロットによっては、どちらかが 60MHz対応チップだったり、両方とも 60MHz対応チップだったりする事が有ります。

 PC-9821Afは当時システムクロック 33MHz動作が一般的 (486機の一部で 50MHzの物もあった) だった頃に、システムクロック 60MHzと極めて高速だった事も有ってか、動作の安定化の為にマージンの多い 66MHz対応チップを採用したと考えられます。
 ちなみに、キャッシュコントローラが 66MHz対応チップの場合には、水晶発振器の交換で 66MHzにクロックアップできるらしいです。

 この PC-9821Afに無改造で PODP5V133と交換すると「ピポッ」と鳴って起動こそしますが、Windowsを起動させると起動途中にフリーズします。(^ ^;;

intel製 PentiumODP PODP5V133

 ここで登場する PODP5V133は Socket 4を搭載する PC/AT互換機用の ODP (オーバードライブプロセッサ、ODP, OverDriveProcessor は intel社の登録商標です。注意しましょう (^ ^;;)。 で Pentium (P5T) を搭載していますが、搭載されている Pentium (P5T) は元の Pentium (P54C) とは若干違います。
 どこが違うかと言うと、動作電圧が Pentium (P5) が 5Vに対し、Pentium (P54C) が 3.3Vと違うので電圧変換機構が組み込まれています。また、CPUクーラーへの電源供給のためピンの数やチップの大きさ、ピン配置等も異なります。
 また、内部逓倍設定は 2倍に固定されているのでシステムクロック 60MHzの場合は 120MHz、システムクロック 66MHzの場合は 133MHzで動作します。

 ちなみに、CPUクーラを外して動作させるとファンの故障と判断してリミッターが働き内部逓倍設定が 1倍 (等速) になってしまいます。

改造の手順

● 出力電圧の調整

 PC-9821Afで PODP5V133を正常に動作させるには、パソコン本体の電源ユニット「PU726」の +5V系の出力電圧を調整します。具体的には無負荷時で、4.78Vになるように半固定トリマで調整します。
 4.78V近くになると電源ファンの回転音が僅かに高く変わります。半固定トリマで電圧を調整するときは、ちょっとずつゆっくり回します。ぐるっと大きく回すようなことはしません。速く回すと保護回路が働いて電源が切れることが有ります。

 PC-9821Afの電源 PU726には トーキン (TOKIN) 製と サンケン電気 (SANKEN) 製があります。どちらも +5V系は外部から調整できるようになっています。ちなみに、自分の PC-9821Afでは、トーキン製電源でデフォルトでは 5.11V (実測) でした。

 なお、電圧を調整するときには必ずテスタを利用してください。テスタで測定をせずに半固定トリマを弄るのは電源回路の焼損リスクが高く極めて危険です。使用するテスタは、下二桁まで合わせるのでデジタルテスタが便利です。

● ODPの取りつけ

 電源の改造が終わったら CPUを交換し ODPを取りつけます。

PC-9821Afの CPUボード G8NZB

 ルーカバーを開き向かって左側の CPU室のカバーを外し、CPUボード「G8NZB」を取り出します (写真上)。取り出したらヒートシンクを外しソケットのレバーを上げて CPUを外します。

 CPUを外したら CPUソケットに PODP5V133を取り付けて元のように組み上げます。外した CPUはいざという時のために保管しておきます。

★ 動作確認

 PC-9821Af本体を元通りに組み立てたら電源を入れます。電源を入れて「ピポッ」と鳴ればまずは成功です。あとは、FDDで MS-DOS等を起動しこの段階でフリーズなどトラブルが無ければ、HDDから OS (インストールされていれば) を起動してみます。正常に OSが起動できれば成功です。

 もし、電源を入れて 「ピポッ」 と鳴らない場合や、直ぐに電源が落ちる、煙や異臭がする場合は直ちに電源を切って、ODPや CPUボードの差し込み不足はないか、電圧の異常はないかをチェックします。

 それで駄目な場合は、残念ながら本体との相性が悪いと言うことで諦めるしか有りません。m(_ _)m

改造結果

改造後のベンチマークは以下のようになりました。

★ ★ ★ HDBENCH Ver 2.610 ★ ★ ★
使用機種 PC-9821Af/U9W
Processor Pentium 119.9MHz [GenuineIntel family 5 model 1 step A]
解像度 640x480 256色(8Bit)
Display [X]スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821 シリーズ)
Display ウィンドウ アクセラレータ ボード A2 (Matrox)
Memory 80,316Kbyte
OS Windows 95 4.0 (Build: 950)
Date 2002/ 5/31 13: 5

SCSI = MIDORI ELEC. SCSI-2 I/F MDC-926Rs(PnP-OFF)

AB = SEAGATE ST32430N Rev 0614
C = GENERIC NEC FLOPPY DISK

ALL Text Scroll DD Read Write Memory  
6043 6930 7318 12525 4951 11845 216 0 2731 1833 6465 A:10MB

 感想としては元の Pentium-60MHzに比べて動作クロックが二倍になったぶん整数演算と浮動小数点演算がおよそ二倍と格段に上がり体感的にも速くなりました。PC-9821A-E11 (Matrox MGA-II) のグラフィック機能も演算処理の向上により矩形とテキストでアップしました。
 しかし早くはなっていますが PC-9821Afはメモリへの書き込み速度が PC-9801FA (i486SX 16MHz) より遅いので (^ ^;;、それが足を引っ張りベンチマークの数値ほどの速さは感じられません。

  今のところ、半日ほど電源を入れっぱなしにして作業していてもフリーズやエラー等の問題は発生していません。(^-^)



パソコン工房

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PC-98, PC-9821, 98MATEは NEC社の商標または登録商標です。

Pentium, ODPは intel社の商標または登録商標です。

Windows, MS-DOSは Microsoft社の商標または登録商標です。

この他、製品名、型番等は、一般に各メーカーの商標または登録商標です。