注意事項

今回の企画では、メーカー保証外の内容も含まれます。メーカー保証外の内容についてサポートに問い合わせたりすることは絶対にしないでください。また、保証外の行為を行ったがために機器の故障や、データの損失等、トラブルが起こってもメーカーや当研究所ではいかなる責任も負いません。あくまで自己責任でお願いします。m(_ _)m

なお、この記事を参考にHDDを運用する場合、事前にバックアップをとっておくことを強く勧めます。

この企画のページの文章や表の無断転載は禁止します。

なぜ 2枚挿しなのか

● BIOSの問題と対策

 Cバスに 8GB以上の大容量 HDDを接続する場合に、問題となるのが、ボード上の BIOSです。ほとんどの、Cバス SCSIボードでは、発売当時、8GB以上の HDDを接続することを想定していなかったためBIOSが、8GBの壁を持っています。
 この壁により、8GB以上の容量を持つ HDDを接続するとHDDの全容量を正常に認識できない、SCSIチェック後にハングアップなど、正常に動作しなくなる可能性Gが考えられます。

 しかし、これは、あくまでBIOSの問題なのでこの BIOSを無効にしてしまえば、そのボードに接続したデバイスから、ブート (起動) はできないものの、8GB以上の大容量 HDDを接続することができます。

● 2枚挿しのメリット

 8GB以上の大容量 HDDを接続する以外にもそれぞれのボードに、7台ずつデバイスが接続できるので合計 14台のデバイスを接続することができます。

 また、ノイズの発生し易い、スキャナをメインの I/Fからはずし、2枚目の I/Fにつなぐことで動作を安定させたり、A MATEでは、スルー化を行うと外部 SCSIデバイスがまともに使えなくなるので縦 SCSIボードを起動用、Cバス SCSIボードを外部デバイス用にするときなどにも有効です。

 そこでここでは、Cバス SCSI I/Fボードをブート用とデータ用の 2枚同時に内蔵しようというのが、今回のテーマです。

 理論上は、2枚の SCSIボードのリソース (割り込み、DMAチャネルなど) が重ならなければ、 2枚挿しができるはずですが、2枚挿しを想定して設計されている Cバス用ボードは少なく、ボード同志の相性や、仕様等の関係でそう簡単にはいかないのが現実です。

 なお、NECで唯一、SCSIボード の2枚挿しをサポートしているのは、カセット磁気テープユニット (CMT: PC-98B55) を接続する場合です。この場合は、CMTを接続する側のリソースを変更するようです。A-E10の説明書を読む限りでは、ボードの種類の規定は無いようです。

● 2枚挿しの問題

 もちろん、これには問題もあり、2枚挿しできても2枚目 (2nd) の BIOSが切られているためWin9x, WinNT上からは、アクセスできるものの、DOS, Win3.1では、そのボードに対応した ASPIマネージャを組みこまないと2ndに接続されたデバイスにアクセスすることができません。

 また、最近の SMITや、バスマスタのボードでは、ボード上の専用チップを BIOSで制御してデータ転送の高速化を実現している場合があり、このようなボードでBIOSを切ってしまうとデータ転送が大幅に低下する場合があります。

 ちなみに、サードパーティ製品では、2枚挿し専用の SCSI I/Fボードを発売していたことがありました。特に、加賀電子 (TAXAN) の、SC55BXでは、「アドオンモード」に設定することでブート用 SCSIボードのリソースに関係無く 2枚挿しが有効にできるようです。

2枚挿し成功への最低条件

 2枚挿しを成功させるには、1枚目のボードには、特に制限はありませんが、2枚目に挿す SCSI I/Fボードは、次ぎの条件を満たす必要があります。これは、Cバス用に限らず、どのボードでも同じです。

  • ボード上の BIOS ROMが切り離せる (無効にできる) 、または、BIOS ROMを搭載していないこと。
  • ボードのリソース (割込み, DMAチャネル, メモリアドレス、I/Oアドレス) を変更しても正常に動作すること。
  • そのボード用の ASPIマネージャが付属している (特に、DOSからアクセスする場合) こと。

 以上の 3つです。なお、当然ながら、PC本体側でSCSIボード 2枚分の空きリソースが確保できなければいけません。(^ ^;;

実験環境

 なお、今回の提供していただいた実験の環境は、以下の通りです。

 本体: PC-9821An/U8W
 CPU: WinChip2A 266 (210MHz動作) 
 メモリ: 128MB

SMIT転送 SCSIボードが 2枚の場合 (玉砕)

  • メルコ IFC-NN
  • Media inteligent MSC-3000
  • Logitec LHA-301A

 まず初めに、Cバス対応の SCSIボードでは、最も高速な転送速度を誇る、SMIT転送の SCSIボード同士の 2枚挿しについてです。これらは、非公式ながら、BIOSで2枚挿しをサポートしています。
 ちなみに、IFC-NNは、2枚挿してもリソースは 1枚分ですむという噂がありますが、これは間違いです。どのような場合でもリソースは、IRQ (INT) と DMAが 2枚分必要になります。なお、3枚挿しでは、3枚目は無視されます。(^ ^;;

 IFC-NNでは、「CTRL + GRPH + S」で表示される設定画面に、IRQ2と DMA2が追加で表示され、BIOSでのボードの認識は問題無しですが、WinNT4.0では、一枚しか認識されません。

 一方、MS-DOSでは、全く HDDを認識しなくなりました。1枚目は、 FDで起動し、「HDPARA.EXE」で見るときちんと認識されているのに BIOSでは認識していませんでした。

 他に、 2枚挿しを BIOSでサポートしている SCSIボードでは、Media inteligent MSC-3000, Logitec LHA-301Aもありますが、実のところ、SMITボードは、BIOSもドライバも飾りを除いて同じなのでこれらもIFC-NNと同様に、OSを問わず、HDDを認識しないので使えません。

 なお、この問題のためか、IFC-NNの説明書では、BIOS無効の設定について触れられているものの、「必ずOFF (有効) のまま使用して下さい。」 とあり、2枚挿しの設定は禁止になっています。
 ちなみに、I-O DATAの SC-98IIIシリーズでは、BIOS無効のスイッチらしいもの (試したわけではありません (^ ^;;) がボード上にありますが、説明書には記述すらありません。
 よって、2枚挿せる、あるいは 2枚目として挿せる SMITボードは残念ながらありません。

高速バスマスタ転送 SCSIボードが 2枚の場合 (玉砕)

  • 緑電子 MDC-925L
  • 緑電子 MDC-926Rs
  • ICM IF-2769

 MDC-925L/ 926Rsの 2枚挿しでは、SCSIボードの BIOSが切れないため不可能です (一応、設定はあります) 。

 一方、IF-2769は、BIOSを切り離せるのでハード的には可能ですが、WinNT3.5では、二枚目に接続された SCSIデバイスが認識できず、DOS上では、ICMの ASPIマネージャが 2枚挿しに対応していないので使えません。

 よって、MDC-925L/ 926Rs, IF-2769は、2枚同時には使えません。

Adaptec製 AHA-1030Pが 2枚の場合  (動作 OK)

  • Adaptec AHA-1030P
  • NEC PC-9801-100

 AHA-1030Pおよび、その OEMの PC-9801-100では、「EZ-SCSI 3.5J (Adaptec製 SCSIユーティリティー集)」 の ASPIマネージャを使用することで動作しました。
 2枚中 1枚をPC-9801-100にしてもボード自体は、Adaptecの OEMなのでハード的に差は無く (「EZ-SCSI 3.5J」 のインストーラでは、AHA-1030Pは、NEC PC-9801-100だと表示される)、当然ながら同じ結果になります。
 ただし、Adaptec製の ASPIドライバをPC-9801-100で使って良いのかどうかが少々疑問です。ちなみに、PC-9801-100に添付のドライバセットには、ASPIマネージャは入っていません。

 設定は以下の通りです。

 1枚目 AHA-1030P Port 1840 (IRQ=3)
 2枚目 AHA-1030P BIOS OFF Port 3840 (IRQ=5)

---
 DEVICE=\SCSI1030\ASPI2DOS.SYS /P1840
 DEVICE=\SCSI1030\ASPI2DOS.SYS /P3840
 DEVICE=\SCSI1030\ASPIDISK.SYS /PAUSE
---

 これで 2枚目に接続した HDDをDOS上でアクセスすることが出来ました。試しに、Logitec製の 15GBの HDDを接続してみたところ、きちんと認識されました。なお、ASPIで認識される HDD区画は、RAMDRIVEの形で FDDの後に現れます。
 しかし、何故か 2枚目側では、素直にドライブを認識しないことが多いようです。I-O DATA製 UHDS-43Gは、ASPIマネージャのパラメータをいろいろ試してみてもどうもうまく行きません。この問題の原因は不明で回避は不可能のようです。

 ちなみに、現行の、EZ-SCSIは、Version 5.0です。ドライバの性能が若干向上しています。1st接続では、1.8MB/Sが 1.9MB/S程度で大差ではありませんでしたが、2nd SCSIに接続したドライブについては、1.1MB/Sが、1.6MB/Sとかなりのアップしています。
 ところが、ASPIマネージャというか、ASPIDISK.SYSが、8GBのカベ持ちということが分かりました。
 ASPI2DOS.SYSは、正しくU2HD18.2Gを認識するのに、
 ASPIDISK.SYSが、READ FAIL・・・というのです。

 それに、ASPI2DOS.SYSは、2nd SCSIに接続されたドライブについては選り好みが激しく、
 ICM RX-500 (DSAS-3540)
 IO-DATA U2HD18.2G (DNES-318350W)
 IO-DATA UHDS3.2G (Fireball ST 3.2GBに交換)
は認識するのに、
 IO-DATA UHDS4.3G (DCAS-34330)
 IO-DATA UHDS2.1G (DCAS-32160)
 内蔵 DCAS-32160 (疑似スルーボード経由)
 IO-DATA U2HD9.1G (SG ST39173LW)
をどうやっても認識しません。U2HD9.1G以外のドライブは1st SCSIに接続すれば正常に認識されます。これはVersion5.0の場合で3.5の時と少し違うようですが、ASPI2DOS.SYSのパラメータで何とかならないか、あれこれ試しましたが挫折しました。

 なお、MS-DOSで2nd側のデバイスにアクセスできるのは、AHA-1030Pの二枚挿しでしか実現できません。ただし、ドライブや、ケーブルとの相性が激しく、条件は厳しいようです。

異種ボードの組み合わせ、2ndが PC-9821A-E10の場合 (一応動作)

  • MDC-926Rs + PC-9821A-E10 (2nd)
  • PC-9821A-E10 + PC-9801-92 (2nd) (疑似) スルーボード不使用

 PC-9821A-E10では、WinNT/ Win9x上で(BIOSを殺して) 二枚目として使えますが、2nd SCSIに接続したデバイスは、DOSからではアクセスできません。

 しかし、一枚目も PC-9801-92または、92互換ボードであることが必要で 一枚目も 92または、92互換ドライバで動作させないとまずく、結果的にはあまり具合が宜しくありません。

 実験例として、MDC-926Rs + A-E10 (2nd) では、I/Oの競合で駄目でした。一応、92互換ドライバなら両方とも使えますが、DMA転送になるのでデータ転送速度は、約 500KB/ S程度の速度しか出ません。その上、認識は正常でも実際に動作させるとエラーや、データ破壊が発生しました。

 なお、PC-9821A-E10 + PC-9801-92 (2nd) では、正常にボードを認識せず駄目でした。

異種ボードの組み合わせ、2ndが PC-9801-100の場合 (動作 OK) 

  • IFC-NN + PC-9801-100 (2nd) (疑似) スルーボードと併用
  • PC-9821A-E10 + PC-9801-100 (2nd) (疑似) スルーボード不使用

 AHA-1030P/PC-9801-100の場合、一枚目がどんな SCSIボードであってもWinNT/Win9x/Win2Kでは二枚目として使えます。 従って二枚目として最も無難な CバスSCSIボードはこれです。このボードでは、PIO転送なのでCPUに負荷を与えるうえ、PC-9821A-E10と同様に、転送速度が、2MB/S弱しか出ませんが、2ndとして使えば、大容量 HDDも接続出来るので無いよりはマシといったところでしょう。

 ただし、注意点として、 一枚目がAdaptec製品および、OEMではない場合には、MS-DOSで起動すると問題が発生するだけでなくデータ破壊の恐れがあります。

 この問題は一枚目の ASPIマネージャが、Adaptecの ASPIマネージャと協調して動作するものであれば発生しませんが、残念なことに、テストした AHA-1030P/PC-9801-100以外の Cバスボードの ASPIマネージャは全て駄目でした。よって、2nd SCSIに接続したデバイスは、DOSからではアクセスできません。

 なお、PCI SCSIカードの ASPIマネージャについては、今回は、チェックしていません。

 また、幾つかの実験でエラーの発生現象を見ているとA-MATEでは、PC-9821A-E10 とPC-9801-100の 2枚挿しが無難かも知れないと感じました。ただし、 PC-9801-100/ AHA-1030Pは、ハイレゾモードでは使えません。ご注意ください。

Cバス SCSI 2枚挿しの結果

 以上の実験より、

 MS-DOS/ Win3.1二枚のSCSIボードを使うためには、二枚のボードそれぞれに、ASPIマネージャが必要ですす。しかし、実際に、二枚挿し状態で使えるASPIマネージャは、Adaptecのものだけでこの ASPIマネージャは OEMを含む Adaptec製品でのみ動作します。よって、一枚目も二枚目も Adaptec製もしくは、OEMの SCSIボードでなければ使えません。
 また、その組み合わせでも二枚目については接続機器を選ぶ傾向が強く、一枚目に接続して問題が無いデバイスが二枚目接続だと認識されないケースが散見されました。

 WinNT4.0では、1枚目が IFC-NNでもA-E10でも動作し、デバイスの認識にもなんら問題は有りませんでした。Cバス SCSIボードを 2枚挿しする場合、もっとも適している OSといえます。

 Win9x上では、デバイスの認識もでき、問題は有りません。しかし、これらの OSでは、多くの場合、MS-DOSでも動作しないと駄目な場合が多いのでそういった意味では使えないというべきでしょう。

 という、結果になりました。

 最後に、2枚挿し運用時のベンチマークはこちらです。参考にどうぞ。

参考資料 Cバス用 SCSIボードの 2枚挿し

余談 (その他の組み合わせ)

 対応バスの異なる SCSI ボード同志の場合、PCIバスの物と組み合わせるとうまく行くことが多いようです。ただし、保証外の運用であるためボードによっては (特に、 Cバスボード) 、リソースが変更されると正常動作しなかったり、相手のボードとの相性が悪いなどでうまく行かない場合も当然あります。以下に一般的な解説を追加しておきます。

1枚目 2枚目 (BIOS 無効) 一般的な結果
Cバス PCカード (PCカードアダプタ経由)  PCカード用 SCSIカードには、BIOSが無いためリソースさえ競合しなければ可能。
 また、PC-98対応の大抵の PCカードには、ASPIマネージャも付属しているのでDOSからのアクセスも可能。
PCIバス Cバス  PCIバス用を取りつける前に、Cバス用のリソースをPCIセットアップディスクで確保しておけば可能。特に、SC-U2PCIや、IOI-A100U2W等、LVDデバイス専用の PCI SCSIボードを搭載している PCでMOや、CD-ROM等、低速なデバイスを分けて接続したい場合に、とても便利。
 ただし、DOSから、Cバス側のデバイスにアクセスする場合、PCIバス側が、Adaptec製品なら、AHA-1030P/PC-9801-100を二枚目とすることでアクセス可能。
PCIバス PCカード (PCカードアダプタ経由)  PCカード用 SCSIカードには、BIOSが無いためリソースさえ競合しなければ可能。場合によっては、PCIセットアップディスクでリソースを確保しておく必要がある。
 また、PC-98対応のカードには、ASPIマネージャも付属しているのでDOSからのアクセスも可能。
 なお、SV-98/2でIOI-A100U2W + C-Dock98 + PCSC-Fの組み合わせでWin2K上で正常動作したことを確認しています。
PCIバス PCIバス  PnPがリソースを自動設定してくれるうえ、BIOSを切らなくてもPCIバススロット番号の若い側のボードの BIOSが、勝手に切れるので簡単。
 また、PCIバス用 SCSI I/Fボードには、始めから BIOSを搭載していない製品も多数ある。PC/AT互換機用の SCSI I/FボードもBIOSを無効にできれば、Win9x/WinNT/Win2Kで使用できることが多い。
98オンボード PCI接続 PCIバス  実は、簡単なようで意外と難しい組み合わせで PC-98オンボード側の BIOSが完全に切り離せないため物理的に BIOS ROMを取り外せないならば、増設した PCIバス側の BIOSを切る必要がある。
 ただし、環境によっては、リソースが競合して、正常動作しないことがある。



PC-98, PC-9801, PC-9821, PC-H98, PC-9800等は、NEC社の商標または登録商標です。

Windows, MS-DOSは Microsoft社の商標または登録商標です。

この他、製品名、型番等は、一般に各メーカーの商標または登録商標です。