自己破産(同時廃止)申立の実際(とりとめなく思いつくまま)借金整理 shakkinnseiri.htm

内容が、ごちゃごちゃごちゃしてきたので、近いうち整理したいと思っています。

平成171月から改正破産法が施行されています。破産手続と免責手続が一本化し(破産手続開始の申立をした場合、免責許可の申立をしたものとみなされる)、免責手続中の強制執行の中止・禁止の規定がもうけられるなど重要な点が改正されています。審尋が任意となり、問題のない破産については、審尋なしで、破産手続開始決定・免責許可される場合もあります。また、旧法で免責審尋後、異義申立期間がもうけられていましたが、これが、破産手続開始決定後、免責についての意見申述期間となるなど、手続が合理化されています。管財事件となった場合は、「自由財産拡張の申立」が重要となります(平成172月追加記載)。新破産法以後記載 clickA

破産制度(プラス免責制度)について

資本主義経済のもと、どうしても自分の責任ではなく(不況による失業など)、借金を返せなくなってしまう危険性がある。そして、一生、返済不可能な多額の借金を背負ったまま、暮らさなければならないとすると、その人の人生は…。(破綻して返済できなくなってしまったのは、仕方がない)そこで、いったん財産を処分、弁済した上、その時点での残債務を免責し、やり直しの機会(何度もない)を与えてあげようというものだと理解している。ある裁判官が、審問の際、「人生の切り札」?なんて言ってました。債務者の更生の面(免責手続)。

消費者破産を考えるに、現在は、「カードあり」「ATMあり」気軽に借入できてしまう、消費者金融、カード会社など、簡単に貸してくれる(比較的高い金利を取り)ところがある、消費をあおる広告があふれ、不況とあいまって、いったん借り入れると多重債務に陥る危険性はだれにでも生じる。消費者破産は増えるべくして増えているという感じである。

過剰融資。消費者信用・金融業界の、下位の(審査の甘い)業者へ借金のつけを回す、自転車操業の構造(借金を借金で返済せざるを得ない状態。多重債務者の多くが現状そうなっている)も問題である。月収20万円程度の普通のサラリーマンが、自転車操業により、500万円以上の借金をかかえることになるというのはよくあるケース。まじめな人ほど、返済しなければならないと思い、無理に借金返済のため、さらなる借金をしてしまう。その借金ができてしまうというところにも問題がある)

債権者(特に大手消費者金融)が、返済が困難になった債務者に対して、「きちんと破産をして下さい」と破産申立を薦めるケースがある。財産がなく、本当に返済できない債務者に対しては、いつまでもずるずると督促を続けるのも無駄だし、新しい顧客開拓に精を出した方がよいと考えているのであろう。また、破産決定が出され、免責決定が出れば、貸倒金として損金処理できるのも債権者にとっては都合がよい(特に利益が出すぎている大手消費者金融にとっては)。

そして、破産者(または免責確定後)に対して、借入の勧誘するところ(業者)が増えているのを考えると、破産・免責手続を経た後は、債務負担がほとんどなくなり、優良顧客に変身するという面も考えているのであろうか? 闇金 yami.htm

(調停手続をとった時の、債権者(担当者)の非協力的な態度をみると、債権者(担当者)の中には、毎月少しずつ返済してもらうよりは、破産してもらった方が、すっきりしてよいと考える者が少なからず?いるように思える??)

(本来、破産制度は、債権者のための制度である。)

最近は、免責不許可事例は少なくなっており、免責不許可事由にあたる場合でも、破産者の更生の面などを考慮し、裁判官の裁量で免責許可されているケースが多い。不許可事由 mennseki.htm

(昭和63年頃、神戸地裁で、免責不許可決定が続出したことがあります) kettei.htm

破産に至った原因は、人さまざまであるが、再び破産に陥らないようにするためには、家計の見直しが必要であり、家計簿をきちんと作成し、お金の出入りをきちんと管理することが必要となる人も多くいる。

裁判所によっては、破産審問の際、裁判官が「家計簿」の作成を指示し、あらためて後日、「家計表」を提出させるところもあります。

破産申立について

いつ、どこから、どのような事情で、いくら借入したか。そして、その借入したお金を何に使ったかを明らかにする必要があります。返済状況も明らかにし、それに関する疎明書類を揃えます。書類チェック表 shorui.htm

借入した時の、職業、収入、家計を明かにします。

家計を明らかにする必要があります。収入がいくらで、生活費にどれだけ費やしているか。それに関する疎明書類も揃えます。

財産を明らかにする必要があります。現金、有価証券、預金、貴金属、不動産、自動車、貸付金、売掛金などは明らかに財産ですが、注意すべきは、退職金、敷金、生命保険の返戻金などです。それに関する疎明書類も揃えます(退職金は退職後、敷金は賃貸借契約終了引渡後に具体的に発生する財産ですが、考慮されます)。退職金は、勤務継続であれば、退職金の 4分の1もしくは8分の1が財産目録にあげられます。返還敷金(住宅)については、裁判所により異なると思いますが、退去費用を考えおおむね60万円以内であれば財産なしとして取扱われているようです(賃貸住宅(生活本拠)で、退去すると生活困難となる場合。もちろん退去して実際に敷金が返還されている場合は、それは財産となります)。財産を処分している場合は、それについて詳しく説明する必要があります。

破産するにつき、多額の退職金、返還敷金が見込めるからといって、必ず、退職や、賃貸住宅を退去しなければならないという訳ではありません。退職や、賃貸住宅退去を強制すると、今後の、その人の生活がなりたたなくなる可能性があるからです。上記のように全額が財産として評価される訳ではなく、また、積立、任意配当により、退職、退去を回避できる場合があります。

注意点1

消費者金融などのお金を貸すのを商売にしている債権者については、法律で規制されており、また貸倒れリスクを予測して貸し付けており、損金処理もできるため、破産手続きを取った場合は、比較的協力的な態度を示すが、問題は、一般の個人が債権者となっている場合である。「破産」=貸したお金が返ってこない、ということで、感情むきだしで、また法律を無視した回収をしてくることがあります。

保証人 renntaihoshou.htm を含め、お世話になっているところについては、事情を説明し、話合いをしておくことも大切である。(もちろん話合いができないようなところについては他の考慮が必要となります)

破産申立するにあたり、すでに親族・友人への返済を優先し、返済(完済)している場合があります。これは程度、時期、事情等にもよりますが、詐欺破産罪(免責不許可事由)の破産財団に属する財産の債権者への不利益処分(偏頗弁済)にあたる可能性があり、否認の対象hininn.htmとなるもので破産手続においては問題となります。配当する財産があるケースで「親族には迷惑をかけられないので、優先して返済したい」というのはもちろん認められません。

申立人に不利な形で、遺産分割協議をしているような場合も、否認の対象として問題とされる場合があります。

破産申立、直前、多額の借金をしているような場合は、破産詐欺(詐術)が疑われるため、詳細な陳述が必要となります。(あたりまえですが、破産を決心した後は借入はストップ)

ローンが残っている商品(車・貴金属など)については、契約上、ローン会社に所有権留保されており、破産申立した場合、ローン会社から返還要求されます。

裁判上和解をしていたり、公正証書を作成しているなど、債権者が債務名義をもっている場合は、免責確定まで、給与などを差押えられる恐れがあります。ただし、給与、賃金については、所得税など控除後の金額の4分の3は差押が禁止されており、動産については、生活に欠くことのできないものについては差押は禁止されています(破産手続きをしたからといって当然に生活用品や財産が差押えられるということはありません)。

業者から遠方の弁護士を紹介され(例えば兵庫県在住なのに東京の弁護士)、依頼(委任)している場合、その弁護士は、いわゆる整理屋提携弁護士の可能性が高いので、債権者との交渉の結果をきちんと報告してもらい、債務整理が自分の支払える範囲内できちんとされているか確認し、不都合があれば、近くの弁護士会もしくは司法書士会を通じて、専門家に相談し、解任するなどの必要が出てきます。

注意点2

借金の使途に、ギャンブル、浪費など、免責不許可事由を含む場合があります(ギャンブル、浪費が直ちに免責不許可事由となる訳ではありません)。この場合は、借金のうち、どれほどの金額を遊興費に使ったか、その事情、その時の収入、返済状況などを細かく説明することになります。

個人事業者で、帳簿類を作成していない、税金の申告もしていない場合があります。帳簿類を作成していないというのは、形式的には免責不許可事由にあたりますが、なぜ帳簿類を作成しなかったか、また、なぜ税金の申告をしなかったか、そして、それについてどれだけ反省し、今後どうしていくかを説明することになります。このような場合、申立する際には、できるだけの領収書などの証票を揃え、売上と経費を明らかにした書類を作成する必要があります。

ローンを組んで買ったものを質入(売却)してしまっている場合があります。ローン支払中のものについては、所有権留保されている場合があり、それを質入(売却)するのは問題となるところです。質入せざるを得なかった事情などを詳しく説明し、あとは裁判官の判断を待つことになります。

収入や使途を偽って借入している場合、これも問題となりますが、対業者との関係でそうせざるを得なかった事情があればその事情や、その時点での借金の状況、その後の返済状況など、細かく説明する必要があります。

形式的には免責不許可事由にあたる場合でも、その程度や事情、他の環境などが考慮され、免責許可されるケースも多くあり、また一定の配当を条件に許可される場合もあります。

会社の経営者で、個人破産する場合があります。個人の借金の多くが会社に流れている場合があり、会社の経営状態・財産を明らかにする必要があります(管財事件になる場合が多い)。

住宅(不動産)を所有していても、住宅ローン(抵当権付)があり、それがオーバーローンになっている場合、そのことを疎明すれば、管財事件ではなく、同時廃止の手続きで進められる場合もあります。住宅ローンの残高とその住宅の時価(売却すればいくらで売れるか)を明らかにする必要があり、評価証明書、不動産業者や不動産鑑定士の評価(査定書)が必要となります。

実家に、亡父母名義のままになっている不動産(田、畑など含む)が残っているなど、申立人本人があまり意識していない相続財産がある場合があります。注意が必要。

生命保険などの解約返戻金は、意外と、本人が意識しておらず、多額の戻金がある場合があります。共済保険、損害保険等含め、すべて保険について、事前に徹底的に調査する必要があります。保険の帰属については、微妙なケースがあります。原則、契約者が誰になっているかで判断します。ただ、例外的に、保険料の支払者と、契約者が異なる場合があり、ケースによっては、形式的に契約者の保険とできないような場合もあります。申立人本人の知合いの保険外交員の方が、成績を上げるため、申立人名義で保険契約をし、保険料は、その外交員の方がすべて負担していたようなケースもあります(申立人への贈与とみることができるか)。また、保険の契約名義人は、申立人以外の者がなっていても、その保険料を申立人が支払っている場合は、解約返戻金は申立人の財産とされる場合もあります(未成年の子供名義で保険契約をしていたなど)。財産隠しをさせないという観点から、申立人に一番厳しく判断するということであれば、保険料を申立人以外の者が支払っていても契約名義人が申立人であれば、その解約返戻金は申立人の財産とされ(実質より形式を重視)、契約名義人が申立人以外の者になっていても、保険料を申立人が支払っていれば、その解約返戻金は申立人の財産とされる(実質を重視)。

事業者破産で、事業者の売掛金、未収金、請負代金等、事業より生じている債権は全額財産評価されます。管財事件の場合、原則、全額財団組み入れを裁判所より要求されますが、生活費としてある程度控除してもらえる場合もあります。小規模管財事件 a で、破産時、事業を継続しており破産時行っている仕事(期間4ヶ月ぐらい)で後日金員をもらえるもの(債権)について、その期間の?生活費30万円(根拠不明)を控除した額の財団組み入れを要求されたことがあります。サラリーマンと異なり事業者の破産はいろいろな点で厳しい。

破産宣告時における破産者の財産であれば、原則としてすべてのものが破産財団に属する。破産宣告前の原因に基づく将来の請求権は、破産財団に属する。差押禁止財産は原則、破産財団に属せず自由財産とされる。

その他

以前は、添付書類に電話加入権事項証明書が要求されましたが、最近は、同時廃止事案では、複数回線所有の場合のみ要求されます。

生命保険解約返戻金など、現実的に配当できるもの(おおむね10万円〜20万円以上)がある場合は、裁判官より、債権者への配当指示があります。敷金や退職金などは、賃貸借契約終了後や退職の際、現実に交付されるものですので、財産としては考慮されますが、交付されていなければ、配当することはできません。破産管財人が選任されないケースでの、任意(自主)配当指示は、裁判官の裁量になります。

追加  現在は管財事件での自由財産拡張制度の基準の影響により、保険の解約返戻金が20万円以下であれば、任意配当なく同時廃止になるようです(20万円基準)furiwake.htm

本人に多重債務に陥ったことについて、反省してもらうということを考慮して、できるだけ本人に書類を作成してもらうというスタンスをとっている司法書士もいます。

破産手続の 口頭主義・疎明主義・裁判官の裁量

各地の裁判所で、「少額(小規模)管財」の手続が導入されています。神戸地裁においても、平成144月頃から導入されつつあり、例えば、事業者で事業用財産(少額)等につきある程度の調査が必要なケース、不動産所有で、はっきりオーバーローンといえないケース、消費者金融等に不当利得(過払い)請求権があるケース、多額の浪費など、ある程度の調査が必要な免責不許可事由があるケース、否認権の対象となるものがあるケース などにつき、少額(小規模)管財の手続が行われています。管財人が選任され、財産等調査します。通常の管財事件と異なり手続は簡素化されています。通常の管財事件であれば、50万円以上の予納金が必要ですが、少額(小規模)管財の場合、22万円程度ですみます。現在は、消費者破産の増加で、同時廃止事件が圧倒的に多く、「原則、同廃、管財は例外」と破産法上の原則と例外が逆転しているような状況ですが、同時廃止事件での、裁判所の調査には限界があるようで、将来、破産法の改正も予定されており、「原則、少額(小規模)管財」になっていくと思われます。ただし、同時廃止の申立費用ですら、用意できない債務者がいる現状があり、減らしたとはいえ22万円」の予納金負担は大きく、管財事件にする必要のないもの(典型的な消費者破産など)まで、少額(小規模)管財にするのは問題がある。私の(数少ない)経験から小規模管財事件では、ある程度財産があっても債権者への配当までいったものはなく、税金等優先的なものに充てられ、残りが、配当するにはその事務量とつりあいのとれないような額の場合は、管財人の報酬として裁判所が認めているようである(30万円〜40万円ぐらいまでであろうか?基準は不明)。

経済的破綻状態(今後、継続的に借金返済不能状態)にもかかわらず、破産をためらうケース。@親族などが保証人になっている場合、A事業継続を望む場合(借金返済を除き赤字になっている事業は論外)。破綻状態にもかかわらず、破産手続をしないで(その他の法的手続もせずに)、多重(過重)債務を解決したケースはありますが、それには、(いろいろなケースがあり一概にはいえませんが)強い精神力、的確な判断力 などが要求され、たいへんな困難を伴うと思われます。保証人には、一時期迷惑をかけることになりますが、免責確定後、資力が回復した後、迷惑をかけた分、誠意をみせることは可能です。また、破産すると事業継続ができない場合(事業用資産の処分により事実上継続不能など)でも、免責確定後、あらためて、再起することは可能です。それでも「破産はせずに立直るぞ!」という人については、経済的破綻だけでなく、「肉体的・精神的破綻」にならないよう願うばかりです。余談。終り。

夜逃げをし、借金消滅を試みた人で、不安定な生活を続け、糖尿病悪化により、片足切断。借金は消滅時効により、なくなりましたが、その見返りとして、片足を失いました。余談。

生活保護を受けている人などで、免責不許可事由が見当たらないような人については、詳述された陳述書提出を条件に、最初の債務者審問なしで、破産決定(同時廃止)されるケースがある。裁判所で、事案により、「債務者審問なしで破産決定(同時廃止)されるもの・通常の同時廃止事件・小規模管財事件・通常管財事件」と、ある程度振り分けられているようだ。

申立書作成

「債権者一覧表の作成」債権者数、残債務額、毎月の返済額、使途などを明らかにしていきます。債権者に受任通知及び債務額の申出の書類を送付するため、まず債権者一覧表を作成します。親族や友人から借入している場合は、その親族や友人も債権者に含まれます。銀行などからの借入で保証会社が判っている場合は、その保証会社も事前求償債権(もしくは将来の求償債権)がありますので、債権者として掲げます。その他、保証人がいる場合は、代位弁済されていなくても債権者として掲げるか(将来、求償債権が発生する可能性がある)、すくなくとも保証人を明示しておく必要があります。保険会社からの借入金は通常、解約返戻金の範囲内での借入れなので、債権者一覧表には記載しないのが一般的か(個人再生につき解約返戻金の範囲内の借入れであれば通常、再生債権に挙げない)。

(親族・友人からの借入。保証をしていないか。公的融資を受けていないか。年金担保の借入がないか。銀行のカードローン。勤務先からの借入。保険会社からの借入 など)

債権者一覧表に虚偽がある場合、免責不許可となる可能性があり、また、債権者一覧表に記載されていない債権がある場合、その債権は免責されない可能性があります。

「家計表」家計を明らかにして毎月の可能返済額を明らかにします。公共料金の領収書やすべての預貯金通帳を出してもらい、細かく見ていきます。

「財産目録」生命保険解約返戻金、退職金、敷金も明らかにする

「陳述書」借金をするに至った経緯、家族の状況、職歴など

聞き取り調査でかなり時間を要します。必要書類を用意してもらい、それと、聞き取り調査で得た情報を検討して作成していきます。かなりの時間と手間のかかる作業となります。数回にわたり、長時間の面談が必要です。

(元金融業者などが書いた借金に関する本で、「弁護士などの専門家は破産を薦める、破産が一番手っ取り早く簡単だから」という旨の記載がたまにあるが、破産の申立書類の作成は、結構骨の折れる作業で、他の手続(借金整理)より手間暇のかかるケースは多くあります。いつどのような事情で借金をし、いくら借り、何に使ったかを詳述しなければならず、本人があまり覚えていないこともあり、多くの資料とつき合わせ、長時間にわたり本人と面談し、できるだけ正確に矛盾なく記述していくのは、長時間の作業を要します(もっとも、申立後については、問題がなければ、裁判所での審尋は簡単に済む場合が多いが)。現実的に破産が多くなっているのは、破産しか救われる道がない人が多くなっているからです。個人債務者再生の制度ができましたが、それにのっかることができる人は多くありません。破産手続は、手間暇がかかり、費用もかかるので、できるだけ破産以外の方法(過払金返還請求訴訟、特定調停など)を模索(その組み合わせも)しますが、やはりどう考えても、結局、破産しかないという人が多い)housin.htm

申立後

同時廃止の破産手続が、比較的迅速になされるようになってきたためか、免責確定まで、訴え提起し、勝訴判決を取得した上、給与などを差押える債権者は減ったように思えるが(判決が出る前に免責決定までいってしまい、債権者にとってあまりメリットがない。債務名義をすでに取得している債権者は別)、免責異議の申立をする債権者は増えているように思う。免責異議の申立は、免責不許可事由にあたる具体的な事実を主張する必要があるが、「嘘をついて借入れた」とか、「浪費である」とかの主張が多い。免責異議が出されても、おおむね裁判官の裁量で、免責許可されるケースが多い。破産申立書、免責申立書を債権者の方で閲覧できるので、そこに明かな「嘘」(免責不許可事由に関するもの)が記載されていた場合、免責不許可とされる可能性が高い。

個別の債務者審問で、裁判官より、財産、免責不許可事由等に関して質問があります。財産、免責不許可事由に関して管財人の調査が必要と判断された場合、小規模管財の指示があり、追加の予納金、郵券が求められます。この債務者審問の前に、書記官が念入りに書類をチェックし、不足があれば、追加の説明や書類が求められます。

免責審尋が終り、1ヶ月(以上)の異義申立期間を経、免責許可決定が出る。免責許可決定が官報で公告され、2週間の即時抗告期間を経て、免責が確定する。免責が確定すれば、当然復権する(破産者ではなくなります)。また、免責がなくても、破産宣告後、詐欺破産罪につき有罪の確定判決を受けることなく10年を経過すれば、復権します。(資格制限 sikakuseigenn.htm

破産・免責手続終了後、業者から、借入の勧誘などの電話・DMがあるケースが増えています。きっぱり断り、安易に応じないことが必要です。再度、多重債務に陥っても、原則10年間は免責されません。小口闇金 yami.htm 借金整理 shakkinnseiri.htm 概要 hasangai.htm

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以下、新法施行(平成171月)後、記述

破産法の目的に「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図る」と明記され、免責不許可事由に該当する場合でも、「裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当である認めるときは、免責許可の決定をすることができる」と明記されたのは心強い。

破産法改正後、実務が大きく変わったという印象はないが(特に司法書士が多く取り扱う同時廃止事案)、

新法後は、手続が合理化され、免責決定が早期に出されるようになった。特に問題のない(免責不許可事由等がない)同時廃止案件では、審尋なしで(申立人(破産者)は、1度も裁判所へ行くことなく)、手続が完了するケースもある。一般管財(小規模管財)事件では、財産状況報告集会等の期日に、免責許可決定書が交付されるケースがある。改正前は、免責審尋後、1ヶ月程度の異義申立期間があり、その後、免責決定が出されていたが、改正後は、破産手続開始決定後、意見申述期間が設けられ、その期間経過後、早期に決定が出されるようになった(問題がない場合だが)。一般管財(小規模管財)事件では、(以前は特に提出を要求されなかった)「管財補充報告書」や「自由財産拡張申立書」(これが特に重要)の提出が通常必要となる(あらためて報告することがなく、拡張するような財産がない場合は不要だが)。管財人へ引き継ぐ財産書類等がある場合、「引継書」(受領書のようなもの)を作成しておき、管財人との面談の際、財産書類等を管財人へ引継ぎ、管財人には「引継書」に押印してもらいそれを受取る。

管財事件の、自由財産拡張については、裁判所で詳細な運用基準が定められている。

(神戸地裁 尼崎支部では、「破産管財手続の運用と書式」(新日本法規)が備えられ、これに基づいているようだ)

免責許可決定確定の官報公告がなくなった(予納金がわずかだが安くなった)。yonoukinn.htm

偏頗弁済について、不動産の不当廉売(詐害行為)・適正価格による売却について hennpa.htm

管財と同時廃止の振り分け基準 furiwake.htm

強制執行の禁止・中止について

公正証書を作成されている、特定調停をしており調停調書等がある、判決が出ているなど、というように債権者に債務名義をとられている場合、破産の同時廃止事案については、免責が確定するまで、それに基づく強制執行がなされる危険性・不安が常につきまとっていた。給与の差押が一番恐ろしく、債務者にとっては痛手になるものである。新破産法では、「免責許可の申立(破産申立でそれがあるとみなされる)があり、同時廃止決定があったときは、免責許可の申立に関する裁判が確定するまでの間、強制執行が禁止され、既になされている強制執行は中止する」とされた。

したがって、管財事件の場合で破産開始決定がなされれば、強制執行は禁止等されるのはもちろんだが、同時廃止事件でも、破産開始・同時廃止決定で、強制執行は禁止・中止され、免責許可決定の確定により、中止されていた強制執行は、その効力を失うということになる。(ただ、既になされている強制執行の中止というのは、免責手続中、免責許可確定まで第三債務者(勤務先)の手元に差押相当額が留保され、破産者には支払われないことに注意)

保全処分として、申立があった場合の中止命令の規定(24条)も設けられたが、これは、「債権者に不当な損害を及ぼすおそれがないこと」が要件となっており、裁判所としては、管財事件ではできるだけ早期に破産開始決定をするという対応で、この中止命令を出すということ(もしくは中止命令の申立てを受付けること)には消極的なようだ。また、同時廃止事案でも同様だと思われる。もともと同時廃止事案は、配当するような財産がない(破産手続の費用すらない)ということだから、保全処分の必要性が乏しいとも言える。

債務名義をとられている債務者の(強制執行されるかも)という「不安の期間」は、改正前は、免責確定までであったが、改正後は、破産開始決定・同時廃止決定までに縮まった。

滞納固定資産税と滞納住宅ローン koteisisanzeitohasan.htm

破産の場合の資格制限 sikakuseigenn.htm

破産登記 hasantouki.htm

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