注意事項

 このページでは、SCSIボードをメーカーが想定していない使い方をすると云うようなメーカー保証外の内容が多く含まれます。
 この様なメーカー保証外の内容についてサポートに問い合わせたりすることは、多大な迷惑をかけますので絶対にしないでください。
 また、保証外の行為を行ったがために機器の故障やデータの損失等、思わぬトラブルが起こってもメーカーや当研究所ではいかなる責任も負いません。
 あくまで、自己責任でお願いします。m(_ _)m
 なお、この記事を参考に、HDDを運用する場合、事前にバックアップをとっておくことを強く勧めます。

 この企画のページの文章や、表、図の無断転載は禁止します。

なぜ、スルー化が必要か ★

 PC-9801FA/FS/FX、A MATEシリーズ、FC-9801Fmodel 2、PC-H98model105では、SCSI仕様 HDDユニットやファイルスロット機器を内蔵、交換でき、非常に便利なのですが、PC-H98model105を除き、これらの機種専用の SCSI I/Fボード (縦 SCSIボード) が必要になります。

 そこで問題になるのが、専用の SCSI I/Fのデータ転送速度が、最高でも、約 2MB/Sと、今となっては低いことです。この点に注目したのが、現在は、PC事業から撤退した、緑電子でした。このメーカーでは、PC-9801FA/FS/FX、A MATEシリーズ用に、スルーボード (MDC-FA001) という、PC本体内から、SCSI信号線をボード上の外部コネクタに引き出して、内蔵用SCSI機器を Cバス SCSIボードに接続するためのボードを販売しました。

 これにより、Cバス SCSI I/Fボードに、SMITや、バスマスタ転送の物を使えば、データ転送の高速化が可能になります。データ転送を高速にする以外にも、IDEデバイスを排除することにより、セットアップメニューから 「内蔵固定ディスクを切り離す」 ことで、IRQ 3を開放できると言う利点があります。

 注意、PC-9821Afでは、「内蔵固定ディスクを切り離す」 に設定しなくても、IDE仕様の HDDを外せば、自動で開放できます。「切り離す」に設定してしまうと、SCSI接続の HDDも切り離されます。一応、自分がはまったので念の為。(^ ^;;

 しかし、現在では、このボードを入手することは、不可能となっています。定価が、14,800円 (メーカー直販で、11,840円) と高価で、コアなユーザー向けだったため、販売期間は、長かったのですが、流通量は少なく、中古市場に単品で出ることは有りません。
 ちなみに、某オークションでは、3万円以上という超プレミア価格で取り引きされています。(^ ^;;

 それでは他に方法は無いのかと言うと、縦 SCSIボードをスルー化する (擬似スルーボード化) という方法があります。そこで、ここでは、SCSIボードのスルー化について、簡単にまとめてみようと思います。詳しい方法と結果は、SCSIボードのスルー化の記事を読んでください。

 なお、この方法では、縦 SCSIボード自体もリソースを消費するため、拡張により、PCの割り込み等が不足気味な環境では、注意が必要です。(特に、Ap3/ As3のファイルベイモデルで、HDDは、SCSI仕様、CD-ROMは、ATAPI仕様なんて時は、結構痛いです。(^ ^;;)

 ちなみに、ボード自体をパターンカット等により改造すれば、今回のように設定のみでスルー化できないボードや、スルー化した際のリソースの問題等が解決できますが、不可逆の改造になるため、ここでは取り上げません。

擬似スルー化の基本操作

 縦 SCSIボードでのスルー化の方法を、簡単にまとめると、以下のようになります。>

  • Cバス用 SCSIボードと 縦 SCSIボードで、リソースと、ボードの SCSI IDが重ならないように設定する。
  • 縦 SCSIボードの BIOSを切る。
  • それぞれのボードを本体に取りつける。
  • それぞれのボードの I/Fをケーブルで接続する。

となります。

* リソース: 割り込み (INTまたは、 IRQ)、 DMAチャネル、I/Oアドレス、メモリアドレスのこと。

スルー化に使える 縦 SCSIボード

 前述の方法で、スルー化を行う場合、Cバス側のボードは大体どんな物でも問題無いのですが、縦 SCSIボードでは、ボードによって、スルー化の可否 (ボード自体を、改造する分には、この限りではありません。) があります。表にまとめると以下のようになります。なお、対応 OSは、メーカーの公式発表とは、一部異なります。

メーカー 型番 転送方式 仕様 対応 OS スルー化について 備考
DOS Win3.1 Win95 Win98 WinNT 結果 補足
NEC PC-9801FA-02 DMA, CPU SCSI-1 ×  スルー化には、ボード自体の改造が必要。  NECチェックがある。
NEC PC-9821A-E10 DMA, CPU SCSI-1  リソースを DMA 1に変更できるため、設定変更のみで、スルー化が容易。  白丸のシールが無い物は、1GB以上の領域からブートできない。
NEC FC-9801F-02 DMA, CPU SCSI-1 ×  PC-9801FA-02と同じ。  NECチェックがある。
FC-9801Fmodel2用のボードで、PC-9801FA-02と同等で、固定金具が異なる。
Win98は、本体が非対応なので、公式には非対応だが、FA-02と同等なので使える。
Logitec LHA-15FA DMA, CPU SCSI-1 ×  設定を変更すると、正常動作しないため、スルー化には、相手のボードのリソースを変更する必要がある。  公式には、Win95/ 98非対応だが、55ボードのドライバで使用可。
Logitec LHA-25FA DMA, CPU, BurstDMA SCSI-1 ×  現在実験中。  公式には、Win95/ 98非対応だが、55ボードのドライバで使用可。
ICM IF-2560 DMA, W-FIFO SCSI-1 × × × ×  設定を変更すると、正常動作しないため、スルー化には、相手のボードのリソースを変更する必要がある。  Win95非対応。
ICM IF-2560 DMA, W-FIFO SCSI-1 × ×  設定を変更すると、正常動作しないため、スルー化には、相手のボードのリソースを変更する必要がある。  MATE対応版。Mのシールが目印。Win98では、Win 95のドライバで使用可。
緑電子 MDC-FA001 - -  専用ボードなので、当然ながら、問題は無い。  内蔵用SCSI機器を Cバス SCSIボードに接続するためのスルーボード。

 * なお、PC-H98model105や、SCSIオンボードの CanBeでも同様な方法で、スルー化できるそうです。

 また、以下の組み合わせで、成功したことを確認しています (動作を保証しているわけではありません)。

SCSI バス側 Cバス側
NEC PC-9821A-E10 PC-9801-100, AHA-1030P, IFC-NN, SC-98IIIシリーズ, IF-2769, IF-2771, MDC-926Rs
Logitec LHA-15FA SC-98IIIシリーズ, MDC-926Rs
ICM IF-2560 (MATE対応版) IF-2769, IF-2771, MDC-926Rs

 ただし、この方法は、あくまでイレギュラーであるため、特に、この方法と合わせて、外部 SCSI機器を利用する場合、ドライブを認識しない、データ転送が遅くなる、データ化け等の大きな問題が発生する場合があります。

 次ぎに、その理由に迫ってみたいと思います。

スルー化と問題点

 通常の場合と、スルー化した場合の SCSIデータ転送路を、以下に示します。なお、図中の赤の矢印が、データの転送路と方向を示します。

● 通常の場合

通常の場合

  A-E10の内部コネクタ-> 内蔵HDD-> 内部配線 40cm-> A-E10の外部コネクタ (終端)

● A-E10でスルー化した場合

A-E10でスルー化した場合

 A-E10の外部コネクタ-> 内部配線 20cm-> 内蔵 CD-ROM -> 内部配線 20cm-> 内蔵 HDD-> A-E10の内部コネクタ-> A-E10ボード (終端)

● スルーボード (FA001) で、スルー化した場合

スルーボード (FA001) でスルー化した場合

  FA001の外部コネクタ-> 内部配線 20cm-> 内蔵 HDD-> 内部配線 20cm-> 内蔵 CD-ROM-> FA001の内部コネクタ-> FA001の外付け終端抵抗 (終端)

 ここで、注意が必要なのが、SCSI転送路の長さと、PC内部のデータ転送路、A-E10ボードの終端抵抗です。特に、PC内部のデータ転送路は重要で、低インピーダンス (分布容量が大きい) となっているため、最近の高インピーダンスのケーブルを併用したり、長いケーブルの先に有ると、Cバスボード側が、SCSI-2仕様 (最大データ転送速度 10MB/S) の場合、高速に大量のデータが流れるため、ノイズなどの影響が大きくなります。

 よって、Cバス SCSIボードと、スルーボードの間は、直結でないとまずいという事になります。

 これについて、直結ではなく、間に SCSIデバイスをはさんでみたり、ハイインピーダンスのケーブルを混ぜた場合など、幾つかの実験により、擬似スルー化の場合も、外付けドライブを接続しなければ本物に対し遜色はなく、ターミネーションも、SCSI-1対応のためアクティブかどうか判りませんが、それが関係すると思われるような現象は今のところない。ということがわかっています。

 次ぎからは、擬似スルー化についてより詳しく、検証していきたいと思います。

検証、A-E10のスルー化の安定性 (外部 SCSI機器が無い場合)

 安定性に疑問が残る、A-E10のスルー化にあたり、一番厳しいテストになるのは、WindowsNT4.0のインストールでしょう。これは、SCSI/ IDE周りのエラーが無いか確認するために良く使われるテスト法で、これがうまく行けば、問題無しとなります。また、Win9xでの場合でも調査してみました。

● WinNT 4.0のインストール

 そこで、疑似スルーボード使った、NT4.0インストールの結果を頂きました。結果的には全く問題無しで、NTFSは FATより SCSI経路の性質に敏感 (特に、インストール中には) なことから、これが成功したことで、疑似スルーボードの実用性は検証されたといえます。

 実験環境は、外付けドライブを使用出来ないので CD-ROMは、2nd SCSIの PC-9801-100に接続してインストールしました。NTは DOSに依存しないため、ファイルスロット CD-ROMが無くても問題ありません。

 一方、Win9x だと DOSレベルで認識された CD-ROMが必要なので、ファイルスロット CD-ROMが必須となります。以下に、その時のベンチマークの結果を示します。

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 ★ ★ ★  HDBENCH Ver 3.22  (C)EP82改/かず ★ ★ ★
M/B Name    PC-9821An/U8W
Processor   WinChip 2 210.00MHz[CentaurHauls family 5 model 8 step 7]
VideoCard   ON BORAD S3
Resolution  1024x768 (8Bit color)
Memory      129,468 KByte
OS          Windows NT 4.0 (Build: 1381) Service Pack 1
Date        2001/10/22  07:13

PC-9801-100
  PIONEER CD-ROM DR-U10X  1.07

MELCO SMIT SCSI IFC-NN
  QUANTUM FIREBALL ST3.2S 0F0C

   ALL  Integer   Float  MemoryR MemoryW MemoryRW   DirectDraw
  3171     7024    5123      2856    1375     3151            2

Rectangle   Text Ellipse  BitBlt    Read   Write     Copy  Drive
     5794   4558    1300       12    3265    3960     1900  C:\20MB
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● Win98のインストール

次ぎに、Win98でのインストール実験結果です。こちらも無事に完了とのことです。

ただし、Win9xは、PnP対応のために、勝手にドライバを組み込むことの弊害が直に出てしまうようです。以下に、その時のベンチマークの結果を示します。

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 ★ ★ ★  HDBENCH Ver 3.22  (C)EP82改/かず ★ ★ ★
M/B Name PC-9821An/U8W
Processor   WinChip 2 210.01MHz[CentaurHauls family 5 model 8 step 7]
VideoCard   スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821 シリーズ)PC-9821 86C928
(S3)
Resolution  1024x768 (8Bit color)
Memory      129,524 KByte
OS          Windows 98 4.10 (Build: 1998)
Date        2001/10/22  23:18

SCSI[X]=NEC PC-9801-92/PC-9821A-E10 (CPU Transfer Mode)
SCSI = MELCO IFC-NN PnP mode SCSI Interface Board
SCSI = NEC PC-9801-100 SCSI-2

ABC = QUANTUM FIREBALL ST3.2S  Rev 0F0C
D = GENERIC NEC  FLOPPY DISK
E = PLEXTOR CD-R   PX-R412C  Rev 1.04
X = NEC CD-ROM DRIVE 4 M Rev 1.0

   ALL  Integer   Float  MemoryR MemoryW MemoryRW   DirectDraw
  3221     7763    5606      2305    1322     2945            3

Rectangle   Text Ellipse  BitBlt    Read   Write     Copy  Drive
     6556   4574    2098       11    3205    3870     1623  B:\20MB
-------------------------------------------------------------

● Win95のインストール

 こちらは、自分で確認しています。擬似スルーボード併用で、Win95のインストールを行うと、インストール中に、インストーラが、擬似スルーボードを発見し、A-E10用のドライバを組みこんでしまうため、必ず途中でハングアップします。

 回避法は、一度、再起動し、Safeモード (起動時に 「f ・ 8」キーを押す) を立ち上げてから、A-E10用のドライバを削除し、再起動すればインストールを続けることができます。

 なお、安全にインストールしたい場合は、インストール時だけ、Cバス SCSI I/Fを外し、A-E10等、縦 SCSIボードのみでインストールする必要があります。

● インストール実験のまとめ

疑似スルーボードの扱いを、WinNTと Win98で比較すると、

  • WinNTでは、ドライバが無いのでハードウェアとして認識されないため、当然リソースを全く消費しない。また、ボードの設定も SCSIを 7以外にすれば、後はどうでも構わない。
  • Win98ではドライバが強制的にインストールされるのでハードウェアとして存在し、A-E10 (擬似スルーボード) で設定したリソースが無駄に使われている。
  • Win95では、ドライバを削除できるが、Win98同様、リソースが無駄に使われる。

となります。また、これらの結果から、疑似スルーボードを使う場合、WinNTが適しているともいえます。

擬似スルー化で外付け機器を使う場合、その 1 (SCSI I/Fボードの 2枚挿し) ★

 さて、擬似スルー化では、外付け機器が使えない、または、接続すると動作が不安定になることが分かりました。しかし、外付け機器が使えないからといって、ファイルスロット用 CD-ROMや、 MOを今から用意したり、用意できても、これらの機器は、いまとなっては、性能が低いため、どうしても外付け機器に頼らなければならないのが、現状です。

 この場合、まず、考えられる可能性は、Cバス SCSI I/Fボードを、2枚用意し、一枚を擬似スルーボードへ直結し、もう一枚を、外部機器に接続するというものです。

 そこで、スルー化の安定性のチェックと合わせて、Adaptec製 Cバスボードの AHA-1030P 二枚と、疑似スルーボードとの組み合わせをチェックしました。その接続の図を、以下に示します。赤の矢印は、内蔵機器用の 1st SCSIボードの経路、青の矢印は、外部機器用の 2nd SCSIボードの経路です。

2枚挿しとスルー化の経路図

 ここで、AHA-1030Pの ASPIマネージャでは、以下のように設定してあります。

 一枚目: AHA-1030P Port1840h IRQ=3 -> 疑似スルーボード-> Quantum FB 2GB (内蔵)
 二枚目: AHA-1030P Port3840h IRQ=5 -> MELCO CDS-10 (PIONEER) -> ICM RX-500

 疑似スルーボードの設定は DMA=0, INT=3とし、PC側は、内蔵 HDDは 「使用しない」 という設定で、見事に動作しました。動作確認のため、2nd側に接続されたドライブで SCANDISKを実行してもノーエラーでした。

 ただし、ケーブルを変えたり、幾つかの実験により、接続ケーブルやターミネータをひどく選ぶ事がわかりました。もし、このような構成で、動作が不安定ならそれらを疑う必要があります。ちなみに、最初に、Arvelの変換コードを使ったところ散々だったそうです。(^ ^;;

 疑似スルーボード と 2枚挿しの組み合わせで、 Win98を動かした証拠を以下に示します。なお、A-E10は削除してありますので見えていません。

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★ ★ ★ HDBENCH Ver 3.22 (C)EP82改/かず ★ ★ ★
M/B Name PC-9821An/U8W
Processor WinChip 2 210.01MHz[CentaurHauls family 5 model 8 step 7]
VideoCard スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821 シリーズ)
      Full-Color Window Accelerator Board A/VRAM (S3)
Resolution 1024x768 (32Bit color)
Memory 63,992 KByte
OS Windows 98 4.10 (Build: 1998)
Date 2001/11/03 10:51

SCSI = Adaptec AHA-1030P SCSI-2 Interface Card
SCSI = Adaptec AHA-1030P SCSI-2 Interface Card

ABC = QUANTUM FIREBALL ST3.2S Rev 0F0C <1stに接続
D = GENERIC NEC FLOPPY DISK
E = GENERIC NEC FLOPPY DISK
F = IBM DSAS-3540 Rev S47W    <2ndに接続
G = PIONEER CD-ROM DR-U10X Rev 1.07  <2ndに接続
H = NEC CD-ROM DRIVE 4 M Rev 1.0     <1stに接続

ALL Integer Float MemoryR MemoryW MemoryRW DirectDraw
2229 7801 5631 1947 1171 2859 0

Rectangle Text Ellipse BitBlt Read Write Copy Drive
2759 1904 1592 2 1805 2018 1144 B:\20MB
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擬似スルー化で外付け機器を使う場合、その 2

 前述の通り、擬似スルー化で、外付け機器を使わなければならない場合、Cバス SCSIボードを 2枚用意する必要があることが分かりましたが、スルー化のためだけに、スロットとリソースを 3つも消費するのは、あまり現実的とはいえません。

 そこで、A MATEの内部配線がローインピーダンスなら、ローインピーダンスケーブルだけを使えば、外部機器も接続できるのでは無いかというのが、ここでのテーマです。

 ちなみに、ハイインピーダンスケーブルを使った場合、Cバス SCSI I/Fを メルコ製 IFC-NNにし、外付け機器に、IO-DATA製、外付けHDDユニットの 「UHDS4.3GB」 (IBM DCAS-34330使用のもの) を接続した場合、認識されなかったり、データ化けしたりと、無残な結果でした。

● 外付け機器が 1台の場合

 これを実現するにあたって、現実的に、ローインピーダンスケーブルは、古い HDD付属品だけで、現在は入手出来ないこと。特に、ミニ D-Subタイプのものは、変換ケーブルを含めてまず無いことが、実行する上での障害となります。また、やたらに変換コネクタを使えばそれがエラーの原因になりかねません。

 そこで、まずは、外付け HDDとして、 SCSI-1仕様の ICM製 RX-500、ケーブルはその付属ケーブルと、見るからにローインピーダンスっぽい鼠色のものを用意し、AHA-1030Pを「同期転送しない」に設定して実験をやって見ました。

 鼠色ケーブルは 1mもある長いもので、これまでの実験では、考えられる品質の問題と、ミニ D-Sub付きドライブには、つなぎにくいために使わず、また、RX-500付属ケーブルも 70cm位で、同じく使わなかったものです。
 変換コネクタは、ミニ D-Sub (オス) と、櫛形 (アンフェノールハーフ) の (メス) タイプを使用しました。

 結果は、内蔵でも外付けでもエラーは全く発生しないことが判りました。AHA-1030Pだけでなく、メルコ製 IFC-NNでも OKでした。ハイインピーダンスケーブルで外付けドライブを AHA-1030Pに接続した時より、SCANDISKもスムーズに進行しました。

 気になるパフォーマンスですが、元々のドライブが転送速度に比べてかなり低いレベルなので、ほとんど低下しませんでした。

● 外付け機器が 3台の場合

 そこで、Cバス SCSIボードを、SMIT転送の IFC-NNに変更し、さらに、CD-ROM 1台と ICM RX-1000を追加しました。CD-ROMは、時代物の Plextor 8PLEXです。ハイインピーダンスケーブルでこんな接続は、考えられないでしょう。その接続の図を、以下に示します。赤の矢印は、データの経路です。

外付け SCSI機器の接続図

  IFC-NN-> 70cmケーブル-> 8PLEX-> 70cmケーブル-> RX500-> 70cmケーブル-> RX1000->
      70cmケーブル-> 疑似スルーボード-> 内部配線 20cm-> (内蔵CDROM->) 20cm内部配線->
         内蔵HDD Quantum FBST 3.2GB-> 疑似スルーボード(終端)

 疑似スルーボードまでに、70cmケーブルが 4本も入りますが、内蔵ドライブ (Quantum FBST3.2GB) の動作は極めて良好でした。ちなみに、データの転送速度は、IO-DATAの 「INSPECT V1.20」 で、以下のようになりました。

Sequential Read 2,212KB/S
Sequential Write 2,212KB/S
Random Read 1,396KB/S
Randoml Write 2,212KB/S
総合評価 HighRes. 2,008点

 なお、ハイレゾでもノーマルでも同じ結果になりました。MS-DOSでは、PIO転送の AHA-1030Pとの差が案外小さいようです。さらに、IFC-NNに換え、IF-2769でも実験してみたところ、結果はIFC-NNと完全に一致でした。

● ここでのまとめ

 以上の結果より、

  • A-MATEにはローインピーダンスケーブルの方が適している。

  • ローインピーダンスケーブルを使えば疑似スルーボードで、外付けドライブを使うことも可能である。

 という仮説は、正しかったということがわかりました。

擬似スルー化と HDDの相性

 今回の一連の実験の中で、IO-DATA製、外付けHDDユニットの 「UHDS4.3GB」 (IBM DCAS-34330使用のもの) を接続すると、トラブルに見舞われることが多い事がわかりました。このときは、ハイインピーダンスケーブル接続で実験していましたが、このドライブを櫛形コネクタに改造するか、同等品 を作って、ローインピーダンスケーブルで接続した状態で、正常動作を確認すればより完璧な検証になります。

 そこで、バラックではありますが UHDS-4.3Gの櫛形化を敢行、これを含む形での動作をチェックしました。

 使用したコネクタアセンブリは、RX-1000のものですが、ドライブまでが往復していない、枝型配線となる
タイプで、あまり感心出来ません。以下の結果は、その影響を受けている可能性がありますが、従来の使用経験でも同じような傾向があったので、大きな違いはないとのことでした。

 まず、単独で接続した場合は、どれも特に問題は有りませんが、他の HDDの動作チェックのため、接続を替えた後は暫くあれやこれやする必要が有りました。しかし、一度動き出せば安定していました。

● あやしい UHDS-4.3G

ここで、元々UHDS-4.3Gはなかなか気難しいところがあり、複数台接続すると赤ランプ点きっぱなしで固まることが多いのですが、案の定、いろいろな問題が発生しました。

 細かいことを省略し、結論だけを書くと、協調性が無く、他ドライブとチェーン接続すると、データ転送速度の低下など芳しくない結果になりやすいようです。

 これは、疑似スルーボードが無くてもそうなので、DCAS-34330の個性と見ることが出来そうです。しかし、疑似スルーボードが絡むと問題は重大になって来ます。

 「櫛形UHDS-4.3G」と内蔵 FB ST3.2GBを接続して何度目かのテストをしようとしたらデータ化けが発生しました。重症で IFC-NNでは初期化しようが FORMATしようが BOOT可能な状態になりませんでした。このことより、疑似スルーボードに、DCASは鬼門という印象を受けました。

最終結果

 以上の多くの実験結果から、なるべく安全にスルー化を行う場合に、最も注意すべき点は、

  • スルーボード (MDC-FA001) も擬似スルーボード (A-E10等) も大きな違いは無い。
  • スルー化の際には、Cバスから直結し、外部 SCSI機器は使わない。
  • 外部 SCSI機器を使用するには、低インピーダンスケーブルで統一することが必要。
  • 接続するハードディスクドライブにクセがある場合、スルー化によって、相性の問題が大きくなることがある。

である。という結論になりました。m(_ _)m

余談 (A-MATEでの HDDの換装と、電源ユニット)

PC-9801FA/ FS/ FXや A-MATE (特に Af, An) で、SCSI HDDを内蔵するときは、消費電力の少ない物を選びましょう。 (^-^)b

 消費電力の大きいドライブを内蔵すると、貧血状態となり、IDスキャンでハングアップしたり、HDDのデータ転送速度の低下、データ化けやエラー、ドライブが認識されない等、HDDが正常動作しなくなるほか、OSのフリーズ、強制リセットなど、PC全体が、正常動作しなくなることがあります。
 また、Win9x/Win3.1/DOSでは、異常が無くても、WinNTで、エラーやエラーログが大量に出ることもあります。

 特に、Afや、 Anの電源ユニットは、負荷に非常に弱く、始めは、異常が無くても、長期にわたって使用していると、最悪、電源ユニットが壊れます (同時に、マザーが巻き添えを食らって昇天することも十分ありうる (^ ^;;)) 。電源スイッチを入れて、一発で起動しない場合は要注意です。

 もし、スルー化に限らず、データ化けなどが、一向に収まらないときは、この辺も疑ってみると良いでしょう。CPUを標準から交換していれば当然ですが、ローカルバスボードの Power Window 964LBや、PC-9821A-E09で、VRAMを 4MBに増設していたり、ローカルバスボードを 2枚内蔵したりすると、これだけでかなりの電力を消費します。
 また、ファイルスロット機器を使用しているときも、CD-ROMや、MOでは、それなりに消費し、電源ユニットに負荷がかかリます。

 内蔵できる HDDの目安としては、経験上だいたい、5,400回転クラスまでなら大丈夫だと思います。ちなみに、7,200回転の DDRSを (無謀にも) 内蔵したときは、度々、IDスキャンでハングアップしたりして、正常に認識されませんでした。(^ ^;;

 今回の実験で度々登場する、Quantum Fire Ball ST 3.2GBは、内蔵から外付けにしたところ、データの転送速度が 10〜15%ほど向上したそうです。

 この他にも、FA/FS/FXや、A-MATEでは、特に、筐体内が密であるため、熱がこもり易く、HDDの発熱にも注意が必要です。




PC-98, PC-9801, PC-9821, PC-H98, PC-9800, FC-9801, FC-9821, FC-9800, SV-98, 98SERVER, VALUESTAR, CanBe, 98NOTE等は、NEC社の商標または登録商標です。

Windows, MS-DOSは Microsoft社の商標または登録商標です。

この他、製品名、型番等は、一般に各メーカーの商標または登録商標です。