第 6世代 CPU (Pentium PRO系)

舞台裏から表舞台へ、ミレニアムを担う CPU。

名称 Pentium Pro (P6) 製造メーカー Intel
Intel Pentium pro 発表年月日 1995/11/1
形状 387pin Dual Cavity PGA
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 コア部: 5,500,000
L2 Cache, 256KB版: 15,500,000
L2 Cache, 512KB版: 31,000,000
L2 Cache, 1MB版: 62,000,000
製造技術 0.6 micron process (Cache:256KB版のみ)
0.35 micron process
対応ソケット Socket 8
動作クロック
(MHz)
150/ 166/ 180/ 200
システムクロック
(MHz)
50 /60/ 66
一次キャッシュメモリ (命令用/ データ用) 16KB (8KB/ 8KB)
二次キャッシュメモリ なし/ 256KB/ 512KB/ 1MB
動作電圧
(コア部/ I/O部)
3.3V (3.1V)/ 3.3V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)
PC-98本体
での採用例
 PC-9821Ra18/Ra20/Rs20/Rv20/St15/St20
PC-98オプション
での採用例
 PC-9821RS20-E01 (200MHz: 増設用 CPU)
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 ダイナミック・エグセキューション・アーキテクチャ搭載。
解説  Pentium Proは Intelが開発した x86系 32ビット CPU。開発時のコードは P6。ローエンドサーバ、ワークステーション、ハイエンドデスクトップパソコン用途高度な処理能力を必要とする環境向けに供給された。第 5世代の Pentiumという名称がついているが Pentiumとはアーキテクチャが違う新設計の P6マイクロアーキテクチャを採用しており全くの別物と思って良い。当初からマルチプロセッサでの使用を考えて設計された CPUで、マルチプロセッサ環境では OSでの対応が必須ではあるが、最大 4CPUを同時に動作させることができる。

 x86命令のデコードとその実行のためのユニットを別々にするという、分離型スーパースケーラアーキテクチャ (ダイナミック・エグセキューション・アーキテクチャ) を採用し命令発行ポートを5つ搭載、x86命令を RISC風の命令に変換して処理 (複数の単純化した命令に分割して実行) をする。多段パイプラインを効率よく動作させるための分岐予測、アウト・オブ・オーダー実行などの機能により 32ビット命令については Pentiumより大幅に演算処理が高速化されている。
 また、アドレス可能なメモリが 64GBまで拡張され、従来よりも大容量のメモリを扱うことが出来る。メモリに対する二次キャッシュの有効レンジも従来の512MBから4GBに拡大された。

 さらに、従来外部に存在していた二次キャッシュメモリを同一チップに内蔵することで、CPU内部クロックと同期した高速な動作が可能となり、同時にメインメモリにアクセスするための比較的低速な外部バスから分離した。二次キャッシュとメインメモリへの同時アクセスも可能となり演算処理の高速化に大きな効果がある。この分離した二つのバスを合わせて「デュアル・インディペンデント・バス(DIB)」呼ぶ。
 ただし、これには欠点もあり、二次キャッシュ容量を増やすことにより、消費電力の増加や CPUに流れる電流が増大する。このことから、単純に二次キャッシュ容量の多い Pentium Proに交換すると、マザーボードやが負荷に耐えきれずにパターンが焼き切れたり、VRMユニットが火を噴く可能性があり非常に危険である。以降、消費電流も CPU交換の際の重要な要素の一つとなった。(^ ^;;
 その他にも、動作クロックの上昇が難しくなったり、製造コストが急騰といったデメリットもある。実際にオーバークロックはほぼ不可能で、製品としても 200MHz以上の物は登場しなかった。

 CPUの形状は、二次キャッシュメモリを同一チップに内蔵した事でパッケージが長方形に大型化した。ピン数も 387ピンに増えた事から新たに Socket 8と言うソケットが採用された。外観は、通常の製品はセラミックパッケージに金色のヒートスプレッダが付いた形状で、内蔵 L2キャッシュの容量によってはヒートスプレッダが内蔵された黒いプラスチックパッケージの製品も有る。
 動作倍率は、166MHz版は 2.5倍固定。その他は 3倍固定となっていて後から変更することは出来ない。

 P6マイクロアーキテクチャでは、Pentiumの FDIVバグの反省からマイクロコードの一部をソフトウェアで書き換え可能となっている。CPUで発生したエラッタは、マザーボードの BIOSや OSを介して供給される暗号化されたコードブロックを CPUに書き込むことで修正が可能となっている。
 この方式は Pentium Pro以降に一般的になったが、その影響で BIOSでの CPUチェック (CPU ID、Model番号、Stepping番号) が厳しくなり同じソケットに対応していても BIOSに該当する CPUの ID、Model番号、Stepping番号が登録されていない場合は、市販のパソコン、自作用マザーボード問わず正常動作しないようになった。
 なお、初期の P6アーキテクチャには 16ビット命令処理にバグがあった。このため、Windows NT系の 32ビット OSでは本来のパフォーマンスを発揮できるが、Windows 9xや DOS環境では、同クロックの Pentiumより劣ってしまう。

 いままで Pentium Pro (Socket 8) 搭載機は、製造コストと技術の囲い込みの兼ね合いから早々に Intelに見切りをつけられ、対応 CPUアクセラレータが無く日陰物な印象があったが、PPGA版 Celeronの登場で変換アダプタ (Power Leap製 PL-Pro/II) が開発された結果、再び脚光を浴びつつある。(^-^)

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Pentium II (Klamath) 製造メーカー Intel
Intel PentiumII (Klamath)

Intel PentiumII (Klamath) 上部
発表年月日 1997/5/7
形状 242pin SECC
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 7,500,000 (コア部)
製造技術 0.35 micron process
対応ソケット Slot 1
動作クロック
(MHz)
233 /266/ 300
システムクロック
(MHz)
66
一次キャッシュメモリ
(命令用/ データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ 512KB (Half speed)
動作電圧
(コア部/ I/O部)
2.8V/ 3.3V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令
PC-98本体
での採用例
 PC-9821RaII23/Ra266/RsII26/RvII26
PC-98オプション
での採用例
 PC-9821RS266-E1 (266MHz: 増設用 CPU)
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 デュアル・インディペンデント・バスアーキテクチャ、L2キャッシュメモリ搭載。内部逓倍設定可能。
解説  Pentium IIは Intelが開発した x86系 32ビット CPU。開発時のコードは Klamath (クラマス)。分離型スーパースケーラアーキテクチャであるダイナミック・エグゼキューション・アーキテクチャと、二次 (L2) キャッシュバス「バックサイドバス(BSB)」とシステムバス「フロントサイドバス(FSB)」を分離したデュアル・インディペンデント・バスアーキテクチャを採用した P6マイクロアーキテクチャの CPU。Pentium Pro同様にマルチプロセッサに対応している。
 この P6マイクロアーキテクチャ登場以降、従来システムクロック (ベースクロック) と呼ばれていた物が FSBクロックと呼ばれるようになったが、正式にはイコールの関係では無く、ダイナミック・エグゼキューション・アーキテクチャ以外の CPUで FSBクロックと呼ぶのは誤用になる。また、Pentium4以降では、FSBクロックはシステムクロックの 4倍になっている。
 内蔵 L2キャッシュ容量は従来の倍の 512KBに増量されたが、デスクトップパソコン向けにコストの削減も兼ねて、L2キャッシュメモリを同一チップに搭載するのではなく、CPUパッケージが実装された基板上に QFPの SRAM 2個一組をインターリーブ動作させ二組搭載する方式に変更されている。L2キャッシュの動作クロックは CPU内部クロックの半分に落とされいるため、増量やインターリーブ動作と云った対策が行われているが、CPUコアと等速の Pentium Proに比べるとパフォーマンスが落ちる場合がある。
 また、L2キャッシュの有効レンジが Pentium Pro異なり従来同様メインメモリの 512MBまでに制限されている。当時一般用途で 512MBを超えるメモリを搭載する事は少なく、あまり問題にされなかったが 512MB以上の領域には L2キャッシュが利かないため 512MB以上のメモリを搭載するとパフォーマンスの低下につながる。

 一次 (L1) キャッシュメモリは、Pentium Proの倍の 32KBに増加し、前世代の MMXテクノロジ Pentiumで初めて採用された浮動小数点演算処理を高速化する MMXテクノロジが追加され MMX命令を 2命令同時実行できる。これらの改良によりマルチメディア関連処理のパフォーマンスの向上に貢献している。
 また、Pentium Proの欠点であった 16ビット命令処理の改良が行われ、Windows9xでもパフォーマンスが低下することは無い。

 この CPUの特徴は、何といってもその形状にある。従来では、CPUといえば一つのチップであることが多かったのだが、PentiumIIでは、一枚の基板に CPUパッケージと L2キャッシュメモリ、TAGRAMが実装されていて、この基板をプラスチック製カバーで覆ったカートリッジ状の SECC (Single Edge Contact cartridge) という形状になっている。このため、対応するソケットは 242ピンの Slot 1に変更された。
 Slot 1では、PGAに比べ CPUの挿抜がし易くなった分、取り付け時にカードエッジ部で接触不良を起こし易く、場合によっては、動作不良やマザーボード、CPUの破壊を招く可能性があるので注意が必要である。
 ちなみに、この Slot1という規格は P6マイクロアーキテクチャで FSBに使用されている CPUバスの GTL+と共に Intelが全てを掌握しているためクロスリンクを結んだ、Cyrix (現 VIAテクノロジー) 以外の互換 CPUメーカーは、一切、対応する CPUを作ることができない。早い話が他の互換 CPUメーカーを締め出すための規格である。(- -メ

 Klamathは非常に消費電力が大きく発熱も大きかった。特に 300MHz動作品の消費電力は P6マイクロアーキテクチャの CPUとしては最大の 44.4Wにも及ぶ。CPU動作倍率は、3.5/4/4.5倍の間で変更できるが、この様な事情からオーバークロック耐性は低い。

 PentiumIIはモバイル向け CPUも置き換える予定で有ったが開発が難航し製品化が遅れたため、急遽 MMXテクノロジ Pentiumの Tillamookコアの高クロック版を投入する事となった。

 なお、Pentium Pro登場以降、BIOSで CPUのエラッタ (バグ) を修正するためのパッチを当てる仕組みが一般化した (詳細は Pentium Proの項目を参照のこと) ため、パソコン本体側での CPUチェックが厳しくなり、PC-98、PC/AT互換機問わず、マザーボード開発以降に登場した BIOSに登録されていない新しい CPUに載せかえることが難しくなった。
 それに対応して、自作のマザーボードや一部のパソコンメーカーでは、新 CPUに対応した BIOSにアップグレードするサービスを提供する事もある。その結果、BIOSの書き換え時に操作ミスや電源断等の原因で、書き変えに失敗し BIOSを飛ばしてしまうトラブルが度々報告されるようになった。(^ ^;;

 PC-98では、PC-9821Ra266/W30R、PC-9821Ra266/D30Rを除いて PentiumIIを搭載しているモデルでは、Klamathコア以外の CPUに交換すると、BIOS (ITF) の CPUチェックで撥ねられてしまい動作しない。
 一般の PC/AT互換機では、円術の通り BIOSのバージョンアップなどで回避できる可能性が有るが、PC-9800シリーズでは、PC-9821RS266-E1付属のパッチと云った特段の事情が無い限り NECが BIOSアップグレードの手段を提供しないので、自前で ITFを書き換えない限り回避することはできない。ただし、PC-98の BIOSは、NECの著作物であるため改変することは違法となる。

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Celeron (Covington) 製造メーカー Intel
Intel Celeron (Covington) 発表年月日 1998/4/15
形状 242pin SEPP
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 7,500,000
製造技術 0.25 micron process
対応ソケット Slot 1
動作クロック
(MHz)
233 /266
システムクロック
(MHz)
66
一次キャッシュメモリ
(命令用/ データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧
(コア部/ I/O部)
2.0V/ 3.3V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 デュアル・インディペンデント・バスアーキテクチャ、内部逓倍設定可能。
解説  Celeronは Intelが開発した x86系 32ビット CPU。開発時のコードは Covington (コビントン)。低価格 (バリュー) パソコン向けにKlamathコアの Pentium IIから二次キャッシュを除いたものでコア自体に変更は無い。
 それ以外に、P6系 Celeronシリーズの共通の制限として、アドレス可能なメモリは 4GBまで、マルチプロセッサに非対応という制限がある。

 Covingtonは Slot 1対応であるが、PentiumIIとは形状が異なりカートリッジ状ではなく、プラスチックのカバーが省略された基板剥き出しの SEPP (Single Edge Processor Package) というパッケージになっている。
 なお、SECCパッケージと SEPPパッケージでは、リテンションキット (マザーに取りつけるためのプラスチック製ガイド)、の形状が異なるため、CPUのパッケージに合わせて交換する必要がある。
 CPUコアこそ PentiumIIと同じであるが、L2キャッシュが無い分 PentiumIIに比べてパフォーマンスはかなり落ちる。

 ちなみに、この CPUは L2キャッシュを搭載していない事も有り、登場当時にオーバークロック耐性が極めて高い事で話題になった。

 Pentium II以降の CPUでは、BIOSレベルでの対応が厳しくなり (CPUのバグに対するパッチあてのため (^ ^;;)、動作クロックが違うものですら弾かれることがあるので載せ替えを試みる場合は注意を要する。特にメーカー製パソコンでその傾向が強い。
 特に、Covington搭載のパソコンでは、同じ Celeronでも二次キャッシュを内蔵している Mendocinoに交換した場合に、二次キャッシュが制御できずに停止したり、パフォーマンスが低下したりすることがある。

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Pentium II (Deschutes) 製造メーカー Intel
Intel PentiumII (Deschutes)

Intel PentiumII (Deschutes) 表記
発表年月日 1998/1/26
形状 242pin SECC
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 7,500,000 (コア部)
製造技術 0.25 micron process
対応ソケット Slot 1
動作クロック
(MHz)
266/ 300/ 333 (66MHz)
350/ 400/ 450 (100MHz)
システムクロック
(MHz)
66/ 100
一次キャッシュメモリ
(命令用 / データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ 512KB (Half speed)
動作電圧
(コア部/ I/O部)
2.0V/ 3.3V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 デュアル・インディペンデント・バスアーキテクチャ、L2キャッシュ搭載。
解説  Pentium IIは Intelが開発した x86系 32ビット CPU。開発時のコードは Deschutes (デシューツ)、PentiumIIとしては二代目に当たる。Klamathコアの後継 CPUで、コアはそのままに製造法を 0.25ミクロンプロセスに変更したもの。これにより動作電圧が下がり、懸案だった電力消費や発熱を抑えることに成功した。
 また、業界に先駆けてシステムクロック 100MHzに対応した製品も登場した。一般のデスクトップパソコンでも 1GBといった大容量のメモリを搭載する事が増えてきた事から、このコアから L2キャッシュメモリの有効レンジが従来の 512MBから4GBに拡大された。それ以外は、Klamathコアとは違い。

 オーバークロック耐性の高さから「リマーク品」という本来低クロック製品の CPUを高クロック製品のパッケージに中身をすり替えたり、表示を削って書きかえたりして売る行為が増加、こういったトラブルを放置すると Intel製品の信頼を揺るがす事にもなりかねない。後期ロットからは、リマーク品を防ぐ目的でテスト用のエンジニアリングサンプル (ES) 品を除き、コアクロックの動作倍率が固定となっている。
 そこで注意しなければならないのが、システムクロック 66MHzのパソコンにシステムクロック 100MHz対応の 350MHz版を搭載した場合は、3.5倍固定なので 233MHz (66MHz ×3.5) と定格よりも低いクロックで動作するという点である。

 同時期に PCサーバ (一般のパソコンと同じアーキテクチャを流用したサーバ) 向けに Drakeコアの Pentium II Xeonが登場。デスクトップ向け製品との違いは、二次キャッシュが増量されていて 1MBと 2MB版が用意された。対応スロットは 330ピンの Slot2となっている。形状こそ違う物のコア自体はデスクトップ版の PentiumIIとは大きな違いは無い。
 後に、モバイル PC向けに Mobile PentiumII、開発時のコード Tongaという、1.6Vの低電圧動作の製品も登場した。小型で金属製パッケージ 240ピン Mini Cartridgeの製品や、MMC-1 (二列のコネクタ)、MMC-2といった様々なパッケージがある。
 このように、PentiumII以降、Intelは、従来の Pentiumように 一種類で、ハイエンドからローエンドまで全てを補うのではなく、サーバやハイエンド PC (システムクロック 133MHz機) には Xeonシリーズ、一般向け PC (システムクロック 100MHz機) には Pentiumシリーズ、バリュー PC (ベースクロック 66MHz機) には Celeronシリーズと、用途に合わせて製品の名称を分けて種類が細分化するようになった。

 ちなみに、この Deschutesコアも Celeron同様にオーバークロック耐性が高く、マザーボードを操作して 66MHz版の PentiumIIを 100MHz版と認識させ、オーバークロック動作をさせる改造が流行した。
 この場合に、リテール品標準装備の CPUクーラーでは冷却が間に合わないため、CPUクーラと一体になったプラスチックのパッケージを外し、より強力な CPUクーラーを取り付けなければならない。これを通称「殻割」という。(^ ^;;
 400MHz版の初期ロット「SL2S7」には、システムクロック 66MHz時に 6倍動作という隠し設定があることで有名。

 PC-98では、PC-9821Ra266/W30R、PC-9821Ra266/D30Rを除いて PentiumIIを搭載しているモデルでは、Deschutesコアの CPUに交換すると、BIOS (ITF) の CPUチェックで撥ねられてしまい動作しないので購入の際には、コアを確認する必要がある。
 一般の PC/AT互換機では、前述の通り BIOSのバージョンアップなどで回避できる可能性が有るが、PC-9800シリーズでは、PC-9821RS266-E1付属のパッチと云った特段の事情が無い限り NECが BIOSアップグレードの手段を提供しないので、自前で ITFを書き換えない限り回避することはできない。ただし、PC-98の BIOSは、NECの著作物であるため改変することは著作権侵害行為 (違法) となる。

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Pentium II ODP 製造メーカー Intel
Intel PentiumIIODP (コア本体) 発表年月日 1998/8/10
形状 387pin Dual Cavity SPGA + CPUクーラ
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 7,500,000 (コア部)
製造技術 0.25 micron process
対応ソケット Socket 8
動作クロック
(MHz)
333
システムクロック
(MHz)
66
一次キャッシュメモリ
(命令用 / データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ 512KB (Full speed)
動作電圧
(コア部/ I/O部)
3.3V/ 3.3V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 L2キャッシュ、電圧変換機構搭載。
解説  Pentium II ODPは Intelが Pentium Pro (Socket 8) 搭載パソコン、サーバ向けに開発した x86系 32ビット オーバードライブプロセッサ (ODP)。Intelでは、Socket 7の終焉と共にIntel互換 x86 CPUの排除に成功。アップグレードとしての CPUアクセラレータブームが下火となった事から、本 ODPを最後にこれ以降 ODPを新規に開発しないことが決定した。よって ODPとしては本製品が最後になる。

 PentiumII ODPは 一枚の基板に Deschutesコア、512KBの二次キャッシュ、電圧変換機構を内蔵し 上部に CPUクーラを取りつけた物で、Pentium Proマシンを Pentium IIマシン (事実上 PentiumII Xeon相当) にアップグレードできるありがたい製品で、マルチプロセッサ (SMP) にも対応している。

 L2キャッシュは、Deschuteとは違い CPU内部クロックと同期して高速に動作するため、同クロックの Deschutesよりもパフォーマンスが高く、有終の美を飾るにふさわしい出来になっているが、非常に高価な製品になってしまった。
 動作倍率は 5倍固定でシステムクロック 66MHz対応の 333MHz版のみとなっていて、システムクロック 60MHzの機種では 300MHz動作となる。

 Intelは日本国内での販売を見送っため、国内で入手するためには輸入パーツを扱っている一部の PC/AT互換機パーツショップに限られた。国内での流通量はかなり少なく、有っても高価で入手は困難を極める。

 ちなみに、PC-98では PC-9821Rs20と PC-9821Rv20の二機種においては、Windows NT/ Windows2000といった SMP対応の OSの下で、デュアルプロセッサでの運用が可能。

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Celeron (Mendocino) 製造メーカー Intel
Intel Celeron (Mendocinoコア) PPGAパッケージ版 発表年月日 1998/8/24
形状 242pin SEPP, 370pin PPGA
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 19,000,000
製造技術 0.25 micron process
対応ソケット Slot 1, Socket 370
動作クロック
(MHz)
300A/ 333/ 350/ 400/ 433/ 466/ 500/ 533
システムクロック
(MHz)
66/ 100
一次キャッシュメモリ
(命令用 / データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ 128KB (full speed)
動作電圧
(コア部/ I/O部)
2.0V/ 3.3V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令
PC-98本体
での採用例

SEPPパッケージ版搭載

 PC-9821Ra300/Ra333

PPGAパッケージ版搭載

 PC-9821Ra40/Ra43
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例

I-O DATA

 PK-P2A466 (466MHz: PC-9821, PC/AT互換機対応)
 PK-P2A500 (500MHz: PC-9821, PC/AT互換機対応)
 PK-P2A533 (533MHz: PC-9821, PC/AT互換機対応)
 PK-P2A566NX (566MHz: PC98-NX対応)

Buffalo/ MELCO

 HP6-MX400 (400MHz: PC-9821, PC/AT互換機対応)
 HP6-MX533A (533MHz: PC-9821, PC/AT互換機, PC98-NX対応)
備考 ユニファイド・ノンブロッキング L2キャッシュ内蔵。
解説  Celeronは Intelが開発した x86系 32ビット CPU。開発時のコードは Mendocino (メンドシノ)、Celeronとしては二代目に当たる。低価格パソコンをターゲットにした CPUで、AMDが発表した二次キャッシュ内蔵の K6-IIIに対抗する製品。
 Mendocinoコアの特徴は、PentiumIIの Klamathコアに 128KBの二次 (L2) キャッシュを内蔵した点で、L2キャッシュがコアに統合されオンダイになったことで CPUコアクロックと同期して動作するので従来の Celeron-300に比べ、パフォーマンスが大幅に向上している。これを「ユニファイド・ノンブロッキング L2キャッシュ」と呼んでいる。
 Klamathコアと比較した場合も Mendocinoコアでは、L2キャッシュに動作時のマージンと PentiumIIとの差別化のためにウェイトが多めにかけられているが、演算処理内容によっては、L2キャッシュ速度がコアクロックの半分である PentiumIIよりもフルスピードの Mendocinoコアの方がパフォーマンスが高い場合がある。
 なお、このウェイト (レイテンシ) は、ある種のソフトウェアで変更することが出来るが、あまり低く設定すると動作が不安定になるほか、最悪 CPUが故障する場合がある。

 この Mendocinoコアもオーバークロック耐性が高いことで知られていて、システムクロック 66MHz版の Mendocinoのピンを細工して無理やりシステムクロック 100MHzで認識させ動作させる改造が流行した。(^ ^;;
 この CPU以降、リマーク品といった不正販売対策やオーバークロックによる故障を防止する目的で、動作倍率設定はテスト用のエンジニアリングサンプル (ES) 品を除いて固定化された。

 366MHz版からは、コスト削減のためパッケージが SEPPから、MMXテクノロジ Pentiumで見られた黒いプラスチックパッケージに、銀色のヒートスプレッダの付いた 370ピン PPGA (Plastic Pin Grid Array) が登場し、Socket 370という新たなソケットが登場した。
 この Socket 370は、Socket 7と同じ大きさだがソケットの最内周部のピン穴が一列多く、切り欠き部の反対側のピンが 1個少ない。Socket 8、Slot 1、Socket 370はいずれも互換性があり、変換アダプタが Power Leap、MSI等から販売された。
 結果として、SEPPパッケージは 433MHz版で終了し短命に終わった。

 後に、Celeronにもモバイル用途に Mobile Celeronとして動作電圧を1.6Vに下げた Dixonコアが登場。BGA (Ball Grid Array) パッケージや MMC-2タイプの製品が用意された。NECのパソコン PC-9800シリーズのノート PCである 98NOTE Lavieでは、既にメインストリームから離脱していた事も有り残念ながら採用されることはなかった。

 ちなみに、PC-9821Ra40と PC-9800シリーズ最終モデルの PC-9821Ra43では、Slot 1に MSI社の「MS-6905 Rev 1.1」という Socket 370変換アダプタ経由で、PPGA版の Celeronが搭載されている。これらの機種では、より高クロックの Celeronに直接交換することが出来るが、電源供給の要である VRM部の設計が Celeron-433で限界に達するため、コンデンサを追加して強化するなどマザーボードを改造しないと故障する可能性がある。高クロックの製品に交換したい場合は、外部電源供給が可能な変換アダプタを使用することが望ましい。
 なお、Slot 1や Socket 8採用の PC-98では、Power Leap (国内販売はロンテック)の PL-Pro/II (Socket 8用) や Socket 370変換アダプタ (Slot 1用) を利用して高クロックの Celeronを動作させる事が出来る。
 ただし、CPUチェックによって PC-9821RsII26、PC-9821RvII26では動作しないほか、動作する機種でも PC-9821Ra266等の PentiumII搭載デスクトップモデルでは、起動はするもののキャッシュエラーとなり動作速度が 386並みになってしまう不具合が出る。キャッシュメモリを認識できない時は、まりも氏が作成したフリーソフトで起動後にキャッシュメモリを認識させることで切り抜けることができる。(^-^)

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Pentium III (Katmai) 製造メーカー Intel
Intel PentiumIII (Katmai)

Intel PentiumIII (Katmai) 上部
発表年月日 1999/2/26
形状 242pin SECC2
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 9,500,000
製造技術 0.25 micron process
対応ソケット Slot 1
動作クロック
(MHz)
450/ 500/ 550/ 600 (100MHz版)
533B/ 600B (133MHz版)
システムクロック
(MHz)
100/ 133
一次キャッシュメモリ
(命令用 / データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ 512KB (Half speed)
動作電圧
(コア部/ I/O部)
2.0V (2.05V) / 3.3V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令、ストリーミングSIMD命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 プロセッサ・シリアル・ナンバー、L2キャッシュ搭載。
解説  Pentium IIIは Intelが開発した x86系 32ビット CPU。開発時のコードは Katmai (カトマイ)。製品ロゴの Pentium「III」の表記はローマ数字では無く感嘆符 (エクスクラメーション・マーク) を 3つ重ねた「!!!」となっている。
 従来の Pentium II (Deschutes) に比べ、コア自体に大きな変更は無いが、AMD社が提唱し K6-2に採用した浮動小数点演算を高速化する 3D Nom!命令に対抗すべく、Intel独自の浮動小数点演算を高速化する新しい命令セットとして 70のストリーミングSIMD拡張命令 (SSE) が追加された。
 従来の MMX命令は整数演算処理を高速化するためものであったが、このストリーミングSIMD命令は浮動小数点演算処理の高速化を目的としている。8本の 128ビットレジスタを新設。4個の 32ビット単精度浮動小数点データを一本のレジスタに格納して同一の命令を一括処理することが出来る。これに対応したアプリケーションでは、3Dグラフィック処理、サウンド再生やエンコード、インターネット等の通信関連でより高速な処理が可能となる。
 二次 (L2) キャッシュは、Deschutesコア同様に CPU動作クロックの半分の速度で動作する L2キャッシュを 512KB搭載しているが、レイテンシが下がり Deschutesコアよりもパフォーマンスが高い。
 また、業界に先駆けてシステムクロック 133MHzに対応した製品 (定格クロックの後に Bが付く) も登場した。
 他には、プロセッサ・シリアル・ナンバー (PSN) と呼ばれる個別の 96ビット長の IDデータを持っている。これは CPU一つ一つにシリアルナンバーを付け、通信の際にパソコンを特定するのに利用することができる。この機能が発表されるとインターネット接続時に個人が特定されプライバシーに問題が生じるといった非難が相次いだ。
 形状は PentiumIIに良く似ているが SECC2という前面だけをプラスチックカバーで覆う新しいパッケージに変更され冷却ファンも大型化している。対応スロットは Slot 1でマルチプロセッサ (SMP) に対応、動作電圧、動作倍率固定といった部分は従来と変わらない。

 こちらも PentiumII同様、サーバ向けにキャッシュ容量を増加した 330ピン Slot 2対応の PentiumIII Xeon (Tannerコア) が登場した。

 注意点としては Pentium IIIではシステムクロック 100MHz版と 133MHz版の二種類がある。購入後に設定の変更はできないので入手する際には、利用するマザーボードが対応している事を確認する必要がある。動作倍率が固定なので 100MHz対応のマザーボードに 133MHz版を搭載すると定格クロックより低いクロックで動作する。
 また、従来の SECCパッケージ対応のマザーの場合は、リテンションキット (マザーに取りつけるためのプラスチック製ガイド) を SECC2対応のものに交換する必要がある。

 ちなみに、PC-98では PC-9821Ra266/W30R、PC-9821Ra266/D30R以降の Slot 1搭載機において、550MHz版の動作報告がネット上にある。その一方、600MHz版の玉砕報告も有る。
 なお、同じ PC-9821Ra266でも、PC-9821Ra266/W30、PC-9821Ra266/N30 (型番の最後に Rのつかない機種) にて Klamathコア以外の CPUを動作させるためには、自前で ITFの CPUチェック部分を書き換えない限り動作しない。
 ただし、PC-98の BIOSは、NECの著作物であるので改変することは著作権侵害行為 (違法) となる。

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Pentium III (Coppermine) 製造メーカー Intel
Intel PentiumIII (Coppermineコア) FC-PGAパッケージ版 発表年月日 1999/10/26
形状 242pin SECC2, 370pin FC-PGA
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 28,000,000
製造技術 0.18 micron process
対応ソケット Slot 1, Socket 370 (FC-PGA)
動作クロック
(MHz)
500E/ 550E/ 600E/ 650/ 700/ 750/ 800/ 850/ 900/ 950/ 1000/ 1100 (100MHz版)
533EB/ 600EB/ 667/ 733/ 800EB/ 866/ 933/ 1000B/ 1130 (133MHz版)

1BGHz版、1.13GHz版は、バグにより回収されている。
システムクロック
(MHz)
100/ 133
一次キャッシュメモリ
(命令用 / データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ 512KB (Half speed)
動作電圧
(コア部/ I/O部)
1.65V〜 1.75V / 3.3V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令、ストリーミングSIMD (SSE) 命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 プロセッサ・シリアルナンバー、L2キャッシュ搭載。
解説  Pentium IIIは Intelが開発したデスクトップ PC向け x86系 32ビット CPU。開発時のコードは Coppermine (カッパーマイン、通称:河童)、PentiumIIIとしては二代目に当たる。かつて互換 CPUメーカーと言われた AMDの第 7世代 CPUである Athlon (K7) に対抗すべく、コア部分に変更はない物の二次 (L2) キャッシュ部分を大幅に変更、従来に比べてパフォーマンスが大幅にアップした。
 従来の Katmaiコアに CPUと等速で動作する 256KBの二次キャッシュを内蔵したもので、Katmaiに比べて容量は半分ではあるが、動作クロックが CPUコアと同期するためパフォーマンスが大幅に向上している。さらに、コアに統合されたためレイテンシが大幅に減少した事も有り、性能の向上に伴ってキャッシュのヒット率向上を目的にフィルバッファを 4個から 6個に、バスキューエントリー4個から 8個に、ライトバックバッファを 1個から 6個にそれぞれ拡張した。他に L1データキャッシュと L2キャッシュ間の帯域を 256ビットに拡張している。
 AMD製品と比較した場合は、Pentium IIIコアは従来のままなので、整数演算は高速なものの浮動小数点演算処理では、コアを完全に設計し直した Athlonにはとても及ばない。

 1999年辺りから Intelと AMDのバトルが激化、シェアと知名度こそ圧倒的に Intelが圧勝していたものの技術では、K6-IIIでのオンダイで CPUクロックに同期する高速な L2キャッシュメモリや、浮動小数点演算を高速化する 3D Now!テクノロジ、750MHz版 Athlonの登場と AMDの後手に回っていた。両社のクロック上昇競争は日を追って激しさを増し、Intelが Coppermineコアで 800MHz版を予定を繰り上げて発表する様に Intelは焦りを感じていた。この競争も有って自作パソコンユーザーの間では徐々に AMDと Athronの名前が注目を集めるようになった。
 どちらが先に 1GHzの大台に乗せるか注目が集まっていた 2000年 3月 8日、Intelは CPUコアの規定電圧を上げて (通称: 活入れ) ついに 1GHz版 PentiumIIIを発表したのだが、それは 1GHz版 Athlon発表の翌日で、初の x86系 CPUで 1GHz達成 (オーバークロック無しで) という栄冠を掴む事は出来なかった。
 しかも、その後になって無理が祟ったか (Socket 7ユーザーの怨念か (爆)) PentiumIIIの 1GHz版で不具合が発覚し、一時的に出荷が停止され回収されるという騒ぎとなった。(-人-)
 後に、PentiumIIIとしては当時最高動作倍率 11倍の 1.1GHz版がシステムクロック 100MHz対応として再登場したが、この CPUはパソコン製造メーカ向けにのみ出荷されたもので、CPU単体の販売は行われずバルク品として一部の輸入品を扱っている PCパーツ店のみに限られた為に流通量は比較的少ない。

 通常品は動作倍率は固定であるが、テスト、評価用のエンジニアリングサンプル (ES) 品は、動作倍率が変更でき、1.13GHz版では、製品ラインナップに無い、12倍設定を持っている事で注目を集めた。
 ちなみに、ES品の「QEJ1ES」は PentiumIIIの表記が無く、コア欠け防止用に銀色のヒートスプレッダが付いた、FC-PGA2という新パッケージである。

 Katmai同様に FSBクロック 100MHzと 133MHzに対応する製品がある。
 形状は従来の黒いカートリッジタイプの SECC2に加え、新しい緑色のプラスチックパッケージに、コア部が裏返しに載った Flip Chip-PGA (FC-PGA) タイプが登場した。青く輝く剥き出しのコア部が特徴で対応ソケットは、FC-PGA 370 (Flexible 370) という Celeronで採用されていた Socket 370とは同じ形状であるが、ピン定義の異なる新ソケットが登場した。
 この CPUを従来の Socket 370に載せるためには、ピン定義が異なるために変換アダプタを要する。米 Power Leap社製 Neo-S370といった製品が有名で、国内では 2000年 4月にロンテック (Lontec) によって発売された。
 このパッケージは、コア部と CPUクーラが密着するので冷却には向くが、CPUパッケージに対しコア部 (CPU上の金属部分) が小さいため、取り付け時のクーラーの固定に難があり、傷がついたり、欠けたり (コア欠け) が起こり易く、これらの傷は即 CPUの破損に繋がる。CPUクーラを取りつける際には、コア欠け防止用の銅板 (丁度「回」の形をしている) 等の使用をお勧めする。
 後に、銀色のヒートスプレッダを取りつけた FC-PGA2タイプの製品に切り替わっていった。

 Coppermineは、2001年 6月、後期ロットの 1GHzと 1.1GHz版でCoppermine-T (cD0ステップ) コアに変更された。このコアは、AGTLバスの仕様が Tualatinと同じディファレンシャルクロッキング仕様に変更されている。元々は従来のバス仕様との互換性を持つために両方の仕様に対応したコアとする予定で有ったが、従来バスとの互換部分を削除したため、同じ Coppermineでありながら旧来のシステムでは正常動作しない。このコアの CPUを使用するためには Tualatin同様に変換下駄が必要になる。

 この Coppermineの登場を持って CPUは全て PGAパッケージに移行し、Intelの独占規格であった Slot 1と Slot 2は、4年足らずで早くも消滅する事となった。P6マイクロアーキテクチャ自体はソケットやスロットの形状が違ってもピンに互換性があるので、Socket 8、Slot 1、Slot 2、Socket 370の間で変換アダプタを使用することで何れにも変換する事が出来る。マザーボードの BIOSがサポートしていれば、Slot 1でも変換アダプタを使用することで Scoket 370の Tualatinコアはもちろん Socket 8の Pentium Proを動作させる事も可能である。

 ちなみに、667MHz版は従来の法則から行くと 666MHzと表記されるのだが、キリスト教圏では「666」は獣の数と言って忌み嫌うため 667MHzという表記になっている。という説がある。

 PentiumIII Coppermineコアの派生製品としては、サーバ、ワークステーション向けに Slot 2に対応する CPUとして Cascadesコアの PentiumIII Xeonとキャッシュメモリを 1MB、2MBに増量した Cascades-MPコアの PentiumIII Xeon MP が登場。モバイル向け製品としては 2000年に Mobile PentiumIIIが登場。395ピンの Micro-PGA2パッケージで動作電圧が 1.3V/ 1.6V (コア部/ I/O部) と低い。
 他に、派生製品として Coppermineコアの L2キャッシュメモリを半分に減らした CPUがあり Microsoftのコンシューマ機 XBOXで採用されている。動作クロックは 733MHzである。

 Coppermineは、PC-98ユーザの間では Socket 7の AMD K6-2+/ K6-IIIE+に次いで注目の CPUで、SECC2版では PC-9821Ra300 (電圧調整用チップが「HIP6004CB」のものに限る) で動作したほか、FC-PGA版は、PC-9821Ra20 (Socket 8) では、PL-Pro/IIと Neo-S370との併用で動作したという報告がネット上で相次いだ。
 その後にはシステムクロックを 100MHzにクロックアップした PC-98で、ついに 1GHz動作を達成したパワーユーザも現れた。(^ ^;;
 なお、Coppermineは PC-9821Ra266/W30Rの後期ロット以前の PC-98では、CPUチェックにより停止してしまうので正常動作しない。
 Tualatinコアの CPUが動作しない Slot 1の PC-98では、この CPUの 1.1GHz版で 733MHz動作 (66MHz * 11) が最もパフォーマンスが高い。

 ちなみに、筆者も PC-9821Ra333と PC-9821Ra40で、PentiumIII 1.1GHzが PL-iP3 Rev 2.0との併用により、733MHz (システムクロック 66MHzのため) で動作することを確認した。(^-^)
 さらに、システムクロックを 83.5MHzに改造した PC-9821Ra333で ES品の Coppermineを 12倍設定で動作させることにより 1GHz動作を達成した。\(^-^)/

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Celeron (Coppermine-128K) 製造メーカー Intel
Intel Celeron (Coppermineコア) 発表年月日 2000/5/29
形状 370pin FC-PGA, 370pin FC-PGA2 (900MHz〜 1GHz版の一部ロット)
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 19,000,000
製造技術 0.18 micron process
対応ソケット Socket 370 (FC-PGA)
動作クロック
(MHz)
533A/ 566/ 600/ 667/ 700/ 733/ 766 (66MHz対応版)
800/ 850/ 900/ 950/ 1000/ 1100 (100MHz対応版)
システムクロック
(MHz)
66/ 100
一次キャッシュメモリ
(命令用 / データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ 128KB (full speed)
動作電圧
(コア部/ I/O部)
1.5V〜1.75V / 3.3V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令、ストリーミングSIMD (SSE) 命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例

I-O DATA

 PK-P2A566 (566MHz: PC/AT互換機対応)
 PK-P2A566NX (566MHz: PC98-NX対応)
 PK-P2A667NX (667MHz: PC98-NX対応)
 PK-P2A733 (733MHz: PC/AT互換機対応)
 PK-P2A733NX (733MHz: PC98-NX対応)

Buffalo/ MELCO

 HP6-MX566 (566MHz: PC-9821Ra300/Ra333/Ra40/Ra43, PC/AT互換機, PC98-NX対応)
 HP6-MX600 (667MHz: PC-9821Ra300/Ra333/Ra40/Ra43, PC/AT互換機, PC98-NX対応)
 HP6-MX700 (700MHz: PC/AT互換機, PC98-NX対応)
 HP6-MX733 (733MHz: PC/AT互換機, PC98-NX対応)
備考 プロセッサ・シリアルナンバー、ユニファイド・ノンブロッキング L2キャッシュ内蔵。
解説  Celeronは Intelが開発した x86系 32ビット CPUの PentiumIII (Coppermine) の L2キャッシュメモリ容量を半分の128KBにしたもので、マルチプロセッサには非対応。開発時のコードは Coppermine-128K (カッパーマイン 128K) で、通称「河童セレロン」という。Celeronシリーズとしては三代目に当たる。キャッシュメモリ周りは、従来の Mendocinoコアよりレイテンシ (ウェイト) が幾らか低く設定されているが、容量が変わらないためパフォーマンスに大きな違いは無い。
 この Coppermineコアでは、動作倍率はもちろんレイテンシの変更もできない。オーバークロック耐性は極めて高く、なんと766MHz版で 1GHzで動作できるものもあるという。

 形状は緑色のプラスチックパッケージに、コア部が裏返しに載った Flip Chip-PGA (FC-PGA) という新しいもので、青く輝くむき出しのコア部が特徴。対応ソケットは、FC-PGA 370 (Flexible 370) という Socket 370とは同じ形状であるが、ピン定義の異なる新ソケットを採用している。
 この CPUを従来の Socket 370に載せるためには、ピン定義が異なるために変換アダプタ (Power Leap製 Neo-S370等) を要する。

 このパッケージは、コア部と CPUクーラが密着するので冷却には向くが、CPUパッケージに対しコア部 (CPU上の金属部分) が小さいため、取り付け時のクーラーの固定に難があり、傷がついたり、欠けたり (コア欠け) が起こり易く、これらの傷は即 CPUの破損に繋がる。CPUクーラを取りつける際には、コア欠け防止用の銅板 (丁度「回」の形をしている) 等の使用をお勧めする。

 なお、Celeronも 800MHz版からは、FSBクロック 100MHz対応に移行し、FSBクロック 66MHz版は 12倍速動作の 766MHzで打ち止めになった。
 また、900MHz版の一部ロットから、パッケージが、コア欠け防止用に銀色のヒートスプレッダが付いた新パッケージへ移行した。

 ちなみに、AMDからカッパセレロンの対抗製品として、低価格パソコン向けに Athlon (K7) コアを採用し、セカンドキャッシュの容量を減らした Duronが登場した。
 性能の比較では、カッパセレロンのコアは従来の PentiumIIIベースのままなので、整数演算は高速なものの浮動小数点演算処理では、Athlonコアを採用した Duronにはとても及ばない。このため Intelは PentiumIIIファミリを早期に終息させ Pentium4の推進に力を入れるようになる。

 PC-98では Socket8、Slot1 (PC-9821RaII23/Ra266 (前期型)/RsII26/RvII26を除く) のモデルで動作する。この CPUを搭載したメルコ (バッファロー) 製 CPUアクセラレータ HP6-MX566と HP6-MX600は PC-98に正式対応する唯一の CPUアクセラレータである。
 また、Tualatinコアの CPUが動作しない、Slot 1の PC-98では、この CPUで 766MHz (66MHz ×11.5) が最高速となる。

 ちなみに、筆者も PC-9821Ra40で Celeron 766MHzが PL-iP3 Rev 2.0との併用により規定クロックで正常動作することを確認している。(^-^)

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Pentium III-S (Tualatin) 製造メーカー Intel
Intel Pentium-S (Tualatinコア) 発表年月日 2001
形状 370pin FC-PGA2
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 44,000,000
製造技術 0.13 micron process
対応ソケット Socket 370 (FC-PGA2)
動作クロック
(GHz)
1.13/ 1.26/ 1.40
システムクロック
(MHz)
133
一次キャッシュメモリ
(命令用 / データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ 512KB (full speed)
動作電圧
(コア部/ I/O部)
1.45V/ 3.3V (標準電圧版)
1.15V / 3.3V (低電圧版)
1.1V / 3.3V (超低電圧版)
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令、ストリーミングSIMD (SSE) 命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 ユニファイド・ノンブロッキング L2キャッシュ内蔵。
解説  PentiumIII-Sは Intelが開発した x86系 32ビット CPUである PentiumIII Coppermineコア内蔵の L2キャッシュメモリを 512KBに増加させた CPU。開発時のコードは Tualatin (テュアラティン:俗称「鱈」)。主にブレードサーバ向けに出荷され PentiumIII Xeonを置き換えるもので 2CPU迄のマルチプロセッサ (SMP) に対応、フロントサイドバス (FSB) クロック 133MHzにのみ対応する。
 内蔵 L2キャッシュメモリが 2倍の 512KBに増加した分、従来の CPUよりパフォーマンスが高い。この Tualatinでは製造プロセスが 0.13ミクロンに微細化され、動作電圧が 1.45Vに下がり、発熱や消費電力が少なくコアクロックも上げ易くなった。
 なお、二次キャッシュメモリの増加以外にコア自体に大きな変更が無いので、機能については従来コアとは殆ど違いは無いが、形状が緑色のプラスチックパッケージに銀色のヒートスプレッダの付いた、FC-PGA2という新しいパッケージになりコア欠けする恐れが無くなり扱い易くなった。

 この CPUの主なターゲットは、ラックマウントサーバとモバイル PCで、標準電圧版のほかに、低電圧版 (LV) と超低電圧版 (ULV) がある。特に、モバイルPC向けにはμFC-PGA2の Mobile PentiumIII-Mが用意された。Pentium4で同種の製品が遅れたため、Pentium4が一般化した後もしばらくは販売が継続されたが、価格は Pentium4との兼ね合いも有り高めに設定されていた。
 Intelの CPUでは、リマーク品 (CPU表面の表記を高クロックに書き直す) の問題以降、通常の製品では動作倍率は固定であるがハードウェアメーカー向けに、テスト、評価用に出荷されたエンジニアリングサンプル (ES) 品は、マザーボードに動作倍率設定機能があれば変更できる。ただし、Tualatinコア以降、規定クロック以上の倍率は削除されている。

 Tualatinコアの PentiumIIIは、製造プロセスの微細化から CPUのオーバークロック耐性が極めて高く、1.0GHz版で 1.4GHz動作が可能な個体も存在するらしい。
 このコアでは、旧コアとの唯一の違いとして バス仕様が従来の AGTL+ シングルエッジクロッキングから新しく AGTLというディファレンシャルクロッキングへ変更となっている。これは、2本の信号線を対称的 (逆相) に駆動してノイズを打ち消すことでクロックマージンを確保する方式で、高いクロックでのデータ転送の安定化に効果がある。この CPUを従来の Coppermine等の CPU用のソケットに載せた場合には、CPUのプロテクトが作動して停止してしまうので、載せ換える場合は、 Power Leap製 PL-iP3/T (Slot 1用、後に、改良された Rev 2.0が登場)、PL-370/T (Socket 370用) などの FC-PGA2変換ソケット (下駄) が必要になる。
 注意点としては、Tualatin非対応のマザーボードに FC-PGA2変換下駄を装着して Tualatinを動作せた時に AGTLの仕様の違いから AGTL用の電圧を作っているレギュレータが異常加熱するマザーボードがある事で、この様なマザーボードでは該当するレギュレータに放熱版やファンを取りつけて冷却を強化するか、レギュレータへ供給する電圧を下げるといった改造が必要になる。これは PC-98では良く知られた現象である。

 Intelは PentiumIII以降デスクトップパソコン向け製品で AMDの Athlon (K7) の動作クロック上昇競争に遅れをとったことから、動作クロックの高クロック化を念頭にコアを設計し処理能力を引き上げた第 8世代の NetBurstマイクロアーキテクチャを採用した Pentium4に急速に移行させた。
 Pentium4の NetBurstマイクロアーキテクチャは、P6マイクロアーキテクチャをさらに発展させ 1個の x86命令を複数の単純な命令に分解、それを深いパイプラインに投入して高い動作クロックで回すというもので、従来の PentiumIIIとの互換性は無い。
 Pentium4はクロック辺りの演算処理能力よりも動作クロックの向上を優先したため、Tualatinと処理能力を比較した場合に、Tualatinが 1.4GHzを超えた辺りから Pentium4と処理能力が逆転してしまう。このため、Tualatinコアの CPUは動作クロック 1.4GHz以上の製品は登場しない。
 なお、NetBurstマイクロアーキテクチャが第 8世代と世代が飛んでいるのは、Intelが 64bitプロセッサ Itaniumを開発する目的で、予定されていた第 7世代にあたる P7マイクロアーキテクチャをキャンセルしたため欠番になっている。

 当時 CPUの処理能力向上の手法やマーケティング戦略としては、動作クロックの向上こそが正しいと思われていたためで、クロック上昇に伴って消費電力の増大が問題視されていたが製造プロセスの微細化で抑えられると考えられていた。これは製造プロセスの微細化が追いつかなくなり消費電力や発熱の増大という問題 (Pentium4 Prescottコアが有名) が大きくなって破たんするまで続いた。
 Netburstアーキテクチャの推進により特に影響が大きかったのはバッテリー駆動が主体のモバイル PCで、Intelは苦肉の策として終息させた P6マイクロアーキテクチャを復活させ最新の改良を加えることで、Pentium Mプロセッサ (Baniasコア)を開発、Pentium 4に比べ動作クロックは低い物の 1クロックあたりの処理能力が 1.5倍に向上し、消費電力が下がり発熱が抑えられたことで好評を得た。これが Intel Coreプロセッサへと続き、後に Intel Core2プロセッサで大成功をおさめる事となった。
 このように、その後は AMD Athron64、Intel Core2のように動作クロックよりもクロック単位当たりの効率 (低いクロックでも高い処理能力を発揮する) を重視するように変り Intel Core i7となった 2013年現在もそのトレンドは続いている。


 ちなみに、Slot 1、Socket 370搭載のマザーボード用に FC-PGA2対応の Power Leap製 PL-iP3/T Rev 2.0が有るが、残念ながら PC-98では ITF (BIOS) を自力で書き換えない限り動作しない。ただし、PC-98の BIOSは NECの著作物であるため許可なく改変することは著作権侵害行為 (違法) となる。
 書き換えが出来れば PC-9821RvII26と PC-9821RsII26では WindowsNT/2000の環境下でデュアルプロセッサでの運用が可能となるが、デュアルプロセッサでは変換下駄で降圧する PL-iP3/T Rev 2.0を使用すると動作が安定しない事が多い。Tualatin対応の 5V入力 VRMと FC-PGA2変換下駄の組み合わせでは比較的に安定動作しやすい。

 一方、Pentium Pro (Socket 8) 搭載の PC-98では、Power Leap製の PL-Pro/II (Socket 370変換ソケット) と PL-370/T (FC-PGA2変換ソケット)の組み合わせで動作する。
 また、マザー上の VRMソケットの Power Goodピンを利用したリセットスイッチを利用することにより、動作する確率が (Tualatin以外でも) ほぼ 100%に上がる。
 なお、Socket 8の PC-98では、この CPUの 1.40GHz版で 700MHz動作 (66MHz * 10.5) が、最高のパフォーマンスとなる。
 ただし、PL-Pro/IIは、本来 Celeron-533までの CPU用なので、コンデンサや給電の強化といった特別な対策をしない限り、高クロックでの長期にわたる常用は危険である。また、タワー型では多段に重ねた下駄の重みにより下駄が落下する危険性もある。

 筆者は、PC-9821Ra20/N3P、PC-9821Rv20/N20で PL-Pro/IIを改造し、PG配線を追加、PL-370/T Rev 2.0と CPUクーラー固定用に生のソケット 370を組み合せることで、PentiumIII-S 1.4が問題なく動作することを確認している。(^-^)

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Pentium III (Tualatin-256K) 製造メーカー Intel
Intel PentiumIII (Tualatinコア) 発表年月日 2001/6
形状 370pin FC-PGA2
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 28,100,000
製造技術 0.13 micron process
対応ソケット Socket 370 (FC-PGA2)
動作クロック
(GHz)
1A/ 1.13/ 1.20/ 1.33/ 1.40
システムクロック
(MHz)
133
一次キャッシュメモリ
(命令用 / データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ 256KB (full speed)
動作電圧
(コア部/ I/O部)
1.475V/ 3.3V、1.5V/ 3.3V (1.4GHz版)
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令、ストリーミングSIMD (SSE) 命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 ユニファイド・ノンブロッキング L2キャッシュ内蔵。
解説  三代目 PentiumIII (Tualatin-256K)は Intelの開発した x86系 32ビット CPUである PentiumIII-S内蔵の L2キャッシュを 256KBに減らした CPU。開発時のコードは Tualatin-256K。PentiumIII-S同様にシステムクロック 133MHzにのみ対応する。
 PentiumIII-Sは主にサーバ向けに出荷したのに対し、こちらは一般のデスクトップパソコン向けと言う位置づけの製品。PentiumIII-Sとの違いは L2キャッシュ容量が少ない他に、マルチプロセッサ (SMP) 非対応で動作電圧が 1.475V (なんと 0.005V刻み) 〜 1.5Vと僅かにに高いという点が異なる。
 Tualatinコアの PentiumIIIは、動作電圧が低く Coppermineコアよりも発熱、消費電力が低い。パフォーマンス自体は、L2キャッシュを 256KB内蔵した Coppermineコアの PentiumIIIと変わらない。

 当時 Intelは AMDの追撃も有り高クロック化がしやすい Pentium4の推進 (詳細は PentiumIII-Sの項を参照のこと) を進めていたためこの CPUの販売には消極的だった。それも有って正規のリテール品でありながら公に店頭には置かれず、店員に在庫を問い合わせ店の奥から持って来てもらうと云う変わった販売方法で流通した。(^ ^;;

 なお、このコアでは、CPUバスの仕様が AGTL+から AGTLへと変更となっている為に、従来の Coppermineコアと載せ換える場合は、CPUのプロテクトが作動して停止してしまうので、Power Leap製 PL-iPL3/T (Slot 1用)や PL-370/T (Socket 370用) などの FC-PGA2変換ソケット (下駄) が必要になる。その際には、AGTL用のレギュレータの過熱に注意すること。

 ちなみに、PC-98での挙動は、PentiumIII-Sと同様に PentiumII、Celeronモデルでは ITFの改造をしない限り動作不可。Pentium Proモデルでのみ動作すると思われる。(^ ^;;

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Celeron (Tualatin-256K) 製造メーカー Intel
Intel Celeron (Tualatinコア) 発表年月日 2001/10/2
形状 370pin FC-PGA2
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 28,100,000
製造技術 0.13 micron process
対応ソケット Socket 370 (FC-PGA2)
動作クロック
(GHz)
1A/ 1.10A/ 1.20/ 1.30/ 1.40/ 1.50
システムクロック
(MHz)
100
一次キャッシュメモリ
(命令用 / データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ 256KB (full speed)
動作電圧
(コア部/ I/O部)
1.475V (1.5V) / 3.3V (標準電圧版)
1.15V / 3.3V (低電圧版)
1.1V / 3.3V (超低電圧版)
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令、ストリーミングSIMD (SSE) 命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 ユニファイド・ノンブロッキング L2キャッシュ内蔵。
解説  四代目 Celeron (Tualatin-256K)は低価格パソコン向けに出荷した Intelの x86系 32ビット CPUで PentiumIIIの Tualatin-256Kコアと基本的には同じだが、フロントサイドバス (FSB) クロック 100MHzにのみ対応し L2キャッシュメモリに相応のウェイトが掛けられているが、従来の Coppermine-128Kコアから内蔵の L2キャッシュが 2倍の 256KBに増加した分パフォーマンスが高い。マルチプロセッサ (SMP) には非対応。

 L2キャッシュメモリにウェイトが掛けられていた経緯は、発売当時 L2キャッシュを 256KB内蔵した Coppermineコアの PentiumIIIと競合するため。よって、総合的なパフォーマンスは同クロックの場合、Celeron (Tualatin) と PentiumIII (Coppermine) では、L2キャッシュのレイテンシの違いにより後者に軍配が上がる。インテル恐るべし。(- -メ)

 こちらも、Intelの販売戦略上、PentiumIII-S同様に動作クロック 1.4GHz以上の製品は登場しなかった。ラインナップには OEM向けに 1.5GHz版が存在するが詳細は不明。2002年 5月 15日に 1.40GHz版の Celeronの発表と同時に、Pentium4 Willametteコアがベースの 1.70GHz版 Celeronが発表され、Celeronも Pentium4ベースに移行した。

 PentiumIII-S同様に、製造プロセスが 0.13μmに変更された従来に比べてことにより、従来に比べて動作電圧が下がり発熱が少なくコアクロックが上げ易くなっている。それ以外には Coppermineコアとは大きな変更が無いので機能に違いは無い。
 パッケージは、緑色のプラスチックパッケージに銀色のヒートスプレッダが付いた、FC-PGA2という新パッケージで FC-PGAに比べてコア欠けの心配が無く扱い易くなっている。

 なお、このコアでは、CPUバスの仕様が AGTL+から AGTLへと変更となっている為に、従来の Coppermineコアと載せ換える場合は、CPUのプロテクトが作動して停止してしまうので、Power Leap製 PL-iPL3/T (Slot 1用)や PL-370/T (Socket 370用) などの FC-PGA2変換ソケット (下駄) が必要になる。その際には、AGTL用のレギュレータの過熱に注意すること。

 この CPUは変換下駄や CPUアクセラレータ次第では、PC-98でも動作する可能性が高く注目を集めているが、Socket7系 PC-98シリーズに続き、P6系 PC-98シリーズでも搭載できる最後の Intel純正 CPUとなった。(T_T)

 ちなみに、Slot 1、Socket 370搭載のマザーボード用に FC-PGA2対応の Power Leap製 PL-iP3/T Rev 2.0が有るが、残念ながら PC-98では ITF (BIOS) を自力で書き換えない限り動作しない。ただし、PC-98の BIOSは NECの著作物であるため許可なく改変することは著作権侵害行為 (違法) となる。

 一方、Pentium Pro (Socket 8) 搭載の PC-98では、Power Leap製の PL-Pro/II (Socket 370変換ソケット) と PL-370/T (FC-PGA2変換ソケット)の組み合わせで動作する。
 また、マザー上の VRMソケットの Power Goodピンを利用したリセットスイッチを利用することにより、動作する確率が (Tualatin以外でも) ほぼ 100%に上がる。
 なお、Socket 8の PC-98では、この CPUの 1.40GHz版で 933MHz動作 (66MHz * 14) が最高速となる。
 ただし、PL-Pro/IIは、本来 Celeron-533までの CPU用なので、コンデンサや給電の強化といった特別な対策をしない限り、高クロックでの長期にわたる常用は危険である。また、タワー型では多段に重ねた下駄の重みにより下駄が落下する危険性もある。

 筆者は、PC-9821Ra20/N3P、PC-9821Rv20/N20で、PL-Pro/IIを改造し、PG配線を追加、PL-370/T Rev 2.0と CPUクーラー固定用に生のソケット 370を組み合せることで、Celeron-1.4が 933MHzで正常動作することを確認している。(^-^)

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 Cyrix III (Samuel) 製造メーカー VIAテクノロジー
VIA CyrixIII (Samuel2コア) 発表年月日 2000/6/6 (Samuel)
2001/5/28 (Samuel2)
形状 370pin CPGA
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 11,300,000 (Samuel)
15,200,000 (Samuel2)
製造技術 0.18 micron process, 6層 (Samuel)
0.15 micron process (Samuel2)
対応ソケット Socket 370
動作クロック
(MHz)
500/ 533/ 550/ 600/ 650/ 667/ 700 (Samuel)
667A/ 700A/ 733A/ 750A/ 800A (Samuel2)
システムクロック
(MHz)
66/ 100/ 133
一次キャッシュメモリ 128KB (統合)
二次キャッシュメモリ なし (Samuel)
64KB (Samuel2)
動作電圧
(コア部/ I/O部)
1.8〜 2.0V / 3.3V (Samuel)
1.5〜 1.6V/ 3.3V (Samuel2)
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令、3D NOW!命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 L2キャッシュメモリ内蔵 (Samuel2)。
解説  CyrixIIIは Socket370対応の VIAテクノロジー製 x86系 32ビット CPU。互換 CPUメーカーでは初の Socket 370用 CPUで、開発中は「Joshua」と呼ばれ、256KBの二次キャッシュを内蔵しているとの発表から注目を集めていた。
 しかし、Cyrix及び IDTの x86 CPU部門が、台湾の VIAテクノロジーに買収された結果、実際に CyrixIII (C5A) として製品化されたのは、Cyrixが開発していた 「Joshua」では無く、IDTの x86 CPU部門 (Centaur Technology) が Socket 7向けに開発していた Winchip3の Socket 370版にあたる Winchip4であったという経緯がある。

 なお、P6アーキテクチャ、Socket 370、Slot 1という規格は Intelが特許ですべてを掌握しているため、クロスリンクを結んだ、Cyrix (VIA) 以外の互換 CPUメーカーは、一切、対応する CPUを作ることができないようになっている。言わば、互換 CPUメーカーを市場から排除するための規格である。

 CyrixIII (Samuelコア, C5A)は、浮動小数点演算ユニットが 2つで、2つの命令を同時に実行可能な 7段のパイプラインを持ち、コアと同期して動作するフルスピードの一次キャッシュを 128KB (PentiumIIIの 4倍) 搭載している。
 このキャッシュの特徴は、命令用と演算用が統合されている点で、状況によって使い分けることが出来る。この大容量キャッシュにより、Intel製 Celeronより高速な処理ができると期待されていたが、浮動小数点演算ユニット (FPU) がコアクロックの半分で二次キャッシュが無いため、実際の演算処理能力は、これらの CPUに対し遠く及ばないものとなってしまい、評価としては価格が安いが性能もそれなりという評価を受ける事となった。

 Samuelコアは、0.18ミクロンプロセスで製造されるため、低電圧動作と消費電力を抑えることに成功している。形状は、セラミックパッケージに金色のヒートスプレッダの付いた、従来の Cyrix製 CPUで良くみられた形をしている。
 クロックの逓倍設定は 0.5倍刻みで設定可能。マルチメディア拡張命令では、元が Winchip系と言う事も有り Intel提唱の MMXテクノロジと AMD提唱の 3D NOW !テクノロジに対応する。
 その後に Celeronが 128KBのフルスピード二次キャッシュを内蔵するようになったため、CyrixIIIもそれに合わせて 2001年に、64KBの二次キャッシュを内蔵した Samuel2コアに移行した (Samuel2コアに付いては、C3を参照のこと)。

 2001年 9月には、国内での販売テコ入れ策として国内販売代理店ユニティと共同でデザインしたキャンディー風缶入りで販売されて話題を集めた。

 ちなみに、この CPUは、PPGAタイプの Cerelonが動作する PC/AT互換機では、そのまま動作する場合が多い。

 PC-98の場合は、Slot 1搭載機では、BIOS (ITF) で、Genuin intel チェック (Intel製以外の CPUをはじくためのチェック) があるため、通常は、動作させることが出来ない。
 一方、Socket 8機では、このチェックが無いため、PL-ProII等、下駄を使用することで、動作させることが出来る。

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 C3 (Samuel2, Ezra, Ezra-T) 製造メーカー VIAテクノロジー
VIA C3 (Samuel2コア) 発表年月日 2001/5/28 (Samuel2)
2001/5/25 (Ezra)
2001/9/11 (Ezra-T)
形状 370pin CPGA, 336ball EBGA
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 15,200,000 (Samuel2)
15,400,000 (Ezra)
15,500,000 (Ezra-T)
製造技術 0.15 micron process (Samuel2)
0.13 micron process (Ezra, Ezra-T)
対応ソケット Socket 370 (Samuel2, Ezra)
Socket 370 (FC-PGA2) (Ezra-T)
動作クロック
(MHz)
667A/ 700A/ 733A/ 750A/ 800A (Samuel2)
800A/ 866A/ 900A/ 933A (Ezra, Ezra-T)
システムクロック
(MHz)
100/ 133
一次キャッシュメモリ 128KB (統合)
二次キャッシュメモリ 64KB
動作電圧
(コア部/ I/O部)
1.5〜 1.6V/ 3.3V (Samuel2)
1.35V〜1.4V/ 3.3V (Ezra, Ezra-T)
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令、3D NOW!命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 L2キャッシュメモリ内蔵。
解説  C3 (Samuel2コア, C5B)は Socket370対応の VIAテクノロジー製 x86系 32ビット CPU。CyrixIII (Samuelコア) の後継として、演算処理能力を高めるため、新たに 64KBの CPUコアクロックと等速で動作するフルスピードニ次キャッシュを内蔵した Celeron対抗の CPU。集積密度の増加から製造プロセスが 0.15ミクロンプロセスに縮小され、動作電圧も下がった。

 注目の演算処理能力は二次キャッシュの内蔵により、処理によっては Celeronより C3の方が高速な場合があるが、浮動小数点演算ユニット (FPU) がコアクロックの半分ということもあり、総合的には同クロックの Celeronよりも明らかに劣ってしまい、価格は安いが性能もそれなりという悪い印象を定着させる物となってしまった。
 なお、Samuel 2コアの CPUは、生産途中で販売戦略の変更から、ブランド名が「VIA CyrixIII」から「VIA C3」に変わったため、両方の表記のものが存在する。表記上の違いだけで、コアが同じであれば性能や機能に違いはない。

 C3 (Ezraコア, C5C)は、製造法を 0.13ミクロンプロセスに変更し、より低電圧、高クロックで動作するもので、コア自体は従来のコアとの違いは無い。このコアでは、ピンサイドのブリッジを弄ることで、内部動作倍率を強制的に変更することが出来る。
 この CPUでは、従来のセラミックパッケージに加え、表面実装用に小型の EBGA(Enhanced Ball Grid Array) パッケージが用意されている。

 その後の 2002年に、Intelの Tualatinコアが AGTLバス仕様が変更されたため C3もそれに合わせて変更された C3 (Ezra-Tコア, C5N)が登場する。
 なお、こちらもバス仕様の変更以外にコア自体に変更は無いため、パフォーマンスは変わらない。

 この Socket370対応の C3も Intel Celeron同様に、今後、Pentium4 (NetBurstアーキテクチャ) ベースの C4 (後の C7プロセッサ) に移行することが決まっている。

 C3シリーズの売りは、低価格、低電圧動作、低消費電力、低発熱で、条件次第では、ヒートシンクのみで動作させることが出来るため、演算処理能力よりも PCの静音化を優先したい場合や、ファンレス PC等の用途に注目を集めている。
 派生製品としては、2002年に謎の CPUとして秋葉原で話題になった CPUオンボードのマザーボード向けに出荷した1GigaPro (Samuel2コアの 733MHz版 C3と同等) や、組み込み用途向けに Samuel2コアをベースに EBGAパッケージとして小型化、さらに動作電圧が 1.05Vに下がり、消費電力も下がった VIA Eden ESPシリーズが存在する。

 ちなみに、この CPUは PPGAタイプの Cerelonが動作する PC/AT互換機では、そのまま動作する場合が多いが、Ezra-Tコアでは、バス仕様が変更されたため FC-PGA2変換下駄が必要になる。
 また、コア電圧が Intel製品には無い 1.35Vであるため、マザーボードによっては、供給電圧が定格よりも高い「活入れ」状態で動作させることになるので、注意が必要である。

 PC-98の場合は、Genuin intel チェック (Intel製以外の CPUをはじくためのチェック) の無い、Socket 8機 (Rv20は、ダメらしい) でのみ、PL-ProII等と FC-PGA変換下駄の組み合わせで、Ezra-Tコアでは FC-PGA2変換下駄と組み合わせることで動作することが知られている。  ただし、Intel製品と比較して演算能力が低く、システムクロック 66MHzで動作させると定格のクロック以下で動作することになるので、アップグレードという目的では、使用する意味があまり無い。(^ ^;;

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 

名称 C3 (Nehemiah) 製造メーカー VIAテクノロジー
VIA C3 (Nehemiahコア) 発表年月日 2003
形状 370pin CPGA, 336ball EBGA
バス幅 64ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 20,500,000
製造技術 0.13 micron process
対応ソケット Socket 370 (FC-PGA2)
動作クロック
(GHz)
1.0A/ 1.13 (1.1A)/ 1.2A/ 1.33 (1.3A)/ 1.4A
システムクロック
(MHz)
133
一次キャッシュメモリ 128KB (統合)
二次キャッシュメモリ 64KB
動作電圧
(コア部/ I/O部)
1.4V/ 3.3V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)、MMX命令、ストリーミング SIMD (SSE) 命令
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 なし
備考 L2キャッシュ内蔵、StepAhead機能、PadLock機能の追加。
解説  C3 (Nehemiah コア, C5XL)は Socket370対応の VIAテクノロジー製 x86系 32ビット CPU。演算能力を向上するため、従来のコア設計のうち、特に、二次キャッシュ周りが大幅に見直されている。
 変更の主な部分は、二次キャッシュの量は従来と変わらないもののアクセス方式が 4Wayアソシエイティブから 16Wayアソシエイティブへ、パイプラインも 12段から 16段に強化された。さらに、新たに「StepAhead」と呼ばれる分岐予測機能が追加され、分岐予測ミスによる処理能力低下を防ぐようになっている。
 もう一つの変更点は、浮動小数点演算能力の強化、浮動小数点演算ユニット (FPU) がフルスピードに強化され、マルチメディア拡張命令もAMD提唱の 3D NOW!から Intel提唱の ストリーミング SIMDに変更され、従来のプロセッサで弱点であった浮動小数点演算能力が向上している。
 また、従来対応していなかった i686の命令 CMOV命令がサポートされ i686完全互換となった。
 その他に、「PadLock」とよばれる CPU内部に発生する電子ノイズを利用した乱数発生機能が追加されている。この機能により、演算による乱数よりも高度で複雑な乱数を発生することが出来るという。この機能は、今後、データの暗号化等、セキュリティ機能の強化に役立つことが期待される。
 CPUの形状は、従来のセラミックパッケージに金色のヒートスプレッダという形状であるが、ヒートスプレッダの周囲にチップコンデンサが並ぶという違いが有る。この他に、組み込み装置向けに表面実装用の EBGA(Enhanced Ball Grid Array) パッケージが用意されている。

 動作電圧は、コア設計の見直しを受けて、1.4Vに上昇し、消費電力も上昇している。
 派生製品としては、組み込み用途向けに BGAパッケージとして小型化、さらに動作電圧と消費電力を下げた VIA Eden ESPシリーズ (ESP 6000以降、ただし ESP 6000では Samuel2コアと混在)、さらに小型の ナノ BGAとした VIA Eden-Nシリーズが存在する。
 また、キューブタイプの小型デスクトップやシンクライアント向けに CPUに S3グラフィクス ProSavage4グラフイック機能を統合した VIA CoreFusion シリーズがある。

 Cyrix III/ C3プロセッサとして混乱や迷走があり当初の予定から大幅に遅れてようやく i686互換 CPUとして完成品と言える状態になったのだが、上位製品として L2キャッシュを 256KBに増量した C5Xコアが計画されていたがキャンセルとなり、長らく続いていた Socket370対応製品を終息。次の C7プロセッサから NetBurstアーキテクチャベースへ移行し、P6アーキテクチャも終息となった。

 C3プロセッサ以降、VIAテクノロジーとしての戦略は、高い演算能力や動作クロックで Intelと真っ向勝負するのではなく、演算能力を抑えてでも省電力で発熱の少ないプロセッサを推進する戦略とし、x86系 CPUでの住み分けを図る方針を取っている。

 x86系 CPUの 8086登場以降、有象無象のセミコンダクタが x86系 CPUを製造し販売してきたが、21世紀に入って Intel、AMD、VIAの三社に集約されたという点が感慨深い。CPU以外にも、HDDや グラフィックチップに限らず、周辺機器メーカーなどでも同様な状況となっている。
 2010年代に入るとパソコン値下げ競争が激化し、すでに利益率が低い製品となってしまった。かつては、パソコンをパワーアップして長く使用する事が多かったが、現在は廃棄してメーカー製の OS付き新型パソコンを購入した方が安い状況にある。今後は、さらにワンチップ化、ワンボード化が進みデスクトップパソコン、自作パソコンというジャンル自体が過去の物となる日も近いだろう。
 パソコンのパワーアップや改造といったぁゃιぃ行為が大きな意義のない時代になってしまったのが少々さびしい気もしますな。(^ ^;;

 PC-98の場合は、Genuin intel チェック (Intel製以外の CPUをはじくためのチェック) の無い、Socket 8機 (Rv20は、ダメらしい) でのみ、PL-ProII等、電圧降下下駄と、FC-PGA2変換下駄を使うことで、動作することが知られている。

 ちなみに、この CPUが Tualatinより後に登場したため、この CPUが P6系 PC-98シリーズで搭載できる最後の CPUとなった。
 しかし、Intel製品と比較して演算能力が低く、システムクロック 66MHzで動作させると定格の半分のクロックで動作することになるので、アップグレードと言う意味で注目を浴びるかどうかは分からない。(^ ^;;

 ←第2回トップへ Back                                                                  ▲ページトップへ Top 




PC-98, PC-9801, PC-9821, PC-H98, PC-9800, FC-9801, FC-9821, FC-9800, SV-98, 98SERVER, VALUESTAR, CanBe, 98NOTE等は、NEC社の商標または登録商標です。

i486, Pentium/Pro/II/III, MMX, ODP, Celeronは、intel社の商標または登録商標です。

Windows, MS-DOSは Microsoft社の商標または登録商標です。

この他、製品名、型番等は、一般に各メーカーの商標または登録商標です。