偏頗弁済について(新破産法)

債権者の中のある特定の債権者だけに弁済を続けたという場合。

免責不許可事由となるか?

252条1項1号 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為

「債権者を害する目的」

「債権者に不利益な処分」この「債権者」とは一般的には全債権者を指す。

「破産財団の価値を不当に減少させる行為」

免責不許可事由にあたるかどうかは、破産者の「不誠実性」が問題とされる。

その偏頗弁済が、他の債権者と比し、著しく不公平であり、他の債権者に対し、不誠実で、「債権者を害する目的」でなされているような場合は、不許可事由にあたるか。

弁済が困難にはなっているが、厳しい取り立てにあって、耐えきれず、わずかな金額を弁済した程度では、不許可事由にはあたらない。

義務なき偏頗の場合は、252条1項3号も問題となる。

否認の対象となるか?

162条 既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。

破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立があった後にした行為。債権者が悪意の場合。

悪意の立証責任は破産管財人、ただし、債権者が内部者(破産者の親族又は同居者等)である場合、義務なき偏頗(行為・時期・方法)である場合、債権者が善意の立証責任を負う。

「支払不能」「破産手続開始の申立」

義務なき偏頗行為(行為・時期) 支払不能になる前30日以内にされたもの。

故意否認は対象外。

支払不能後にされたものは、否認の対象となる可能性がある。

支払不能前にされた義務行為については否認の対象外。

支払停止(申立前1年以内のものに限る)があった後は、支払不能であったものと推定する。

したがって、支払いが困難になっており(支払不能)、一部の債権者だけに弁済を継続しているような場合、否認の対象とされる可能性がある。管財事件とされる可能性大。ただ、本旨弁済の場合、債権者の悪意が必要であるので、実際、否認権を行使され、否定されるケースは少ないと思われる。

不動産の処分について(新破産法)

不動産の不当廉売による売却(詐害行為)

160条.詐害行為(財産減少行為)。担保の供与、債務消滅に関する行為(偏頗行為)を除く。

故意否認。破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。受益者の悪意が必要(ただし、立証責任は、受益者)。

危機否認。破産者が「支払停止又は破産手続開始の申立があった」後にした詐害行為。破産者の詐害意思不要。受益者の悪意が必要(ただし、立証責任は、受益者)。

不動産の適正価格による売却

161条。否認できる要件

@ 不動産を隠匿しやすい金銭に換えるなど、その処分による財産の種類の変更によって破産者が隠匿等の処分をするおそれを現に生じさせるものであり、

A 破産者が、当該行為の当時、対価として取得した金銭等について、隠匿等の処分をする意思を有しており、

B 相手方もそのような意思を知っていた

立証責任は、破産管財人(160条と異なる)。ただし、相手方が破産者の親族等又は同居者等の内部者である場合、相手方は悪意と推定され、立証責任は転換されている。

適正価格による売却の場合、否認のためには、上記のような要件が必要となり、実際、否認されるケースは少ないと思われる。

免責不許可事由にあたるか

債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為

「債権者を害する目的」「隠匿」「債権者に不利益な処分」「破産財団の価値を不当に減少」

不当廉売の場合は、「債権者に不利益な処分」「破産財団の価値を不当に減少」にあたり、不許可事由にあたる可能性がある。

適正価格による売却でも、ケースにより「隠匿」等、不許可事由にあたる可能性はある。