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改造に当たって

 この改造は 98MATE Rシリーズのユーザーに勧めているわけでは決してありません。このページの内容はメーカーの禁止している改造行為に当たるので保証範囲外になります。修理を受けることはできないものとお考えください。
 また、筺体を加工するため成功、失敗に関わらず元に戻すことはできません。この改造の結果によりパソコン本体やデータが破損したり、怪我を負ったりしても当研究所では一切の責任をとりません。試してみようというチャレンジャーな方は全て自己責任で行ってください。

 なお、このページの解説で改造方法が理解できない方は大変危険ですので、参考程度に留めて置きましょう (^ ^)b

はじめに

内部が詰まった PC-9821Ra40

 98MATE Rシリーズは、PC-98の中でも最終のシリーズの一つです。Slot 1を搭載しており機種により PentiumIIIが動作すると言う秘められたパワーを持っていますが、ミニタワーモデルは PC-9821RvII26で終息してしまい、それ以降はデスクトップモデルのみになりました。
 98MATE Rのデスクトップ筺体は、ネジ一本を外すだけでルーフカバーを外せるのでメンテナンス製は幾分良くなりましたが、内部が狭く CPUスロットの位置関係から大きい CPUファンを使うと増設用 HDDドライブベイが使え無くなり拡張性に欠点が有ります。また、電源ユニット周辺はケーブルで埋まってしまいエアフローも良くありません。
 他に、CPUやメモリの交換時に、ルーフカバーを支える梁が邪魔になるのも改造好きのユーザーにとってはマイナスポイントです。

 デスクトップモデルの 98MATE Rのマザーボードと PC-9821Xc16/M7 modelB2、PC-9821Xc16/M7 modelB3のマザーボードは形状が近く、ネジ穴も共通している事から、相互に入れ替えることでデスクトップモデルの PC-9821Raシリーズを拡張性の高いミニタワーモデルに改造しようと言うのが今回のテーマです。ミニタワーモデルに改造することで、5インチベイが 2つ、Cバススロットが 1つ増えます。

 ここで 98MATE Rのマザーボードと交換できるミニタワー筺体のドナーとなり得るモデルは、PC-9821Xc16/M7modelB2以降の機種に限定されます (モデルの詳細後述)。同形状のマザーを採用しているミニタワーモデルとしては、98MATE VLUESTARで PC-9821V200/M7 modelC2や PC-9821V233/M7 modelC2以降の通称「青札」モデルが有りますが、98MATE Rシリーズとはサウンド機能周りが異なる為に、入れ替え後に内蔵 PCM音源が使えなくなるだけでなく、内蔵スピーカも接続できなくなりますので、残念ながら今回の目的には使えません。

 実際の作業にはドライバーと一箇所だけ加工が必要なのでペンチが必要になります。難易度はパソコンの自作経験があるユーザーであれば余裕でしょう。

 ちなみに、PC-9821Xv13/W16、PC-9821Xv20/W30の筺体も穴位置が合いますが I/Oブラケット部分の長辺の長さが異なり、上部に空間ができるのでお勧めしません。

 あらかじめ断っておきますが、これらの行為はメーカーの禁止している改造に当たるので当然保証外です。また、改造の結果により本体やデータが破損しても、当研究所では一切の責任はとりません。全て自己責任で行ってください。

 今回の改造は以前から計画は有ったのですが、なかなか機会が無く躊躇していたところ、全盲で有りながら歌手・ピアニスト・講演家として精力的に活動されている北田康広様 (公式サイト http://ykitada.com/)より第三研究所・技術部へ機材をご提供いただき改造の依頼が有ました。改造の詳細と実名での掲載につきましてご本人様より許可を得て記事にさせていただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。m(_ _)m

● ミニタワー化対象機種

 98MATE Rシリーズだけでなく、98MATE Xシリーズの後期モデル (メリットが薄いですが) も同様に改造できます。以下に今回のミニタワーモデルへの改造ができる機種を示します。スラッシュ以降の型番が明記されている機種は、その型番のモデル限定です。明記されてない機種は、いずれの型番でも対応できます。

  • PC-9821Xa13/W12
  • PC-9821Xa16/W16
  • PC-9821Xa16/W30
  • PC-9821Xa20
  • PC-9821Xa200
  • PC-9821Ra18
  • PC-9821Ra20
  • PC-9821RaII23
  • PC-9821Ra266
  • PC-9821Ra300
  • PC-9821Ra333
  • PC-9821Ra40
  • PC-9821Ra43

 PC-9821Ra20のような Socket8機では、PentiumIII Coppermineコアや Tualatinコア搭載時に下駄を 3段重ね (PL-ProII + PL-370/T Rev 2.0 + 生ソケット) にします。今回の改造では、マザーボードを垂直に立てる事になりますので、PC-9821Rv20での改造と同様に下駄の落下にご注意ください。特に CPUクーラー固定用生ソケットはピンが細く抜け易くなっています。(^ ^;;

● ドナー対象機種

 以下に98MATE Rシリーズのマザーボードと交換できるミニタワーモデルを示します。以下の 6モデルのみです。

  • PC-9821Xc16/M7 modelA2
  • PC-9821Xc16/M7 modelB2
  • PC-9821Xc16/M7 modelA3
  • PC-9821Xc16/M7 modelB3
  • PC-9821Xc200/M7 modelA3
  • PC-9821Xc200/M7 modelB3

デスクトップ筺体からマザーボードを取り出す

ファイルスロットのフレーム

 それでは作業に入ります。まず始めに PC-9821Ra40の本体からマザーボードを取り出します。ATX電源搭載機種は電源が入っていなくてもマザーボードに常時通電となっています。必ず作業前に ACケーブルを抜いて少し時間をおいてから作業してください。取り出し方は次の通りです。

  1. ルーフカバーを開ける
  2. Cバスボード等の拡張ボードをすべて外す
  3. ブラフィックサブボード (抜かないでくださいボード) を外す
  4. PCM音源ボードを外す
  5. CD-ROMドライブの音声ケーブルを外す
  6. ネジ 2本を外してCバスライザーボードを外す
  7. スピーカのケーブルを外す
  8. 梁を固定するプラスチック製のクリップを持ち上げつつ後ろにスライドさせて外す
  9. 梁の金具を外す。スピーカを出っ張りにひっかけないように注意
  10. ATX電源ケーブル、FDDと IDE機器、シリアルの信号ケーブル、電源スイッチのケーブル、フロントサブ基板のケーブルを外す
  11. ネジ 4本を外してマザーボードを取り出す

このときに柄の長いドライバーを使うと楽にネジが外せます。

筺体から取り出す物はマザーボード、グラフィックサブボードのみで構いません。

ミニタワー筺体からマザーボードを取り出す

PC-9821Xc16/M7 modelB2のマザーボード

 次に PC-9821Xc16/M7 modelB2の本体からマザーボードを取り出します。ATX電源搭載機種は電源が入っていなくてもマザーボードに常時通電となっています。必ず作業前に ACケーブルを抜いてください。取り出し方は次の通りです。

  1. ルーフカバーを開ける
  2. Cバスボード等の拡張ボードをすべて外す
  3. ブラフィックサブボード (抜かないでくださいボード) を外す
  4. PCM音源ボードを外す
  5. CD-ROMドライブの音声ケーブルを外す
  6. ネジ 4本を外してCバススロットの籠を外す
  7. ATX電源ケーブル、FDDと IDE機器、シリアルの信号ケーブル、電源スイッチのケーブル、フロントサブ基板のケーブルを外す
  8. 上部のネジ 1本を外し、左右の爪を外側に軽く押してフロントマスクを外す
  9. 正面のネジ 2本を外し HDDをプレートごと外す
  10. ネジ 4本を外してマザーボードを取り出す

筺体から取り出す物はマザーボード、グラフィックサブボードのみで構いません。HDDは Ra40のマザーボードを取り付ける作業の際に邪魔になるので、一旦プレートごと外します。

マザーボードを外すと底に支える黒いゴムが見えます。このゴムは湿気で劣化して溶けることが有るのでついでにに除去しておく事をお勧めします。(^ ^)b
 除去後は筺体と接触しないように適宜ビニールテープ等で絶縁する事を忘れずに。

ミニタワー筺体のフレーム加工

 PC-9821Ra40と PC-9821Xc16/M7modelB2のマザーボードは、ネジ穴の位置は同じでも Ra40の方が長辺方向に若干長く形が異なります。次の画像は 2枚のマザーボードの長辺を比較の為に重ねたものです。

PC-9821Raと PC-9821Xcのマザーを比較

 上が PC-9821Ra40のマザーボード、下が PC-9821Xc16/M7modelB2のマザーボードです。ネジ穴の位置が同じでも長さが異なるのがお分かり頂けると思います。

 PC-9821Ra40のマザーボードが長いため、PC-9821Xc16のマザーボードの板端を押さえる出っ張りに引っ掛かってしまい、そのままでは Ra40のマザーボードが浮いてしまって取り付けることができません。左の画像の赤丸部分です。この出っ張りをペンチ等で平らに曲げる必要が有ります。加工後は右の画像の様になります。

PC-9821Xc16筺体の加工位置 PC-9821Xc16筺体の加工後

 曲げる際にはショートする恐れが有りますので、出来るだけ平らになるように曲げてください。

ミニタワーの組み上げ

PC-9821Ra40のマザーをミニタワー筺体へ取り付ける

 ミニタワー筺体のフレーム加工が終わったら、PC-9821Ra40のマザーボードを取り付けて逆の手順で組み上げていきます。組み上げ時に注意すべき点は一点だけです。PCMサウンドボードは、PC-9821Ra40の物 (画像左) では Cバススロットバックボードまでの長さが足りませんので PC-9821Xc16 (画像右) の物を使います。相互に互換性が有るので問題ありません。筆者は Windows95で正常に動作する事を確認しています。

Ra40とXc16/Mのサウンドサブボード

 ミニタワー用の Cバススロットバックボードもそのまま流用可能です。IDE信号ケーブルは CD-ROMドライブの位置が遠くなるので、PC-9821Ra40に付属のケーブルでは無く長いフラットケーブルに変える必要があるかもしれません。電源スイッチのケーブルは PC-9821Xc16のマザーよりもコネクタの位置が遠くなるのでぎりぎりの長さになります。取り付けにご注意ください。(^ ^;;

 なお、PC-9821Ra40と PC-9821Xc16のグラフィックサブボードには互換性が有りませんので入れ替えないようにご注意ください。マザーボードが故障する恐れが有ります。

最後に

 以上で入れ替えは終了です。次の画像は、ほぼ完成したミニタワー仕様の PC-9821Ra40です。

ミニタワー仕様の PC-9821Ra40

 一度グラフィックサブボードを外しているので、セットアップメニュー、時刻と日付、メモリスイッチ、プラグ・アンド・プレイ (PnP) の設定内容がすべてクリアされていますので、再設定をしてください。特に、拡張ボードが多い環境では、リソースが衝突して正常に起動しない場合が有ります。
 また、電源を入れてもメモリカウントが表示されない場合は、電源を切って ACケーブルを抜き、グラフィックサブボードを取り付け直してください。

 今回の加工のポイントは、金属フレーム一箇所を曲げる事と、Xc16の PCMサウンドボードを流用する点です。それ程難易度は高くありません。敢えて言うなら、PC-9821Xc16/M7 modelA2以降の本体自体が手に入り難い事でしょうか。(^ ^;;

 ミニタワー化によって 5インチベイが 2つ、Cバススロットが 1スロット増えて拡張性が増し、内部が広くなりましたのでメンテナンスもし易く、エアフローも幾分改善されました。本家 PentiumII搭載ミニタワーモデルの PC-9821RvII26よりもこちらの方がスッキリしていいですね。

 ここまでくると、玄人志向CHANPON ZERO3-PCI (ASCIIの記事) を使って PCIバススロットを増やしたくなりますな。(爆



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