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改造に当たって

 本ページに掲載されている行為は、メーカーの禁止している改造行為に当たるので当然メーカー保証外になります。また、この改造の結果により本体やデータが破損しても当研究所では一切の責任はとりません。試してみようという方は全て自己責任で行ってください。

実験環境

NEC 98MATE R PC-9821Ra333

使用機種: PC-9821Ra333/W60
CPU: ES版 PentiumIII (Coppermine, QEJ1ES)
使用アダプタ: Powerleap PL-iP3 Rev 2.0
使用クーラー: SANYO Socket370用クーラー
コア電圧: 1.75V
システムクロック: 83.81MHz (18MHzの水晶振動子で原発乗っ取り)
動作クロック: 1GHz (12倍動作)
メモリ: MELCO EMH-E 128M x2 (256MB)
OS: Windows95 OSR1

ES版 PentiumIII (QEJ1ES)             原発周辺

 (写真左) ES版 PentiumIII (Coppermine コア, QEJ1ES)
 (写真右) 原発 (水晶発振子) 周辺、チップセット (i440FX) にはヒートシンク装着。

1GHz動作時の WCPUID

 1GHz動作時の CPUIDの画像ですが Ver. 3.0dでは仕様上 PC-98の場合にクロック周波数が半分に表示されています。また、クロック測定の誤差によりやや低めになっています。

 ちなみに、その後 CPUクーラーは カノープス (Canopus) の Firebird R7に変更しました。普段は 16MHzの水晶振動子を使って 892MHz (74.49MHz *12) で動作させています。Tualatinコアの Celeronが使えれば 14倍動作で 1,042MHzなんですが、残念なことに PC-9821Ra333では ITFで弾かれてしまいます。(^ ^;;

クロックアップの方法

水晶振動子と水晶発振器

 CPUの動作クロックを限界以上に上げる方法としては、システムクロック (俗称:ベースクロック) を規定以上に上げる方法が一般的です。PC/AT互換機の自作パソコン用マザーボードでは元からこう言った機能を持っている物が多いですが、メーカー製パソコンでは改造する以外にありません。NECのパソコン PC-9800シリーズ (PC-98) に限ると一般に次のような方法があります。

  1. 水晶発振器の交換
  2. クロックジェネレータ IC (通称、Phase-locked loop, PLL) の設定変更
  3. PLLに接続されている水晶振動子の交換

 1番はシステムクロック (25MHzや 33MHzなど) を生成している水晶振動子や発信器を高クロックの物に交換する方法です。初代 PC-9801から PC-9801BA/BX、98MATE Aシリーズ、98NOTE等の比較的古いマシンで一般的なものです。機種によってはシステムクロックだけではなく通信の為のクロックといった余計なものまで上昇してしまう為に、システムクロックとその他のクロックとのクロック分離やシリアル通信クロックの 5MHz系と 8MHz系を切り替える改造が必要になる場合があります。
 この辺りは技術評論社の「98パワーアップ改造名人」の本が詳しいです。いまでも中古で入手できるので興味のある方は Amazonなどで検索してみてください。

 2番はコンピュータの主要なクロックを生成している PLLという ICの設定を変更することで出力するシステムクロックを変更する方法です。98MATE Xなどでジャンパの切り替えでシステムクロックを 50MHz/60MHz/66MHzに変更できるのはこの為です。特に PC-9821V233/M7modelC2 (青札 Valuestar) 等ではチップ抵抗の移動と云った比較的簡単な改造で 74.5MHzに設定する事が出来ます。この場合はクロック分離は必要ありません。なお、それ以上に上げる場合は 3番の方法で行います。

 3番は PLLに接続されている水晶振動子を高クロックの物に交換するものです。98MATE Xシリーズ、98MATE Rシリーズ、98NOTE Lavieシリーズなど PLLを使用している機種で 66MHz以上にクロックを上げる場合にはこの方法で行います。この場合はクロック分離が必要です。以降はこの方法について詳しく紹介します。

 ちなみに、PC/AT互換機用マザーボード (メーカー製含む。NEC Express5800/S70シリーズなど) では BIOSの設定や OS上のアプリケーション「SetFSB」などで PLLを制御することで簡単にオーバークロックができる場合がありますが、いずれもメーカー保証範囲外の行為です。設定ミスでクロックが上がりすぎてマザーボードや CPU、メモリを焼損して壊した場合は保証を受けられなくなります。程々にしましょう。(^ ^)b

原発乗っ取り

 PC-9821Ra333といった 98MATE Rシリーズの場合、システムクロック (66MHz) は 14.318MHzの水晶振動子 (原発振) を基準に PLLで生成しています。これを 16MHzや 17MHzなどの高クロックの物に交換するとそれに伴ってシステムクロックも上がります。この様に水晶発振子を交換することを「原発乗っ取り」と言います。
 交換によってどのくらい上昇するかは、交換する水晶振動子のクロックをχとすると「χ÷14.31818」で求められます。例えば16MHzの物に交換したとすると1.11746倍クロックが速くなります。これを元のシステムクロック 66MHzに掛ければ原発乗っ取り後の周波数になります。よって 16MHzに交換した場合は 74MHzになります。計算が面倒という方は次の表をどうぞ。

原発振のクロック クロック上昇倍率 改造後のシステムクロック (MHz)
50MHzの場合 60MHzの場合 66MHzの場合
14.31818MHz 1.000000 50.00000 60.00000 66.66667
15.00000MHz 1.047619 52.38096 62.85715 69.84128
16.00000MHz 1.117460 55.87302 67.04763 74.49737
17.00000MHz 1.187302 59.36509 71.23810 79.15345
18.00000MHz 1.257143 62.85715 75.42858 83.80954
19.00000MHz 1.326984 66.34921 79.61906 88.46562
20.00000MHz 1.396826 69.84128 83.80953 93.12171
21.00000MHz 1.466667 73.33334 88.00001 97.77780
21.50000MHz 1.501587 75.07937 90.09525 100.10584
22.00000MHz 1.536508 76.82541 92.19049 102.43388

 98MATE Rシリーズで注意すべきは、PCIバス (33MHz:システムクロックの半分、2分周) とメモリ (66MHz) のクロックもこのクロックを基準にしている為に、これを交換すると両者のクロックも上昇してしまいます。一般的に規定外のクロックで動作させるとデータが化けたり、取りこぼしを起こしたりしてエラーが発生しやすくなります。
 その他にもキーボードとの通信やシリアル I/Fのその他のクロックも上昇しますが、PLLの REF出力ピン部分に元と同じ 14.31818MHzを接続してクロックを分離することで回避できます。

 また、クロックを上昇させた場合は、クロックの上昇に伴い発熱が増加するので発熱するチップにヒートシンクを張り付ける、クーラーを大型の物に交換するといった冷却に気を使う必要性が出てきます。よって、何処までクロックを上昇できるかはこれらの兼ね合いで決まるので実際に試す以外に分かりません。

 クロックアップの作業としては次の通りです。必ずハードディスクのデータは事前にバックアップを取っておきましょう。オーバークロックでデータ化けが発生した場合はデータが破壊され OSが起動しなくなる事が良くあります。

  1. 水晶振動子のソケット化
  2. 48ピン PLLの 3箇所を足上げ (1, 2, 47ピン: REF1〜3)
  3. 外した 14.31818MHzを 足上げした後のパターン (マザー側) に接続
  4. ソケットに水晶振動子を取りつけて動作確認 (出来れば 14.31818MHzの物)
  5. 高クロックの水晶振動子に交換

 元の2ピンの水晶発振子をハンダ鏝で外してより高クロックの水晶振動子に交換します。この時、いつでも元に戻せるように ICソケットを加工してソケット化しておくと交換作業が楽になります。

 特に注意点はありませんが、水晶振動子のグランド側は熱がベタパターンへ逃げてしまいハンダが溶けにくいので、40W以上のワット数の高い鏝を使うか時間をかけて温めるのがコツです。ハンダ吸い取り線よりもハンダ吸い取り器を使用した方が作業が楽です。無理に引き抜くとスルーホールごと抜けて断線してしまいますのでご注意を。

オーバークロック耐性

 一般にパソコンは既定のクロックで動作を安定させるために規定よりも低いクロックから高いクロックまでの範囲で正常に動作するように余裕 (マージン) を持たせて設計されています。そのため機種やマザーボードごとにある程度の傾向の様なものがありますが、実際にどこまでオーバークロックに耐えられるかどうかはパソコン個々によって違います。
 また、CPUやメモリ、拡張カードといった個々のパーツにもオーバークロックの耐性が別にある為に、どの機種でどの製造ロットだからここまで上がるということは言えません。

 経験上パーツの耐性としては、メモリでは PC-9821V233の例ですが SDRAM DIMMの場合 PC-66の物よりも PC-100対応の方がオーバークロックに耐性があります。
 PCIバス用カードでは アダプテック (Adaptec) 製 SCSIカードでは動作を安定させるため独自に水晶発振器を搭載してクロックを生成しているカードが有りこういった物では、PCIバスのクロックが上がっても影響が殆どありません。他にアイ・オー・データ (I-O DATA) の SCSIカードは PCIバスクロックの上昇に強く、UIDE-98の様な Ultra-ATAカードは弱い傾向があります。

 規定外のクロック (高い低いに関わらず) や温度の高い環境で動作させるとノイズの影響でデータが化けたり、取りこぼしを起こしたりしてエラーが発生しやすくなります。OSの動作が引っ掛かる (プチフリーズ)、フリーズして止る、リセットが掛かるといった症状として現れる場合はまだいいのですが、一見正常に見えてその裏でデータが壊されている事もあるので油断はできません。この様な場合は一般に冷却を強化するか、電源ユニットやBIOS設定などで出力電圧を調整して供給する電圧を数パーセント上げることで安定し易くなりますがマザーボードを焼損させる危険性が極めて高くなります。

 クロックをどこまで上げるかですが、1MHz刻みで少しずつ高いクロックの水晶振動子に交換していき、OSが起動しアプリケーションで重い負荷を長時間 (24時間がベスト) かけてテストを行い異常が出ないところが限界になります。実際に使用する場合はそれよりもやや下げた状態がベストです。

ベンチマーク結果

● HDBENCH 2.610

★ ★ ★ HDBENCH Ver 2.610 ★ ★ ★
使用機種 PC-9821Ra333/W60 (VDB16設定 メモリ =120, コア =108)
Processor Pentium II 1003.7MHz [GenuineIntel family 6 model 8 step A]
解像度 800x600 65536色(16Bit)
Display [X]スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821 シリーズ)
Display [X]PC-9821 TGUI968x,Cyber938x,Providia9685 (Trident)
Display GA-VDB16シリーズ
Memory 260,604Kbyte
OS Windows 95 4.0 (Build: 950)
Date 2002/ 7/27 9:47

SCSI = I-O DATA SC-U2PCIシリーズ
HDC[X]=スタンダード IDE ハード ディスク コントローラ

ABC = IBM DNES-309170W Rev SAH0
D = GENERIC NEC FLOPPY DISK
E = YAMAHA CRW6416S Rev 1.0d

メモリ速度 ALL Text Scroll DD Read Write Memory  
標準 47817 83926 63906 111670 33047 53370 658 74 17870 18091 47434 A:10MB
INTELSAT高速化 48355 83705 63723 111657 37342 53378 658 74 17932 18450 48291 A:10MB

 結果を見ると、CPU自体が、1.13GHz品なので、クロックの向上にともない、演算処理能力が大幅に伸びました。ただし、98MATE Rでは、メモリ周りが足かせとなり、800MHzを超えると、体感上の違いは感じられません。
 また、グラフィックアクセラレータの性能向上が頭打ちとなり、円以外は、733MHz動作時と、ほとんど変わりません。より高性能な物に交換すれば、グラフィック処理能力の向上は、望めますが、Voodobansheeを超えるものになると PC/AT互換機用 GAを選ばなければならなくなる (^ ^;;) ので、Win2000/NTが必須となってしまいます。よって、Win9xをメインに使う場合は 800MHz以上で動作させてもあまり意味は無いと言えます。

 なお、INTELSATは PCIチップセットのレジスタを書き換えるツールです。メモリのアクセスタイミング、PCIバスカードの設定、ECCチェックの有無などの設定が変更出来ます。どのレジスタが何処を指しているかは PCIチップセットの仕様書で確認できます。やたらに設定するとマザーボードが壊れますのでご注意を。改造行為に当たるのでもちろんメーカー保証外です。ご使用に当たっては自己責任でどうぞ。

<<参考>>

動作クロック ALL Text Scroll DD Read Write Memory  
733MHz (66.67MHz *11) 42702 61217 46656 114351 29224 53100 658 74 17964 18450 34743 A:10MB
892MHz (74.45MHz *12) 45475 74502 56726 111332 31237 52927 661 74 17932 18483 42072 A:10MB

● MemSpeed

メモリ標準

--- Memory Speed Test ----
DataSize Rate
--------------------------
4KB : 1219.27 MB/Sec
8KB : 1436.41 MB/Sec
16KB : 1555.75 MB/Sec
32KB : 1546.57 MB/Sec
64KB : 1478.95 MB/Sec
128KB : 1521.88 MB/Sec
256KB : 140.41 MB/Sec
512KB : 57.02 MB/Sec
1024KB : 48.45 MB/Sec
2048KB : 44.36 MB/Sec
4096KB : 44.32 MB/Sec
8192KB : 43.76 MB/Sec
--------------------------
Average : 761.43 MB/Sec
--------------------------
Pentium III1002.81MHz
L1 Data Cache Size 16KB
L1 Inst Cache Size 16KB
--------------------------

INTELSATによるメモリ高速化後

--- Memory Speed Test ----
DataSize Rate
--------------------------
4KB : 1242.39 MB/Sec
8KB : 1438.38 MB/Sec
16KB : 1562.71 MB/Sec
32KB : 1458.38 MB/Sec
64KB : 1487.34 MB/Sec
128KB : 1495.83 MB/Sec
256KB : 303.32 MB/Sec
512KB : 65.32 MB/Sec
1024KB : 57.51 MB/Sec
2048KB : 52.36 MB/Sec
4096KB : 52.86 MB/Sec
8192KB : 52.15 MB/Sec
--------------------------
Average : 772.38 MB/Sec
--------------------------
Pentium III1002.81MHz

 4KBから256KBまでは CPUの内部キャッシュの速度が影響します。512KB以上では PC-9821Ra333上の EDOメモリの速度になります。INTELSATの設定後は約10%ほど速度が向上しています。

● FinalReality

<PC-9821Ra333/W60 (PentiumIII 1000MHz + 3DFx VoodoBanshee)>

Radial blur, 5N,                30.91, rips,  4.26, Rmark
Chaos zoomer, 5N,               35.45, rips,  1.72, Rmark
25 Pixel, 5N,                  811.37, kpps, 25.93, Rmark
Robots, 5N,                     78.63, rips, 20.37, Rmark
Fillrate, 5N,                   22.19, MPps,  4.80, Rmark
City scene, 5N,                100.91, rips, 25.04, Rmark
Video card bus transfer, 5N,    81.45, MBps,  2.59, Rmark
Direct3D bus transfer, 5N,      65.99, MBps,  5.64, Rmark
-----------------------------------------------------------------------------
Visual appearance, 96.30, percent
-----------------------------------------------------------------------------
Overall 3D,       5.09, Rmark
Overall 2D,       3.00, Rmark
Overall bus rate, 3.51, Rmark
-----------------------------------------------------------------------------
OVERALL SCORE, 4.22, Rmark
 20世紀末では定番だった 3Dベンチマークソフトでの結果です。


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PC-98, PC-9821, 98MATEは NEC社の商標または登録商標です。

PentiumIIIは intel社の商標または登録商標です。

Windows, MS-DOSは Microsoft社の商標または登録商標です。

この他、製品名、型番等は、一般に各メーカーの商標または登録商標です。