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98MATE Rとは

NEC 98MATE Rデスクトップモデル PC-9821Ra40/P60CZ NEC 98MATE Rミニタワーモデル PC-9821RvII26/N20

 ここでは、98MATE Rシリーズの中でも PentiumII、Celeronを採用したモデルについて述べます。

 98MATE Rシリーズは 1996年 5月に登場した PC-9821Ra12/N12から始まりました。従来の 98MATE Xシリーズの最上位シリーズに当たり Pentium Pro、PentiumII、Celeron等の Intel P6アーキテクチャを搭載した PC-9821シリーズです。ネットワーク化を進める企業での一括大量導入を睨み当時、オプションで搭載することが一般的だった 100BASE-TX仕様の LAN I/Fをいち早く標準装備した事が特徴です。PCIバス接続の LAN I/Fは当時としては高価な装備でしたが、98MATE Xと筺体や設計を共用することでコストダウンが図られ普及価格に抑えることに成功しました。また、98MATE Rシリーズでは新たにセキュリティ機能として、FDDやシリアル I/F等からのデータ流出を防ぐ I/Oロック機能や、セットアップパスワード機能等が追加されました。販売開始から 5年後の 2001年代初頭ではリース切れの本体が 1万円以下で多く出回っていたので、実際に企業や官公庁に良く売れたのではないかと思います。ネットワーク対応を活かし 98MATE Xシリーズの PC-9821Xa200と共にパチンコ店の出玉管理システムとして採用されたこともありました。

 筺体も 98MATE Rシリーズの PC-9821Ra20/N12で一新し、デスクトップモデルではネジ一本でルーフカバーが外せるタイプに、タワーモデルも PC-9821RvII26で側面のネジが廃止されメンテナンスがし易くなりました。一方で、筺体内に簡単にアクセスできないようデスクトップモデルではケンジントンロックに対応、本体や内部の部品の盗難を防止できる様になっています。

 シリーズ登場当時こそ最上位と言う位置づけでしたが、1997年10月に PC98-NXシリーズを発表。NECも PC/AT互換機のアーキテクチャへ移行し、98MATE Rシリーズは過去の PC-9800シリーズの資産を運用するためのモデルとしてトーンダウン。当時の上位の CPUを搭載するデスクトップ、タワーモデルのパソコンは全て PC98-NXの Mate NXシリーズとなり、98MATE Rシリーズで採用される事は無くなりました。

 2001年11月19日に発売された PC-9821Ra43/D51、PC-9821Ra43/D71、PC-9821Ra43/M51、PC-9821Ra43/M71の四機種が PC-9821シリーズの最終モデルとなり、2004年に販売と全サポートが終了。1982年 10月発売の初代 PC-9801登場から始まり以降 20年続いた国産アーキテクチャ PC-98シリーズが終了しました。

 次の表はラインナップです。表の標準価格は 発表当時の価格です。OSの違いやディスプレイ付属の有無の違いから型番が多岐にわたるので細かい型番は省略します。

商品名 発表日 形状 CPU メモリ HDD CD-ROM 標準価格 (税別)
PC-9821RaII23 デスクトップ 1997年 5月 PentiumII 233MHz 32MB 3GB ATAPI 16倍速 398,000円〜408,000円
PC-9821RvII26/N20 ミニタワー 1997年 5月 PentiumII 266MHz 32MB 2GB SCSI 6倍速 PD 530,000円
PC-9821Ra266 デスクトップ 1997年 8月 PentiumII 266MHz 32MB 3.0GB ATAPI 16倍速 298,000円〜438,000円
PC-9821Ra300 デスクトップ 1998年 10月 Celeron 300MHz 16MB 4GB ATAPI 24倍速 238,000円〜248,000円
PC-9821Ra333 デスクトップ 1998年 10月 Celeron 333MHz 16MB 6GB ATAPI 24倍速 288,000円〜373,000円
PC-9821Ra40 デスクトップ 1999年 6月 Celeron 400MHz 16MB 6.4GB ATAPI 24倍速 278,000円〜323,000円
PC-9821Ra43 デスクトップ 2000年 5月 Celeron 433MHz 32MB 8GB ATAPI 24倍速 238,000円〜298,000円

 OSは全てのモデルで付属します。プリインストールの OS毎にスラッシュ以降の型番が異なります。W型番は Windows95 (OSR2)、D型番は MS-DOS6.2、M型番は Windows98または Windows98SecondEditionを搭載しています。ちなみに、この中で D型番のみプラグアンドプレイ (PnP) の扱いで他のモデルと仕様が若干異なります。
 この他に、N5200シリーズの後継として PC-PTOSモデルが有り P型番は Windows95 (OSR2) + PC-PTOS、Y型番は Windows98 (or Windows98SE) + PC-PTOSとなっています。これらのモデルでは添付されているキーボードが PTOS仕様の大型の物です。

 1999年 6月に発表された PC-9821Ra40からはディスプレイがセットになったモデルも登場しました。型番に「5」が付くモデルは 15インチ CRT付属、「7」が付くモデルは 17インチ CRTが付属しました。

 ちなみに、PC-98アーキテクチャの PCサーバとして 98MATE SERVERシリーズが存在し、PentiumII搭載のモデルとしては、PC-9821RvII26/N20ベースの PC-9821RsII26/B40と言うモデルがありました。こちらは、PC98-NXの Mate Serverシリーズに受け継がれましたが Express5800シリーズとの関係もあり一代限りの短命に終わりました。(^ ^;;

マザーボード

● チップセットと VRM

 98MATE RシリーズデスクトップモデルのPC-9821RaII23から最終モデルの PC-9821Ra43が搭載しているマザーボードのチップセットは「Intel 440FX (Natoma) 」です。i440FXは Pentium Proの P6アーキテクチャ用チップセットとしては二代目にあたり、主にクライアントや小規模なサーバに使われています。ノースブリッジに「i82442FX」、サウスブリッジに NEC製「STAR ALPHA 2」を搭載しています。この「STAR ALPHA 2」のために内蔵の標準 IDE I/Fや Cバスのデータ転送速度が 486機など旧機種に比べて遅くなっています。システムクロックは 66MHzでジャンパによって 66/ 60MHzに切り替えが可能です。ジャンパの場所は Cバススロットの下にあります。

 CPUソケットはカートリッジタイプの Slot1で、従来外付けだった電圧を制御する VRMユニットはマザーボードに統合されています。

 なお、PC-9821RaII23以降 CPUのクロックやハードディスクの容量が違うだけでマザーボードは共通です。搭載する CPUや D型番のみプラグ&プレイの扱いの違いにより ITFのリビジョンに若干違いが有るものの基本的には変わりません。

 一方、ミニタワーモデルPC-9821RvII26が搭載しているマザーボードのチップセットは「Server Works (旧 RCC) Chanpion1.0」です。Chanpion1.0は PentiumII対応のサーバ、ワークステーション向けのハイエンドチップセットです。他のモデル同様にサウスブリッジに NEC製「STAR ALPHA 2」を搭載しているので内蔵の標準 IDE I/Fや Cバスのデータ転送速度が遅いのですが、HDDや光学ドライブは Adaptec AHA-2940U互換のオンボード PCI接続の SCSI仕様となっていて内蔵の標準 IDE I/Fを使用していません。

 本機は最上位モデルとしてデュアルプロセッサに対応しています。Slot1仕様の CPUソケットと VRMユニットを二組搭載しています。CPUの周辺回路とメモリソケットはモジュール化されていてサブボード形式になっています。振動で接触不良を起こしやすく起動しなくなるケースが多い事で有名です。

● CPU

Intel PentiumII Intel Celeron Socket370版

 先代の Pentium Proを搭載した 98MATE Rデスクトップモデルとは CPUの進化に合わせ CPUソケットの形状が Socket8から Slot1に変わった以外に機能については変化はありません。

 CPUは、PC-9821RaII23/Ra266/RvII26ではカートリッジ (通称、殻) SECCタイプの Intel PentiumII (Klamathコア)、PC-9821Ra300/Ra333ではカートリッジの無い SEPPタイプの Celeron (Mendocinoコア)、PC-9821Ra40/Ra43ではMSI製の Slot1 - Socket370変換アダプタ (MSI MS9605 Rev 1.1) を介して Socket370タイプの Celeron (Mendocinoコア) を搭載しています。

 PC-9821RaII23/Ra266前期モデルでは CPUの発熱状態により CPUファンをコントロールしています。

 一次キャッシュメモリ 32KB搭載しコプロセッサ (浮動小数点演算ユニット) も内蔵 (今時当たり前ですが) されています。

 CPUに省電力機能が有りますので、WIndows上では自動で有効になります。MS-DOSの場合は、製品添付のドライバをインストールすることで CPUの省電力機能を使うことができます。

 注意点として、全般に Slotタイプの CPUは接触不良が起こりやすい欠点が有ります。個別にみると PC-9821Ra300/Ra333のみリテンションキットが異なり、カートリッジタイプの CPUは実装できません。PowerLeap製 PL-iP3等の下駄を使用時に注意が必要です。また、PC-9821Ra40/Ra43に実装されている MSI製の変換アダプタのジャンパ設定は不用意に変えると正常起動しなくなりますので変更禁止です。

 他には、PentiumII以降、CPUの不良 (エラッタ) 対策として起動時に ITF (BIOS) で CPU IDをチェックし適切なパッチを当てる仕様に変わりました。CPU IDが ITFに登録されていない CPUに交換すると正常起動できません。これは、現在主流の Core i7でも事情は同じです。ご注意ください。(後述)

● セカンドキャッシュメモリ

 セカンドキャッシュは、PentiumIIでは動作速度が動作クロックの半分になり速度が落ちましたが容量は倍の 512KBをソケット上に実装しています。Celeronでは容量が 128KBに減りますが Pentium Pro同様にオンダイ実装なので動作クロックと同期して高速に動作します。Celeronでは PentiumIIと差別化するためレイテンシ (ウェイト) が多めに入れられていますが、処理によっては Celeronの方がパフォーマンスが高いケースが有ります。

● メモリ

 メモリは98MATE RシリーズデスクトップモデルのPC-9821RaII23から最終モデルの PC-9821Ra43では、32MBを実装しています。ECC (Error Correcting Code) に対応し、4本の SIMMスロットに 72pinの ECC対応 EDO SIMM、または、72pinの パリ付 FP SIMMを増設または交換することにより最大 256MB (非公式には 512MB) まで増設できます。

 一方、ミニタワーモデルPC-9821RvII26では、容量は 32MB、ECC対応は変わりませんが、72pin SIMMスロットは先代の PC-9821Rv20同様に 8スロットあり、最大 512MB (非公式には 1GB) まで増設できます。さらに、PC-9821RvII26のみデータ転送の高速化としてインターリーブ方式に対応しています。故に増設は同容量同種の SIMM 4本単位になります。

 ちなみに、ECCとは、データの読み出しや書き込みにチェックの為のデータを追加してエラーを検出するものです。通常めったに有りませんが、パリティー付きメモリはエラーを検出するとデータを破壊する前にシステムを停止させますが、ECCではエラーを修復してシステムを停止しないようにします。

 メモリの増設については後述します。

補助記憶装置

● フロッピーディスクドライブ (FDD)

 FDDは、98MATE Rシリーズ全モデル共通で PC/AT互換機で一般的な 1.44MBフォーマットに対応した 1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 3モード対応の 2HDタイプが 1台です。デスクトップモデルでは向かって左の増設 FDDベイに「PC-9821RA-FD1」を増設、ミニタワーモデルでは、5インチファイルベイに「PC-FD321DH」を増設することにより 2台に増設可能です。なお、外付けの 1MB FDD I/Fはオプションです。

 98MATEでは VFO (簡単に言えばヘッドの微妙なずれからデータの読み書きを安定させる回路) 回路が本体側に搭載されているので FDDに VFO回路は有りません。

 ドライブの型番はロットによって異なり、NEC FD1231T、SONY MPF520-F、CITIZEN OSDのいずれかです。3つのドライブで仕様は変わらないので相互に交換可能です。いずれも従来の FD1148T等に比べると若干作動音が大きめに感じます。特に FD1231Tはモーターの固定の仕方があまり良くなく振動などでずれ易いので読み込み不良が起きやすい印象です。

 FDの磁気フィルムの最大の敵はカビで一度カビが生えてしまうとデータの読み出しは不可能でメディアは使用不能になります。仮に拭き取っても読み込む事は出来ません。この様なメディアからデータを救おうと FDDに読み込ませると磁気ヘッドにカビの胞子が付き、他の正常なメディアにカビの胞子を塗りつけ汚染を広げるので危険です。プラスチックのケースに入れておくとカビが生え易くなるので注意が必要です。

 5インチ FDD等を利用する際には、以下の方法があります。

メーカー 型番 種類 対応機種 備考
ファイルベイ内蔵用
NEC PC-FD511D 5" 2モード FDD 98MATE X,
98MATE R、
Ap3,As3等
3.5' FDDモデルで5' FDDを使いたい場合に使用。
ただし、専用ケーブル「PC-9821-K08」が必要。
NEC PC-FD321DH 3.5" 3モード FDD 98MATE X,
98MATE R
3.5' FDDを増設したい場合に使用。
外付け用
NEC PC-9801-87 1MB FDD I/Fボード 98MATE X,
98MATE R等
8"、5"、3.5"の外付け用 FDDユニットを使いたい場合に使用。
ボードとケーブルのセット。
ただし、専用ケーブル「PC-9821-K10」が必要。

 98MATE Rでは、FDDにケーブルを接続する際に FDD側のコネクタは必ず突起が上になります。ドライブによっては上下逆に接続できてしまう物がります。特に SONY製ドライブは一度でも逆に接続して通電してしまうと故障しますのでご注意ください。

 ちなみに、98MATE SERVER (PC-9821RsII26) では、8ピンの FDD補助信号コネクタがマザーボード上に無いので PC-9801-87は使用できません。ご注意ください。

● PC-9821RA-FD1と PC-9801-87の併用時の注意

 98MATE Rで PC-9821RA-FD1 増設 FDDと PC-9801-87 外付け 1MB FDD インタフェースボードを併用する場合、FDD信号ケーブルの接続を誤ると PC-9821RA-FD1側 (第二ドライブ) の FDDが正常動作しません。マニュアルには併用時の接続方法の記載が無いのでここで補足しておきます。接続順は次の通りになります。

  1. パソコン本体付属の FDD信号ケーブルを標準で内蔵されている FDD第一ドライブから外す
  2. FDD第一ドライブから外した FDD信号ケーブルを PC-9821RA-FD1付属二股ケーブルのオスコネクタに繋ぐ
  3. PC-9821RA-FD1付属二股ケーブルの「1」と表示のあるコネクタを FDD第一ドライブに繋ぐ
  4. PC-9821RA-FD1付属二股ケーブルの「2」と表示のあるコネクタを PC-9821-K10ケーブルのオスコネクタに繋ぐ
  5. PC-9821-K10ケーブルの「短い側」のメスコネクタを PC-9821RA-FD1の FDD (第二ドライブ) に繋ぐ
  6. PC-9821-K10ケーブルの「長い側」のメスコネクタを PC-9801-87の 34ピン FDDオスコネクタに繋ぐ

 ポイントとしては FDD信号ケーブル内で長い分岐が無いようにすることです。98MATE Rでは 旧来の PC-9821Xsのような長い二股のケーブルだとフォーマットや書き込み時に不具合が出ることがあります。特にケーブルを自作される方はご注意ください。

● ハードディスクドライブ (HDD)

 HDDは98MATE RシリーズデスクトップモデルのPC-9821RaII23から最終モデルの PC-9821Ra43では、Enhanced IDEタイプ、専用固定ディスクインターフェースに接続されています。ドライブは、IBM製、Seagate製、Maxtor製等が多いです。PC-9821Ra266前期 (末尾に Rが付かない)までは一台の最大容量 4.56GB、PC-9821Ra266後期 (末尾に Rが付く) では 8GBまでのドライブが接続可能です。本機では、Master、Slaveの設定が必要です。未設定、Cable Selectでは正常動作しません。

 デスクトップモデルでは、オプションのドライブベイ用金具 Logitec「LHA-XAKT2」等を用意することで 2台まで増設できますが、CPUとのスペースが非常に狭いのでご注意ください。CPUファンの厚みによっては実装出来ません。

 98MATE RシリーズミニタワーモデルのPC-9821RvII26では、Ultra SCSI仕様の IBM製 2.1GBのドライブを搭載しています。CPUユニットがサブボード形式になった為にスペースの都合でフロント側のシャドウベイが廃止されたので電源ユニットの隣に横向きに搭載しています。(^ ^;;

 何れのモデルも型番により出荷時に Windows98SE、Windows98、Windows 95、WindowsNT 4.0 Workstation、MS-DOS 6.2 (Windows3.1は無し) がプリインストールされています。PC-9821Ra40以降 Windowsモデルについては、プロダクト IDがルーフカバーに貼り付けられるようになりました。

● 光学ドライブ

 98MATE RシリーズデスクトップモデルのPC-9821RaII23から最終モデルの PC-9821Ra43では、光学ドライブとして ATAPI仕様の CD-ROMドライブを唯一のファイルベイに搭載しています。ロットによって違いが有りますが、SONY、NEC、松下寿、日立、日立LGの何れかです。PC-9821Ra300以降のモデルでは、仕様上 24倍速となっていますがロットにより 32倍速以上の場合が有ります。

 一方、98MATE RシリーズミニタワーモデルのPC-9821RvII26では、SCSI仕様で 6倍速の PDドライブ NEC製 ODX654を最上段のファイルベイに搭載しています。650MBの PDメディアに読み書きが可能です。ただし、MOドライブとは違い起動はできません。

グラフィック、サウンド機能

● グラフィック機能

 98MATE Rシリーズ全デスクトップモデルのグラフィック機能は、標準で従来の 640 x 400ドット (4,096色中 16色: Enhanced Graphic Charger) に加え、ウインドウアクセラレータ機能をサブボード形式の PCIバス接続で内蔵しています。なお、DOS画面のモニター出力を 24kHzと 31kHzから選択できます。選択の方法は、「GRAPH」キーと「1」(24kHz) または「2」(31kHz、デフォルト) を押ながら電源投入します。数字キーはフルキー側のみ有効です。

 グラフィックチップは、Trident製 TGUI9682XGiでDirectDraw、ビデオアクセラレーション機能に対応しています。また、VRAMは 2MB搭載しています。

 画面表示は、Windows上では、最大 1280 x 1024ドットで 1677万色中 256色、DOS上では、最大 640 x 480ドットで 1,677万色中 256色の表示が可能です。

グラフィックサブボード

 ちなみに、このボードは、PCIバススロットに似たスロット上に載っていますが、本体の RGB出力も一緒になっているので PCIボードではなくマザーボードの一部です。これは、絶対に外したり交換できませんのでご注意ください。これを外したり交換すると本体が起動しない他、最悪本体を壊してしまいます。これを「ぬいちゃ駄目ボード」ともいいます。(^ ^;;

 一方、98MATE Rシリーズ全ミニタワーモデルでは、OEM版の Matrox Millenium搭載の PCIバス対応グラフィックアクセラレーションカードを PCIスロットに実装しています。VRAM は 4MBで増設はできません。Windows上では、最大 1,600 x 1,200ドット 1677万色中 256色、DOS上では、最大 640 x 480ドットで 1,677万色中 256色の表示が可能です。

 ミニタワーモデルでは、オンボードで PC-98の標準グラフィック機能を搭載しているので、Milleniumが実装されているスロットは普通の PCIバススロットです。

 ちなみに、ミニタワーモデルでも 98MATE SERVERの PC-9821RsII26/B40はデスクトップモデルと同じ Trident製 TGUI9682XGiで「ぬいちゃ駄目ボード」です。PCIバススロットは 1本少ない 2本です。

● サウンド機能

 98MATE Rシリーズ全モデルのサウンド機能は、MATE-X PCM と呼ばれる PCM録音再生機能を標準で搭載しています。これは、 WSS (Windows Sound System) 対応の PCM音源チップ CS4231を搭載したもので86音源の PCMと違い Windows 9xでも再生時に CPUに負荷が掛からず、音飛びしにくくなっています。また、CD-ROMドライブの音声も本体スピーカから出力できます。

 このボードは、スロットが PCIバスっぽいですが、れっきとした Cバスです。MATE-X PCM以外の他のボードと交換できません。マザーボードの一部です。

 残念ながら PC-9801-86相当の FM音源機能 (86音源: FM 6音、リズム 6音、SSG 3音) は省かれていますので FM音源を使った DOSゲームでは音楽が演奏できません。この場合、別に「PC-9801-86」や「PC-9801-118」、「WaveStar」等を増設する必要があります。サウンドボードを増設する場合は、あらかじめセットアップメニューで内蔵サウンド機能を切り離しておいたほうが無難です。一応、フリーウェアのドライバを使えば共存もできるようです。

 ちなみに、98MATE Rシリーズと「PC-9801-118」の組み合わせではボード上のヘッドフォン出力にノイズが載りやすいという特徴が有ります。HDDアクセス時に特に酷いです。恐らく、12V系電源ラインのノイズの影響と思われます。未検証ですが 118ボードに ACアダプタ「PC-9801-73-AC」を接続して電源を供給してやると改善するかもしれません。

インターフェースと拡張スロット

● 本体のコネクタ

位置 種類 形状
本体前部 ヘッドフォン出力 ステレオミニジャック
本体後部 キーボード ミニ Din 8pin
バスマウス ミニ Din 9pin
アナログディスプレイ出力と入力 ミニ D-Sub 15pin、基本的には 24kHzと 31kHz対応で切り替え可。
LINE出力と入力 ステレオミニジャック
マイク ステレオミニジャック
RS-232Cシリアル I/F 2チャンネル D-Sub 25pinと赤外線通信対応の D-Sub 9pinで両方とも最高115,200bpsまで対応。
プリンタ用双方向パラレルインターフェース アンフェノールハーフ 36pin
100BASE-TX/10BASE-T 8芯モジュラージャック
Ultra SCSIインターフェース アンフェノールハーフ 50pin (※ 98MATE Rミニタワーモデルのみ)

 この中で特に、PC-9801型番等の旧機種とは、プリンタのコネクタ、アナログディスプレイのコネクタの形状が違うので注意が必要です。

● 拡張スロット

 拡張スロットは、PnP (プラグアンドプレイ) に対応しています。Cバススロット (汎用拡張スロット) はデスクトップモデルでは 3スロット、タワーモデルでは 4スロットです。
 PCIバスは、デスクトップモデルでは 2スロット、タワーモデルでは 3スロット (うち 1スロットは GAカードで占有済み) です。なお、98MATE Rシリーズでは、デフォルトでは IRQ (INT) が殆ど空いていないのでボードの増設の際には注意が必要です。調整には添付の PCIセットアップディスクが必要になります。同種のフリーソフトは存在しないのでご注意ください。

 98MATE Rシリーズでは、Cバススロットの仕様が若干変更になっており、Cバスリフレッシュ信号のサポートが無くなりました。この機能に関係するボードはデータの転送に DMA転送、バスマスタ転送する Cバスボード (ICM製 IF-2769等) です。これらのボードでは、データ化け等で正常に動作しないのでこれにも注意が必要です。

 PCIバススロットについては、リビジョンが 2.1に上がり、PCIバスブリッジを実装した複合 IFボード (玄人志向 CHANPON3-PCI等)や、PCIバススロット拡張ユニットでも IRQ割り当ての問題は有りますが、まりもさんの「PCISET」を使用することでほぼ問題なく使用できます。

 Windows2000上であれば、保証外ですが PC/AT互換機用の PCIバスカードも動作してしまうケースが多いです。ただし、 BIOS ROMを搭載している物 (特に GeForce系グラフィックアクセラレータカード、SCSI I/Fカード、SATA I/Fカード等)、DOS環境用のドライバがインストールされてしまう物 (SoundBLASTERシリーズのサウンドカード等) については注意が必要です。
 前者については、カード上のBIOS ROMを起動させない工夫 (BIOS ROMを書き換える、ROMを物理的に外す) が必要で、後者の場合はインストール直後に DOS環境用ドライバを削除する事で回避できます。

 PCI接続のグラフィックカードに付いては、SV-98model2ですが当サイトのGeForce2 MX/MX400を SV-98/2で使うを参考にしてください。また、玄人志向の CHANPON2'TURBO-PCIや ATA133RAID-PCI等の Ultra-ATA I/F、SATAEI-LPPCI等の SATA I/Fを PC-98で使うには、大熊猫さんの大熊猫のぺぇじを参考にどうぞ。

● ファイルベイ

 98MATE Rシリーズ全デスクトップモデルでは、一般的な 5インチファイルベイを 1スロット搭載しています。標準では CD-ROMドライブが搭載されています。

 98MATE Rシリーズ全ミニタワーモデルでは、3スロット搭載しています。標準では最上段のスロットに PDドライブが搭載されています。

本体ディップスイッチの設定

 98MATE Rシリーズ全モデルで、ハードウェアディップスイッチは無く、内蔵 HDDの切り離し等の設定は、セットアップメニューで設定します。呼び出し方は、リセットボタンが無いので「HELP」キーを押ながら電源投入します。また、シリアル通信速度などは従来モデル同様にメモリスイッチで設定します。MS-DOSの「SWITCH」コマンド、Windowsの「98環境」で設定します。詳しくは以下のページをご参照ください。

 第一電算機研究室 付録 NEC PC-98シリーズ メモリスイッチ設定一覧表

その他の特徴

● 新しい機能

 98MATE Rシリーズの特徴は、オフィスへの一括導入を狙ったキャッチコピーが示すように、オンボード PCI接続の LAN機能 (100BASE-TX/ 10BASE-T対応、PC-9821X-B06相当) を搭載しているため、100BASE-TXコネクタが付いています。これにより、100Mbpsの高速なネットワークが構築できます。

 また、メンテナンスを容易にするため、ネジ 1本でルーフカバーが外せます。しかし、中は狭くメモリやハードディスクの増設や交換はちょっと面倒です。このため、一度ルーフカバーを開けて作業をするとしばしば FDDがコネクタの接触不良で認識されなくなります。(T_T) 

 さらに、筐体に盗難防止ケーブルを接続することによりルーフカバーをロックして開けられないようにできたり、パワー ONパスワード機能やデータ流出を防ぐ I/Oロック機能等、セキュリティ機能が強化されています。でもパスワードを忘れると大変なことになるのでむやみに設定しないほうがいいでしょう。(^ ^;;

 なお、このセキュリティー機能の I/Oロック機能を利用すると FDD I/Fや シリアル I/F、プリンタ I/Fの割り込み (IRQ) を開放できます。

 他に、ATX電源なのでタイマー等による自動電源 ON機能も搭載しています。ちなみに、電源容量は最大 200Wなので消費電力の大きい HDDを 2ドライブ搭載し、CPUを高クロックのものに換装すると電力が足らなくなる可能性があります。(T_T)

● 削除された機能

 98MATE Rシリーズでは、従来の PC-9800シリーズで搭載されていた幾つかの機能が削除されています。代表的なものとしては次の通りです。

  • リセットスイッチ
  • ROM BASIC インタプリタ
  • テキスト 40桁モード
  • モノクログラフィックモード
  • セットアップメニューの固定ディスクセクタ長の設定 (512バイト固定)
  • セットアップメニューの CPU動作速度の変更 (内蔵キャッシュの ON/OFF)

 これらの機能を使用するアプリケーションは、98MATE Rシリーズでは正常動作しませんのでご注意ください。

 特に、N88- BASIC(86) (通称 ROM BASIC) の一部が省かれた事により N88-日本語 BASIC (Disk-BASIC) のサポートが無くなったこと、MS-DOS 5.0A以前のバージョンの MS-DOSのサポートが無くなった事です。よって、これらの機能を必要とする古いソフトは正常動作しない可能性が有ります。ご注意ください。

98MATE Rシリーズのマニュアルについて

 PC-9821Ra43については NECの公式サイト「121Ware」より PDF版がダウンロード可能です。トップページから「サービス&サポート」→「商品情報検索」で「PC-9821Ra43」を検索し表示された一覧から機種を選択します。
 どの機種でも構いませんが、使用している OSで決めると良いでしょう。PC-9821Ra43に続く英文字の Dは MS-DOS6.2、Wは Windows95、Mは Windows98/98SEです。機種を選択後は、開いたページの「電子マニュアルで調べる」欄の「詳細はこちら」のボタンを押してください。

 基本的に PC-9821RaII23から PC-9821Ra43までの98MATE Rデスクトップモデルについては CPUの違いを除いては、ハードウエアに違いは無いのでこのマニュアルで十分理解できます。

 紙媒体のマニュアルが必要な場合は、NEC PCマニュアルセンター (2016年 3月末にて閉鎖) にお問い合わせください。コピーした物を製本した物になりますが、製本はしっかりしています。PC-98に関しては、PC-9821Ra43に限らず PC-9821型番のほぼ全機種、FC-9801/FC-9821シリーズの全ての機種、一部の周辺機器のマニュアルが購入可能です。購入に関しては特に制限はなく個人でも購入可能です。

Slot 1/Socket 370搭載モデルのCPU交換についての資料

 98MATE Rシリーズの CPU交換についての資料 (覚書) です。この項では、以下のモデルが対象です。

● Slot 1 (PentiumII) 搭載モデル

  • PC-9821RaII23
  • PC-9821Ra266
  • PC-9821RsII26 (98MATE SERVER)
  • PC-9821RvII26

● Socket 370 (Celeron) 搭載モデル

  • PC-9821Ra300
  • PC-9821Ra333
  • PC-9821Ra40
  • PC-9821Ra43

 Socket 370モデルの CPUは、「MSI MS9605 Rev 1.1」Socket 370-Slot 1変換アダプタ上に取り付けられている。このボードのジャンパ設定をむやみに変更すると、起動後にフリーズしたり動作不安定になるので注意のこと。

 上記のうち PC-9821Ra266は、製造時期により、ITFのレビジョンにばらつきがあるので、CPU交換の際は注意の事。

交換対象の CPU一覧
メーカー 製品名 コア名称 対応クロック (MHz) 動作倍率*1 対応ソケット コア
電圧*2
L2キャッシュ 拡張命令 マルチプロセッサ
FSB 定格 容量 動作速度*3 レイテンシの変更*4
intel PentiumII Klamath 66 233〜300 3.5〜 4.5 Slot 1 (SECC) 2.8V 512KB Half MMX 対応
Deschutes 66 266〜333 4〜 5 Slot 1 (SECC) 2.0V 512KB Half
100 300〜450 3〜 4.5
PentiumIII Katmai 100 450〜600 4.5〜 6*5 Slot 1 (SECC2) 2.0V 512KB Half MMX, SSE 対応
133 533B〜600B 4〜 4.5*5
Coppermine 100 500E〜1100*6 5〜 11*7 Slot 1 (SECC2),
Socket 370 (FC-PGA)
1.75V 256KB Full 不可
133 533EB〜1130 4〜 8.5
Tualatin-256K 133 1000A〜1200 7.5〜 9 Socket 370 (FC-PGA2) 1.475V 256KB Full 不可 非対応
PentiumIII-S Tualatin 133 1130〜1400 8.5〜 10.5 Socket 370 (FC-PGA2) 1.45V 512KB Full 不可 対応
Celeron Covington 66 266〜300 4〜 4.5 Slot 1 (SEPP) 2.0V - - - MMX 非対応
Mendochino 66 300A〜433 6〜 6.5 Slot 1 (SEPP) 2.0V 128KB Full *9 MMX 非対応*8
366〜533 5.5〜 8 Socket 370 (PPGA)
Coppermine-128K 66 533A〜766 8〜 11.5 Socket 370 (FC-PGA) 1.75V 128KB Full 不可*10 MMX, SSE 非対応*8
100 800〜1100 8〜 11
Tualatin-256K 100 1000A〜1400 10〜 14 Socket 370 (FC-PGA2) 1.45V 256KB Full 不可*10 MMX, SSE 非対応*8

*1 Klamath, 66MHz版 Deschutesの初期ロット、エンジニアリングサンプル (ES) 品を除く、全ての製品の動作倍率は、変更できない。

*2 ロット、対応クロックによって、異なる場合があります。

*3 コアクロックに対する動作速度、「Half」では、半分、「full」では、等速を表す。

*4 L2キャッシュのレイテンシ (ウェイト) 値の変更の可、不可。可の場合、フリーソフトで、変更が可能。ただし、ウェイトを軽くしすぎると、動作が不安定になるほか、CPUを破壊する危険性がある。

*5 ES品の一部では、ラインナップに無い、最高 8.5倍の逓倍設定を持っている。

*6 1.1GHz版は、OEM向けにのみ出荷したもので、リテール版 (BOX版) は無い。

*7 ES品の 「QJE1ES」では、ラインナップに無い、最高 12倍の逓倍設定を持っている。

*8 公式には、非対応だが、マルチプロセッサで運用可能な場合もある。

*9 内蔵 L2キャッシュにウェイトが多めに掛けられている。

*10 L2キャッシュが同容量の PentiumIIIと比べると、内蔵 L2キャッシュにウェイトが掛けられているため、パフォーマンスが若干落ちる。

PentiumII/ Celeron搭載モデルと CPUの対応一覧
メーカー 製品名 コア名称 対応クロック (MHz) PC-9821
FSB 定格 66MHz
*i
RaII23, Ra266 RsII26, RvII26
*ii
Ra266/R
*iii
Ra266/R
*iv
Ra300, Ra333
*v
Ra300, Ra333 Ra40, Ra43
intel PentiumII Klamath 66 233〜300 233〜 300 *1 *1
Deschutes 66 266〜333 266〜 333 × × *1 *1
100 300〜450 200〜 300 × × *1 *1
PentiumIII Katmai 100 450〜600 300〜 400*vi × × *1 *1 *1 *1 *1
133 533B〜600B 266〜 300 × × *1 *1 *1 *1 *1
Coppermine 100 500E〜1100 333〜 733 × × × *2 *1,*2 *1,*3 *3
133 533EB〜1130 266〜 566 × × × *2 *1,*2 *1,*3 *3
Tualatin-256K 133 1000A〜1200 500〜 600 × × × × × × ×
PentiumIII-S Tualatin 133 1130〜1400 566〜 700 × × × × × × ×
Celeron Covington 66 266〜300 266〜 300 *1 *1 *1 *1 *1
Mendochino 66 300A〜433*vii 300〜 433 × × *1,*4 *1 *1
366〜533 366〜 533 × × *4,*5 *5 *1,*5 *1,*5
Coppermine-128K 66 533A〜766 533〜 766 × × × *2 *1,*2 *1,*3 *3
100 800〜1100 533〜 733 × × × *2 *1,*2 *1,*3 *3
Tualatin-256K 100 1000A〜1400 533〜 933 × × × × × × ×

◎: 動作可、○: 条件付きで動作可、△: 動作可だが不具合あり、×: 動作不可、?: 不明

*i システムクロック 66MHzの場合の動作クロック。

*ii デュアルプロセッサ対応で、同一の CPU IDを持つ CPUにより、WindowsNT/2K環境にて、マルチプロセッサ運用が可能。その場合、VRMユニットの増設が必要。

*iii PC-9821Ra266/M30R, PC-9821Ra266/W30R, PC-9821Ra266/D30R, PC-9821Ra266/P30R, PC-9821Ra266/Y30Rの 5機種。

*iv BIOSレビジョン 0.02以降の本体。

*v PC-9821Ra300, PC-9821333の 2機種のうち、オンボード VRMに「HIP 6004CB」を使用している本体。

*vi 高クロック版は、本体との相性がきつい。また、場合によっては、マザーを改造する必要がある。

*vii SEPPタイプ。

*1 使用する CPU、または、変換アダプタに対応するリテンションキットへの交換が必要。

*2 FC-PGA 370対応のソケット変換アダプタ (MSI MS9605 Master等) が必要。

*3 Coppermineコアに対応する電圧変換アダプタ (Powewr Leap PL-iP3 Rev 2.0等) が必要。

*4 「CACHE ERROR」により、内蔵 L1/L2キャッシュが切れた状態で起動する。まりもさんの「P6L2C」で有効に切り替えることが出来る。

*5 Socket 370対応のソケット変換アダプタ (MSI MS9605 Rev 1.1等) が必要。

Slot 1/Socket 370搭載モデルで CPU交換をする際の注意事項

 これらのモデルでの CPU交換は、Peintiumや、Pentium Pro搭載モデルとは異なり、ハード、ソフト (ITF) の面でかなりの制約を受けるのでそれなりの知識と技術が要求される。以下にポイントごとにまとめておく。

● 動作クロック倍率 (内部逓倍設定) の変更について

 Slot 1, Socket 370の全モデルについて、CPUの動作クロック倍率は、マザーボード上もしくは CPUの載ったサブボード (PC-9821RvII26、PC-9821RsII26のみ) 上にある 4連のジャンパで設定する。PentiumII (一部ロット) や、Coppermine, Tualatinコアの エンジニアリングサンプル版 (ES版)等は、設定の変更が可能。
 ちなみに、Coppermineコアの ES版の上限は製品に存在しない 12倍まであるが、Tualatinコアの ES版は製品版の上限 10.5倍までとなっている。

● BIOS (ITF) について (CPU封印解除)

 PentiumII以降の CPUでマイクロコード (エラッタによるバグ修正パッチ) を適用する機能が追加された。このため、ITFチェックのうち、CPUの IDチェック段階で予期しない CPU IDを検出すると、深刻なエラー (赤文字エラー) となり停止してしまう。この処理部分を何らかの手段で回避できれば、動作電圧を合わせるだけで動作する。
 ただし、回避した場合はマイクロコードによる修正が適用されないので注意が必要。Windows系 OSでは OS側でも修正に対応できる。回避せずに CPU IDとマイクロコードを書き変え、または、追加してチェックを通過させることができればベスト。
 同様に回避の方法によっては L2キャッシュが無効 (disable) 状態で起動してしまう場合がある。この場合は起動後にチップセットのレジスタを操作し有効 (enable) にする。
 また、Genuin Intelチェックがあるため Cyrix (現 VIA) 製の互換 CPUは赤文字エラーで動作しない。この処理部分を回避したうえで動作するかは不明。

 これは、特別 PC-9821に限った事ではなくIntel Corei7が普及した今日の全ての PC/AT互換機でも同様なので注意の事。NetBurstマイクロアーキテクチャから Coreマイクロアーキテクチャへの移行、SandyBridgeコアから Ivy Bridgeコアへの移行等の新しいマイクロアーキテクチャの CPU登場時に問題になりやすい。自作用マザーボードの場合は、各メーカーで対応 BIOSを配布するケースが多いものの、NECでは CPUの交換は改造とみなすため基本的にこの様な対応はしない。それでも、PC-MY28A/E-5の様に BIOSアップデートで非対応の CPUに対応するケースは少なからずある。

 起動時のメモリチェック (メモリカウント) を高速化する場合はチェックする単位の容量を 1024KB等に増加させる方法をとるのが一般的であるが、デスクトップモデルでは DOSの起動時に「PARITY ERROR BASE MEMORY」となり停止するので合わせて ECCを解除する必要がある。結果として ECCに非対応の SIMMを使用することができるようになる。
 一方、タワーモデルの PC-9821RvII26、PC-9821RsII26では同じ操作をしてもエラーは発生しない。

 なお、どのような手段であっても本体の ITFの一部を書き換える等、ITF (ソフトウェア) の改変は、NECに許可を取る必要がある。無許可で改変した場合は、著作権や複製権に絡む法律に違反するのでここでは取り扱わない。

 ちなみに、Coppermineの動かない PC-9821Ra266の ITF ROM (Intel製フラッシュ ROM ) をハンダ鏝を使って剥がして Coppermineの動く PC-9821Ra333の ITF ROMに貼り替えるようなハードウェア的な改造については、ITFの内容自体を改変しているわけではないので違法にはならない。
 なお、CPUチェックの緩い PC-9821Ra20 (Socket8モデル, i440FX) の ITF ROMを剥がして PC-9821Ra266 (Slot1モデル, i440FX) に移植した場合では、CPUを Coppermineに交換しても動作するがハードウェア構成の若干の違いによって Windows 95の起動途中でハングアップする。

● 高クロック CPUでの注意事項

 高クロックの CPUを使用する場合は、オンボード VRMの電源供給能力に注意する必要がある。目安としては、Celeron (Mendochino) 500MHz辺りが限界といわれている (このために、Celeron 433MHz以上のマシンが登場しなかったというもある)。
 これよりも交換する CPUの消費電力が大きい場合は、VRM部のコンデンサの交換や追加など、適切な強化策を施さないと、CPUの故障、マザーの焼損につながり、非常に危険である。

 PC-9821Ra266以降の本体で、オンボード VRMに、「HIP 6004CB」を使用している本体では、スロット変換アダプタだけで、Coppermineコアを動作させられるという報告があるが、これは、当時まだ、PL-iP3/T Rev 2.0等の安定して動作する外部からの電源供給機能のついたスロット変換アダプタが無かったためである。
 これらの機種で、Coppermineコアを動作させる場合は、Power Leap製 PL-iP3/T Rev 2.0等の外部からの電源供給機能のついたスロット変換アダプタを使用することを強く推奨する。

● Coppermine, Tualatinコアでの注意事項

 Coppermine, Tualatinコアの CPUを動作させる場合は、AGTL電圧を作るオンボードレギュレータ (EZ1084CT) に、ヒートシンクを取り付けるなど、過熱に注意する必要がある。

 特に、Tualatinコアでは AGTL (1.5V) の規格が低電圧の AGTL+ (1.2V) に変更されているため、Coppermineに比べて発熱がさらに増加する。この場合はレギュレータの出力を 1.25Vにする (ADJUSTピンを GNDに落とす) か、入力電圧を 5Vから 3.3Vに変える等の改造が必要になる。

● VRM、Dual構成での運用について

 Dual構成に正式に対応している CPUは、PentiumII, PentiumIII (Tualatin-256K 除く) , PentiumIII-Sで、運用するには、CPU IDが2個とも同じであることが条件となる。もちろん、OSや、拡張ボード、ソフトが対応していることも条件となる。
 PC-9821対応の NEC純正品では、「PC-9821RS226-E01」 増設 CPUセットがある。純正品問わず CPUを増設した場合は、セットアップメニューで、「割り込み」を「拡張」に切り替える。これにより、増設した CPUが認識される。

 PC-9821RvII26, PC-9821RsII26で、Dual構成で運用するには、CPUに対応した、VRMユニットと、Socket 370タイプの CPUでは、スロット変換アダプタが必要になる。
 使用できる VRMの条件としては、5V入力に対応していること、Coppermineコアの場合は、VRM8.3規格以降、Tualatinコアの場合は、VRM 8.4規格以降のものが必要になる。入手の際には、これらが VRMユニットに明記されているものを選ぶと良い。

 12V入力対応のものを取り付けた場合、12V電源ラインを強化しないと、マザーボードを焼損する可能性があるので極めて危険である。なお、12Vと 5V両対応と明記されているのものでは問題無く使用できる。

 PC-9821RvII26, PC-9821RsII26で、保証外の Coppermine, Tualatinコアの CPUを用いて Dual構成運用をする場合は、スロット変換アダプタ (Upgreadware SLOT-T等) と、VRMユニットを使用しての運用を推奨する。

 増設用 VRMに、標準の VRMしか入手できなかった場合は、PL-iP3/T等の外部からの電源供給機能のついたスロット変換アダプタを使用しても良いが、PC-98での Dual構成には向かず動作が不安定で、数十分から数時間でフリーズする現象が多発する。電源ユニットをより強力なものに交換し、それぞれのアダプタに別ルートで電源を供給しても改善しない。

メモリの増設

 ECC (Error Correcting Code) 対応の 72pin EDO (Extended Data Out) SIMM が利用できます。EDO SIMMに使われている、EDO DRAMは、従来の FPM (Fast Page Mode) のデータ出力方式を改良して高速データ出力を可能とした DRAMです。増設の際には、必ず同容量で同種の SIMMを 2枚一組で増設します。
 また、従来のパリ付き FP SIMMも利用できます。なお、FP SIMMを搭載または混在させるとEDO SIMM搭載時よりメモリアクセスが若干遅くなります。

 ちなみに、ECCとは、データの読み出しや書き込みにチェックの為のデータを追加してエラーを検出するものです。これは 24時間連続稼働時 (※ PC-98では 24時間連続稼働は想定されていません) に宇宙線等のノイズによる一時的なビットの反転を防ぐために有効な手段です。通常めったに有りませんが、パリティー付きメモリはエラーを検出するとデータを破壊する前にシステムを停止させますが、ECCではエラーを修復してシステムを停止しないようにします。この機能は、ネットワークの基幹として動作するサーバ等、ハイエンドマシンでは、無くてはならない機能です。

 98MATE Rシリーズでは、64Mビット DRAMに対応しているので1枚辺り 128MBまでの、PC/AT互換機やサーバ用の 72pin ECC対応 EDO SIMMも自己責任で使用できます。ただし、全てが動作するわけではなく相性により、正常動作しない場合もあります。

● PC-9821RaII23、PC-9821Ra266、PC-9821Ra300、PC-9821Ra333、PC-9821Ra40、PC-9821Ra43

 98MATE Rシリーズデスクトップモデルでのメモリの増設の仕方は、マザーボード上の 4カ所の SIMMソケットに増設または標準のものと交換し、一枚 128MBのモジュール 4枚で最大 512MB (公称値は、256MB) まで増設できます。

 メモリの増設の際スロットはどこでも良いのではなく、CPUに近い側から順に搭載します。

 メモリの増設には必ず同容量で同種の SIMMを 2枚一組で増設します。容量や仕様が異なると「SIMM SETTING ERROR」となり正常動作しません。

● PC-9821RvII26/N20、PC-9821RsII26/N20

 98MATE Rシリーズミニタワーモデルでのメモリの増設の仕方は、CPUが載ったサブボードを取り外す必要が有ります。増設後に取り付けるときは、接触不良を起こしやすいのでサブボードの板端を溝に合わせしっかりと奥まで挿し込んでください。挿しこみが甘いと起動不良の原因になります。
 マザーボード上の 8カ所の SIMMソケットに増設または標準のものと交換し、一枚 128MBのモジュール 8枚で最大 1GB (公称値は、512MB) まで増設できます。

 メモリの増設の際スロットはどこでも良いのではなく、CPUに近い側から順に搭載します。

 チップセットがメモリインターリーブ対応なのでメモリの増設には必ず同容量で同種の SIMMを 4枚一組で増設します。4枚の容量や仕様が異なると「SIMM SETTING ERROR」となり正常動作しません。

● 注意点

 64ビット DRAM搭載 SIMMを使用し 公称値以上メモリを搭載すると電源出力が不足し不意なフリーズ、再起動が起き正常動作しない場合があります。この場合は、ATX電源の換装で対処できる場合があります。

 512MB以上メモリを搭載すると Windows95/98は起動できません。PC-98に限らず PC/AT互換機でも同じです。こちらを参考にどうぞ。512MB 以上のメモリーを搭載すると、メモリー不足エラーが発生します

 ECC付と無しの SIMMを見分ける方法については、こちらの記事を参考にどうぞ。電算機第一研究室 98MATE Aシリーズ編 PC-9821Ap3ネタ パリ付きと無しの FP SIMMの見分け方

 時々誤解される方がいらっしゃいますが、ECC機能は一時的なエラーに対して効果を発揮する物です。DRAMチップやモジュールの物理的な不良によるエラーを補う物ではありません。SIMMに不良が有る場合は当然ながら交換が必要です。

 この ECC対応の EDO SIMMは現在では販売が終了しており廃棄も進んでいるので、かつてに比べると中古品でもやや価格が高くなっています。

代表的なメモリサブボード (ECC対応 72pin EDO SIMM) 全て生産終了

メーカー 製品名 容量 枚数 標準価格(税別)
NEC PC-9821-ME1〜ME5 4〜64MB 1枚 14,000円〜240,000円
メルコ (バッファロー) EMH-E 16〜128MB 2枚 6,500円〜64,000円
I-O DATA NE-ECC 16〜128MB 2枚 オープン価格
ADTEC AD-P*M72ECC 32〜128MB 2枚 44,000円〜オープン価格

ECC非対応の SIMMを使う

 98MATE Rシリーズ、98MATE Xシリーズで、コストの問題から ECC非対応もしくは、ノンパリティの SIMMを使いたいと言うケースが有ります。SIMMソケット全てを ECC非対応 SIMMで埋めることはできませんが使う事はできます。

 かつて、玄人志向では「PK98-64MX2EDO」(128MB)、「PK98-128MX2EDO」(256MB) という ECC無しの EDOメモリを設定ディスクと共に販売していた事が有りました。

 まず、CPUに近い側から ECC対応の SIMMを 2枚取り付けます。容量は何でも構いませんが、この時点で正常に起動する必要が有ります。

 まりもさんの「MEMSET33」を HDDにインストールします。使用方法は、まりもさんのページを良く読んでください。

 次に、残りのスロットに ECC非対応の SIMMを 2枚取り付けます。この状態で起動すると黄色文字の「MEMORY ERROR」となりますが、エラーとなったメモリを切り離して起動は続きます。

 「MEMSET33」が起動すると、エラーで切り離されたメモリを再び認識し全容量を使えるようになります。

 98MATE Rシリーズは、特にメモリカウントが遅いので大容量メモリを搭載した時に時間を短縮する方法としても有効です。(^ ^;;

98MATE Rシリーズの保守

PC-9821RaII23、PC-9821RvII26、PC-9821Ra266、PC-9821Ra300、PC-9821Ra333、PC-9821Ra40、PC-9821Ra43は製造から 20年程度経過しています。今後も正常に使用するにあたって幾つかのポイントを挙げておきます。

● FDD

NEC製 3.5インチ FDDの FD1231T

 98MATE Rシリーズデスクトップでは、1.44MB、1MB、640KBの 3モード対応の 3.5インチ FDドライブを搭載しています。コスト削減から複数メーカーの FDDを採用するようになりました。製造ロットにより幾つか有りますが、採用例があるのは次の通りです。いずれも互換性が有り相互に交換する事ができます。

メーカー 型番 P/N 備考
NEC FD1231T 134-506790-011-2 ドライブ番号切り替えジャンパスイッチが無い物は PC/AT互換機用。
SONY MPF520-F D104-630-222-01 挿入口に黒いベゼル状のプラスチック製ガード付き。

 共通点としては、いずれも、34ピン、電源は 3.5インチ機器用 4ピン、ドライブ番号切り替えジャンパスイッチ有り、VFO無し、ベゼル無し、ボタンは角ボタンでシャッターの色はアイボリーです。PC/AT互換機用とは外観が同じですが、制御基板が異なり互換性は無く使用できません。交換の際には、必ず P/N (パーツナンバー、部品番号) を確認してください。PC-98に PC/AT互換機用若しくはその逆を接続すると FDDが故障するだけでなく、マザーボードの FDD I/Fを破損する恐れが有ります。

 某オークション等で NEC対応、PC-98対応と謳っている出品が有りますが、「PC98-NX」用と勘違いしている可能性が有ります。必ず、PC-98で動作を確認したのか、P/Nの番号はどうなっているか、を確認し明確な回答が無い場合はスルーしましょう。

 PC/AT互換機用 FDDでも NEC製 FD1231Hの一部ロットの様にチップ抵抗の位置を変え (設定を変え) て改造することで PC-98でも使用できるようになる FDDも有ります。

 交換できるドライブとしては、FD1231T、MPF520-F以外に、CITIZEN OSD、NEC FD1148T (コネクタが 34ピンの物、26ピンの物は使用不可) が有ります。FD1148T以外のドライブでは電解コンデンサは大抵電源ピンのそばに 1個あり、液漏れする例はほぼないですが劣化でドライアップします。FD1148Tでは内部に 2個ありこちらは液漏れしやすいです。読み取りが弱くなるぐらいであまり大きな影響は出ない事も有って気が付かない事が多いのですが、万が一液漏れしていたら、周囲を洗浄してコンデンサを換えておくとよいでしょう。

 FD1231Tは、ディスクを回転させるモーターがネジ止めされている為に長期間の振動でずれが起こりやすく耐久性がやや低い事が特徴です。ちなみにここのネジを弄ると磁気フィルムの記録位置がずれてしまい回復は困難です。

 SONY MPF520-Fは、他の SONY製ドライブ同様にケーブル逆挿しの耐性が極端に低い事が特徴です。ケーブルのコネクタを上下逆に挿して通電すると即死します。二度と使用できません。(^ ^;;

 CITIZEN OSDは、ケーブル逆挿しの間違いが起こりやすい事が特徴です。制御基板側に切り込みがあり上下逆に挿す事ができます。MPF520-Fの様に逆挿しで即故障にはなりませんが、アクセスランプが点灯したままになっている時はすぐに電源を切って向きを確認してください。
 ちなみに、似たような型番で「OSD-u」というドライブがありますが、98Multi CanBe用のドライブで「OSD」とはピン配置が上下逆になっていますのでご注意ください。

 FD1148Tは元々数が少ないので入手する機会はあまりないと思います。このドライブは、コンデンサ以外にモーターの軸部分が埃などで固着する例が多いです。FDD本体を裏返して円盤部分を指で回転させようとすると抵抗を感じる場合は固着しています。グリスを軸部分に注入して指で回転させ、指で弾くような感じで触り数秒回転するようであればいいでしょう。ただし、5-56は NGです。樹脂を侵すうえ、揮発するので一週間程度で効果が無くなります。

 SONY MPF520-F以外の FDDは、メディア挿入口付近の板金が丸められておらず剥きだしで鋭利になっています。汚れを取るなとで無暗に指を入れると怪我をしますので必ず軍手を装備の上作業するようにしましょう。(^ ^)b

● カレンダ時計バックアップ電池

FDK製 リチウム二次電池の ML2430

 PC-9821Ra43等の 98MATE Rシリーズで使用されている電池は、三洋 (現 FDK) の「ML2430」という 3V 100mAhの充電可能なリチウム二次電池です。場所は電源ユニットの下あたりに 3ピンのコネクタで実装されています。幸い 20年程度で液漏れする例は殆どありません。この電池を充電するには一昼夜電源を入れたままにするといいようです。充電できない場合は、起動毎に日付と時刻、セットアップメニューの設定、メモリスイッチの設定をやり直す必要があります。

 ML2430は 2012年現在でも FDKが製造していて入手は比較的容易です。形状が同じだからと言って PC/AT互換機のマザーボードで使用されている市販のリチウム一次電池 (使い切りタイプ) は絶対に使用しないでください。これを 98MATE Rシリーズに取り付けると本来充電禁止の一次電池を充電することになるので非常に危険です。

 機種によってPanasonicの「VL2330」が使われている事も有ります。こちらは 3V 50mAhです。両者は充電時の電圧がML2430は 3.1V±0.15V、VL2330は3.4V±0.15Vと異なりますが、3ピンコネクタのマイナス接続ピンを換える事で両方とも使えるようになっています。

 某オークションなどでは出品者が良く分からずにこの様な改造を行って本体を出品している事があります。仮にダイオードを噛ましていても、長期間使用していると劣化等で知らないうちに壊れている可能性があります。万が一ショートモードで壊れると電池側に電流が流れ大変危険です。リチウム電池は取り扱いを誤ると発火や破裂が比較的容易に起こりますのでご注意ください。
 また、ダイオードの性質として順方向降下電圧 (VF) があります。一般的なダイオードでは 0.6〜0.7V程度降下しますのでこの点にも注意が必要です。

 ちなみに、一般的な整流用ダイオードでは 1V程度降下するので、この性質を利用してダイオードを数珠繋ぎにして冷却ファンへの供給電圧を下げて静音化する改造が流行りました。(^ ^;;

 カレンダ時計バックアップ電池が必要な方は、所内売店保守部品フロアへどうぞ。新品の物を 1個 1,000円から 1,280円でお分けします。

 電池の位置は Cバススロット籠の左下になります。左右のネジ 2本を外して黒いミニジャックが 3個並んでいる MATE-X PCMサウンドサブボードを外し、次に、Cバススロットライザーボード上部左側 (本体背面から見て) に CD-ROMドライブの音声ケーブルが接続されているので外します。最後に上部左右 2本のネジを外して Cバススロットライザーボードを上に引き抜きます。以上で電池にアクセスできます。交換後は逆の手順で組み上げてください。

 なお、本機のフレームは鋭利になっている箇所があります。ちょっと当たっただけでも負傷する可能性が有りますので、内部に手を入れる際には軍手をはめる等の防護策を講じてください。

● マザーボード

 この機種では、面実装タイプの四級塩電解コンデンサを使用していないのでコンデンサの液漏れでマザーボードが故障する例は殆ど無く安心して使えます。強いて言えば、PentiumII以降では CPUの消費電力が多く、CPU周辺の低インピーダンスタイプの大きな電解コンデンサが劣化でドライアップ、液漏れして動作が不安定になるケースが有ります。

 本機で最も注意すべきは、Cバスライザーカードスロットの下あたりにあるゴム製の支柱が湿気による加水分解によって溶けて液状化する例が非常に多いことです。

PC-9821Xa16/W16でゴムが溶けた例

 溶けたゴムによって信号線が短絡し微弱な電流がノイズとなって流れることで起動不良を起こす事が有ります。溶ける前に除去しておく事をおすすめします。溶けてしまったらアルコール類の溶剤で拭き取りましょう。イソプロピルアルコール (IPA) が良いですがエタノールに比べて毒性が僅かに高いのでなるべく直接手を触れないようにして換気にご注意ください。

● CPUとサブボード

 この機種では、CPUがカートリッジタイプのため湿気による錆汚れで導通不良を起こす事が非常に多いです。導通不良を起こすと電源を入れても CPUファンが回りません。端子の汚れを消しゴムで擦り根気良く挿し直せば大抵は直ります。

 経年の振動でデスクトップモデルではグラフィックサブボード、ミニタワーモデルではサブボードが緩んで接触が悪くなるケースも有ります。起動時の「ピポ」音が出ない、画面出力が無いケースはまずここを疑います。ACケーブルを抜いてから挿し直してください。なお、グラフィックサブボードを外した場合はセットアップメニューとメモリスイッチの設定が初期化 (日付と時刻は保持) されますのでご注意ください。

● 電源ユニット

 98MATE Rシリーズデスクトップモデルでは、電源に ATX電源の PU756, PU756Aを使用しています。定格出力は合計で 200Wです。この電源は、ライトン製、デルタ (DELTA) 製が有りますが、後期のモデルほどライトン製の比率が多い印象です。ライトン製は仕様上、負荷時にコイルが高周波音を出しやすい特徴が有ります。

 使用されている電解コンデンサは大抵は台湾製の 105℃品ですのでパンクこそありませんが、経年劣化でコンデンサの容量抜けで半導体が劣化して供給電圧が下がって補助記憶装置が作動不良を起こす事が稀にあります。特に、高クロック CPUや大容量の HDDを内蔵する拡張ボードでスロットを埋めるような負荷が大きい状態では動作が不安定になる事も有ります。出力電圧が安定しない場合はコンデンサの交換で復活できますが、+12V系の電圧が極端に下がるような症状は半導体までやられている可能性が高く復活は難しいです。

 一方、PC-9821RvII26、PC-9821RsII26では、タムラ製作所 製の ATX電源 PU754を使用しています。定格出力は記載がなく不明です。この電源は一般の ATX電源と寸法は同じですが排気ファンが外付けと言う特徴があります。こちらも比較的信頼性の高い電解コンデンサを使用していますが、寿命は過ぎているのでコンデンサの容量抜けが心配されます。

 幸いな事に98MATE Rシリーズでは市販の ATX規格の 20ピンタイプ電源が使用できます。PC-9821RvII26、PC-9821RsII26でも問題無く特別にファンを外付けに改造する必要もありません。近年主流の 24ピンタイプは ATXコネクタ付近のスペースに余裕が無いので物理的に接続できません。変換ケーブル (例:サンワサプライ BTX用電源変換ケーブル 0.15m TK-PW84 ) が必要になります。PC-98で交換例の多い DELTA製電源でも 350Wを境に 24ピンの物が殆どになります。
 また、電源と連動するサービスコンセントが付いているものは非常に少ないので、パソコン連動型のタップ (例:サンワサプライ パソコン連動タップ 2P・7個口 2m TAP-RE27MN ) を使用するなど工夫が必要になります。

 電源選びの際の注意点は、ACインレットがネジ止めの物は左右の出っ張りが引っ掛かるのでそのままでは使えません。筺体の板金を加工する手間が掛かるので避けましょう。

 PC-98では、全体的に Cバス籠の影響で筺体内が狭くエアフローはあまり良くありません。排気を電源ファンが担っているので静音タイプ等の排気の弱いタイプ、電源の底の部分に大型ファンが有るタイプは筺体内の排熱が間に合わず非常に危険です。また、筺体内側にファンが有るタイプは物理的に取り付けできない可能性が有ります。これらの電源は避けましょう。

 ちなみに、動作不良の修理やコンデンサ、電池交換、延命処置等の保守をご希望の方は、技術部にて承りますのでご相談ください。

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