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改造に当たって

 このページの方法で、改造を行うと CPUの電源供給に重大な問題が発生する可能性があります。また、同様な方法で改造している方は、至急、電源供給の項をご確認ください。

 なお、電源の問題の元ネタと対策の方法は、報告者である、まりもさんのページを参考にしてください。また、こちらには、K6-2, K6-III等の新コア用のキャッシュエラー対策のフリーソフト「K6WAIPL.EXE」や PC-98を使い倒す上で非常に有益なソフトウェアがあります。(^-^)

新まりものページ http://hp.vector.co.jp/authors/VA012947/

 本ページの行為はメーカーの禁止している改造行為に当たるのでメーカー保証範囲外になります。故障した際に修理にも対応してもらえません。また、この改造の結果により本体やデータが破損しても当研究所では一切の責任はとりません。試してみようという方は全て自己責任で行ってください。
 なお、このページの解説で改造の方法が理解できない方は、何かあっても後戻りできないので参考程度に留めて置きましょう。やらないと言う勇気も重要です。 (^ ^)b

はじめに

NEC 98MATE PC-9821An

 98MATE Aシリーズ最強と誉れ高い PC-9821Anですが Pentiumと同じ 296ピンの CPUソケット (Socket 5相当)、CPUソケット周りのスペースが筐体フレームのせいで非常に狭く同じ PC-9821Anでもパワーアップにおいて個体差が激しい等の理由で、正式対応の CPUアクセラレータが有りません。(T_T)

 2000年現在では、IDTの Winchip2を使う方法が最も安全かつ簡単で成功率が高く MMXや 3D Now!にも対応します。しかし、この方法では、CPU自体が入手困難で最高でも 240MHz動作です。仮に、筐体を改造して現在流通している新コアの AMD製 K6-2や K6-IIIを使ってもシステムクロックの低い PC-9821Anでは最高でも 360MHz止まりです。

 そこで、今回は、更なるパワーアップをめざしてシステムクロックを電圧変換ソケット (下駄) 上で 2倍にして供給する機能を持つメルコ (Buffalo) 製の CPUアクセラレータ「HK6-MS466-N4」を用い実験として PC-9821Anに載せてみようと思いました。なお、この改造は本体によって成功しない場合があります。

使用機器

今回の実験台 PC-9821An/C8W改

 今回使用した本体は、以前 K6-2化に使用した本体で、以前にお亡くなりになった PC-9821An/C9Tのマザーボード「G8RGJA」を PC-9821An/C8Wのマザーボード「G8RGJ」と交換したものです。すでにファイルベイ化し、電圧変換下駄使用による電源供給の問題も対策を施してあります。
 1994年 6月期製造で、セカンドキャッシュ上にサブボードが載っていてジャンパが這いずり回っているという一般的なマザーボードです。PnP非対応の ITF (PC-98でいうところの BIOS) Rev 0.22で ITFのアップデートはしていません。

 他に今回の実験では次のものを使いました。

  • アイ・オー・データ (I-O DATA) 製 PK-686P125の下駄部分
  • メルコ製 HK6-MS466-N4
  • MTC製 MTC-40001
  • まりもさん制作のフリーソフト「K6WAIPL.EXE」

それぞれについて簡単に解説します。

● I-O DATA製 PK-686P125の下駄部分

 まず、この方法では、2000年現在入手が非常に困難な魔法下駄と呼ばれる MTC製の MTSA-M1Tや I-O DATA製の PK-686P125の下駄部分が必要になる場合があります。実際には、N2下駄のみで動作している PC-9821Anも有るのでロット (特に後期ロット) によっては必要ないかも知れません。なお、この二つの魔法下駄のうち PC-9821Anの場合はPK-686P125の下駄部分でないとダメな場合が多いです。

● メルコ製 HK6-MS466-N4

 次に、今回のメインであるメルコ製 CPUアクセラレータ HK6-MS466-N4です。CPUに Socket 7では 2000年現在最強の AMD製 K6-III 450MHz版を採用しています。この CPUアクセラレータは「アドバンスド・クロックマルチプライヤ・テクノロジ」を搭載し、システムクロックを下駄上で 2倍に引き上げてから CPUに供給するというもので、システムクロックの低いパソコンでも結果的に 6倍速以上で K6-IIIを動作させる事ができます。
 N4下駄は、従来 VLSI WildCat等の一部のマザーにのみ対応だった N3下駄を改良し、動作の安定化と対応マザーボードの拡大を実現したものです。
 また、同社の MTC製品 (正規な製品ではなくサポートがまったく異なる。玄人志向の前身) である MTSA-M1Tをベースに改良を加えた魔法機能 (A20ピンマスク機能) を搭載し、PC-98シリーズに於いて ITFが障害となり起動しない本体の問題をクリアしています。なお、この N4下駄では PC/AT互換機と共用になり魔法機能を切ることもできます。もちろん、P54Cと K6-IIIとの動作電圧の違いを下駄に搭載したレギュレータによって解決しています。

● MTC製 MTC-40001

MTC-40001とパッケージ

 三つ目の MTC製の MTC-40001は、本来は P54Cを高クロック動作のものに交換する際にマザーボード上で設定の変更ができない機種用に動作倍率設定ピンを弄って変更するための下駄ですが、それ以外の機能はないので今回使った PC-9821Anではスペースの都合上、そのままでは N4下駄が載らなかったので高さを稼ぐために使いました。

● K6WAIPL.EXE

 四つ目はパーツでは無くまりもさん制作のフリーソフト 「K6WAIPL.EXE」です。これは、PC-9821Anに 6倍設定を持つ新コアの K6-2、K6-IIIを搭載する際に、「CACHE ERROR」が出て CPU内部キャッシュが無効となって速度が落ちる問題を解決するための物です。このソフトを使用して HDDの IPL領域を書き替え本体の起動後に、再び内部キャッシュを有効にするというソフトです。

 なお、この方法では、筺体の金属フレームを削ったり、電源の改造が必要になったりと、とんでもなく面倒なことになるので、はっきり言ってお勧めできません。実際にこの情報をもとに挑戦するチャレンジャーな方は、一連の作業には上記のほかに金工用鋸 (できれば、ディスクグラインダー) やヤスリ、場合によってはハンダ鏝等の工具やデジタルテスタ等の測定機器が必要になるだけでなく、大変な苦労を要しますので覚悟しましょう。(^ ^;;)

CPUアクセラレータユニットの作成と取り付け

 始めに、PC-9821An用に CPUアクセラレータユニット (仮称) を作成します。

 まず、以前、今回使用した PC-9821Anに HK6-MS400-N2を載せた時に、N2下駄の魔法機能ではまったく起動しなかった結果を考慮し、HK6-MS466-N4を PK-686P125の下駄部分に載せることにしました。(参考:第一研究室内 PC-9821Anの「CPUの換装 その3 AMD K6-III 400MHz失敗編」)

PK-686P125ジャンパ位置    MTSA-M1T付属の CPUリムーバー

 なお、予め PK-686P125の下駄中央部のジャンパを、デフォルトの「9-10」から「7-8」に移してあります (写真左)。PC-9821Anではこの設定でないと「A20LINE ERROR」が出て本体が起動しません。ちなみに、設定のときなど下駄を外すときは、金属のへら状のものがあると楽に外せます。自分は、MTSA-M1T付属の CPU取り外し工具を使いました (写真右)。

 次に、この PC-9821Anでは既に PL-K6-III下駄で K6-2を載せるために金属フレームを削ってありますが、今回の N4下駄は N2下駄や PL-K6-III下駄よりもサイズが大きい為にスピーカのフレームを外しましたが、本体前面のフレームとファイルスロット側面のフレームにぶつかりそのままでは取り付けできませんでした。

 そこで、予め倍率設定部分のジャンパを折った MTC-40001で高さを稼ぎました。これにより手前のフレームとの干渉はクリアしたもののファイルスロットフレーム側面との干渉はどうしても避けられませんでした。

 仕方がないので一時的にファイルスロットフレームを取り外し、ファイルスロットバックボードのみをマザーボードに挿し、そこに FDDと HDDユニット、CD-ROMドライブを繋ぎ、 総 SCSI化している為にスルーボードを取り付けました。

 その状態で、下から順に MTC-40001、PK-686P125下駄、HK6-MS466-N4の三段重ねにした CPUアクセラレータユニットを、PC-9821Anの CPUソケットに取り付けました。次の写真は実験中の PC-9821Anの状態です。(^ ^;;

PC-9821An 実験中!    PC-9821An 実験中!(拡大)

N4下駄の動作確認

 CPUソケットに取り付けた後に HK6-MS466-N4の電源ケーブルをファイルベイ化した際にファイルスロットバックボード部分に付けた電源ケーブルに繋いで電源を入れました。なお、この時点での N4下駄の設定は、工場出荷時 (i430VX用の設定: SW1 「111000」 SW2 「000001」) のままで変更していません。N4下駄の設定についてはこちらをどうぞ。

 しかし、この状態では「ピポ」すら言わずまったく起動しませんでした。(T_T)

 次に、PC-9821Xa7、PC-9821V7等のシステムクロック 50MHz機の設定 (SW1「110000」, SW2「111001」) と PC-9821Xa9、PC-9821V12、PC-9821Xc13等のシステムクロック 60MHzと 66MHz機の設定 (SW1「110000」, SW2「000001」)、i430HX機用の設定 (SW1「110100」, SW2「000001」) を試しましたがやはりまったく起動しませんでした。(T_T)

 そこで、N4下駄の魔法機能が障害になっているのではないかと思い PC/AT互換機用の設定を参考に、魔法機能を切り (SW1「010000」, SW2 「000001」) 、電源を入れたところ「ピポ」と言いメモリカウントが始まりました。メモリカウント終了後に黄色い文字で「CACHE ERROR」が出て L1キャッシュが切れるという新コア特有の症状が出て起動し、HDDの OS選択画面が出ました。(^-^)

 しかし、ここで Windows 95を選択し HDDにアクセスすると画面が真っ暗になり HDDにアクセスしたままフリーズするので、今度は、説明書に載っていない (SW1「010010」, SW2 「000001」) という設定にしました。実は、この後に分りましたが 386相当に処理能力が落ちていたために、フリーズしたと思ったという勘違いでした。実際にはこの設定の変更は必要ないかも知れません。(^ ^;;

 設定変更後に電源を入れると OS選択画面が表示され、ここで Windows 95を選択しすると数十秒後に「Windows 95を起動しています。」と表示され起動し始めました。その後もファイルの読み込みは正常に続き Windows 95が起動しましたが、内蔵キャッシュが切れた状態では起動に 5分以上掛かりました。
 そこで、まりもさんが制作した「K6WAIPL.EXE」を使って HDDにパッチを当てて再起動し、「CACHE ERROR」で切れた L1キャッシュを再び有効にして Windows 95を起動させました。

 なお、余談ですが OSが Windows95の場合は、PC-9800シリーズで K6系 CPUに換装すると起動時にフリーズや「Windows保護エラー」で起動に失敗することがあるので、標準の起動ロゴを表示させないか他のものに事前に交換しておきます。具体的にはシステムファイルの「msdos.sys」に「logo=0」を追加するか、システムファイルの「logo.sys」を 640x400ドット 16色のビットマップ (BMP) データで上書きします。

 また、PC-9800シリーズでは ITFが K6-IIIに対応していないので K6-IIIの本来のパフォーマンスを引き出すため K6-III用のキャッシュコントローラをインストールします。これは、Vectorにフリーのものがあります。

オーバークロック実験

 PC-9821Anで正常に起動できることを確認したところで、次は今回用意した HK6-MS466-N4搭載の K6-III (450MHz版) がオーバークロックにどこまで耐えられるか実験しました。SW1と SW2は N4下駄の設定です。

 今回は、以下の動作クロックについて実験しました。

動作クロック CPUへの供給クロック CPU内部逓倍設定 SW1 SW2
420MHz 60MHz x2 = 120MHz 3.5倍 010010 000001
480MHz 60MHz x2 = 120MHz 4倍 010010 101001
540MHz 60MHz x2 = 120MHz 4.5倍 010010 111001

改造の結果

 420MHzと 480MHzでは起動に付いては「CACHE ERROR」以外問題なく、Windows 95も全く問題無く正常に起動しました。しかし、540MHzでは起動については「CACHE ERROR」以外に問題無いものの Windows 95では、起動中に「コマンドインタプリタが見つかりません」等のエラーが出て起動できませんでした。

 Windows 95が正常に起動できた 420MHzと 480MHzのベンチマークは以下のようになりました。ちなみに、この PC-9821Anでは総 SCSI化をしています。最後の行は参考として常用の K6-2で 330MHz動作時の結果です。

★ ★ ★ HDBENCH Ver 2.610 ★ ★ ★
使用機種 PC-9821An/C9T
Processor AMD K6 420.1MHz [AuthenticAMD family 5 model 9 step 1]
Processor AMD K6 480.0MHz [AuthenticAMD family 5 model 9 step 1]
解像度 800x600 65536色(16Bit)
Display [X]スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821 シリーズ)
Display [X]PC-9821 As2,Ap2,An (S3)
Display ウィンドウ アクセラレータ ボード A2 (Matrox)
Memory 129,404Kbyte
OS Windows 95 4.0 (Build: 950)
Date 2000/ 2/ 8 19:55

SCSI = ICM IF-2769 SCSI-2 Board

ABC = IBM DCAS-34330 Rev S65A
D = GENERIC NEC FLOPPY DISK
E = PIONEER CD-ROM DR-766 Rev 1.00

CPU ALL Text Scroll DD Read Write Memory  
K6-III 420MHz 10863 25723 32212 8922 4628 9876 67 1 2660 2822 15131 A:10MB
K6-III 480MHz 11875 29412 36840 9000 4680 9970 67 2 2414 2616 17387 A:10MB
K6-2 330MHz ----- 20243 25364 ----- ----- ----- ----- ----- ----- ----- 11273 A:10MB

 グラフィック系の数値は Direct X6をインストールしている為に一般より数値が下がっています。また、HDDの数値は 非同期バスマスタ転送にしているためやや低めになっています。

 ベンチマークの結果としては、K6-2 330MHz動作時に比べ、整数演算や浮動小数点演算が共にクロック上昇分上がり、体感的にも軽く反応が速くなりました。グラフィック系の数値も PC-9821A-E11 (Matrox MGA-II) のグラフィック機能が演算速度の向上により、矩形、テキストで若干アップしました。
 DirectDrawはエミュレートである為に演算処理能力の向上によって DD画面の描画も僅かに高速化されています。ただ PC-9821A-E11自体の限界らしく 420MHz時と 480MHz時では、数値的に殆ど変化が見られず頭打ちとなっています。ここで注目すべき点は Memoryの値です。PC-9821Anはメモリへの書き込みが下手な 486機より遅い事で有名ですが、K6-III内蔵セカンドキャッシュのおかげでメモリの値が大幅に上昇しています。

最後に

 かくして PC-9821Anはついに 400MHzの壁を破り 480MHzでの正常動作を果たしました。今回は長時間動作や負荷をかける動作等の実験は行いませんでしたが、少なくとも正常に起動することが確認できたので良しとしました。(^-^)
 もしも長時間動作等で問題が発生する場合は、N4下駄のタイミングの設定等を煮詰めれば、なんとかなると楽観視しています。(^ ^;;

 また、2001年現在発売中の K6-2 533MHz版の HK6-MD533-N4や最近になって登場した AMDの K6-2+/ III+搭載の NV4シリーズを使えば PC-9821Anでも 500MHzや場合によっては 600MHzの壁を突破できるものと思います。

 なお、今のところ HK6-MS466-N4で常用のためには更なる大がかりな筐体の加工が必要になるため常用は考えおらず、元の K6-2に戻していますがいずれ時間ができたら挑戦してみようと思っています。

 以上 PC-9821Anでの N4下駄の動作報告でした。最後まで、ご覧頂きありがとうございました。m(_ _)m

Anの 480MHz化その後 (常用に向けて)

 さて、実験当日は常用は考えていませんでしたが気が付くと手元に金切鋸とヤスリが用意してありました。(爆)

 始めに、これを実用化するためには K6-2化同様に筐体の加工が必要です。今回は既に幾らか加工していたので若干修正すれば完了ですが、一から加工する為にはかなり面倒な作業になります。どこを加工するかは実際にアクセラレータを載せてみて干渉する部分を切るか削ります。

 まず、ファイルスロットフレームを丸ごと取り出し、フレームだけにしてファイルスロットの正面側左脇のネジ穴部分を切ります。

 次に、スピーカのフレームを正面から見て右側下部分を切ります。

 加工が終わったら、ショートを防ぐため金属の削りかすを良く払って取り除き、ファイルスロットフレームを取り付け、CPUアクセラレータユニットを取り付けてからスピーカのフレームを取り付けて、CPUアクセラレータユニットの電源をファイルスロットバックボードに繋ぎます。方法は、K6-2化とほぼ同じです。

 後は電源を入れて正常に起動したら、「CACHE ERROR」対策や、Windows 95の起動時の問題、キャッシュ制御等のソフトウェア側の設定をして終了です。

 今のところ数時間連続で動作させたりしていますが、Windws 95や MS-DOS上で問題は起きていません。

 ちなみに、自分の PC-9821Anでは、N4下駄単独では N2下駄同様に全く起動しませんでした。どうもメルコ方式の魔法機能と相性が良くないようです。(T_T)
 今となってはめっきり少なくなった PC-98のサードパーティーですが、主要サードパーティーでライバル同士の I-O DATA (PK-686P125) とメルコ (HK6-MS466-N4) の二社の協力が PC-9821Anには必要という結果に感慨深いものがありました。(^-^)



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