実現に向けての概要

 リモート運用を構想実現する上での目標と実現するに当たっての概略を紹介します。各機能の詳細は、次ページ以降で紹介しています。

リモート運用機能の目標(何ができれば良いか)

 リモート運用を構想する上での目標とした運用・操作の機能は、以下のようなこととしました。

  1. 無線設備関連機器の電源操作(無線機器、クランクアップタワー、ローテータ、照明、エアコン)ができること。
      ※リモート運用では、リニアを使用した1KW運用は原則制限をしています。
  2. 無線機器の操作(各ダイヤル、ボタン操作)ができること。
  3. 可能な運用は、電話・RTTY・PSK3・SSTV・CWの運用ができること。
  4. クランクアップタワーの操作(昇降・プリセット値へ昇降、風速・高さの表示切替)ができること。
    ※但し、状態表示は、シャック内のコントローラをリモートカメラ映像で監視する範囲
  5. ローテータの操作(回転、プリセット方向への回転)ができること。
    ※但し、状態表示は、シャック内のコントローラをリモートカメラ映像で監視する範囲
  6. 2台リグへのアンテナ切替、各バンド毎にバンド情報をトラッキングしてアンテナを切替(FT−2000Dのみ、TS−2000SXは手動切替)ができること。
  7. 50MHz直下型プリアンプに対する送受信切替操作及び、受信用アンテナ端子への切替操作ができること。

リモート運用イメージ

リモート運用の実現方法

  リモート運用するに当たっては、可能な限りフリーソフト及び、汎用の製品をカスタマイズすることで、専用の機器や有償ソフ トはなるべく使用しないで構築する方向としました。

  1. インターネット接続のシャック側は、一般的なインターネット(フレッツADSL40M)です。本来であれば光回線接続としたかったのですが、設置場所が未サービス地域であり断念をせざるを得ませんでした。
    遠隔制御シャックのリモート制御サーバとなるPCも、ごく一般的なディスクトップPCで、OSは、WindowsXP Proを使用しています。
    リモート運用側からは、遠隔制御シャックパソコンをリモートッデスクトップ機能で、画面を表示・操作できる形態としています。
  2. パソコンからの操作機能の実現方法
    1. 小電力の機器や、タワー・ローテータ・アンテナ切替等の操作は、汎用のDIDボード(共立電子産業の「RBIO-2U」)をリモート制御サーバよりのアプリケーションから操作し、AC系や電源負荷の大きい装置切替は、パワーリレーを配した電源制御ボックスで行っています。
    2. 無線設備(リグ)操作は、各トランシーバメーカから提供されているパソコン操作ソフトを利用し、実現しています。
      ・FT−2000 : PPC2000
      ・TS−2000 : ARCP2000
      ※若干制約はでますが、HamRadioDeluxe等のフリーソフトでも運用は可能です。
    3. 音声、CW、RTTY、PSK3等の利用は、無線機と接続に、米WestMountainRadio社製のRigblasterを仲介させるインターフェースを取っています。

音声の交換

受信音及び、SSB/FM/CW(受信時)運用時の音声交換は、フリーソフトのSkypeを利用し、パソコンを経由した音声の交換を行っています。
※CW送信は、電鍵やエレキーをインターネット経由で運用することは、伝送遅延があることから困難ですので、ソフトウェアを利用したCW送出する形態とし、送信電文はキーボードからの入力です。

運用状況の監視

運用状況の監視は、Webカメラ(シャック内、タワー状態確認用の2台)により、状況を監視できる仕組みとしました。 カメラ操作により、上下・左右・ズームインアウトで可動させることができ、夜間用に屋外カメラには、カメラの電子スイッチからリレーを接続し、照明を点灯させ、タワー昇降時にケーブル等の絡まりがないかを確認できるようにしました。

セキュリティ

 インターネットを利用することから、セキュリティを意識する必要があります。オペレーションは煩雑になりますが、各所にセキュリティゲートを設けると共に、不正利用監視機能を設けています。

エマージェンシーフェールセーフ機能

 遠隔からの運用の場合、オペレータがいない状態で運用する訳ですので、緊急時の対応をあらかじめ考慮しておく 必要があります。当然のことながら、100%の対応は困難であり、総務省からの「インターネットを利用してアマチュア無線局の遠隔操作を行うための指針」にもある「電波が連続的に発射し、停波しなくなる等の障害が発生したときから、 3時間以内ににおいて速やかに電波の発射を停止できることが確保されているものであること」との規定にまずは対応することが前提です。停波することが絶対条件ですが、緊急事項はそのほかに色々と想定はできます。今回のシステムでは、その一部を補完するために、以下の対策を施しています。詳細については、 別項に記載しておりますので、ご参照下さい。

  1. 電源制御の二重化(主幹電源のON/OFF)
  2. 緊急時のタワーの降下
  3. 異常時のパソコンのリブート機能
  4. インターネットパソコンが利用できない場所からの携帯電話Web機能による上記操作