第 2世代 CPU

世代の狭間で最も不遇な CPU。

名称 80286 製造メーカー Intel、AMD、シーメンス、富士通、Harris他
intel 80286 PLCCパッケージ版 発表年月日 1982/2/1
形状 68pin PLCC、68pin PGA、68pin LCC
バス幅 16ビット
トランジスタ数 134,000
製造技術 1.5 micron process
対応ソケット 68pin PLCCソケット、68pin PGAソケット、
68pin LCCソケット
動作クロック
(MHz)
6/ 8/ 10/ 12 /12.5
システムクロック
(MHz)
6/ 8/ 10/ 12 /12.5
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x86-16
PC-98本体
での採用例
 PC-9801DX/EX/RX/UX/VX
 PC-9801LX
 PC-98XA/XL
 FC-9801X
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例

キューブ

 286Driver ΣV (10MHz: PC-9801VF/VM/UV対応)
備考 プロテクトモード追加 (MMU)
解説  80286は Intelが 8086を大幅に改良し、約 4倍の高速化を実現した CPU。従来互換のリアルモードに加えて新たに高速なプロテクトモードが追加され、メモリアドレスも 24ビットに拡張 16MB (PC-9800シリーズでは 14.6MB) までのメモリを扱えるようになった。コプロセッサとしては 80287をサポートする。
 また将来を見据えて Microsoftの Windowsの様なマルチタスクオペレーティングシステムを想定した機能を拡張、仮想マシンサポート機能が追加されている。
 しかし、80286の処理能力では重すぎて不評を買いシングルタスクの MS-DOSでの運用が普及、当時の MS-DOSではメモリは 1MB (ユーザが使えるのは 640KB) までしか扱えず EMS (Expanded Memory Specification) という方式が考え出されたが、これも 80286では処理速度が落ち実用的ではなかった。
 なお、後に PC-98で MMX Pentiumや K6シリーズの CPUを動作させる際に問題となる A20ラインマスク機能 (魔法機能) の A20ラインとはこの CPUに因る。この A20ラインを制御することで 640KBとメモリ制限の厳しい DOSで HMA (High Memory Area) を使って通常はアクセスできない 1MB以上の領域にアクセスでき 64KBのメモリを使用できるようになる。
 本来は CPUの設計ミスで有ったのだが MS-DOS5.0ではこれを利用して DOSのシステムプログラムを HMA領域に移動させてソフトウェアを動作させるためのコンベンショナルメモリを確保していた。この機能は以降の x86系 CPUにも受け継がれていく。
 ちなみに、PC-98用 DOSゲームを動作させるためには、580KB以上空きメモリを確保しておくことが望ましい。(^ ^)b

 CPUの形状が 一つ前の 8086/ 80186 (80186はバグが有った為と NEC自身が V30を推進した事も有って PC-98では採用されなかった) からコンパクトな正方形に変わり、80286には PGA (Pin Grid Array: パッケージの裏にピンが出ているタイプ)、PLCC (Plastic Leaded Chip Carrier: パッケージの側面からピンが出ているタイプ)、LCC (Leadless Chip Carrier: パッケージの裏に端子が並ぶ板状タイプ)の 3種類のパッケージが存在した。このうち PC-98では PLCCと PGAタイプが採用され、EPSON製 98互換機では PLCCと LCCタイプが採用された。
 なお、LCCタイプの本体にはソケットの形状的に変換するアダプタが作れないので対応する CPUアクセラレータが無い。このため PLCCタイプもしくは PGAタイプへのソケットの改造が必要となる。以前は、福井電気産業が有償でこの改造を引き受けていた。

 この CPUは、8086の流れで爆発的にヒットし生産が追いつかなくなった為に、Intelだけではなく AMD、シーメンス、富士通、Harris、IBM等の半導体メーカーもセカンドソース品を生産しており、当時の PC-9800シリーズのカタログでは 80286相当品と記されていた物も有った。実際に PC-9801RX21/ RX51ではロットによっては AMD製の 80L286を搭載している。もちろん、製造メーカーが違ってもコアは同一なので一部の製品を除いて性能、機能共に差はない。

 さて、ここで登場する PC-98XA/ XLはハイレゾモードという高解像度の画面が使用できる機能を搭載した PC-98シリーズの最上位モデルで、1985年 5月に PC-98XAmodel1/2/3が初登場した。
 DOS (3.3まではハイレゾモード専用の DOSが必要) 上で 1120×750ドットの大きな画面や24×24ドットの明朝体フォントが使用できるという特徴を持つが、このモードではメモリマップが変わり PC-9801系統 (ノーマルモード) との互換性が無くなる。
 PC-98XAでは、初代、二代目ともハイレゾモード専用であったが、ユーザから「PC-98なのに従来のソフトが利用できない」などと不評を買ったため以降のモデルからは、従来互換のノーマルモードも搭載するようになった。これらの機種は、大画面を必要とする CAD等の分野で使用され、21世紀になった現在でも未だに需要がある。他にも横長の大きい筐体という特徴も持つ。

 ちなみに、筆者が初めて手にした PC-98はこの CPU (AMD製) を搭載したエントリーモデルの PC-9801RX21で、その後すぐに周りが i386に移行してしまったのでかなり悲しい思いをした。(T_T) まあ、予算の都合ってことで。(^ ^;;) この悲しい経験が後に CPUのアップグレードで頂上を目指すという方向へまい進するきっかけとなる。

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名称 80286 製造メーカー AMD
AMD 80L286 PLCCパッケージ版 発表年月日 1982/2
形状 68pin PLCC、68pin PGA、68pin LCC
バス幅 16ビット
トランジスタ数 134,000
製造技術 1.5 micron process
対応ソケット 68pin PLCCソケット、68pin PGAソケット、
68pin LCCソケット
動作クロック
(MHz)
6/ 8/ 10/ 12/ 16/ 20/ 25
システムクロック
(MHz)
6/ 8/ 10/ 12/ 16/ 20/ 25
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x86-16
PC-98本体
での採用例
 PC-9801DX/EX/RX/UX/VX
 PC-9801LX
 PC-98XA/XL
 FC-9801X
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例

キューブ

 286Driver ΣV (10MHz: PC-9801VF/VM/UV対応)
備考 プロテクトモード追加 (MMU)
解説  AMD 80286シリーズは 米 AMD (Advanced Micro Devices) が Intelより正式にライセンスを受けて生産した x86系 16ビット CPU 80286のセカンドソース品で他社が生産した 80286同様多くのバリエーションがある。 80C28680L286は、80286をベースに省電力化が図られた CPUで、他にも超低電圧版の80EL286や、Intel製品には無い 16MHz以上で動作する高クロック版もある。Intel製品とコアの基本設計は同じなので機能に違いはなく、同クロックであれば性能も変わらない。
 AMDは Intelよりライセンスを受けつつも他のセカンドソースのメーカーと違って独自に本家よりも省電力で有ったり高クロックで動作したりと云う 80286を出荷することで頭角を現すが、この事で Intelの逆鱗に触れてしまい i386互換 CPUを巡って法廷でバトルになって以降、独自のアイデアと技術で真っ向勝負を挑むようになる。
 PC-9800シリーズでは、製造ロットや機種によって AMD製の CPUを搭載している場合があり、カタログ上でも 80286相当品と記述されている事が多く、PC-9801RX21/ 51では AMD製の 80L286を搭載しているロットがある事を確認している。

 CMOS化して消費電力を下げた 80C286は、NEC製 (本家) の PC-98シリーズには採用されなかったが、EPSON製 PC-98互換機のラップトップ PCで採用された。また、同社の PC-286シリーズではIntel製品より高クロックの 16MHz版の 80286を搭載している。

 EPSON製 PC-98互換機は BIOSの著作権で NECとひともめ有ったが、1987年 4月に「PC国民機」というキャッチコピーで登場し、本家よりも低価格、高性能が売りで好評だった。特に動作中に CPU速度を切り替えられたり、別の本体を外付け FDDとして使用できたりする機能など、ユーザにとって痒いところに手が届く良いマシンだった。
 ただし、著作権を回避すべく EPSONが作った BIOSのため完全互換ではなく動作しないソフトウェアや拡張ボードも有った。
 また、MS-DOSの一部のバージョンやソフトウェアによっては、PC-98互換機では動作しないように、プロテクト (EPSONチェック) が掛けられているものもある。これを解除するためのパッチ (S.I.P) が本体に付属していた。

 余談ではあるが、この時に NECも IBMのように互換機に対してもっと柔軟に対応し、他社の参入を認めていたら、国産アーキテクチャとしてもう少し PC/AT互換機と張り合えたのに…と思わなくもない。今も昔も上から目線でユーザの求める製品を提供しない、マーケティングが下手というところが日本企業のダメなところですな。(^ ^;;

 ちなみに、EPSON製 PC-98互換機の機種名は、搭載している CPUを表し (例外として PC-586は Pentium搭載、PC-286でも一部では V30相当品を搭載している)、分かりやすくなっている。
 EPSON製 PC-98互換機のカタログは、どれも写真やイラストをふんだんに使いとても豪華だった。そこに当時の EPSONの本気が伝わってくる。一方、NECの当時のカタログは、活字と製品のイメージ写真のみというシンプルなものが多く、NECの余裕と強さを物語る。

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名称 80287 製造メーカー Intel, AMD
intel 80287
AMD 80C287 CMOSタイプ
発表年月日 1983
形状 40pin DIP, 44pin PLCC
バス幅 16ビット
トランジスタ数 45,000
製造技術 1.5 micron process
対応ソケット 40pin DIPタイプコプロソケット
動作クロック
(MHz)
6/ 8/ 10/ 12
システムクロック
(MHz)
6/ 8/ 10 /12
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x87-16
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 PC-9801-63 (10MHz)
 PC-9801-63U (10MHz)
 PC-98XA-03 (8MHz)
 PC-98XL-03 (10MHz)
CPUアクセラレータ
での採用例
備考
解説  80287は Intel純正の x86系 16ビット CPU 80286用のコプロセッサ。Intel製の 80287には放熱用の金のヒートスプレッダ (金属板) が付いているセラミックパッケージの C80287と付いていない茶褐色のセラミックパッケージの D80287がある。この頃は、Intelの他に AMD等の半導体メーカーもライセンス契約を結び、同一のものを生産していた。
 80287の浮動小数点演算処理能力は同クロックの 8087と比べてそれほど変わらない。
 この頃、x86系 CPUのコプロセッサを専門に扱う企業がいくつか現れた。Cyrixと IITである。Cyrixはファブレス半導体メーカーと云うチップの設計のみを行い製造は他のメーカーに外注するという自前の工場を持たない半導体メーカー。発展めまぐるしい半導体の世界では新しい製造技術が開発されると製造装置を入れ替える必要が有り工場への投資が大きな負担になることからこう言った自社で工場を持たないメーカーも多い。投資が少なくて済むため経営コストが低く抑えられる事が強みとなっていて価格競争でも優位に立てる。Cyrixでは Cx82S87、IITでは 2S87として販売されていた。
 当初は各社で同じコアを製造していたが、そのうちに各メーカーの独自色を出そうと改良して差別化を図るようになると Intelも対策を考えて知財権の保護強化、i386以降はライセンスを安易に許可しない方針を取るようになる。

 コプロセッサとは、数値データプロセッサともいい CPUと協調して動作し、関数演算等の浮動小数点演算の処理を専門に担当することで結果として演算処理が高速化される。第三世代までは外付けのオプションで有ったが、第四世代の i486DXや i486DX2以降の CPUでは、浮動小数点演算ユニット (FPU) として内蔵される事が一般化している。

 PC-9800シリーズでは、80287を搭載するときに機種によって 8087用ソケットと 80287用ソケットが並んでいる場合があり、方向だけでなく取りつけるソケットを間違えないよう注意を要する。
 また、一部機種では、「PC-98XA-03」かそれ以外かによって搭載後にマザーボード上のジャンパ設定を変更する必要があるのでマニュアルを参照のこと。「PC-98XA-03」に設定するとコプロセッサのクロックが 8MHz固定になる。正しく設定しないとオーバークロックでコプロセッサが壊れる可能性がある。
 
 ちなみに、取りつけた後で、メモリスイッチの設定 (MS-DOSでは「SWITCH.EXE」) 項目で、「数値データプロセッサ 2」というのがこのコプロセッサの設定で使うときは「有」に設定する。486DX等の FPU内蔵の CPUを搭載した機種では、初めから「有」に設定されている。
 「有」に設定されていると一部の旧作 DOSゲームソフトでフリーズしたり、サウンドが切り離されて鳴らなかったりと正常に起動しないものがあるので 486DX系搭載機とそれ以降の機種は要注意。(^ ^;;

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名称 i287XL 製造メーカー Intel
intel 287XL 発表年月日 1990
形状 40pin DIP, 44pin PLCC
バス幅 16ビット
トランジスタ数 40,000
製造技術 1 micron process
対応ソケット 40pin DIPタイプコプロソケット
動作クロック
(MHz)
12.5
システムクロック
(MHz)
12.5
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x87-16
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
備考
解説   i287XL (DIP版)/ i287XLT (PLCC版)は Intel純正の x86系 16ビット CPU 80286用のコプロセッサ。放熱用の金のヒートスプレッダ (金属板) が付いているセラミックパッケージに「i287XL」の文字が特徴。
 80287登場の当初、Intelの他に AMD等の半導体メーカーもライセンス契約を結び、同一のものを生産していたが、時間の経過と主に各メーカーが横並びからの抜け駆けを始め勝手に改良して Intelの製品よりも高性能なものを作るようになってきた。
 Intelとセカンドソース品の AMD以外のもので注目すべき製品は、後に CPUアクセラレータブームを巻き起こす米 Cyrixの CX82S87 (FasMath)や IIT (Integrated Information Technology) の 2C87が挙げられる。これらの製品は内部で各社独自の高速化が行われていて、本家の 80287よりも数段演算処理能力が高い製品で且つ動作クロックも最高 20MHzの高クロックで動作する製品があった。
 そのような事情から Intelは i387SXベースで演算処理能力を大幅に向上した改良版のi287XLを開発、販売する事となった。これらは従来製品に比べて演算処理速度が 66%向上しているという。実際に PC-9801UX21 (80286 10MHz) に本コプロセッサ (注: 8MHz動作) を搭載してノーマルの 80287と比較すると I-O DATAのベンチマークソフト「CPUCHK Ver1.24」では PC-9801VX 10MHzの 80287を 1とした数値と比較して、80287では 0.82倍であったのに対し i287XLでは 1.13倍となり 37%程度の向上となった。

 コプロセッサとは、数値データプロセッサともいい CPUと協調して動作し、関数演算等の浮動小数点演算の処理を専門に担当することで結果として演算処理が高速化される。第三世代までは外付けのオプションで有ったが、第四世代の i486DXや i486DX2以降の CPUでは、浮動小数点演算ユニット (FPU) として内蔵される事が一般化している。

 登場が比較的遅かったため (V30を巡って Intelと険悪になっていた時期でも有ってか)、PC-9800シリーズの NEC純正オプションとして採用されなかったが、Intelのリテール品「JBOX287XL」は正式に PC-9800シリーズに対応している。
 PC-9800シリーズでは、80287を搭載するときに機種によって 8087用ソケットと 80287用ソケットが並んでいる場合があり、方向だけでなく取りつけるソケットを間違えないよう注意を要する。
 また、一部機種で搭載後にマザーボード上のジャンパ設定を変更する必要があるのでマニュアルを参照のこと。
 
 PC-9801RXでは標準で 80286は 12MHz、80287は 10MHz固定で動作するが、ジャンパ設定を弄ると 80287を 6MHz/ 8MHz/ 10MHz/ 12MHzの各クロックで動作するよう設定できる。12MHz動作時は 80287ではオーバークロックになってしまうが、i287XLは 12.5MHz動作なので問題無く動作できる。ただし、マニュアルに載っていない改造行為なので自己責任でどうぞ。詳細は当サイトの PC-981RX21ネタを参考にどうぞ。
 
 ちなみに、取りつけた後で、メモリスイッチの設定 (MS-DOSでは「SWITCH.EXE」) 項目で、「数値データプロセッサ 2」というのがこのコプロセッサの設定で使うときは「有」に設定する。486DX等の FPU内蔵の CPUを搭載した機種では、初めから「有」に設定されている。
 「有」に設定されていると一部の旧作 DOSゲームソフトでフリーズしたり、サウンドが切り離されて鳴らなかったりと正常に起動しないものがあるので要注意。(^ ^;;

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名称 CX82S87/ 287XL+ 製造メーカー Cyrix
Cyrix 287XL+ 発表年月日 1991
形状 40pin DIP
バス幅 16ビット
トランジスタ数
製造技術
対応ソケット 40pin DIPタイプコプロソケット
動作クロック
(MHz)
6/ 8/ 10/ 12/ 20
システムクロック
(MHz)
6/ 8/ 10/ 12/ 20
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x87-16
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
備考
解説  CX82S87は米 Cyrixの x86系 16ビット CPU 80286用のコプロセッサで Intel製の 80287の互換品。コア部分が高くなったセラミックパッケージが特徴。この頃は、Intelの他に AMD等の半導体メーカーもライセンス契約を結び、同一のものを生産していた。
 80287登場の当初、Intelの他に AMD等の半導体メーカーもライセンス契約を結び同一のものを生産していたが、時間の経過と共に各メーカーが横並びからの抜け駆けを始め勝手に改良して、Intelの製品よりも高性能なクローン製品を作るような動きを見せるようになってきた。
 最たる製品が後に国内で CPUアクセラレータブームを巻き起こす米 Cyrixの CX82S87や、IIT (Integrated Information Technology) の 2C87が挙げられる。これらの製品は内部で各社独自の高速化が行われていて本家の 80287よりも数段演算処理能力が高い製品で且つ低省電力で発熱が少ない事も有って、動作クロックも Intelのラインナップに無い 20MHzの高クロックで動作する製品があった。
 それ故に Cyrixでは「FasMath」という愛称を付けて販売した。287XL+はヨーロッパ向け製品の名称でコアは同一。

 実際に PC-9801UX21 (80286 10MHz) に本コプロセッサ (注: 8MHz動作) を搭載して I-O DATAのベンチマークソフト「CPUCHK Ver1.24」でテストすると PC-9801VX 10MHzの 80287を 1とした数値と比較して、Intel 80287では 0.82倍であったのに対し Cyrix 287XL+では 3.63倍となった。この数値は PC-9801DA 20MHzの 80387に匹敵する高い数値である。一ベンチマークの結果なので結果をそのまま鵜呑みにできないとしても Intel製品に比べて大きなアドバンテージを持つのは間違いない。

 コプロセッサとは、数値データプロセッサともいい CPUと協調して動作し、関数演算等の浮動小数点演算の処理を専門に担当することで結果として演算処理が高速化される。第三世代までは外付けのオプションで有ったが、第四世代の i486DXや i486DX2以降の CPUでは、浮動小数点演算ユニット (FPU) として内蔵される事が一般化している。

 80286用コプロセッサとしてはかなりの性能を秘めているが当時は日本国内での販売は無かったため入手する事は非常に難しい。

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名称 2C87 製造メーカー IIT
IIT 2C87 発表年月日 1989
形状 40pin DIP
バス幅 16ビット
トランジスタ数
製造技術
対応ソケット 40pin DIPタイプコプロソケット
動作クロック
(MHz)
6/ 8/ 10/ 12/ 20/ 25
システムクロック
(MHz)
6/ 8/ 10/ 12/ 20/ 25
一次キャッシュメモリ なし
二次キャッシュメモリ なし
動作電圧 5V
命令セット x87-16
PC-98本体
での採用例
 なし
PC-98オプション
での採用例
 なし
CPUアクセラレータ
での採用例
備考
解説  2C87は米 IIT (Integrated Information Technology) の x86系 16ビット CPU 80286用のコプロセッサで Intel製の 80287の互換品。中央の金色のヒートシンクが特徴で、完全な 387命令に対応している点が Intel製品と異なる。
 80287登場の当初、Intelの他に AMD等の半導体メーカーもライセンス契約を結び同一コアのものを生産していたが、IITは早い時期に Intel製品よりも高性能かつ価格の安いクローン製品を設計し販売を始めた。その流れに後に国内で CPUアクセラレータブームを巻き起こす米 Cyrixが続く。
 これらの製品は内部で独自の高速化が行われていて本家の 80287よりも数段演算処理能力が高い製品で、2C87の処理能力は Intelが後にクローン製品に対抗すべく 80287を改良して設計した i287XLに匹敵する。また、低省電力で発熱が少ない事も有って動作クロックも Intelのラインナップに無い 25MHzの高クロックで動作する製品が存在した。

 実際に PC-9801UX21 (80286 10MHz) に本コプロセッサ (注: 8MHz動作) を搭載して I-O DATAのベンチマークソフト「CPUCHK Ver1.24」でテストすると PC-9801VX 10MHzの 80287を 1とした数値と比較して、Intel 80287では 0.82倍であったのに対し IIT 2C87では 2.91倍となった。この数値は PC-9801DA 20MHzの 80387に迫る高い数値である。Cyrix製品同様に一ベンチマークの結果なので結果をそのまま鵜呑みにできないとしても Intel製品に比べて大きなアドバンテージを持つのは間違いない。

 コプロセッサとは、数値データプロセッサともいい CPUと協調して動作し、関数演算等の浮動小数点演算の処理を専門に担当することで結果として演算処理が高速化される。第三世代までは外付けのオプションで有ったが、第四世代の i486DXや i486DX2以降の CPUでは、浮動小数点演算ユニット (FPU) として内蔵される事が一般化している。

 80286用コプロセッサとしては Cyrix製品同様にかなりの性能を秘めているが当時は日本国内での販売は無かったため入手する事は非常に難しい。

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PC-98, PC-9801, PC-9821, PC-H98, PC-9800, FC-9801, FC-9821, FC-9800, SV-98, 98SERVER, VALUESTAR, CanBe, 98NOTE等は、NEC社の商標または登録商標です。

i486, Pentium/Pro/II/III, MMX, ODP, Celeronは、intel社の商標または登録商標です。

Windows, MS-DOSは Microsoft社の商標または登録商標です。

この他、製品名、型番等は、一般に各メーカーの商標または登録商標です。