Q、住宅金融公庫と銀行から住宅ローンを組んで一戸建の住宅を購入しました。1年ぐらい返済しましたが、事故により働くことができなくなり住宅ローンの支払ができなくなりました。その住宅は手放すことを決心し、すでに引越しをしそこには住んでいません。この住宅の時価は住宅ローン残高よりかなり安く、又場所が不便なところにあり売却が困難な物件です。借金はこの住宅ローンのみであったため、知合いの「破産はいつでもできるし、ほっといてもかまわない」というアドバイスがあり、支払わないままそのままにしてありました。1年後、住宅金融公庫の保証協会というところから、「代位弁済・差押予告通知」が届きました。そして、固定資産税も滞納していたため、役所から「財産調査の上、差押します」という通知が届きました。最近やっと就職し、わずかですが収入を得られるようになりました。このままほっといてもいいのでしょうか。いずれ破産はしたいと思っていますが、滞納している固定資産税がすこし心配です。

A、滞納固定資産税について。

破産をした場合

オーバーローン(不動産の時価より住宅ローン残の方が大きい)ということですので、その他、財産がなく、破産が認められ(財産がない場合、通常、同時廃止)、免責決定を得ることができれば、住宅ローンの債務はなくなります。しかし、固定資産税など税金は免責されません。オーバーローンであれば、破産手続の中(管財)で、不動産が売却されるということはないと思います(管財になれば任意売却ということはあるかもしれませんが。もしくは財団から放棄)。

参考)破産手続で言えば、固定資産税は「財団債権」か「優先的破産債権」になります。「破産手続開始前の原因により発生した租税等の請求権で、手続開始当時に納期限が未到来又は納期限から1年を経過していないもの」「破産手続開始後の原因により発生した租税等の請求権で、破産財団の管理、換価及び配当に関する費用に該当するもの」(財団債権)「破産手続開始前の原因により生じた租税等の請求権で、破産手続開始当時、納期限から1年を経過したもの」(優先的破産債権)。固定資産税は1月1日が基準となります。租税等の請求権(国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権)−国税・地方税・健康保険料・国民年金保険料など−は免責されません。

唯一の財産である住宅に抵当権が設定されていますので、このケースでは、その抵当権が優先します。破産手続とは別に以下の手続で不動産は処分されると思います。

担保権実行による競売の場合

おそらく固定資産税滞納されている役所は、その住宅(不動産)を差押さえ、又、担保権実行の際、交付要求(配当要求)すると思います。しかし、その配当順序は抵当権者が優先します。

登記された各担保権の「担保権設定登記日」と各公租公課の「法定納期限」とを比較。早い方が優先。「担保権設定登記日」と「法定納期限」が同日の場合、担保権が優先。

「抵当権設定登記日」と「法定納期限」を比べ早い方が優先しますので、抵当権者の方が優先します(抵当権は購入の際設定されている)。オーバーローンということですので、抵当権者(公庫等)にすべて配当され、固定資産税滞納の役所に配当はいきません。したがって、破産し免責を得たとしても、この固定資産税滞納分は残ってしまうということになります。競売により買受けた人に、前の所有者が滞納していた固定資産税納付義務はありません。固定資産税の場合、マンションの滞納管理費 tainoukanrihi.htm のように買受けた人にその支払い義務が承継されるというようなことはありませんので、売却の際、精算されるということはありません。

参考)東京高裁平成13年7月31日判決(判例時報1764号61頁)。この判例は、現行の不動産競売の実務では、固定資産税などを買受人に負担させないことを前提として、不動産の評価及び最低売却価額を決定しているから、固定資産税などを競落人に負担させることはできないとしています。

任意売却による場合

固定資産税滞納されている役所が、その住宅(不動産)を差押さえている場合、売却するためには、その差押を取り下げ(解除)してもらう必要があるので、売却で精算されます(精算できなければ任意売却ができません)。また、差押さえられていなくても、固定資産税の滞納があれば、いつでも差押できますので(役所の差押は、裁判手続を経なくてもできます)、それを精算する前提でないと取引が非常に危険になり任意売却が困難となります。任意売却の場合、通常は、滞納固定資産税は売却の際、精算され、なくなります。

したがって、任意売却以外の場合、滞納固定資産税は、残るということになります。(任意売却の場合でも、差押がなく、精算されずに残るケースはあります)売却が遅れれば、(支払わなければ)その分、滞納固定資産税は増えていきます。

滞納固定資産税が残った場合どうなるか。?固定資産税滞納の場合、おそらく差押対象は、預金や給与というのはあまりなく、当該固定資産だと思われる。その対象不動産が競売で売却され、納税義務者が破産をした場合、固定資産税を滞納されている役所は、どこまで追いかけてくるか。?破産をしており、支払いが困難な状況であれば、多くの場合、役所はあきらめる。?(この「あきらめる」−滞納処分の停止−というのが多いと思う)ただ、支払い能力・財産があれば、請求は続ける。?給与の差押までしてくる可能性は少ないが、絶対ないとは言えない。破産後、役所へ相談か。

参考)滞納処分の停止。滞納者に次のいずれかの事由に該当すると認められる場合には、滞納処分を停止することがあります。(滞納者からの申請は不要。あくまで職権に基づき決定します。)@滞納処分が執行できる財産がないとき。A滞納処分を執行することによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。B滞納者の所在及び滞納処分を執行することができる財産がともに不明であるとき。停止処分された後、資力の回復がなく、停止された状態が3年間続くと、納税義務が消滅することとなります。

国税徴収法 第153条関係 滞納処分の停止の要件等 通達

滞納者 1 法第153条の「滞納者」には、通則法第38条第3項((繰上保全差押え))の規定の適用を受ける納税者、同法第52条第1項((担保の処分))の規定により処分を受ける担保財産の所有者である物上保証人、法第24条第1項((譲渡担保権者からの徴収))の規定の適用を受ける譲渡担保権者及び法第159条第1項((保全差押え))の規定の適用を受ける納税義務があると認められる者は、含まれない。

滞納処分の停止の要件

(財産がない場合) 2 法第153条第1項第1号の「滞納処分を執行することができる財産がないとき」とは、判定時(滞納処分の停止をするかどうかを判定する時をいう。第153条関係において以下同じ。)において、次に掲げる場合のいずれかに該当するときをいう。 (1)既に差し押さえた財産及び差押えの対象となりうる財産の処分予定価額が、滞納処分費(判定時後のものに限る。)及び法第2章第3節((国税と被担保債権との調整))の規定等により国税に優先する債権額に充て残余を得る見込みがない場合 (2)差押えの対象となりうるすべての財産について差し押さえ、換価(債権の取立てを含む。)を終わったが、なお徴収できない国税がある場合

(生活の窮迫)3 法第153条第1項第2号の「生活を若しく窮迫させるおそれがあるとき」とは、滞納者(個人に限る。)の財産につき滞納処分を執行することにより、滞納者が生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態(法76条1項4号に規定する金額で営まれる生活の程度)になるおそれのある場合をいう。

(住居所及び財産不明の場合) 4 法第153条第1項第3号の規定は、滞納者の住所又は居所及び財産がともに不明な場合に限り、適用される。

(申請に基づかないこと) 5 法第153条第1項の「執行を停止することができる」とは、法第153条第1項第1号から第3号までのいずれかの理由に該当する場合には、滞納者の申請に基づかないで、税務署長が職権をもって滞納処分の停止ができることをいう。したがって、滞納者は、滞納処分の停止を受けないことについて不服申立て又は訴えを提起することができない。

hasanjitu.htm

Q&A QA4.htm