破産の資格制限 (*作成中) 酒井司法書士事務所TOPindex.htm
資格制限に、破産者を含めることに合理性があるのかどうかは疑問であるが、実際、いろいろな資格制限があるので、現状、「法律」ではどうなっているか検討する。
・生命保険の外交員(生命保険募集人)について clickA
・警備員について clickB
・建築士について clickC
・司法書士、税理士等 clickD
(つづく)
「破産者で復権を得ないもの」が保険業法279条で登録の拒否事由になっています。
しかし、登録後は、保険業法307条で、任意的な取消事由となっています。
登録をし生命保険の外交員をしている人は、その後、破産した場合、復権するまでの間、どうなるのか。登録拒否事由となっていることを考えると、生命保険の外交員の仕事をすることは望ましくないということになると思います(ただ、破産したら直ちにその資格を失うような規定にはなっていないようである)。保険会社に知れた場合、その仕事はできなくなると思います(ただ、保険の募集ではなく、事務等の仕事であればできる)。もし、307条で取消された場合、復権しても3年間は登録することができなくなります(279条)。可能であれば、破産開始決定から免責確定(復権)まで、保険の募集人ではなく、内勤等にしてもらい、復権後、再び保険の外交員として仕事をするというのが理想(実際してもらえるケースは少ないと思われるが)。
保険業法
(登録の申請)
第二百七十七条 前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
一 商号若しくは名称又は氏名及び生年月日
二 事務所の名称及び所在地
三 所属保険会社の商号、名称又は氏名
四 他に業務を行っているときは、その業務の種類
五 その他内閣府令で定める事項
(保険業法施行規則
(登録申請書の記載事項)
第二百十三条 法第二百七十七条第一項第五号 に規定する内閣府令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 登録申請者が法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この編において同じ。)であるときは、その法人を代表する役員(法人でない社団又は財団におけるその代表者又は管理人を含む。以下この条から第二百十八条までにおいて同じ。)の氏名
二 登録申請者が生命保険募集人の使用人(当該生命保険募集人が法人であるときはその役員又は使用人)であるときは、当該生命保険募集人の商号、名称又は氏名
三 法第二百八十四条 の規定により所属保険会社を代理人として登録の申請をするときは、当該所属保険会社の商号、名称又は氏名)
2 前項の登録申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 第二百七十九条第一項第一号から第五号まで、第七号、第八号(同項第六号に係る部分を除く。)、第九号(同項第六号に係る部分を除く。)、第十号又は第十一号のいずれにも該当しないことを誓約する書面
二 登録申請者が法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この編において同じ。)であるときは、その役員(法人でない社団又は財団におけるその代表者又は管理人を含む。第二百八十三条及び第三百二条を除き、以下この編において同じ。)の氏名及び住所を記載した書面
三 前二号に掲げるもののほか、内閣府令で定める書類(登録)
第二百七十六条 生命保険募集人及び損害保険代理店は、この法律の定めるところにより、内閣総理大臣の登録を受けなければならない。
(登録の拒否)
第二百七十九条 内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その「登録を拒否しなければならない」。
一 「破産者で復権を得ないもの又は外国の法令上これと同様に取り扱われている者」
二 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から三年を経過しない者
三 この法律又はこれに相当する外国の法令の規定に違反し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から三年を経過しない者
四 「第三百七条第一項の規定により第二百七十六条の登録を取り消され、その取消しの日から三年を経過しない者」(当該登録を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しの日前三十日以内に当該法人の役員であった者で当該取消しの日から三年を経過しないものを含む。)又はこの法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において受けている同種類の登録(当該登録に類する許可その他の行政処分を含む。以下この号において「登録等」という。)を取り消され、その取消しの日から三年を経過しない者(当該登録等を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しの日前三十日以内に当該法人の役員であった者で当該取消しの日から三年を経過しないものを含む。)
五 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
六 申請の日前三年以内に保険募集に関し著しく不適当な行為をした者
七 保険仲立人又はその役員若しくは保険募集を行う使用人
八 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号のいずれかに該当するもの
九 法人でその役員のうちに第一号から第六号までのいずれかに該当する者のあるもの
十 個人でその保険募集を行う使用人のうちに第七号に該当する者のあるもの
十一 法人でその役員又は保険募集を行う使用人のうちに第七号に該当する者のあるもの
2 内閣総理大臣は、前項の規定により登録を拒否しようとするときは、あらかじめ、登録申請者にその旨を通知し、その者又はその代理人の出頭を求め、釈明のための証拠を提出する機会を与えるため、内閣総理大臣の指定する職員をして意見を聴取させなければならない。
3 前項の場合において、内閣総理大臣は、意見を聴取される者が正当な理由がないのに、意見の聴取に応じないときは、意見の聴取を行わないで登録を拒否することができる。
4 内閣総理大臣は、前三項の規定により登録を拒否したときは、遅滞なく、書面をもって、その旨を登録申請者に通知しなければならない。
第二百八十条 生命保険募集人又は損害保険代理店が次の各号のいずれかに該当することとなったときは、当該各号に定める者は、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
一 第二百七十七条第一項各号に掲げる事項について変更があったとき。 当該変更に係る生命保険募集人又は損害保険代理店
二 保険募集の業務を廃止したとき。 生命保険募集人若しくは損害保険代理店であった個人又は生命保険募集人若しくは損害保険代理店であった法人を代表する役員
三 生命保険募集人又は損害保険代理店である個人が死亡したとき。 その相続人
「四 生命保険募集人又は損害保険代理店である「法人」について破産手続開始の決定があったとき。 その破産管財人」 (*個人が規定されていないのは、なぜ? 死亡、法人破産等、業務ができない状態になった際のことが規定されているよう)
五 生命保険募集人又は損害保険代理店である法人が合併(法人でない社団又は財団にあっては、合併に相当する行為。次号において同じ。)により消滅したとき。 その法人を代表する役員であった者
六 生命保険募集人又は損害保険代理店である法人が合併及び破産手続開始の決定以外の理由により解散(法人でない社団又は財団にあっては、解散に相当する行為)をしたとき。 その清算人(法人でない社団又は財団にあっては、その代表者又は管理人であった者)
2 内閣総理大臣は、前項第一号に係る同項の届出を受理したときは、届出があった事項を生命保険募集人登録簿又は損害保険代理店登録簿に登録し、その旨を所属保険会社に通知しなければならない。
「3 生命保険募集人又は損害保険代理店が第一項第二号から第六号までのいずれかに該当することとなったときは、当該生命保険募集人又は損害保険代理店の登録は、その効力を失う。」
(*個人破産は届出事項になっていない?)
(登録の取消し等)
第三百七条 内閣総理大臣は、生命保険募集人、損害保険代理店又は保険仲立人が次の各号のいずれかに該当するときは、第二百七十六条若しくは第二百八十六条の「登録を取り消し」、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることが「できる」。
一 生命保険募集人若しくは損害保険代理店が第二百七十九条第一項第一号から第三号まで
(一 破産者で復権を得ないもの又は外国の法令上これと同様に取り扱われている者)
、第四号(この法律に相当する外国の法令の規定に係る部分に限る。)、第五号、第七号、第八号(同項第六号に係る部分を除く。)、第九号(同項第六号に係る部分を除く。)、第十号若しくは第十一号のいずれかに該当することとなったとき、又は保険仲立人が第二百八十九条第一項第一号から第三号まで、第四号(この法律に相当する外国の法令の規定に係る部分に限る。)、第五号、第七号、第八号(同項第六号に係る部分を除く。)、第九号(同項第六号に係る部分を除く。)若しくは第十号のいずれかに該当することとなったとき。
二 不正の手段により第二百七十六条又は第二百八十六条の登録を受けたとき。
三 この法律又はこの法律に基づく内閣総理大臣の処分に違反したとき、その他保険募集に関し著しく不適当な行為をしたと認められるとき。
2 内閣総理大臣は、生命保険募集人、損害保険代理店若しくは保険仲立人の事務所の所在地を確知できないとき、又は生命保険募集人、損害保険代理店若しくは保険仲立人の所在(法人である場合にあっては、その法人を代表する役員の所在)を確知できないときは、内閣府令で定めるところにより、その事実を公告し、その公告の日から三十日を経過しても当該生命保険募集人、損害保険代理店又は保険仲立人から申出がないときは、当該生命保険募集人、損害保険代理店又は保険仲立人の登録を取り消すことができる。
3 前項の規定による処分については、行政手続法第三章
(不利益処分)の規定は、適用しない。
警備業法で、破産者で復権を得ないものは警備員になれないとなっています。
警備業法
(定義)
第二条 この法律において「警備業務」とは、次の各号のいずれかに該当する業務であつて、他人の需要に応じて行うものをいう。
一 事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
二 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務
三 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
四 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務
2 この法律において「警備業」とは、警備業務を行なう営業をいう。
3 この法律において「警備業者」とは、第四条の認定を受けて警備業を営む者をいう。
4 この法律において「警備員」とは、警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事するものをいう。
5 この法律において「機械警備業務」とは、警備業務用機械装置(警備業務対象施設に設置する機器により感知した盗難等の事故の発生に関する情報を当該警備業務対象施設以外の施設に設置する機器に送信し、及び受信するための装置で内閣府令で定めるものをいう。)を使用して行う第一項第一号の警備業務をいう。
6 この法律において「機械警備業」とは、機械警備業務を行う警備業をいう。
第二章 警備業
(警備業の要件)
第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。
一 成年被後見人若しくは被保佐人又は「破産者で復権を得ないもの」
二 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者
三 最近五年間に、この法律の規定、この法律に基づく命令の規定若しくは処分に違反し、又は警備業務に関し他の法令の規定に違反する重大な不正行為で国家公安委員会規則で定めるものをした者
四 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
五 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 (平成三年法律第七十七号)第十二条 若しくは第十二条の六 の規定による命令又は同法第十二条の四第二項 の規定による指示を受けた者であつて、当該命令又は指示を受けた日から起算して三年を経過しないもの
六 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
七 心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの
八 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者。ただし、その者が警備業者の相続人であつて、その法定代理人が前各号のいずれにも該当しない場合を除くものとする。
九 営業所ごとに第十一条の三第一項の警備員指導教育責任者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者
十 法人でその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)のうちに第一号から第七号までのいずれかに該当する者があるもの
十一 第四号に該当する者が出資、融資、取引その他の関係を通じてその事業活動に支配的な影響力を有する者
(警備員の制限)
第七条 十八歳未満の者又は第三条第一号から第七号までのいずれかに該当する者は、警備員となってはならない。*ずばり資格制限
2 警備業者は、前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない。
(*警備員でも、交通整理のようなものについては、破産者の資格制限に合理性はまったくない。と思う。)
建築士法で、建築士については、「破産者で復権を得ない者」は、資格制限となっていない。しかし、建築士事務所開設者については、建築士事務所の登録拒否事由となっている(23条の4)。また、登録取消事由(必須)となっている(26条)。建築士事務所の開設者が破産した場合、破産管財人は届出義務を負う(23条の6)。この取消しをされた場合、「取消しの日から2年間を経過しない者」は登録拒否事由となっていることに注意(23条の4、1項2号)。
(*建築士事務所開設者にとっては厳しい規定)
欠格事由
「破産者で復権を得ないもの」は、司法書士となる資格を有しない。
登録の取消
「破産者で復権を得ないもの」に該当するに至ったときは、登録を取り消さなければならない。
税理士(税理士法)
欠格事由
「破産者で復権を得ないもの」は、税理士となる資格を有しない。
登録の取消
「破産者で復権を得ないもの」に該当するに至ったときは、登録を抹消しなければならない。
司法書士、税理士である者が、破産をすれば、登録の取消や抹消によりその資格を失うが、復権すれば「なる資格」が復活し、再度登録をすることにより(過去に破産をしたことは登録拒否事由にはなっていない)、司法書士や税理士として仕事ができるようになる。