第三研究所 Third Reserch Institute


           
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第 1世代 CPU

一時は天下を取った NEC PC-9800シリーズ。すべてはここから始まった。

名称 8086 製造メーカー Intel, NEC, AMD, 富士通, 沖電気, 他
NEC uPD8086-2 発表年月日 1978/7/8
形状 40pin DIP
バス幅 16ビット
トランジスタ数 29,000
製造技術 3 micron process
対応ソケット
動作クロック
(MHz)
5/ 8/ 10
システムクロック
(MHz)
5/ 8/ 10
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x86-16
PC-98本体
での採用例

μPD8086搭載

 PC-9801 (初代)

μPD8086-2搭載

 PC-9801E/F/M
 PC-9801FC
 FC-9801 (初代)
PC-98オプション
での採用例
 PC-9801-23 (8086ボード: PC-9801VF/VM0/VM2/VM4対応)
 FC-9801-04 (8086ボード)
CPUアクセラレータ
での採用例
備考 接続可能なメモリの増加。
解説  8086は Intelによって開発された記念すべき初の x86 (80x86) アーキテクチャの CPU。従来の 8ビット CPU (8008、8080、8085) では接続可能なメモリが最大でも 64KBと少ないという欠点を補うべく 8086では、データバス幅が 16ビット、アドレスバスが 20ビットに拡大されたことにより、接続できるメモリの容量が最大 1MB (MS-DOS等でユーザが使えるのは 640KB) に増加した。
 なお、PC-98で搭載されているμPD8086は、日本電気 (NEC) のライセンス生産型 (セカンドソース) で性能、機能ともに 8086と同等である。他にも AMD (Advanced Micro Device)、テキサスインスツルメンツ、富士通、沖電気、三菱電機など多くの半導体メーカーで製造していた。
 8086はアーキテクチャの異なるモトローラの 68000と比較される事が多い。x86系 CPUを採用した PC-9800シリーズでも 68000 MPUを使用できる純正オプションが発売されている。
 8086登場の翌年には 8086の外部データバスを 8ビットにした廉価版の 8088というプロセッサも登場。PC-9800シリーズでは採用されていないが IBM PC等で採用された。
 また、8086を改良し 5MHz以上の高速動作を可能にした製品も作られ 8086-1は 10MHz、8086-2は 8MHzで動作する。

 さて、8086の登場から 4年後の 1982年 10月に 8086のライセンス生産型である NEC μPD8086を搭載した16ビットパソコンの新シリーズ PC-9801が颯爽と登場した。この 初代 PC-9801から PC-9800シリーズ (通称 98: キューハチ) の約 20年に及ぶ長い歴史が始まる。(^-^)
 初代 PC-9801以降は、高速化した 8MHz版のμPD8086-2を搭載し当時高価だったフロッピィーディスクドライブ (FDD) を内蔵したモデルも登場しラインナップが拡充された。
 純正オプションでの 8086採用例としては、「8086ボード」という製品がある。このボードは 8086が載った汎用拡張バス (通称: Cバス) 用のボードで、パソコン本体の 8086のスタート命令により動作を開始しパソコン本体の CPUと同時に動作させることができる。

 ちなみに、PC-9801FCは漢字表示処理能力の高さを活かし日本と同じ漢字を使用する中華圏への普及を狙ったモデルで、バックパネルの表記が中国語で現地の AC220Vに対応した電源に変更されている。
 また、FC-9801とは 1985年 2月に初登場し工場等で機械の制御や組み込み用に使われる産業用の PC-98アーキテクチャのコンピュータで、マザーボードこそ一般の PC-98と変わらないものの RAM/ ROMファイルといったモータを使用しない記憶装置が用意され、ネジを多用した筺体と防塵フィルタ (オプション) で振動の多い環境や粉じんの多い環境といった劣悪な環境でも稼働できるように設計されている。このモデルは個人向けには販売されていないため影は薄い。民生モデルとは違い標準価格は設定されておらず全て販売店見積もりとなっている。

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名称 8087 製造メーカー Intel、AMD他
intel 8087-2 発表年月日 1980
形状 40pin DIP
バス幅 16ビット
トランジスタ数 45,000
製造技術 3 micron process
対応ソケット 40pin DIPタイプコプロソケット
動作クロック
(MHz)
5/ 8/ 10
システムクロック
(MHz)
5/ 8/ 10
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x87
PC-98本体
での採用例
PC-98オプション
での採用例

i8087 (i8087-3) 搭載

 PC-9806 (5MHz)

i8087-2または i8087-1搭載

 PC-9808 (8MHz)
 PC-9801-22 (8MHz)
 PC-9801-33 (8MHz)
 PC-9801-62 (8MHz)
 PC-9801CV-01 (8MHz: PC-9801CV対応)
 PC-9801U-01 (8MHz: PC-9801U対応)
CPUアクセラレータ
での採用例
備考
解説  8087は Intelの 16ビット CPUの 8086と 8ビット CPUの 8088用コプロセッサ (Math CoProcessor)。上位互換品である NECの V30、V30HLにも対応する。チップ中央部に放熱を良くするために金メッキされたヒートスプレッダ (金属板) が付いているセラミックパッケージの C8087と付いていない茶褐色のセラミックパッケージの D8087がある。
 コプロセッサとは数値データプロセッサともいい、CPUと協調して動作し関数演算等の浮動小数点演算の処理を担当する。このコプロセッサと対応するアプリケーションでは処理速度が 20%から 50%程度向上すると言われている。
 第四世代に当たる i486DXや iDX2以降の CPUでは、浮動小数点演算ユニット (FPU) として始めからコアに内蔵される事が一般的になり後から用意する必要は無くなっている。

 後に 8086の動作クロック高速化に合わせ 8087もより高速なクロックで動作する製品が登場した。8087-1は 10MHz、8087-2は 8MHz動作に対応する。これらの製品の登場により 5MHz版は 8087-3に型番が変更された。

 PC-98ではμPD8086、V30、V30HL搭載モデル用に NEC純正オプションとして 8087が用意されている。NEC純正品にはコプロセッサの表面に白いインクで型番が印刷されている。注意点としては純正オプションでは 8MHz動作の物までしか無いのでシステムクロック 10MHz以上で動作するモデルでは、動作クロックを 8MHzに落とさなければならない。10MHzで動作させたい場合は Intelのリテール品に JBOX8087-1があるのでそれを利用すると良い。
 なお、PC-9801CV用のコプロセッサは、取っ手と 40ピンコネクタの付いた基板上の DIPソケットに 8087が載った専用の物になっている。8087単体では取り付けられないので要注意。

 ちなみに、PC-98ではメモリスイッチの設定 (MS-DOSでは SWITCH.EXEで設定する) の項目で「数値データプロセッサ 1」 というのがこの 8087の設定で、8087を使うときは「有」に設定する。μPD8086、V30、V30HLを搭載していない機種では常に「無」で良い。

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名称 80186 製造メーカー Intel, AMD, シーメンス, 富士通
Intel 80C186XL 発表年月日 1982
形状 68pin CLCC, 68pin PLCC, 68pin PGA, 100pin PQFP
バス幅 16ビット
トランジスタ数
製造技術
対応ソケット 68pin CLCC, 68pin PLCC, 68pin PGA
動作クロック
(MHz)
6/ 8/ 10/ 16/ 20/ 25
システムクロック
(MHz)
6/ 8/ 10/ 16/ 20/ 25
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x86-16
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例

Ungermann-Bass

 PC-NIU N98 (LANボード)
備考 CPU周辺チップの統合。
解説  80186は Intelによって開発された x86アーキテクチャの 16ビット CPU。8086コアにクロックジェネレータ、割り込みコントローラ、タイマ、DMAコントローラ、チップセレクタといった周辺回路を統合 1チップ化した CPU。これにより部品点数の削減によるコストの低下、消費電力の低減が可能となった。
 DMAコントローラが従来と異なる事から当初見込んでいたデスクトップパソコンとして採用は殆ど無く 8086の後継 CPUとしては上手くいかなかったが、省スペースで消費電力を極力節減する必要の有ったモバイル PCや産業向けの組み込み向けといったマイクロプロセッサとしての用途で採用された。
 80186は AMD、シーメンスと云ったセカンドソース品も数多く存在する。
 CPUの存在としてはマイナーではあるもののマイクロプロセッサとして利用される事が多く 2007年まで長きにわたって製造、供給されてきた事もあり、当初 6MHzだった動作クロックは段階的に高速化し最終的には80C186XLにて 25MHzまで引き上げられるようになった。
 クロックの高速化だけでは無く、CMOS化による消費電力の低減を実現した 80C186、接続できるメモリを 16MBに拡張した 18677 (富士通、Intel共同開発)、シリアルインターフェイス等の周辺チップを取り込み、動作電圧を 3Vに下げパワーマネジメント機能を追加した 80C186EX等多くの派生製品が有る。
 この他に、8ビット CPUの 8088でも同様に周辺チップを取り込んだ製品として 80188があり 80186と同様な派生製品が有る。

 80186では、8086をベースとしているが組み込み用途向けとして容量の小さな ROMにプログラムが収まるように最適化された 10個の命令セットが追加されている。8086と比較すると演算処理ではウェイトが減って 30%程度高速化している。
 80186には、浮動小数点演算を担当するコプロセッサも用意されており、8087をベースとした 80187が該当する。

 NECは当時、自社製の 8086互換 CPUである V30を積極展開していたことから PC-9800シリーズ (PC-98) では、オプション装置を含め本 CPUを採用する事は無かった。NEC V30にも同様なラインナップが有り 80186と対比するものとして V50がある。
 では PC-98とはまったく無関係かと云うとそうでも無く、サードパーティー製品で 80186を採用している物が有り、アメリカのネットワーク企業であるアンガマン・バス (Ungermann-Bass) 社が開発した Network interface controller (NIC)の「PC-NIU」シリーズが有名。
 PC-NIUシリーズ NICでは、ボード上に 80186を搭載しており、当時の 8086や 80286では負荷の大きかった TCP/IPと云った LANプロトコルの処理をパソコンの CPUの代わって処理する一種のアクセラレータとして機能する。着想としては良かったものの消費電力と発熱が多い事が欠点だった。
 PC-98用としては「PC-NIU N98」がある。消費電力が多く Cバススロット 2スロット分消費するため、状況によってはオプションの外部電源ユニットが必要になる事がある。
 ちなみに、Ungermann-Bassはその後、1993年に UB Networksに社名を変更、4年後の 1997年にフランスのネットワーク企業アルカテル (Alcatel)に買収され、現在はアルカテル―ルーセント (Alcatel-Lucent)となっている。

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名称 V30 (μPD70116) 製造メーカー NEC, SONY, SHARP, Zilog
NEC V30 DIPパッケージ版
NEC V30 QFPパッケージ版
発表年月日 1984/3
形状 40pin DIP、52pin QFP
バス幅 16ビット
トランジスタ数 63,000
製造技術 1.2 micron process
対応ソケット
動作クロック
(MHz)
8/ 10
システムクロック
(MHz)
8/ 10
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x86-16
PC-98本体
での採用例
 PC-9801CV/RA/RS/RX/T/U/UV/UX/VF/VM/VX
 PC-9801N/LS/LV/LX
 PC-98DO
 PC-98XL/XL^2
 FC-9801V/V2
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例

京都マイクロコンピュータ

 Turbo-V (PC-9800シリーズ対応)
備考
解説  V30 (μPD70116)は Intelの 8086を NECが独自に内部バスを改良して処理の高速化を図った 8086ピン互換の 16ビット CPU。ソフトウェアにおいて 8086や 80186と上位互換となっている他に、独自に命令が拡張されている。8086とはピン配置が同じながら信号のタイミングが異なるために、完全な互換性はないものの 8086と交換する事で動作する事が多く、8086搭載パソコンのユーザの間では 8086を V30に換装する改造が流行った。
 そんな事もあってか、8086と V30の間で信号のタイミングを合わせる基板 (通称、下駄) を装着した CPU交換型の CPUアクセラレータも登場した。

 V30登場の後の 1984年から1989年までの 5年間、8086のマイクロコードの著作権をめぐって NECと Intelの間で争われた。その結果として V30の販売自体には問題が無かったもののマイクロコードの著作権が認められる事となった為に、NECとしてはその後に x86互換 CPUの開発が難しくなってしまった。Intelも 80286を最後にセカンドソースを認めない方針を打ち出した事もあり、NECは V30シリーズを最後に x86系 CPUの開発から手を引くことになり、これ以降は日本国内設計の x86系 CPUは絶滅する事となった。(^ ^;;

 V30で拡張された命令は Intelの x86系 CPUと互換性が無く 80286以降の CPUでは使用できない為に、V30独自の命令を使用したソフトウェアは正常動作しない。PC-98では V30搭載モデルが普及した事もあってより高性能な 80286や i80386登場以後もソフトウェアの互換性を保つ為に、PC-9801RA21/ RA51まで 80286や i386DX、i386SXと共に V30の 2つの CPUが搭載されていた。動作させる CPUの選択はディップスイッチ「3-8」で切り替え、同時に動作させることはできない。これらの機種では V30に切り替えることで V30 8MHzと同等のパソコンとして動作し、V30のもとでのみ動作する拡張ボードやオプションも使用できる。
 PC-9801DA/DS/DXからはコストを下げる目的で、この CPUは省略されて「V30エミュレーションモード」に変わったが、V30独自の命令を使う一部のソフトウェアでは動作しないといった問題が発生する事がある他、V30のもとでのみ動作する拡張ボードやオプションは使用できない。

 京都マイクロコンピュータは、1985年設立時に Turbo-Vとして V30を搭載したボードタイプの CPUアクセラレータを発売した。この頃の PC-98の高速化の手法としては高速な CPUを搭載した CPUボードを本体の汎用拡張バス (Cバス) スロットに搭載するのが一般的だった。
 同社では高速化目的の x86系 CPUボードだけでは無く、ソフトウェア開発事業向けにアーキテクチャの事なる Z80や 8ビットマイコン搭載ボード等も発売していた。
 ちなみに、V30は密かに EPSON製 PC-98互換機の PC-286L等に搭載されていた。他にもパソコンに限らず、拡張ボードや機器の制御用、アーケードゲーム基板等にも幅広く使用されている。

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名称 V30HL (μPD70116H) 製造メーカー NEC
NEC V30HL 発表年月日
形状 52pin QFP
バス幅 16ビット
トランジスタ数
製造技術
対応ソケット
動作クロック
(MHz)
8/ 10/ 12.5/ 16
システムクロック
(MHz)
8/ 10/ 12.5/ 16
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V (16MHz動作時)
3V (8MHz動作時)
命令セット x86-16
PC-98本体
での採用例
 PC-9801UF/UR
 PC-9801NL/NV
 FC-9801U
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
備考 省電力機能。
解説  V30HL (μPD70116H) は NECが開発した x86系 16ビット CPUである V30の動作クロックを引き上げると共に、省電力機能を追加した CPUでバッテリーで稼働するノートパソコン向けに登場した。V30HLは従来製品の約 1.6倍の高速化を実現し、その整数演算処理能力は Intel製 80286 12MHzに匹敵する (I-O DATAのベンチマークソフト INSPECTの結果より)。低クロック動作時に供給電圧を下げられる他に、クロックの供給を制御することで停止、再開が出来るといったノートパソコン向けの機能が充実している。従来の V30同様にコプロセッサは Intel 8087をサポートしている。
 ただし、あくまでも V30であるため 640KBを超えるメモリを使用するには EMS方式に限られ、80286以降で採用されたプロテクトモードのメモリは使用できない。ちなみに、EMSメモリは PC-9801-26/Kサウンドボード (26音源) と割り込みが重なるので同時に使用できない。EMSメモリを使用する場合は、サウンド BIOS ROMを切り離す必要がある。26音源を内蔵している初期のデスクトップモデルでは、切り離す事が出来ないものがあるので注意。サードパーティー製 26互換音源ボードではサウンド BIOS ROMを外部から切り離すスイッチや有線リモコンが付いている製品が発売されていた。

 PC-98では 1990年 11月発売のノートパソコン PC-9801NVで初めて採用され、32ビット CPUの i386SX登場以降でも B5サイズノートパソコンの PC-9801NLといった小型のバッテリーで高い省電力機能を要求するモデルで採用されている。また、ノートパソコンに限らずその設計を流用した A4サイズの省スペースデスクトップモデルでも採用された。
 デスクトップモデルではコプロセッサが増設可能で Intelの 8087が対応するが、動作クロックを 8MHzに切り替えないと使用できないので、これらの機種でのコプロセッサの増設はソフトウェアの互換性の維持以外にあまり意味を持たない。16MHz動作時はコプロセッサが自動で切り離されるので 8087のオーバークロック動作はできない設計になっている。

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名称 V50 (μPD70216) 製造メーカー NEC
NEC V50 発表年月日 1984
形状 80pin QFP, 68pin PLCC, 68pin PGA
バス幅 16ビット
トランジスタ数
製造技術
対応ソケット
動作クロック
(MHz)
8/ 10
システムクロック
(MHz)
8/ 10
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x86-16
PC-98本体
での採用例
 PC-98HA
 PC-98LT
PC-98オプション
での採用例
 PC-9864L-01 (B4670U 拡張ボード)
CPUアクセラレータ
での採用例

ESP企画

 TRN16V50 (PC/AT互換 CPUボード)
備考 CPU周辺チップの統合。
解説  V50 (μPD70216) は NECにより組み込み用途向けに設計された x86系 16ビット CPUで、同社製の V30コアに DMAコントローラ、割り込みコントローラ、プログラマブルウェイトコントローラ、D-RAMリフレッシュコントローラ、クロックジェネレータ、3ch.タイマ/ カウンタ、シリアル I/Fというような 8086互換の周辺チップをも一つのパッケージに内蔵し、消費電力の節減に加え部品点数の削減と製造コスト削減を実現している。Intel製品で言うところの 8086と 80186の関係と同じもので、部品点数の少なくて済む V50は 80186同様に LANボードの制御等、パソコン以外の機器でも利用されている。
 V30コア自体は変更がないので性能、機能は共に V30と変わらない。後に V30HLコアに変更した V50HL (μPD70216H) も登場したが、PC-9800シリーズでは採用されていない。その他に V50派生製品としては PC-88VAの CPUに採用された V50コアに Z80エミュレータを追加した μPD9002が有名。

 PC-98として V50を搭載したラップトップパソコン PC-98LTは、PC-9800シリーズ史上初のラップトップパソコンで、1985年 3月に海外向けに開発された NEC V20 (Z80互換) 搭載 8ビットラップトップパソコン PC-8401がベースとなっている。PC-8401の OSは CP/M 2.2。

 大型の反射型モノクロ液晶パネルを搭載し、本体と同色のコンパクトな熱転写プリンタとセットにしたモデルも用意された。MS-DOS 3.1を ROMで内蔵しているが、後の EPSON製 PC-98互換ラップトップ PCとは異なり「PC-9801」では無く「PC-98」の名が示す通り PC-9801系とソフトウェアの互換性が無く、V30で対応していた 8087コプロセッサによるアップグレードにも対応していなかった為に普及するには至らなかった。
 また、PC-98HAは「HANDY 98:ハンディ 98」という愛称を持つ電子手帳の先駆けともいえる小型のパソコンで、赤と黒の二色のモデルがあり FDDを搭載したドッキングステーションや、シリアルケーブルを介して PC-9800シリーズとデータのやり取りをする事が出来た。製品としての発想自体は良かったもののこちらもソフトウェアが PC-98LT互換であった為か売れ行きは良くなかった。両者とも実験的な要素が含まれていたと思われる。このように、ユーザに全く新しい使い方を提案する上から目線の NECに対し、ユーザの求める物を提供する EPSONとの戦略の違いは、後々 PC-98の売上に影響を与えるようになる。

 ちなみに、PC-98HAは成功したとは言えないが、この機種で採用された 14ピンセントロニクスハーフタイプのシリアルコネクタは、デスクトップの D-Sub 25ピンコネクタに代わってノートパソコン 98NOTE Lavieの最終モデル PC-9821Nr300まで長きに亘って採用された事もあり、シリアルケーブルの型番 (PC-98HA-15/16) として名前だけが生き残っている。

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名称 V33/ V33A (μPD70136/ A) 製造メーカー NEC
NEC V33A 発表年月日
形状 DIP, 68pin PLCC
バス幅 16ビット
トランジスタ数
製造技術
対応ソケット
動作クロック
(MHz)
8/ 16
システムクロック
(MHz)
8 /16
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x86-16
PC-98本体
での採用例
 PC-98DO+
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例

V33搭載

エム・エス・アイ

 MIG98 (10MHz: PC-9801E/F/M/U/VF/VM/CV/UV対応)

アイ・シー

 V33スーパーチャージャ 9833B (PC-9801E/F/M/VM/VF対応)

V33A搭載

エム・エス・アイ

 ハイスピード CPUボード M3 (10MHz: PC-9801E/F/M/U/VF/VM/CV/UV対応)
備考 接続可能なメモリの増加。
解説  V33 (μPD70136)は NECが開発した x86系 16ビット CPUの V30に 16MBまでのメモリを扱えるようにアドレッシング機能を拡張し、マイクロコードの著作権の問題を回避する為も有って内部の構造をマイクロコードの実行からハードワイヤード (ワイヤードロジックとも言い、物理的な結線で命令を実行する方式) 化した CPU。命令実行時のオーバーヘッドが減り V30に比べて約 2.3倍の高速化を実現させた。これは同クロックの Intel 80286の処理能力に匹敵する。8086との互換性を重視した設計で 8086用ソフトウェアを高速で動作させる事が出来る。従来の V30とはアドレス信号線が 24本に増加した事も有って、ピン互換では無いのでそのまま置き換える事はできない。

 その後に登場した V33A (μPD70136A)は Intelの第二世代 x86系 16ビット CPUの 80286との非互換部分を修正したバージョンで、PC-9800シリーズではこちらが PC-98DO+に採用された。ただし、V30コアであるため EMS (Expanded Memory Specification) 方式のメモリは使用できるが、80286以降の CPUが持つプロテクトモードのメモリは使用できない。PC-98において EMSメモリを使用する際には、サウンド BIOS ROMを切り離さないとサウンド機能が使えなくなるので注意。

 PC-9800シリーズ対応 CPUアクセラレータとしては、エム・エス・アイ (注:Micro-Star Internationalとは別)社が 8086、V30モデル向けに MIG98やハイスピード CPUボード M3といった V33A搭載の CPUボードを発売した。この頃の CPU処理能力を向上させる方式としては CPUを直接交換する方式は (8086を V30に置き換える製品も有ったが) あまり一般的では無く、CPUの乗ったボードを Cバス拡張スロットに搭載するボード形式が一般的で、これらのボードは Cバスから CPUを乗っ取る形で動作する。V33Aに限らず Intel DX2を搭載して演算処理能力の向上を図る物や、モトローラ社の MC68000シリーズ、ザイログ (Zilog)社の Z80といった専用ソフトウェアを動作させるソフトウェア開発目的など、多くの種類の CPU搭載ボードがサードパーティーから販売された。
 これらの CPUボードを CPUアクセラレータとして見ると、確かに高速化は期待できるものの 16ビットの Cバスを介してデータ処理をする為に本来の CPUの能力を活かしきることは出来ない。演算処理の高速化と言うよりは、個別の CPUの機能を使用できると言う使い方のほうが向いている。

 ちなみに、V33Aを搭載した PC-98DO+は PC-98でありながら 8ビット機の PC-8800シリーズ互換 (PC-8801MA2ベース) モードを持つ DOの後継機。PC-8800シリーズが終焉へと向かう中で既存の 88ユーザを PC-9800シリーズに導く役割を担い、アイデアとしては良かったが 98モードで使うには Cバス拡張スロットが一つしか無く、88モードで使うにはシリアル I/Fや 拡張ボードが使えない等、双方で何かと機能が制限されてしまった事も有って発売当時はそれ程に流行らなかったが、21世紀に入りオールド PCマニアの間では、86音源 (YM2608) を搭載し ADPCMを使える事から密かに注目を集めている。(^ ^;;

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名称 MC68000 製造メーカー モトローラ、日立、東芝、他
Motorola 68EC000 (組み込み用途モデル) 発表年月日 1979
形状 64pin DIP, PGA, CLCC, PLCC
バス幅 16ビット (内部 32ビット)
トランジスタ数 68,000
製造技術 4 micron HMOS process
3.5 micron HMOS process
対応ソケット
動作クロック
(MHz)
4/ 8/ 10/ 12/ 16/ 20
システムクロック
(MHz)
4/ 8/ 10/ 12/ 16/ 20
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット MC68000 (32bit)
PC-98本体
での採用例
PC-98オプション
での採用例
 PC-9801-16 (68000ボード)
CPUアクセラレータ
での採用例

カノープス電子

 AWS-68K (CPUボード)

ファーベル

 86094B (CPUボード)
備考 バス変換回路搭載
解説  MC68000は、モトローラ社初の 16ビット マイクロプロセッサ (MPU、CPUと同意) で通称 68000 (68K) と呼ばれている。内部レジスタが 32ビットながらアドレスバスは 24ビット、データバスは 16ビットという、後の i386SXのような先進的な構造になっている。この MPUには日立 HD68HC000等、Intelの 8086と同様に多くの企業でライセンス生産されている。
 MC68000は RISCプロセッサであり CISCプロセッサの 8086と単純比較はできないがライバルとして比較される事が多い。8086に比べて 16MBまでの大容量のメモリを使用でき、演算処理も高速、命令セットもソフトウェア開発の視点から設計されている事もあってかコンピュータ以外にも画像処理や音声処理、機器の制御などの分野で広く利用されている。
 また、8086同様 FPU (コプロセッサ) として MC68881をサポートしている。
 この MPUを搭載したパソコンとしては、シャープ製の 16ビットパソコン X68000 (X68K) シリーズが有名で、当時としては強力なグラフィク機能とサウンド機能を搭載していた事も有ってクリエイターを中心に人気があった。PC-9800シリーズとは異なり、シャープ側の好意で BIOSや開発環境 OS等が無償公開された事もあり 21世紀に入って以降もコアなファンが多く、独力で純正オプションに無い周辺機器を開発する等、8ビットパソコンの MSXシリーズ同様にユーザ自身の技術力も高い。

 1991年には組み込み機器用途に MC68000からプロセッサ部分を抜き出してコストを削減したMC68EC000が登場。アーケードゲーム基板、セガ・エンタープライゼス (現 セガ) のコンシューマゲーム機メガドライブシリーズ、関数電卓などでも使用されたほか、PC-98に関連するものとしては、クリエイティブメディアの MIDIシンセサイザー・ドーターボード Wave BLASTERの制御にも使用されている。

 PC-9800シリーズでは、8086搭載モデル向けの拡張ボードの一つとして NEC純正オプションの 68000ボードに搭載された。これは、一般の CPUアクセラレータとは異なり 8086のスタート命令により動作を開始しパソコン本体の CPUと同時に動作させることができる。これによって PC-98上で 68000専用のソフトウェアを実行する事が出来る。また、同ボードに 68000用増設RAMボード「PC-9801-17」上に「PC-9805」増設 RAM 16個増設することで 68000用にメモリを最大 128KB増設する事ができる。「PC-9801-17」を使用する際には 68000ボードと連続したスロットで、かつ 68000ボードよりも上のスロットに接続しなければならない。
 なお、この 68000ボードは、PC-9801VX0/2/4以降の機種では使用できない。この様な CPUボードとしては、純正品では Hyper 98専用の 860ボード (PC-H98-B06、Intel i860搭載)の他、PC-9800シリーズで UNIX系 OSの PC-UXを動作させる PC-UXボード (PC-9801-23) や PC-UX/V (Rel2.0) を動作させる V60ボード (NEC V60 (μPD70616) 搭載、OSとセットで販売) がある。

 サードパーティー各社からも同様な CPUボードが発売されていて、中でもカノープス電子 (Canopus:トムソン・カノープスを経て、現在はグラスバレー) 製 CPUボードには、ソフトウェア開発業務向けに 68000以外にも 16ビット CPU搭載の 68020、R800 (MSX turboRで採用)や 8ビット CPU搭載で CP/M開発環境を構築できる Z80 (PLUS-80システム)、HD64180 (PLUS-180システム。Z80バイナリ互換)等いろいろな種類の CPUボードを開発し販売していた。

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名称 μPD70008AC 製造メーカー NEC
NEC μPD70008AC 発表年月日
形状 40pin DIP
バス幅 8ビット
トランジスタ数
製造技術
対応ソケット
動作クロック
(MHz)
4/ 8
システムクロック
(MHz)
4/ 8
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット 8080、Z80独自命令
PC-98本体
での採用例
 PC-98DO
 PC-98DO+
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
 CPUボードとして存在
備考
解説  μPD70008AC (uPD70008AC)は NECが製造する米ザイログ (Zilog) 社の 8ビットCPUである Z80互換の CPUで、CMOS化され消費電力が低減されている。Z80自体は Intelを退社した 8ビット CPUの 8080開発スタッフが設計を行っている事も有り 8080上位互換となっている。8ビット故に通常接続できるメモリは 64KBまでという制限がある。
 当時 Z80は多くの企業からセカンドソース品が製造され流通していたが、NECは独自にこの CPUの基となるμPD780を製造、出荷したためザイログ社からチップの著作権で提訴され法廷で争うことになった。幸いなことに最終的に和解できたため製造中止は避けられた。
 この μPD780、μPD70008ACは NECの 8ビットパソコン PC-8800シリーズの CPUとして有名。PC-9800シリーズでは、PC-98DO、PC-98DO+の PC-8801互換部分 (88モード) で使用されている。

 この CPUの大元である Z80は、セカンドソース品に限らずμPD70008ACの様な上位互換品、果ては東西冷戦時にソ連などの共産圏でクローン品が作られるなど、パソコンの CPUだけでは無く機器の制御や組み込み機器用途と云った非常に広範囲に普及していて 21世紀になった現在でも現役で生産、利用され続けている。

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