第 5世代 CPU (486互換 CPU)

各社独自の工夫を凝らした 486マシンの救世主。

名称 Pentium ODP (P24T, PODP5V) 製造メーカー Intel
Intel Pentium ODP タイプ S 発表年月日 1995/2/3
形状 254pin PGA + CPUクーラー
バス幅 32ビット (内部 64ビット)
ただし Pentiumコアは 32ビット
トランジスタ数 3,300,000
製造技術 0.6 micron process
対応ソケット Socket 3
動作クロック
(MHz)
63/ 83
システムクロック
(MHz)
25/ 33
一次キャッシュメモリ
(命令用/ データ用)
32KB (16KB/ 16KB)
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)
PC-98本体
での採用例
PC-9801BX4/U2-P, PC-9801BX4/U2/C-P
PC-9821Xe10/4-P, PC-9821Xe10/C4-P
PC-98オプション
での採用例
PC-9821-E03 (83MHz版)
CPUアクセラレータ
での採用例

アセットコア

 VIPER Power MULTi PNT-25 (63MHz: PC-9801BX/BX2, PC-486P対応)
 VIPER Power MULTi PNT-33 (83MHz: PC-9801BA2/BS2, PC-9821Ap/As, PC-H98model105, PC-486FS/FR/SR対応)
備考 ライトバック機能、内部逓倍機能、バス変換機構、電圧変換機構内蔵。
解説  Pentium ODP5V (P24T) は 第五世代 x86系 32ビット CPUの Pentiumコアを搭載した Intel純正 Socket 3用 オーバードライブプロセッサ (ODP)。Pentiumと言っても Socket 5対応の Pentiumと比べると構造は大きく異なり Socket 3ピン互換に合わせる為に Pentiumコアを 486コアに置き換えた構造をしている。データバス幅が Pentiumの 64ビットと 486の 32ビットで異なるためバス変換回路を搭載し、外部データバスは 32ビットながら内部では 64ビットという特殊な構造をしている。
 スーパースケーラ・アーキテクチャとしてパイプラインを利用した 2命令同時実行、分岐予測などの先進的で高性能な Pentiumコアを搭載しているものの外部とのデータのやり取りにバス変換回路を通すためウェイトが入りどうしても処理速度が低下してしまう。その対策として内蔵するキャッシュメモリが Pentiumの 2倍にあたる 32KBに増加されている。
 さらに、内蔵キャッシュメモリはライトバック方式に対応しているため、BIOSがライトバック制御に対応している 486機では最高性能の CPUとなる。この ODPで特に注目すべきは浮動小数点演算能力の向上で、P24Tの 83MHz版ではクロックの低い iDX4 100MHz版より 20%程度処理能力が向上している。浮動小数点演算機能を多用する Windows95等の OSではパフォーマンスの向上が期待できる。その一方で整数演算処理が主な DOSでは、動作クロックが下がる分パフォーマンスが落ちてしまう場面が多い。
 他に Pentiumコアは 486機とは動作電圧が違う為に電圧変換機構を内蔵し、冷却を強化するため CPUクーラーが一体化している。なお、CPUクーラーを止めるとリミッターが働き内部逓倍設定が強制的に 1倍にされてしまう。(^ ^;;
 P24Tの内部逓倍設定は 2.5倍固定。この ODPではバス変換回路が足かせとなりオーバークロック耐性は極端に低く、63MHz品を 83MHz動作させる事もできない。事実として 83MHzを超えるものは (Intelの戦略と言う意味も有るが) 登場しなかった。

 PC-9800シリーズでは PentiumODP搭載モデル、純正オプションが発売された。なお、PC-9801BX4の PentiumODPモデルは (-P型番) PC-9821Xe10との兼ね合いで 63MHz版を搭載しておりシステムクロックが 25MHzにダウンしたがっかり仕様なので要注意。この機体を 33MHzにするためには水晶発振器を交換する必要がある。

 なお、PC-9821Xe/ Xs/ As3、PC-9801BX4 (Socket 6の PC-9821Ap3/ Xpも) 等は、BIOSがライトバック制御に対応しているので P24Tの本来の性能を引き出せるが、PC-9821As2/ Ap2等ライトバック制御非対応機ではライトスルー動作となり若干パフォーマンスが落ちてしまう。これらの機種では、P24Tのピンを操作することにより強制的にライトバック機能を有効にする改造法があるが、DMA転送がらみで痛い目に合うのでその辺十分理解した人以外はやらないほうがよい。(^ ^;;

 この ODPを使用する際の注意点としては、従来の 486に比べ内蔵キャッシュのライトバック制御とクーラーの電源供給の為にピンの数が外周の一周分増えている。よって Socket 1やSocket 2では、素通しの下駄 (スペーサ) 等で外周のピンを浮かすか、切らない限り物理的に装着できない。
 また、Socket 6でも P24T側のピンが 1本多く、ソケット側に穴を開けるかピンを折らない限り物理的に装着できない。
 他には、パソコン側個別の問題として PC-98対応の P24Tには Sタイプと Kタイプ (PC-9821Xe/ Xs専用) があり、Kタイプは、薄い基板で A7ピンと A8ピンをショートしてあるという違いや、P24Tとセカンドキャッシュを内蔵していると不具合を起こす可能性のある機種 (PC-9821Xs/ Xpの一部ロット) が存在する等、搭載する場合は対応機種に注意を要する。

 CPUアクセラレータとしての採用例は少ないが、筺体内スペースの都合で搭載が難しい 98Multi Canbe向けのアクセラレータが発売されたほか、コンピュータテクニカでは CPUの交換が難しい PC-9821Cb2向けにアップグレードサービスを行っていた。ちなみに、P24Tは Buffalo/ MELCOのハイパーメモリ CPU基板上でも周囲のスペースに余裕が有れば搭載して動作させる事が出来る。

 後に、Socket 6向けにPentium ODP (P24) として P24Tから電圧変換機構、CPUクーラーを省き、CPUを停止させるピンを無くした ODPが登場する予定であったが、AMDや Cyrixといった互換 CPUメーカーの攻勢も有って Intelが早期に 486を終息させる戦略へ転換した事により、エンジニアリングサンプル (ES) 版が作られたものの一般に出荷されることはなく幻の CPUとなってしまった。
 運良く入手できれば、PC-9821Ap3などの Socket 6マシンで本体を改造することなく載せることができるが、PC-9821Xpでは PC-9821Xsに Sタイプを搭載する時と同様な改造が必要になると考えられる。

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名称 Am5x86-P75 (Am486DX5) 製造メーカー AMD
AMD Am5x86P75 PGAパッケージ版 発表年月日 1995/9
形状 168pin PGA, 208pin SQFP
バス幅 32ビット
トランジスタ数 1,900,000
製造技術 0.35micron CMOS process
対応ソケット Socket 3/ 6
動作クロック
(MHz)
80/ 100/ 133
システムクロック
(MHz)
20/ 25/ 33
一次キャッシュメモリ 16KB
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 3.45V、3.3V
命令セット 32ビット命令 (IA-32)
PC-98本体
での採用例
なし
PC-98オプション
での採用例
なし
CPUアクセラレータ
での採用例

I-O DATA

 PK-A586/98 (133MHz: PC-9801BX/BX2/BX3/BX4/BS2/BA/BA3, PC-9821Ae/As/Ap/Ap2/Ap3/Be/Bs/Bp/Ce/Xe/Xe10, PC-486FE/FR/MR/MS/MU/MV/SE/SR/RS/GF/GR Super/GR+対応) ※ 赤文字の機種については条件有り
 PK-A586/DV (133MHz: PC/AT互換機対応) ※ PC-98では正常動作せず
 PK-Nd133A (133MHz: PC-9821Nd/Ne2対応)
 PK-Ne133A (133MHz: PC-9821Ne対応)

Buffalo/ MELCO

 EUA-QP (133MHZ: PC-9821Ap/As/Ae対応)
 EUB-HP (120MHZ: PC-9801BA/BX対応)
 EUD-HP (120MHZ: PC-9801DA/RA21/RA51対応)
 EUF-EP (128MHZ: PC-9801FA対応)
 EUZ-QP (133MHZ: PC-9801BX2/BS2/BA2対応)
 HAS-33QP (133MHZ: PC-9801BX3/BX4/BS2/BA2/BA3, PC-9821Bs/Bp/As/Ap/Ap2/Xe/Xe10, PC-486FR対応)
 HAV-33QP (133MHz: PC-486NAU/NAV対応)
 HND-33QP (133MHz: PC-9821Nd/Ne2対応)
 HNE-33QP (133MHz: PC-9821Ne対応)

アセットコア

 VIPER Max Drive 586X (133MHz: PC-9801BX3/BA3, PC-9821Ae/As2/As3/Ap2/Be/Bs/Bp/Cb2/Ce/Xe/Xs, PC-486FE/FR/HG/HX/MR/MS/MU/MV/SE/SR/RS対応)
 VIPER Max Drive 586L (133MHz: PC-9801BX3/BA3, PC-9821Ae/As2/As3/Ap2/Be/Bs/Bp/Cb2/Ce/Xe/Xs, PC-486FE/FR/HG/HX/MR/MS/MU/MV/SE/SR/RS対応)
 VIPER Max Drive 586CXL (133MHz: PC-9821Cx対応)
 VIPER Max Drive 586NAS (100MHz: PC-486NAS対応)
 VIPER Max Drive 586NUV (133MHz: PC-486NAU/NAV対応)
 VIPER Max Drive 586NAT (133MHz: PC-486NAT対応)
 VIPER Max Drive CVS (133MHz: PC-9801BA2/BS2/BX/BX2/BX3, PC-9821Ae/Ap/Ap2/As/As2/Cb2/Ce/Xs, PC-486FE/FR/HA/HG/HX/MR/MS/MU/MV/P/SE/SR/RS対応)
 VIPER Power MULTi 586Ce2 (100MHz: PC-9821Ce2対応)
 VIPER Power MULTi 586Cs2 (133MHz: PC-9821Cs2対応)
 VIPER Power MULTi AMCe (100MHz: PC-9821Ce2対応)
 VIPER Power MULTi AMCs (133MHz: PC-9821Cs2対応)

コンピュータテクニカ

 ODP-5x86 (150) -Ne (150MHz: PC-9821Ne対応、限定販売)

AXIS Corp

 UPKIT/486N

ハワーリープ

 NEC 98シリーズパワーアップキット Nd/Ne2 (PC-9821Nd/Ne2対応。メモリとセット)
 NEC 98シリーズパワーアップキット Ne (PC-9821Ne対応。メモリとセット)
 NEC 98シリーズパワーアップキット NS/A (PC-9801NS/A対応。メモリとセット)
 NEC 98シリーズパワーアップキット NXC/NSR (PC-9801NX/C, PC-9821NS/R対応。メモリとセット)
 NEC 98シリーズパワーアップキット PC-486NAS/NAU/NAV (PC-486NAS/NAU/NAV対応。メモリとセット)

EVERGREEN (国内販売無し)

 EVERGREEN586
備考 L1キャッシュメモリ、ライトバック機能、内部逓倍機能内蔵。
解説  Am5x86P75 (Am486DX5) は AMD製の iDX4互換 x86系 32ビット CPU。同社の Pentium互換 CPUの K6シリーズと同じ製造技術を採用し、Am486DX4をベースに Intel互換のライトバック方式対応キャッシュメモリを 16KBに増量、内部 4倍速動作 (3倍にも設定可能) 等の改良を重ねて処理能力の高速化を実現した。特に、133MHzの製品ではキャッシュを適切に制御することにより Pentium 75MHz相当の高いパフォーマンスを発揮する。なお、ライトバック方式非対応機では iDX4相当の処理速度になる。
 当初、製造技術と言う意味で第 6世代の「K6」と第 4世代の「Am486」の間をとって、第 5世代という意味を込めた Am5x86-P75 (P75とは Pentium 75MHz相当の意味) という名称であったが、後に Pentium互換の K5シリーズ (5K86) がラインナップに加わるとこれと区別するため Am486DX5に変更された。Am5x86-P75と Am486DX5の二つに性能や機能の違いはないが、前者はオーバークロック耐性に優れており冷却次第で 200MHz超の速度で動作できるものも存在した。
 実際に製造技術の微細化によってダイの小型化と動作電圧が下がって発熱が抑えられた事も有り、クロック耐性が高く 160MHz版といったより高速な製品もアナウンスされたが、既に Pentiumが普及していた事から見送られた。

 同時期に同様なものとして、台湾の大手セミコンダクターの UMC (United Microelectronics Corporation) の 486互換 CPUである GREEN CPU U5S-SUPERが有り、0.6micronへの製造技術の微細化によって第 5世代を謳っている。この製品は、後にPentium互換と紛らわしい事からU5SX 486-Aと名称を変更している。この CPUは UMCが独自に i486を解析して設計したものであったが、Intelの特許に違反していたため米国内での販売と輸入が禁止されてしまった。CPUパッケージ表面に「Not for U.S. sale or import」の記述がある。
 本 CPUのキャッシュメモリがライトバック動作かライトスルー動作かどうかは、CPUIDから判別できモデルナンバーが「E」の場合はライトスルー動作、「F」の場合はライトバック動作と言うことになる。

 なお、Am5x86-P75を搭載した MELCO (現 バッファロー) のハイパーメモリ CPUシリーズである EUD-HPを 8倍速に改造し、PC-9801DAで動作確認をしたところ、あっさりと 160MHzで動作してしまった事からもオーバークロック耐性の高さを物語る。160MHz動作時のパフォーマンスは Pentium 90MHzといい勝負で、まさに 486チップの最高峰と言える。

 この CPUは、i486と互換性が高いために Windowsでも DOSでも安定性が高く、電圧変換ソケット (下駄) を使うことにより従来の CPUを載せ替えて容易にパワーアップを図ることができる。そのときの注意としては、PC-9821Ap2/ As2/ Bp/ Xs/ Xp、PC-9801BA2では、セカンドキャッシュとライトバック制御の相性が悪く不具合を起こす可能性があるということである。メーカー製アクセラレータでは、マザーボードに依存せずライトバック制御に対応した製品が存在するが、セカンドキャッシュとの併用が出来ないものやセカンドキャッシュ搭載モデルが対応機種から外されている事がある。
 CPUの交換ができないノートブックタイプのパソコン向けに、CPUアクセラレータでお馴染みのアセットコア・テクノロジー社やマクサス社 (Maxsus) 等が本 CPUに載せ換えるアップグレードサービスを行っていた。97年当時の大まかな価格帯は 5万円前後であった。

 ちなみに、ライトバック非対応機では、Buffalo/ MELCO製 HAS-33QPが最高速、セカンドキャッシュ内蔵でライトバック非対応機では、I-O DATA製 PK-A586/98が最高速となる。特に、PK-A586/98では、ライトバックキャッシュ制御をハードで行うのでドライバの組み込みが必要なく OSに依存しないため便利である。
 PC-9821Ap3/ As3等のライトバック制御対応機にこの CPUをそのまま載せる場合 (標準で、iDX4が載っている機種以外では、電圧変換下駄が要る)は、Intel製ではないので BIOSがライトバック制御可能と認識せずにライトバック制御が有効にならない。別途 Y.Ajima氏作「wbtools」といったソフトウェアで有効に変更する必要がある。
 PC-9821Xs/ Xpでは BIOS自体はライトバック制御対応だが、動作電圧の問題をクリアしても AMDや、Cyrix製 586 CPUの搭載を想定していないため、マザーボード上の配線が足らずに L2キャッシュとの併用ができないので要注意。

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名称 5x86 製造メーカー Cyrix, IBM, STマイクロエレクトロニクス
Cyrix 5x86 発表年月日 1995/10
形状 168pin PGA、208pin SQFP
バス幅 32ビット (内部 64ビット)
トランジスタ数 2,000,000
製造技術 0.65micron process
対応ソケット Socket 6
動作クロック
(MHz)
100 (120GP)/ 120 (133GP)/ 133 (166GP)
システムクロック
(MHz)
25/ 33/ 40
一次キャッシュメモリ 16KB (統合)
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 3.3V (3.45V)
命令セット 32ビット命令 (IA-32)
PC-98本体
での採用例
なし
PC-98オプション
での採用例
なし
CPUアクセラレータ
での採用例

I-O DATA

 PK-586x3 (100MHz: PC-9801BS2/BA2/BA3/BX3/BX4, PC-9821Ap/As/As3/Bs/Bp/Xe/Xs対応)
 PK-586x4 (100MHz: PC-9801BA/BX/BX2対応)
 PK-EP586x3 (100MHz: PC-486FR/FS/SR/MU/MV/MR/MS/RS対応)
 PK-EP586x4 (100MHz: PC-486GR/GR+/GR Super/HG対応)

MELCO

 EUA-TP (100MHz: PC-9821Ap/As/Ae対応)
 EUB-H (120MHz: PC-9801BA/BX対応)
 EUD-H (120MHz: PC-9801DA/RA21/RA51対応)
 EUZ-Q (100MHz: PC-9801BX2/BS2/BA2対応)
 HAS-33TP (100MHz: PC-9801BX3/BX4/BS2/BA2/BA3, PC-9821As/Ap/As2/Bs/Bp/Xe/Xe10, PC-486FR対応)
 HCX-33TP (100MHz: PC-9821Cx対応)

アセットコア

 VIPER Max Drive 586S (75MHz: PC-486FE/SE対応)
 VIPER Max Drive 586G (75MHz: PC-486GR/GR+/GR Super対応)
 VIPER Power MULTi 586CX (100MHz: PC-9821Cx対応)
備考 スーパースケーラ機構、ライトバック機能、内部逓倍機能、バス変換機構内蔵。
解説  5x86は Cyrixの i486互換 x86系 32ビット CPU。i486とピン互換ながら同社の Pentium互換 CPU Cx6x86 (M2) コアと同じ、スーパースケーラ、投機実行、分岐予測等の技術 (M1技術) を応用して高速化を図った CPU (M1scコア) で、コアの構造は、内部データバスは 64ビット (プロセッサは 32ビット)、外部は 32ビットという 486用 PentiumODPに近く、同じ名前の AMD製 Am5x86とは構造がまったく異なる。
 また、ライトバックキャッシュ機能 (他の 486互換 CPUと違い BIOSで非対応でもソフト側のみで設定可)、内部 3倍速動作 (2倍に設定可能、一部ロットでは、4倍速設定も可能) 等の機能も内蔵されている。
 Cyrixでは、コアの構造から第 6世代と第 4世代の間をとって、第 5世代という意味を込めた 5x86という名称が付けられた。

 この CPUはその構造が示す通り同クロックの Am5x86より高速で、BIOSやドライバで適切にキャッシュを制御することにより、120MHz動作では Pentium 100MHz相当の驚異的な処理速度を発揮する。さらに、隠し設定 (公式にはバグがある為に設定禁止となっている) である FPUターボモードを有効にすると、さらに浮動小数点演算速度を高速化することができる。
 しかし、実際にはその先進的な構造が仇となり i486シリーズとの互換性が低く、Windowsではトラブルを起こす事が多かった。さらに、バス変換機構が動作クロックの向上を妨げてしまい 133MHz版の出荷の遅れた結果、安定動作の 133Hz版の Am5x86の登場のため 133MHz版の出荷後に早々に市場から姿を消してしまった。それもあって 133MHz版の入手は困難を極める。
 オーバークロック耐性は Pentium ODPに比べればマシという程度で冷却を強化しても 120MHz以上のクロックで安定動作させることは難しい。
 CPUアクセラレータでも 5x86搭載の製品登場後、AMDの Am5x86が登場すると一気に置き換わっていった。
 派生製品としは、1997年に登場した MediaGXがある。開発コードは 5GX86。5x86コアをべースに、メモリコントローラ、グラフィックス機能、サウンド機能をワンチップに収めた CPUで、部品点数の削減、低コストが売りで、ノートパソコンを中心に採用された。
 その翌年には、MMXテクノロジに対応した MMX-enhanced MediaGXが登場、最終的には 233MHz版まで存在した。こちらは、CASIOの CASSIOPEIA FIVAシリーズといった国内メーカー製パソコンでも採用されている。
 ちなみに、その後 Cyrixは一時、ナショナルセミコンダクターに買収されたが、直後の方針転換で同社の x86系 CPU部門の撤退から Cyrixを VIAに売却することとなった。その後も MediaGX資産は保有し続け、1997年 7月に MediaGXを発展させた製品として Geodeを発表する。
 その後の 2003年に AMDが Geode製造部門を買収、結果として AMDのブランドとして Geodeが生き残ったと言う経緯がある。

 なお、Socket 6や Socket 3 (電圧変換必要) 搭載機では、CPUの載せ替えも不可能ではないが、i486との互換性が低いため Windowsで不安定になる事が多く、一部のソフトウェアで動作しないなどのトラブルが発生する事があるのでサードパーティー製 CPUアクセラレータを使用した方が無難である。
 PC-9821Xs/ Xpでは、BIOSはライトバック対応だが、動作電圧の問題をクリアしても AMDや Cyrix製 5x86の搭載を想定していないため、マザーボード上の配線が足らず L2キャッシュとの併用ができないので要注意。

 Cyrixは設計のみを行うファブレス半導体企業で 5x86チップは IBMや SGS-トムソン (現 STマイクロエレクトロニクス) が製造を請け負っていた。Cyrixは製造各社に自社ブランドでの出荷も認めており IBMブランドの 5x86Cや SGS-トムソンブランドの It's ST5x86もある。両者ともコア自体は 5x86と同一なので性能、機能ともになんら違いは無い。CPUアクセラレータでは、同じ製品でもロットによりこちらを搭載している場合もある。

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