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98MATE Rとは

NEC 98MATE Rミニタワーモデル PC-9821Rv20/N20

 ここでは、98MATE Rシリーズの中でも初期に登場した Pentium Proを採用したモデルについて述べます。

 98MATE Rシリーズは 1996年 5月に登場した PC-9821Ra12/N12から始まりました。従来の 98MATE Xシリーズの最上位シリーズに当たり Pentium Pro、PentiumII、Celeron等の Intel P6アーキテクチャを搭載した PC-9821シリーズです。ネットワーク化を進める企業での一括大量導入を睨み当時、オプションで搭載することが一般的だった 100BASE-TX仕様の LAN I/Fをいち早く標準装備した事が特徴です。PCIバス接続の LAN I/Fは当時としては高価な装備でしたが、98MATE Xと筺体や設計を共用することでコストダウンが図られ普及価格に抑えることに成功しました。また、98MATE Rシリーズでは新たにセキュリティ機能として、FDDやシリアル I/F等からのデータ流出を防ぐ I/Oロック機能や、セットアップパスワード機能等が追加されました。販売開始から 5年後の 2001年代初頭ではリース切れの本体が 1万円以下で多く出回っていたので、実際に企業や官公庁に良く売れたのではないかと思います。ネットワーク対応を活かし 98MATE Xシリーズの PC-9821Xa200と共にパチンコ店の出玉管理システムとして採用されたこともありました。

 筺体も 98MATE Rシリーズの PC-9821Ra20/N12で一新し、デスクトップモデルではネジ一本でルーフカバーが外せるタイプに、タワーモデルも PC-9821RvII26で側面のネジが廃止されメンテナンスがし易くなりました。一方で、筺体内に簡単にアクセスできないようデスクトップモデルではケンジントンロックに対応、本体や内部の部品の盗難を防止できる様になっています。

 シリーズ登場当時こそ最上位と言う位置づけでしたが、1997年10月に PC98-NXシリーズを発表。NECも PC/AT互換機のアーキテクチャへ移行し、98MATE Rシリーズは過去の PC-9800シリーズの資産を運用するためのモデルとしてトーンダウン。当時の上位の CPUを搭載するデスクトップ、タワーモデルのパソコンは全て PC98-NXの Mate NXシリーズとなり、98MATE Rシリーズで採用される事は無くなりました。

 ちなみに、PC-98アーキテクチャで初めて Pentium Proを搭載したモデルは、1996年 1月に登場した 98Proシリーズの PC-9821St15/L16です。Pentium Pro 150MHz、チップセットにハイエンド向けチップセット Intel 450KXを搭載、付属の OSは WindowsNT Workstation3.51です。筺体は PC-9821Xtの様に 5インチベイが一つのミニタワー筺体で、PCIバススロットが 3スロット (うち 1スロットが VRAM 4MBの Milleniumで占有済み)、Cバススロットが 5スロット、オンボードで SCSI I/Fを搭載する等、当時としては非常に強力なマシンでした。同年 3月には 200MHzの PC-9821St20/L16も登場しました。

 次の表はラインナップです。表の標準価格は 発表当時の価格です。

商品名 形状 CPU メモリ HDD CD-ROM 標準価格 (税別)
PC-9821Rv20/N20 ミニタワー Pentium Pro 200MHz 16MB 1.6GB ATAPI 6倍速 298,000円
PC-9821Ra20/N12 デスクトップ Pentium Pro 200MHz 16MB 1.2GB ATAPI 6倍速 368,000円
PC-9821Ra18/N20 デスクトップ Pentium Pro 180MHz 16MB 1.6GB ATAPI 6倍速 368,000円
PC-9821Ra20/N30 デスクトップ Pentium Pro 200MHz 16MB 1.6GB ATAPI 6倍速 368,000円

 OSは、初代の PC-9821Ra12/N12のみ WindowsNT 3.51 Workstation、それ以降のモデルは WindowsNT 4.0 Workstation が付属します。標準添付の再セットアップ CD-ROM類も WindowsNT 4.0 Workstationです。Windows95、Windows3.1 + MS-DOS 6.2にも対応しますが別売りです。
 98MATE VALUESTAR登場以降、PC-98では、一般の PCユーザには 98MATE VALUESTAR、ビジネスユーザには 98MATEと明確に分かれるようになりました。それ故に 98MATEシリーズのデスクトップモデルでは Windowsモデル以外にもオフィスコンピュータ N5200シリーズの後継として PC-PTOSインストールモデルも用意されています。

 PC-9821Ra20/N3Pは PTOSモデルで唯一の Pentium Pro搭載モデルで、Windows NT 4.0 Workstation とデュアルブートと言うこれまた珍しいモデルでもあります。

マザーボード

● チップセットと VRM

 98MATE Rシリーズ前期モデルのPC-9821Ra18、PC-9821Ra20、PC-9821Rv20が搭載しているマザーボードのチップセットは「Intel 440FX (Natoma) 」です。i440FXは Pentium Proの P6アーキテクチャ用チップセットとしては二代目にあたり、主にクライアントや小規模なサーバに使われています。ノースブリッジに「i82442FX」、サウスブリッジに NEC製「STAR ALPHA 2」を搭載しています。この「STAR ALPHA 2」のために内蔵の標準 IDE I/Fや Cバスのデータ転送速度が 486機など旧機種に比べて遅くなっています。システムクロックは 66MHzでジャンパによって 66/ 60MHzに切り替えが可能です。ジャンパの場所は Cバススロットの下にあります。

 CPUソケットは大型の Socket 8で電圧を制御する VRMソケット付きです。VRMソケットには CPUのコア部への電圧を調整する VRMユニットが実装されています。98MATE Xシリーズのように外しての運用はできません。

 なお、PC-9821RaII23以降のPentiumIIモデル以降とは、CPU種類やハードディスクの容量が違うだけでマザーボードの基本設計は共通です。

● CPU

PPGAと SPGAパッケージの違い

 CPUはセラミックパッケージ (SPGA) の Intel Pentium Proです。一次キャッシュメモリ 32KB搭載しコプロセッサ (浮動小数点演算ユニット) も内蔵 (今時当たり前ですが) されています。

 Pentium Proには 16ビット動作時に処理能力が低下するバグが有ります。これは、PentiumIIの頃までそのままになっていました。ですので、MS-DOS動作時に同クロックの Pentiumと比べると若干処理能力が劣ります。

 CPUソケットは Socket 8という大型の物です。Intel PentiumII ODP (国内未発売。PC-98では動作保証外) 以外にアップグレードの手段がありませんでしたが、Power Leap社が発売した PL-ProIIという Socket370変換下駄のおかげで、celeron等へのアップグレードが可能となりました。

● セカンドキャッシュメモリ

 セカンドキャッシュは 256KBですが、従来とは違い CPUのコアに統合されていますので、CPUコア速度と同じ非常に速い速度で動作します。

 ちなみに、Pentium Proには、キャッシュ容量が 512KB、1MBの物が有りますが、消費電流が大きいのでそのままでは載せ換えできません。マザーボードや VRMユニットが焼損する恐れが有りますのでご注意ください。

● メモリ

 メモリは98MATE RシリーズデスクトップモデルのPC-9821Ra20/N12では 16MB、PC-9821Ra18、PC-9821Ra20/N30では 32MBを実装しています。ECC (Error Correcting Code) に対応し、4本の SIMMスロットに 72pinの ECC対応 EDO SIMM、または、72pinの パリ付 FP SIMMを増設または交換することにより最大 256MB (非公式には 512MB) まで増設できます。

 PC-9821Ra20/N12では最大 128MB (32MB × 4) となっていますが 512MB (128MB × 4) まで搭載可能です。

 一方、ミニタワーモデルPC-9821Rv20では、容量は 32MB、ECC対応は変わりませんが、72pin SIMMスロットは 8スロットあり、最大 512MB (非公式には 1GB) まで増設できます。

 ちなみに、ECCとは、データの読み出しや書き込みにチェックの為のデータを追加してエラーを検出するものです。通常めったに有りませんが、パリティー付きメモリはエラーを検出するとデータを破壊する前にシステムを停止させますが、ECCではエラーを修復してシステムを停止しないようにします。

 メモリの増設については後述します。

補助記憶装置

● フロッピーディスクドライブ (FDD)

 FDDは、98MATE Rシリーズ全モデル共通で PC/AT互換機で一般的な 1.44MBフォーマットに対応した 1MBと 640KB両対応の 3.5インチ 3モード対応の 2HDタイプが 1台です。デスクトップモデルでは向かって左の増設 FDDベイに「PC-9821RA-FD1」を増設、ミニタワーモデルでは、5インチファイルベイに「PC-FD321DH」を増設することにより 2台に増設可能です。なお、外付けの 1MB FDD I/Fはオプションです。

 98MATEでは VFO (簡単に言えばヘッドの微妙なずれからデータの読み書きを安定させる回路) 回路が本体側に搭載されているので FDDに VFO回路は有りません。

 ドライブの型番はロットによって異なり、NEC FD1231T、SONY MPF520-F、CITIZEN OSDのいずれかです。3つのドライブで仕様は変わらないので相互に交換可能です。いずれも従来の FD1148T等に比べると若干作動音が大きめに感じます。特に FD1231Tはモーターの固定の仕方があまり良くなく振動などでずれ易いので読み込み不良が起きやすい印象です。

 FDの磁気フィルムの最大の敵はカビで一度カビが生えてしまうとデータの読み出しは不可能でメディアは使用不能になります。仮に拭き取っても読み込む事は出来ません。この様なメディアからデータを救おうと FDDに読み込ませると磁気ヘッドにカビの胞子が付き、他の正常なメディアにカビの胞子を塗りつけ汚染を広げるので危険です。プラスチックのケースに入れておくとカビが生え易くなるので注意が必要です。

 5インチ FDD等を利用する際には、以下の方法があります。

メーカー 型番 種類 対応機種 備考
ファイルベイ内蔵用
NEC PC-FD511D 5" 2モード FDD 98MATE X,
98MATE R、
Ap3,As3等
3.5' FDDモデルで5' FDDを使いたい場合に使用。
ただし、専用ケーブル「PC-9821-K08」が必要。
NEC PC-FD321DH 3.5" 3モード FDD 98MATE X,
98MATE R
3.5' FDDを増設したい場合に使用。
外付け用
NEC PC-9801-87 1MB FDD I/Fボード 98MATE X,
98MATE R等
8"、5"、3.5"の外付け用 FDDユニットを使いたい場合に使用。
ボードとケーブルのセット。
ただし、専用ケーブル「PC-9821-K10」が必要。

 98MATE Rでは、FDDにケーブルを接続する際に FDD側のコネクタは必ず突起が上になります。ドライブによっては上下逆に接続できてしまう物がります。特に SONY製ドライブは一度でも逆に接続して通電してしまうと故障しますのでご注意ください。

 ちなみに、98MATE SERVER (PC-9821Rs20) では、8ピンの FDD補助信号コネクタがマザーボード上に無いので PC-9801-87は使用できません。ご注意ください。

● PC-9821RA-FD1と PC-9801-87の併用時の注意

 98MATE Rで PC-9821RA-FD1 増設 FDDと PC-9801-87 外付け 1MB FDD インタフェースボードを併用する場合、FDD信号ケーブルの接続を誤ると PC-9821RA-FD1側 (第二ドライブ) の FDDが正常動作しません。マニュアルには併用時の接続方法の記載が無いのでここで補足しておきます。接続順は次の通りになります。

  1. パソコン本体付属の FDD信号ケーブルを標準で内蔵されている FDD第一ドライブから外す
  2. FDD第一ドライブから外した FDD信号ケーブルを PC-9821RA-FD1付属二股ケーブルのオスコネクタに繋ぐ
  3. PC-9821RA-FD1付属二股ケーブルの「1」と表示のあるコネクタを FDD第一ドライブに繋ぐ
  4. PC-9821RA-FD1付属二股ケーブルの「2」と表示のあるコネクタを PC-9821-K10ケーブルのオスコネクタに繋ぐ
  5. PC-9821-K10ケーブルの「短い側」のメスコネクタを PC-9821RA-FD1の FDD (第二ドライブ) に繋ぐ
  6. PC-9821-K10ケーブルの「長い側」のメスコネクタを PC-9801-87の 34ピン FDDオスコネクタに繋ぐ

 ポイントとしては FDD信号ケーブル内で長い分岐が無いようにすることです。98MATE Rでは 旧来の PC-9821Xsのような長い二股のケーブルだとフォーマットや書き込み時に不具合が出ることがあります。特にケーブルを自作される方はご注意ください。

● ハードディスクドライブ (HDD)

 HDDは98MATE Rシリーズデスクトップモデルでは、PC-9821Ra20/N12では 1.2GB、PC-9821Ra18/N20では 2GB、PC-9821Ra20/N30では 3GBのドライブを内蔵しhています。いずれも Enhanced IDEタイプ、専用固定ディスクインターフェースに接続されています。ドライブは、IBM製、Seagate製、Maxtor製等が多いです。一台の最大容量 4.56GBまでのドライブが接続可能です。本機では、Master、Slaveの設定が必要です。未設定、Cable Selectでは正常動作しません。

 デスクトップモデルでは、オプションのドライブベイ用金具 Logitec「LHA-XAKT2」等を用意することで 2台まで増設できますが、CPUとのスペースが非常に狭いのでご注意ください。CPUソケット変換下駄を使って改造していると実装出来無い場合が有ります。

 98MATE RシリーズミニタワーモデルのPC-9821Rv20では、Ultra SCSI仕様の IBM製 2.1GBのドライブをフロントマスク側シャドウベイに搭載しています。

 何れのモデルも出荷時に WindowsNT 4.0 Workstationがプリインストールされています。

● 光学ドライブ

 98MATE RシリーズデスクトップモデルのPC-9821Ra18、PC-9821Ra20では、光学ドライブとして ATAPI仕様の CD-ROMドライブを唯一のファイルベイに搭載しています。ロットによって違いが有りますが、SONY、NEC、松下寿、日立の何れかです。

 一方、98MATE RシリーズミニタワーモデルのPC-9821Rv20では、SCSI仕様で 4倍速の PDドライブ NEC製 ODX652を最上段のファイルベイに搭載しています。650MBの PDメディアに読み書きが可能です。ただし、MOドライブとは違い起動はできません。

グラフィック、サウンド機能

● グラフィック機能

 98MATE Rシリーズ全デスクトップモデルのグラフィック機能は、標準で従来の 640 x 400ドット (4,096色中 16色: Enhanced Graphic Charger) に加え、ウインドウアクセラレータ機能をサブボード形式の PCIバス接続で内蔵しています。なお、DOS画面のモニター出力を 24kHzと 31kHzから選択できます。選択の方法は、「GRAPH」キーと「1」(24kHz) または「2」(31kHz、デフォルト) を押ながら電源投入します。数字キーはフルキー側のみ有効です。

 グラフィックチップは、Trident製 TGUI9682XGiでDirectDraw、ビデオアクセラレーション機能に対応しています。また、VRAMは 2MB搭載しています。

 画面表示は、Windows上では、最大 1280 x 1024ドットで 1677万色中 256色、DOS上では、最大 640 x 480ドットで 1,677万色中 256色の表示が可能です。

グラフィックサブボード

 ちなみに、このボードは、PCIバススロットに似たスロット上に載っていますが、本体の RGB出力も一緒になっているので PCIボードではなくマザーボードの一部です。これは、絶対に外したり交換できませんのでご注意ください。これを外したり交換すると本体が起動しない他、最悪本体を壊してしまいます。これを「ぬいちゃ駄目ボード」ともいいます。(^ ^;;

 一方、98MATE Rシリーズ全タワーモデルでは、OEM版の Matrox Millenium搭載の PCIバス対応グラフィックアクセラレーションカードを PCIスロットに実装しています。VRAM は 4MBで増設はできません。Windows上では、最大 1,600 x 1,200ドット 1677万色中 256色、DOS上では、最大 640 x 480ドットで 1,677万色中 256色の表示が可能です。

 タワーモデルでは、オンボードで PC-98の標準グラフィック機能を搭載しているので、Milleniumが実装されているスロットは普通の PCIバススロットです。

● サウンド機能

 98MATE Rシリーズ全モデルのサウンド機能は、MATE-X PCM と呼ばれる PCM録音再生機能を標準で搭載しています。これは、 WSS (Windows Sound System) 対応の PCM音源チップ CS4231を搭載したもので86音源の PCMと違い Windows 9xでも再生時に CPUに負荷が掛からず、音飛びしにくくなっています。また、CD-ROMドライブの音声も本体スピーカから出力できます。

 このボードは、スロットが PCIバスっぽいですが、れっきとした Cバスです。MATE-X PCM以外の他のボードと交換できません。マザーボードの一部です。

 残念ながら PC-9801-86相当の FM音源機能 (86音源: FM 6音、リズム 6音、SSG 3音) は省かれていますので FM音源を使った DOSゲームでは音楽が演奏できません。この場合、別に「PC-9801-86」や「PC-9801-118」、「WaveStar」等を増設する必要があります。サウンドボードを増設する場合は、あらかじめセットアップメニューで内蔵サウンド機能を切り離しておいたほうが無難です。一応、フリーウェアのドライバを使えば共存もできるようです。

 ちなみに、98MATE Rシリーズと「PC-9801-118」の組み合わせではボード上のヘッドフォン出力にノイズが載りやすいという特徴が有ります。HDDアクセス時に特に酷いです。恐らく、12V系電源ラインのノイズの影響と思われます。未検証ですが 118ボードに ACアダプタ「PC-9801-73-AC」を接続して電源を供給してやると改善するかもしれません。

インターフェースと拡張スロット

● 本体のコネクタ

位置 種類 形状
本体前部 ヘッドフォン出力 ステレオミニジャック
本体後部 キーボード ミニ Din 8pin
バスマウス ミニ Din 9pin
アナログディスプレイ出力と入力 ミニ D-Sub 15pin、基本的には 24kHzと 31kHz対応で切り替え可。
LINE出力と入力 ステレオミニジャック
マイク ステレオミニジャック
RS-232Cシリアル I/F 2チャンネル D-Sub 25pinと赤外線通信対応の D-Sub 9pinで両方とも最高115,200bpsまで対応。
プリンタ用双方向パラレルインターフェース アンフェノールハーフ 36pin
100BASE-TX/10BASE-T 8芯モジュラージャック
Ultra SCSIインターフェース アンフェノールハーフ 50pin (※ 98MATE Rタワーモデルのみ)

 この中で特に、PC-9801型番等の旧機種とは、プリンタのコネクタ、アナログディスプレイのコネクタの形状が違うので注意が必要です。

● 拡張スロット

 拡張スロットは、PnP (プラグアンドプレイ) に対応しています。Cバススロット (汎用拡張スロット) はデスクトップモデルでは 3スロット、タワーモデルでは 4スロットです。
 PCIバスは、デスクトップモデルでは 2スロット、タワーモデルでは 3スロット (うち 1スロットは GAカードで占有済み) です。なお、98MATE Rシリーズでは、デフォルトでは IRQ (INT) が殆ど空いていないのでボードの増設の際には注意が必要です。調整には添付の PCIセットアップディスクが必要になります。同種のフリーソフトは存在しないのでご注意ください。

 98MATE Rシリーズでは、Cバススロットの仕様が若干変更になっており、Cバスリフレッシュ信号のサポートが無くなりました。この機能に関係するボードはデータの転送に DMA転送、バスマスタ転送する Cバスボード (ICM製 IF-2769等) です。これらのボードでは、データ化け等で正常に動作しないのでこれにも注意が必要です。

 PCIバススロットについては、リビジョンが 2.1に上がり、PCIバスブリッジを実装した複合 IFボード (玄人志向 CHANPON3-PCI等)や、PCIバススロット拡張ユニットでも IRQ割り当ての問題は有りますが、まりもさんの「PCISET」を使用することでほぼ問題なく使用できます。

 Windows2000上であれば、保証外ですが PC/AT互換機用の PCIバスカードも動作してしまうケースが多いです。ただし、 BIOS ROMを搭載している物 (特に GeForce系グラフィックアクセラレータカード、SCSI I/Fカード、SATA I/Fカード等)、DOS環境用のドライバがインストールされてしまう物 (SoundBLASTERシリーズのサウンドカード等) については注意が必要です。
 前者については、カード上のBIOS ROMを起動させない工夫 (BIOS ROMを書き換える、ROMを物理的に外す) が必要で、後者の場合はインストール直後に DOS環境用ドライバを削除する事で回避できます。

 PCI接続のグラフィックカードに付いては、SV-98model2ですが当サイトのGeForce2 MX/MX400を SV-98/2で使うを参考にしてください。また、玄人志向の CHANPON2'TURBO-PCIや ATA133RAID-PCI等の Ultra-ATA I/F、SATAEI-LPPCI等の SATA I/Fを PC-98で使うには、大熊猫のぺぇじを参考にどうぞ。

● ファイルベイ

 98MATE Rシリーズ全デスクトップモデルでは、一般的な 5インチファイルベイを 1スロット搭載しています。標準では CD-ROMドライブが搭載されています。

 98MATE Rシリーズ全ミニタワーモデルでは、3スロット搭載しています。標準では最上段のスロットに PDドライブが搭載されています。

本体ディップスイッチの設定

 98MATE Rシリーズ全モデルで、ハードウェアディップスイッチは無く、内蔵 HDDの切り離し等の設定は、セットアップメニューで設定します。呼び出し方は、リセットボタンが無いので「HELP」キーを押ながら電源投入します。また、シリアル通信速度などは従来モデル同様にメモリスイッチで設定します。MS-DOSの「SWITCH」コマンド、Windowsの「98環境」で設定します。詳しくは以下のページをご参照ください。

 第一電算機研究室 付録 NEC PC-98シリーズ メモリスイッチ設定一覧表

その他の特徴

● 新しい機能

 98MATE Rシリーズの特徴は、オフィスへの一括導入を狙ったキャッチコピーが示すように、オンボード PCI接続の LAN機能 (100BASE-TX/ 10BASE-T対応、PC-9821X-B06相当) を搭載しているため、100BASE-TXコネクタが付いています。これにより、100Mbpsの高速なネットワークが構築できます。

 また、メンテナンスを容易にするため、ネジ 1本でルーフカバーが外せます。しかし、中は狭くメモリやハードディスクの増設や交換はちょっと面倒です。このため、一度ルーフカバーを開けて作業をするとしばしば FDDがコネクタの接触不良で認識されなくなります。(T_T) 

 さらに、筐体に盗難防止ケーブルを接続することによりルーフカバーをロックして開けられないようにできたり、パワー ONパスワード機能やデータ流出を防ぐ I/Oロック機能等、セキュリティ機能が強化されています。でもパスワードを忘れると大変なことになるのでむやみに設定しないほうがいいでしょう。(^ ^;;

 なお、このセキュリティー機能の I/Oロック機能を利用すると FDD I/Fや シリアル I/F、プリンタ I/Fの割り込み (IRQ) を開放できます。

 他に、ATX電源なのでタイマー等による自動電源 ON機能も搭載しています。ちなみに、電源容量は最大 200Wなので消費電力の大きい HDDを 2ドライブ搭載し、CPUを高クロックのものに換装すると電力が足らなくなる可能性があります。(T_T)

● 削除された機能

 98MATE Rシリーズでは、従来の PC-9800シリーズで搭載されていた幾つかの機能が削除されています。代表的なものとしては次の通りです。

  • リセットスイッチ
  • ROM BASIC インタプリタ
  • テキスト 40桁モード
  • モノクログラフィックモード
  • セットアップメニューの固定ディスクセクタ長の設定 (512バイト固定)
  • セットアップメニューの CPU動作速度の変更 (内蔵キャッシュの ON/OFF)

 これらの機能を使用するアプリケーションは、98MATE Rシリーズでは正常動作しませんのでご注意ください。

 特に、N88- BASIC(86) (通称 ROM BASIC) の一部が省かれた事により N88-日本語 BASIC (Disk-BASIC) のサポートが無くなったこと、MS-DOS 5.0A以前のバージョンの MS-DOSのサポートが無くなった事です。よって、これらの機能を必要とする古いソフトは正常動作しない可能性が有ります。ご注意ください。

98MATE Rシリーズのマニュアルについて

 PC-9821Ra20等の Pentium Pro搭載モデルの物ではありませんが、PC-9821Ra43については NECの公式サイト「121Ware」より PDF版がダウンロード可能です。トップページから「サービス&サポート」→「商品情報検索」で「PC-9821Ra43」を検索し表示された一覧から機種を選択します。
 どの機種でも構いませんが、使用している OSで決めると良いでしょう。PC-9821Ra43に続く英文字の Dは MS-DOS6.2、Wは Windows95、Mは Windows98です。機種を選択後は、開いたページの「電子マニュアルで調べる」欄の「詳細はこちら」のボタンを押してください。

 基本的な事は PC-9821Ra18から PC-9821Ra43までの98MATE R全デスクトップモデルでは CPUの違いを除いてハードウエアに違いは無いのでこのマニュアルで十分理解できます。

 紙媒体のマニュアルが必要な場合は、NEC PCマニュアルセンター (2016年 3月末にて閉鎖) にお問い合わせください。コピーした物を製本した物になりますが、製本はしっかりしています。PC-98に関しては、PC-9821Ra20に限らず PC-9821型番のほぼ全機種、FC-9801/FC-9821シリーズの全ての機種、一部の周辺機器のマニュアルが購入可能です。購入に関しては特に制限はなく個人でも購入可能です。

★Socket 8搭載モデルのCPU交換についての資料

98MATE Rシリーズの CPU交換についての資料 (覚書) です。この項では、以下のモデルが対象です。

● Socket 8 (Pentium Pro) 搭載モデル

  • PC-9821Ra18
  • PC-9821Ra20
  • PC-9821Rs20 (98MATE SERVER)
  • PC-9821Rv20
  • PC-9821St15 (98Pro)
  • PC-9821St20 (98Pro)
交換対象の CPU一覧
メーカー 製品名 コア名称 対応クロック (MHz) 動作倍率*1 対応ソケット コア
電圧*2
L2キャッシュ 拡張命令
FSB 定格 容量 動作速度*3 レイテンシの変更*4
intel Pentium Pro P6 60 150/ 180 2.5/ 3 Socket 8 3.3V 256KB*5 Full - -
66 166/ 200 2.5/ 3
PentiumII ODP Deschutes 60 300 5 Socket 8 3.3V 512KB Full MMX
66 333 5
PentiumIII Coppermine 100 500E〜1100*6 5〜 11*7 Socket 370 (FC-PGA) 1.75V 256KB Full 不可 MMX, SSE
133 533EB〜1130 4〜 8.5 1.75V 256KB Full 不可
Tualatin-256K 133 1000A〜1200 7.5〜 9 Socket 370 (FC-PGA2) 1.475V 256KB Full 不可
PentiumIII-S Tualatin 133 1130〜1400 8.5〜 10.5 Socket 370 (FC-PGA2) 1.45V 512KB Full 不可
Celeron Mendochino 66 366〜533 5.5〜 8 Socket 370 (PPGA) 2.0V 128KB Full *8 MMX
Coppermine-128K 66 533A〜766 8〜 11.5 Socket 370 (FC-PGA) 1.75V 128KB Full 不可*9 MMX, SSE
100 800〜1100 8〜 11 Socket 370 (FC-PGA)
Tualatin-256K 100 1000A〜1400 10〜 14 Socket 370 (FC-PGA2) 1.45V 256KB Full 不可*9 MMX, SSE
VIA CyrixIII Samuel (C5A) 66 500〜 700 4.5〜  10.5 Socket 370 (PPGA) 1.8〜  2.0V -*10 - - MMX
CyrixIII/ C3 Samuel 2 (C5B) 66 667〜 800 10〜  12 Socket 370 (PPGA) 1.5〜 1.6V 64KB*10 Full MMX,  3D NOW!
C3 Ezra (C5C) 66 900〜 933 13.5〜 14 Socket 370 (PPGA) 1.35V 64KB*10 Full MMX,  3D NOW!
Ezra-T (C5N) 100 800〜 1100 8〜 11 Socket 370 (FC-PGA2) 1.35V 64KB*10 Full MMX,  3D NOW!
Nehemiah (C5XL) 133 1000〜1200 7.5〜9 Socket 370 (FC-PGA2) 1.4V 64KB*10 Full MMX, SSE

*1 intel製品のみ、エンジニアリングサンプル (ES) 品を除く、全ての製品の動作倍率は、変更できない。

*2 ロット、対応クロックによって異なる。

*3 コアクロックに対する動作速度、「Half」では、半分、「full」では、等速を表す。

*4 L2キャッシュのレイテンシ (ウェイト) 値の変更の可、不可。可の場合、フリーソフトで、変更が可能。ただし、ウェイトを軽くしすぎると、動作が不安定になるほか、CPUを破壊する危険性がある。

*5 他に、L2キャッシュ容量が、512KBと、1MBの製品がある。

*6 1.1GHz版は、OEM向けにのみ出荷したもので、リテール版 (BOX版) は無い。

*7 ES品の 「QJE1ES」では、最高 12倍の逓倍設定を持っている。

*8 内蔵 L2キャッシュにウェイトが多めに掛けられている。

*9 L2が同容量の PentiumIIIと比べると、内蔵 L2キャッシュにウェイトが掛けられているため、パフォーマンスが若干落ちる。

*10 L1キャッシュの容量は、128KB。

Pentium Pro搭載モデルと CPUの対応一覧
メーカー 製品名 コア名称 対応クロック (MHz) PC-9821
FSB 定格 66MHz
*i
St15, St20
*ii
Ra20/N12 Ra18, Ra20/N30 Rs20 Rv20
intel Pentium Pro P6 60 150〜180 166〜200 *1,*2 *1,*2
66 166〜200 166〜200 *1 *1 *1 *1,*2 *1,*2
Pentium II ODP*iii Deschutes 60 300 333 *2 *2
66 333 333 *2 *2
PentiumIII Coppermine 100 500E〜1100 333〜 733 × *3,*4 *3,*4 *3,*4 *3,*4
133 533EB〜1130 266〜 566 × *3,*4 *3,*4 *3,*4 *3,*4
Tualatin-256K 133 1000A〜1200 500〜 600 × *3,*5 *3,*5 *3,*5 *3,*5
PentiumIII-S Tualatin 133 1130〜1400 566〜 700 × *3,*5 *3,*5 *3,*5 *3,*5
Celeron Mendochino 66 366〜533 366〜 533 × *3 *3 *3 *3
Coppermine-128K 66 533A〜766 533〜 766 × *3,*4 *3,*4 *3,*4 *3,*4
100 800〜1100 533〜 733 × *3,*4 *3,*4 *3,*4 *3,*4
Tualatin-256K 100 1000A〜1400 533〜 933 × *3,*5 *3,*5 *3,*5 *3,*5
VIA CyrixIII Samuel 66 500〜 700 500〜 700 × *3 *3 × ×
CyrixIII/ C3 Samuel 2 66 667A〜 800A 667〜 800 × *3 *3 × ×
C3 Ezra 66 900A〜 933A 900〜 933 × *3 *3 × ×
Ezra-T 100 800A〜 1100A 533〜 733 × *3,*5 *3,*5 × ×
Nehemiah 133 1000A〜1200A 500〜 600 × *3,*5 *3,*5 × ×

◎: 動作可、○: 条件付きで動作可、×: 動作不可

*i システムクロック 66MHzの場合の動作クロック。

*ii i450KXチップセットに対応した、ソケット変換アダプタが市販されていないため、PentiumII ODPが最高の CPUとなる。PL-ProIIは、i440FXチップセット用であるため、この 2機種では、動作しない。

*iii 日本国内で、公式には、発売されなかったオーバードライブプロセッサ (ODP)。


*1 内蔵 L2キャッシュ 512KB/ 1MB版を使用する場合は、VRMユニットの交換が必要。交換できない場合は、マザー上の VRM部を改造し、強化する必要がある。

*2 同一の CPU IDを持つ CPUを使用することで、WindowsNT/2K環境にて、マルチプロセッサ運用が可能。その場合、VRMユニットの増設が必要。

*3 Socket 370対応のソケット変換アダプタ (Power Leap PL-Pro/II等) が必要。

*4 FC-PGA対応のソケット変換アダプタ (Power Leap PL-370等) と、CPUクーラー固定用に、生の Socket 370が必要。

*5 FC-PGA2対応のソケット変換アダプタ (Power Leap PL-370/T Rev2.0等) が必要と、CPUクーラー固定用に、生の Socket 370が必要。

★Socket 8搭載モデルで CPU交換をする際の注意事項

 これらのモデルでの CPU交換は、PeintiumIIや、Celeron搭載モデルとは異なり、ソフト (ITF) の面での制約が少ないが、Pentium搭載モデルと比較するとハードの面で制約が多いのでそれなりの知識と技術が要求される。以下にポイントごとにまとめておく。

● 動作クロック倍率 (内部逓倍設定) の変更について

 Slot 1, Socket 370の全モデルについて、CPUの動作クロック倍率は、マザーボード上にある 4連のジャンパで設定する。Coppermine, Tualatinコアの エンジニアリングサンプル版 (ES版)等は、設定の変更が可能。
 ちなみに、Coppermineコアの ES版の上限は 12倍まで、Tualatinコアの ES版の上限は 10.5倍までとなっている。

● VRM、Dual構成について

 Dual構成に正式に対応している CPUは、Pentium Pro, PentiumII ODP (PC-98では動作保証外) で、運用するには、CPU IDが2個とも同じであることが条件となる。もちろん、OSや、拡張ボード、ソフトが対応していることも条件となる。
 PC-9821対応の NEC純正品では、「PC-9821RS20-E01」 増設 CPUセットがある。純正品問わず CPUを増設した場合は、セットアップメニューで、「割り込み」を「拡張」に切り替える。これにより増設した CPUが認識されるようになる。

 PC-9821Rv20, PC-9821Rs20で、Dual構成で運用するには、CPUに対応した、VRMユニットが必要になる。
 使用できる VRMの条件としては、5V入力に対応していること、使用する CPUの消費電力に対応できるかが重要になる。
 12V入力対応のものを取り付けた場合、12V電源ラインを強化しないと、マザーボードを焼損する可能性があるので、きわめて危険である。なお、12Vと、5V両対応と明記されているのものでは問題無く使用できる。

● Socket 370変換下駄 PL-ProII での注意事項

 Powerleap製 PL-ProIIを、PC-9821で使用する場合は、下駄上の VRMチップの Power Good (PG) ピンと、PC-9821マザー上にある、VRMソケットの PGピンを接続する必要がある。

 PL-ProIIにて、高クロックの CPUを使用する場合は、PL-ProII上にある VRMの電源供給能力に注意する必要がある。PL-ProIIは、Celeron (Mendochino) 533MHzまでの対応となっている。
 これよりも交換する CPUの消費電力が大きい場合は、下駄上の VRM部の電解コンデンサの交換や追加など、適切な強化策を施さないと、CPUの故障や、コンデンサの破裂、PL-ProIIの焼損につながり、非常に危険である。

 また、消費電力が増えることにより、マザー上や、下駄上のレギュレータの発熱も増加するため、放熱板を取り付けるなど、冷却も重要になる。

● FC-PGA, FC-PGA2変換下駄 PL-370, PL-370/T Rev2.0 での注意事項

 Powerleap製 PL-ProIIと、PL-370, PL-370/T Rev2.0を組み合わせる場合は、高さが上がって CPUクーラーを固定できなくなるため、Socket 370のソケット単体を別途用意する方法が最も簡単である。
 ただし、下駄が三段重ねになるので、タワーモデルでは、下駄の重みで、接触不良や、脱落することがあるため、固定に配慮が必要になる。

メモリの増設

 ECC (Error Correcting Code) 対応の 72pin EDO (Extended Data Out) SIMM が利用できます。EDO SIMMに使われている、EDO DRAMは、従来の FPM (Fast Page Mode) のデータ出力方式を改良して高速データ出力を可能とした DRAMです。増設の際には、必ず同容量で同種の SIMMを 2枚一組で増設します。
 また、従来のパリ付き FP SIMMも利用できます。なお、FP SIMMを搭載または混在させるとEDO SIMM搭載時よりメモリアクセスが若干遅くなります。

 ちなみに、ECCとは、データの読み出しや書き込みにチェックの為のデータを追加してエラーを検出するものです。これは 24時間連続稼働時 (※ PC-98では 24時間連続稼働は想定されていません) に宇宙線等のノイズによる一時的なビットの反転を防ぐために有効な手段です。通常めったに有りませんが、パリティー付きメモリはエラーを検出するとデータを破壊する前にシステムを停止させますが、ECCではエラーを修復してシステムを停止しないようにします。この機能は、ネットワークの基幹として動作するサーバ等、ハイエンドマシンでは、無くてはならない機能です。

 98MATE Rシリーズでは、64Mビット DRAMに対応しているので1枚辺り 128MBまでの、PC/AT互換機やサーバ用の 72pin ECC対応 EDO SIMMも自己責任で使用できます。ただし、全てが動作するわけではなく相性により、正常動作しない場合もあります。

● PC-9821Ra18、PC-9821Ra20

 98MATE Rシリーズデスクトップモデルでのメモリの増設の仕方は、マザーボード上の 4カ所の SIMMソケットに増設または標準のものと交換し、一枚 128MBのモジュール 4枚で最大 512MB (公称値は、256MB) まで増設できます。

 メモリの増設の際スロットはどこでも良いのではなく、CPUに近い側から順に搭載します。

 メモリの増設には必ず同容量で同種の SIMMを 2枚一組で増設します。容量や仕様が異なると「SIMM SETTING ERROR」となり正常動作しません。

● PC-9821Rv20/N20、PC-9821Rs20/B20

 98MATE Rシリーズミニタワーモデルでのメモリの増設の仕方は、CPUが載ったサブボードを取り外す必要が有ります。増設後に取り付けるときは、接触不良を起こしやすいのでサブボードの板端を溝に合わせしっかりと奥まで挿し込んでください。挿しこみが甘いと起動不良の原因になります。
 マザーボード上の 8カ所の SIMMソケットに増設または標準のものと交換し、一枚 128MBのモジュール 8枚で最大 1GB (公称値は、512MB) まで増設できます。

 メモリの増設の際スロットはどこでも良いのではなく、CPUに近い側から順に搭載します。

 チップセットがメモリインターリーブ対応なのでメモリの増設には必ず同容量で同種の SIMMを 4枚一組で増設します。4枚の容量や仕様が異なると「SIMM SETTING ERROR」となり正常動作しません。

● 注意点

 64ビット DRAM搭載 SIMMを使用し 公称値以上メモリを搭載すると電源出力が不足し不意なフリーズ、再起動が起き正常動作しない場合があります。この場合は、ATX電源の換装で対処できる場合があります。

 ECC付と無しの SIMMを見分ける方法については、こちらの記事を参考にどうぞ。電算機第一研究室 98MATE Aシリーズ編 PC-9821Ap3ネタ パリ付きと無しの FP SIMMの見分け方

 時々誤解される方がいらっしゃいますが、ECC機能は一時的なエラーに対して効果を発揮する物です。DRAMチップやモジュールの物理的な不良によるエラーを補う物ではありません。SIMMに不良が有る場合は当然ながら交換が必要です。

 この ECC対応の EDO SIMMは現在では販売が終了しており廃棄も進んでいるので、かつてに比べると中古品でもやや価格が高くなっています。

代表的なメモリサブボード (ECC対応 72pin EDO SIMM) 全て生産終了

メーカー 製品名 容量 枚数 標準価格(税別)
NEC PC-9821-ME1〜ME5 4〜64MB 1枚 14,000円〜240,000円
メルコ (バッファロー) EMH-E 16〜128MB 2枚 6,500円〜64,000円
I-O DATA NE-ECC 16〜128MB 2枚 オープン価格
ADTEC AD-P*M72ECC 32〜128MB 2枚 44,000円〜オープン価格

 98MATE Rシリーズでは、ECC非対応の SIMMも条件付きで使用可能です。詳しくは、ECC非対応の SIMMを使うをご参照ください。

98MATE Rシリーズの保守

PC-9821Ra20、PC-9821Ra18、PC-9821Rv20は製造から 20年程度経過しています。今後も正常に使用するにあたって幾つかのポイントを挙げておきます。

● FDD

NEC製 3.5インチ FDDの FD1231T

 98MATE Rシリーズデスクトップでは、1.44MB、1MB、640KBの 3モード対応の 3.5インチ FDドライブを搭載しています。コスト削減から複数メーカーの FDDを採用するようになりました。製造ロットにより幾つか有りますが、採用例があるのは次の通りです。いずれも互換性が有り相互に交換する事ができます。

メーカー 型番 P/N 備考
NEC FD1231T 134-506790-011-2 ドライブ番号切り替えジャンパスイッチが無い物は PC/AT互換機用。
SONY MPF520-F D104-630-222-01 挿入口に黒いベゼル状のプラスチック製ガード付き。

 共通点としては、いずれも、34ピン、電源は 3.5インチ機器用 4ピン、ドライブ番号切り替えジャンパスイッチ有り、VFO無し、ベゼル無し、ボタンは角ボタンでシャッターの色はアイボリーです。PC/AT互換機用とは外観が同じですが、制御基板が異なり互換性は無く使用できません。交換の際には、必ず P/N (パーツナンバー、部品番号) を確認してください。PC-98に PC/AT互換機用若しくはその逆を接続すると FDDが故障するだけでなく、マザーボードの FDD I/Fを破損する恐れが有ります。

 某オークション等で NEC対応、PC-98対応と謳っている出品が有りますが、「PC98-NX」用と勘違いしている可能性が有ります。必ず、PC-98で動作を確認したのか、P/Nの番号はどうなっているか、を確認し明確な回答が無い場合はスルーしましょう。

 PC/AT互換機用 FDDでも NEC製 FD1231Hの一部ロットの様にチップ抵抗の位置を変え (設定を変え) て改造することで PC-98でも使用できるようになる FDDも有ります。

 交換できるドライブとしては、FD1231T、MPF520-F以外に、CITIZEN OSD、NEC FD1148T (コネクタが 34ピンの物、26ピンの物は使用不可) が有ります。FD1148T以外のドライブでは電解コンデンサは大抵電源ピンのそばに 1個あり、液漏れする例はほぼないですが劣化でドライアップします。FD1148Tでは内部に 2個ありこちらは液漏れしやすいです。読み取りが弱くなるぐらいであまり大きな影響は出ない事も有って気が付かない事が多いのですが、万が一液漏れしていたら、周囲を洗浄してコンデンサを換えておくとよいでしょう。

 FD1231Tは、ディスクを回転させるモーターがネジ止めされている為に長期間の振動でずれが起こりやすく耐久性がやや低い事が特徴です。ちなみにここのネジを弄ると磁気フィルムの記録位置がずれてしまい回復は困難です。

 SONY MPF520-Fは、他の SONY製ドライブ同様にケーブル逆挿しの耐性が極端に低い事が特徴です。ケーブルのコネクタを上下逆に挿して通電すると即死します。二度と使用できません。(^ ^;;

 CITIZEN OSDは、ケーブル逆挿しの間違いが起こりやすい事が特徴です。制御基板側に切り込みがあり上下逆に挿す事ができます。MPF520-Fの様に逆挿しで即故障にはなりませんが、アクセスランプが点灯したままになっている時はすぐに電源を切って向きを確認してください。
 ちなみに、似たような型番で「OSD-u」というドライブがありますが、98Multi CanBe用のドライブで「OSD」とはピン配置が上下逆になっていますのでご注意ください。

 FD1148Tは元々数が少ないので入手する機会はあまりないと思います。このドライブは、コンデンサ以外にモーターの軸部分が埃などで固着する例が多いです。FDD本体を裏返して円盤部分を指で回転させようとすると抵抗を感じる場合は固着しています。グリスを軸部分に注入して指で回転させ、指で弾くような感じで触り数秒回転するようであればいいでしょう。ただし、5-56は NGです。樹脂を侵すうえ、揮発するので一週間程度で効果が無くなります。

 SONY MPF520-F以外の FDDは、メディア挿入口付近の板金が丸められておらず剥きだしで鋭利になっています。汚れを取るなとで無暗に指を入れると怪我をしますので必ず軍手を装備の上作業するようにしましょう。(^ ^)b

● カレンダ時計バックアップ電池

FDK製 リチウム二次電池の ML2430

 PC-9821Ra43等の 98MATE Rシリーズで使用されている電池は、三洋 (現 FDK) の「ML2430」という 3V 100mAhの充電可能なリチウム二次電池です。場所は電源ユニットの下あたりに 3ピンのコネクタで実装されています。幸い 20年程度で液漏れする例は殆どありません。この電池を充電するには一昼夜電源を入れたままにするといいようです。充電できない場合は、起動毎に日付と時刻、セットアップメニューの設定、メモリスイッチの設定をやり直す必要があります。

 ML2430は 2012年現在でも FDKが製造していて入手は比較的容易です。形状が同じだからと言って PC/AT互換機のマザーボードで使用されている市販のリチウム一次電池 (使い切りタイプ) は絶対に使用しないでください。これを 98MATE Rシリーズに取り付けると本来充電禁止の一次電池を充電することになるので非常に危険です。

 機種によってPanasonicの「VL2330」が使われている事も有ります。こちらは 3V 50mAhです。両者は充電時の電圧がML2430は 3.1V±0.15V、VL2330は3.4V±0.15Vと異なりますが、3ピンコネクタのマイナス接続ピンを換える事で両方とも使えるようになっています。

 某オークションなどでは出品者が良く分からずにこの様な改造を行って本体を出品している事があります。仮にダイオードを噛ましていても、長期間使用していると劣化等で知らないうちに壊れている可能性があります。万が一ショートモードで壊れると電池側に電流が流れ大変危険です。リチウム電池は取り扱いを誤ると発火や破裂が比較的容易に起こりますのでご注意ください。
 また、ダイオードの性質として順方向降下電圧 (VF) があります。一般的なダイオードでは 0.6〜0.7V程度降下しますのでこの点にも注意が必要です。

 ちなみに、一般的な整流用ダイオードでは 1V程度降下するので、この性質を利用してダイオードを数珠繋ぎにして冷却ファンへの供給電圧を下げて静音化する改造が流行りました。(^ ^;;

 カレンダ時計バックアップ電池が必要な方は、所内売店保守部品フロアへどうぞ。新品の物を 1個 1,000円から 1,280円でお分けします。

 電池の位置は Cバススロット籠の左下になります。電源ユニットを外して、マザーボードと籠の隙間から手を入れて換えることも慣れればできますが、面倒でも Cバス籠を外した方がいいと思います。

 なお、本機のフレームは鋭利になっている箇所があります。ちょっと当たっただけでも負傷する可能性が有りますので、内部に手を入れる際には軍手をはめる等の防護策を講じてください。

● マザーボード

 この機種では、面実装タイプの四級塩電解コンデンサを使用していないのでコンデンサの液漏れでマザーボードが故障する例は殆ど無く安心して使えます。強いて言えば、PentiumII以降では CPUの消費電力が多く、CPU周辺の低インピーダンスタイプの大きな電解コンデンサが劣化でドライアップ、液漏れして動作が不安定になるケースが有ります。

 本機で最も注意すべきは、Cバスライザーカードスロットの下あたりにあるゴム製の支柱が湿気による加水分解によって溶けて液状化する例が非常に多いことです。

PC-9821Xa16/W16でゴムが溶けた例

 溶けたゴムによって信号線が短絡し微弱な電流がノイズとなって流れることで起動不良を起こす事が有ります。溶ける前に除去しておく事をおすすめします。溶けてしまったらアルコール類の溶剤で拭き取りましょう。イソプロピルアルコール (IPA) が良いですがエタノールに比べて毒性が僅かに高いのでなるべく直接手を触れないようにして換気にご注意ください。

● CPUとサブボード

 この機種では、CPUがカートリッジタイプのため湿気による錆汚れで導通不良を起こす事が非常に多いです。導通不良を起こすと電源を入れても CPUファンが回りません。端子の汚れを消しゴムで擦り根気良く挿し直せば大抵は直ります。

 経年の振動でデスクトップモデルではグラフィックサブボード、ミニタワーモデルではサブボードが緩んで接触が悪くなるケースも有ります。起動時の「ピポ」音が出ない、画面出力が無いケースはまずここを疑います。ACケーブルを抜いてから挿し直してください。なお、グラフィックサブボードを外した場合はセットアップメニューとメモリスイッチの設定が初期化 (日付と時刻は保持) されますのでご注意ください。

● 電源ユニット

 98MATE Rシリーズデスクトップモデルでは、電源に ATX電源の PU756, PU756Aを使用しています。定格出力は合計で 200Wです。この電源は、ライトン製、デルタ (DELTA) 製が有りますが、後期のモデルほどライトン製の比率が多い印象です。ライトン製は仕様上、負荷時にコイルが高周波音を出しやすい特徴が有ります。

 PC-9821Rv20、PC-9821Rs20といったミニタワーモデルでは、ATX電源 PU753を使用しています。定格出力は 200W、デスクトップモデルとケーブルの長さが違うのみで仕様は同じです。

 何れも使用されている電解コンデンサは大抵は台湾製の 105℃品ですのでパンクこそありませんが、経年劣化でコンデンサの容量抜けで半導体が劣化して供給電圧が下がって補助記憶装置が作動不良を起こす事が稀にあります。特に、高クロック CPUや大容量の HDDを内蔵する拡張ボードでスロットを埋めるような負荷が大きい状態では動作が不安定になる事も有ります。出力電圧が安定しない場合はコンデンサの交換で復活できますが、+12V系の電圧が極端に下がるような症状は半導体までやられている可能性が高く復活は難しいです。

 幸いな事に本機では市販の ATX規格の 20ピンタイプ電源が使用できます。近年主流の 24ピンタイプは ATXコネクタ付近のスペースに余裕が無いので物理的に接続できません。変換ケーブル (例:サンワサプライ BTX用電源変換ケーブル 0.15m TK-PW84 ) が必要になります。PC-98で交換例の多い DELTA製電源でも 350Wを境に 24ピンの物が殆どになります。
 また、電源と連動するサービスコンセントが付いているものは非常に少ないので、パソコン連動型のタップ (例:サンワサプライ パソコン連動タップ 2P・7個口 2m TAP-RE27MN ) を使用するなど工夫が必要になります。

 電源選びの際の注意点は、ACインレットがネジ止めの物は左右の出っ張りが引っ掛かるのでそのままでは使えません。筺体の板金を加工する手間が掛かるので避けましょう。

 PC-98では、全体的に Cバス籠の影響で筺体内が狭くエアフローはあまり良くありません。排気を電源ファンが担っているので静音タイプ等の排気の弱いタイプ、電源の底の部分に大型ファンが有るタイプは筺体内の排熱が間に合わず非常に危険です。また、筺体内側にファンが有るタイプは物理的に取り付けできない可能性が有ります。これらの電源は避けましょう。

 ちなみに、動作不良の修理やコンデンサ、電池交換、延命処置等の保守をご希望の方は、技術部にて承りますのでご相談ください。

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PC-9800, PC-9821, PC-9801, 98MATE, PC-98は NEC社の商標または登録商標です。

Pentiumは Intel社の商標または登録商標です。

Windows, MS-DOSは Microsoft社の商標または登録商標です。

この他、製品名、型番等は、一般に各メーカーの商標または登録商標です。