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PC-9821Na13とは

NEC PC-9800シリーズ 32ビットノートパソコン PC-9821Na13/H10

 98NOTEシリーズは、Windows 95の発売にあわせて大きく様変わりし、主力の機種で10.1" TFTカラー液晶や、PCM, FM音源を標準で内蔵し、大幅に機能が強化されました。
 1995年 11月 23日には、Windows95プリインストールモデル 10機種が一斉に登場。この Win95モデルからデスクトップ機のように 98NOTEシリーズにも 「Lavie (ラヴィ)」や、「aile (エール)」 という愛称が付きました。

 その流れのなかで 1996年 3月、PC-9821Na13は、Lavieシリーズの最上位モデルとして「さらにはやく、画面ワイドに。先鋭マルチメディアノート。」というキャッチコピーで登場しました。PC-9821Na13/H10では、98NOTEで初めて 800×600ドット表示が可能な、12.1" TFT液晶が搭載されました。
 下位モデルの PC-9821Na13/C10では、従来の 10.4" TFT液晶を搭載していますが、こちらは 640 × 480ドット表示です。これらの機種の位置付けとしては、デスクトップ機でいうところの PC-9821Xa13の Kまたは、R型番に相当するといって良いでしょう。

 三代目 98NOTE Lavieともいえる PC-9821Na13/H10は、先代の PC-9821Na12, PC-9821Na9, PC-9821Na7と比べてグラフィックアクセラレータが Trident製 Cyber9320からビデオアクセラレーションに対応した、Cirrus Logic製 GD7548に変わり Direct Draw性能も若干アップ、サウンド機能も 86音源相当 (98CanBe音源) から 118音源相当にアップと、MS-DOS6.2 + Windows3.1よりも Windows95寄りにチューンされましました。

 外観の変化としては、大きな 12.1" TFT液晶パネルの採用によりステレオスピーカの位置が、液晶画面の上から下に移動しました。

 このマシンでは、初めにWindows 95とWindows 3.1 + MS-DOS Ver6.2がデュアルインストールされていて、初回起動時にどちらかを選択します (選択しなかった方は消えます)。

 その少し後の 8月、PC-9821Naシリーズ最終モデルの PC-9821Na15/X14の登場と共に価格の改訂がありました。ちなみにこの PC-9821Na15は、Pentium 150MHzを搭載し、セカンドキャッシュは脅威の 512KB、ディスプレイは 12.1"TFT液晶で1024×768ドット、フルカラー表示という、ある意味で 98NOTEで最強といえるモデルです (きっとCPUを MMX Pentiumに貼りかえれば本当に最強でしょう (^ ^;;)。

98NOTE Lavie 前期型 PC-9821Na9以降の ラインナップ

商品名 CPU FDD HDD CD-ROM GA サウンド 液晶パネル 標準価格 (税別)
PC-9821Na9/H8 Pentium
90MHz
3.5インチ
3モード対応
1ドライブ
E-IDE 850MB 4倍速 Cyber9320
VRAM 1MB
98CanBe相当 10.4" TFT
SVGA
620,000円
PC-9821Na12/H10 Pentium
120MHz
E-IDE 1.0GB 660,000円
PC-9821Na13/C10 Pentium
133MHz
E-IDE 1.0GB GD7548
VRAM 1MB
118相当 10.4" TFT
VGA
630,000円-> 500,000円
PC-9821Na13/H10 E-IDE 1.0GB 12.1" TFT
SVGA
720,000円-> 590,000円
PC-9821Na12/S8 Pentium
120MHz
E-IDE 850GB 488,000円
PC-9821Na12/S10F E-IDE 1.0GB 538,000円
PC-9821Na15/X14 Pentium
150MHz
E-IDE 1.4GB 8倍速 Cyber9382
VRAM 2MB
12.1" TFT
XGA
750,000円

 ちなみに、その後は、拡張性を重視した最上位の PC-9821Na系と 最小限の機能でコンパクトなエントリーモデル PC-9821Nb系は統合され、拡張性を廃しコンパクトさを重視し、PC-9821Nb系の筺体を発展させた PC-9821Nr系に取って代わりました。この辺り、何でもありの高価な 98MATE Aが廃れ、必要最小限の機能で安価な 98MATE Bが生き残ったのと似た構図です。

 PC-9821Na13/H10は、ちょっとした作業にモニタを繋ぎ変えなくても使えて便利なので導入しました。PC-9821Na15/X14と迷いましたが、こちらは 98NOTEベイ用 TVチューナパックには非対応です。これを考慮してあえて PC-9821Na13/H10にしました。

 Windows 98にアップグレードしてもビジネスソフト等、軽いアプリケーション用途であれば現役で活用できます。また、FM音源が標準で搭載されているので DOSゲームにも活用できます。(^-^)

 本ページの内容は、上記の機種にも応用できますので参考にどうぞ。

マザーボード

● チップセットと VRM

 PC-9821Na13のマザーボードは、CPUとその周辺チップが載るメインボードと PCカード、外部コネクタ、電源回路が載るサブボードに分かれています。メインボードは搭載する TFT液晶パネルにより表示回路周辺が異なる以外は基本部分では同じ物、サブボードは PC-9821Na9から PC-9821Na15まで共通です。

 チップセットに Intel 430MX (Mobile Triton) を採用しています。i430MXチップセットは、デスクトップ向けチップセット i430FX (Triton) をモバイル PC用にアレンジしたもので性能は i430FXとほぼ同じです。PC-9821Na13のシステムクロックは 66MHzです。

● CPU

 PC-9821Na13に搭載されている CPUは、Intelの Pentium (133MHz) です。TCPパッケージという薄いフィルムにチップが固定されている形状です。チップを直接ヒートシンクに触れさせることができるので冷却という面では優れています。一次キャッシュメモリは 16KB内蔵でコプロセッサ (浮動小数点演算ユニット) も CPUに内蔵されています。

● セカンドキャッシュメモリ

 セカンドキャッシュは、標準でバースト SRAMを 256KB搭載しています。セカンドキャッシュは、簡単にいうと高速で動作する CPUとメモリの間のデータ転送速度の差を埋めるものです。これのある無しでは、体感で分かるほどに処理速度が変わってきます。特にノート PCのようにメモリ周りの遅い PCでは極めて有効ですが、消費する電力が多くバッテリーが消耗しやすいというデメリットも少なからずあります。

● メモリ

 メモリは、ファーストページモード (FPM) の DRAMに対応しています。標準で 16MB内蔵し、専用のメモリモジュールで最大 80MBまで増設できます。ただし、メモリが増えると発熱が多くなる他に、消費する電力が増えバッテリーが消耗しやすくなります。

 なお、PC-9821Na13等の Windows95モデル以降では 1.25MBタイプのフロッピィディスクドライブ (FDD) 互換の RAMドライブ機能は削除されています。このため MS-DOS等でFDDが 2ドライブ必須のソフトを動かすためには、外部拡張バス経由で外付け FDDを接続するか、仮想 FDDを実現するフリーソフトを使うなど、若干の工夫が必要になります。

補助記憶装置

● フロッピーディスクドライブ (FDD)

 PC-9821Na13では、本体右側の 98ノートベイに 3.5インチ 3モード対応で 2HDタイプの FDD (型番 FD1139T) を 1ドライブ搭載しています。本モデルでは、PC-9821Nxや PC-9821Na7の CD-ROM非搭載モデルに搭載されていた CD-ROMドライブベイ用 FDDも使用できますが、98ノートベイの FDDと同時使用はできません。両サイドに FDDパックを取りつけると誤動作の結果 FDメディアのデータを壊す事があるので止めましょう。(^ ^)b

 付属するバッテリパックは、98ノートベイタイプなので FDDとは排他利用となります。

● ハードディスクドライブ (HDD)

 HDDは Enhanced IDEタイプで 1.0GB (接続可能なのは、最大 4.56GB (未フォーマット時) まで) の 2.5インチ ハードディスクドライブ (HDD) を搭載し Windows 95がプリインストールされています。プリインストールの Windows95のバックアップディスクは、CD-ROMメディアで 2枚付属します。
HDDは従来の B5サイズノートパソコンの 98NOTE LIGHTと同形状の薄型のパック形式になっていて交換が可能です。従来の A4サイズノートパソコンの 98NOTEのパックとはコネクタに互換性が有りますが厚みや形状が異なるので使用できません。

● CD-ROMドライブ

 CD-ROMドライブは、本体右側の CD-ROMドライブベイに ATAPI接続でスリムタイプの 4倍速 CD-ROMドライブ (東芝製 XM-1202B) を搭載しています。ドライブのコネクタは、ピンタイプなのでドライブの交換は困難を極めます。

液晶パネル

 上位モデルの PC-9821Na13/H10では 12.1インチ TFT (Thin Film Transistor: 薄膜トランジスタ) バックライト付き カラー液晶パネル NEC NL8060BC31-01を採用し、最大 800×600ドットで 65,535色の表示ができます。
 ただし、PC-98基本画面の 640×400ドットや 640×480ドットモードでは、ドットバイドット表示のため中央に小さく表示されます。大きさとしてはおよそ 9インチ相当です。

 プリインストールの Windows95上でのみ拡大表示機能を使用することができ、640×480ドットモードを画面いっぱいに表示できますが、不均一になります。

 PC-9821Na13/C10では 10.1インチ TFT (Thin Film Transistor: 薄膜トランジスタ) バックライト付き カラー液晶ディスプレイを採用し、最大 640×480ドットで 26万色の表示ができます。

 なお、PC-9821Na13/C10PC-9821Na13/H10の TFT液晶パネルは、マザーボードの表示回路が異なるため違う型番相互での交換はできません。液晶パネルが壊れます。

グラフィック、サウンド機能

● グラフィック機能

 グラフィック機能は、標準で従来の 640×400ドット (4,096色中 16色: Enhanced Graphic Charger) に加え、ウインドウアクセラレータ機能として、高速な PCIバス接続でビデオアクセラレーション機能に対応した Cirrus Logic製 GD7548 と VRAMを 1MB搭載しています。なお、初代と二代目A MATEシリーズに搭載されている256色のプレーンアクセスモードは利用できません。

 PC-9821Na13/C10では、液晶ディスプレイ上でWindowsでは、最大 640×480ドットで 1677万色 (ディザ処理により26万色に減色) 、DOS上では、最大 640×400ドットで 4,096色中 256色の表示が可能です。ただし、640×480ドットや、640×400ドット表示では、画面の拡大機能は無いため、中央に小さく表示されます。

 PC-9821Na13/H10では、液晶ディスプレイ上でWindowsでは、最大 800×600ドットで 65,535色、DOS上では、最大 640×400ドットで 4,096色中 256色の表示が可能です。

 また、両モデルともアナログ CRTを接続時には、Windows上では、最大 1,024×768ドットで 1677万色中 256色、DOS上では、最大 640×480ドットで 1,677万色中 256色の表示が可能となります。その際、ディスプレイ I/F変換ケーブル「PC-9821N-K06」が必要になります。このコネクタは 10ピンのミニ DINプラグという特殊な物です。

 なお、Windows95の製品版や HDD内の Cabsフォルダには、GD7548のドライバは含まれていません。このドライバは、PC-9821Na13付属の 「バックアップ CD-ROM (OS除く)」 または、PC-98対応版の Microsoft DirectX5.0以降にあります。

● サウンド機能

  サウンド機能は、118音源相当の PCM録音再生機能、拡張 FM音源機能 (FM 20音)に加え、PC-9801-86互換の 基本 FM音源機能 (FM 6音、リズム 6音、SSG 3音) を標準で搭載しています。いわゆる 「三代目 Canbe 音源」 です。

 このため、86音源の PCMと違い、 Windows 95等でも再生時に CPUに負荷が軽く音飛びしにくくなっている他に、86音源互換 FM音源を搭載しているのでFM音源対応の DOSゲームでも特に面倒な設定の必要が無くそのままで鳴ります。ただし、音源チップに依存するソフトウェアでは、正常に動作しない可能性があります。

 さらに専用変換ケーブル「PC-9821N-K07」または、「PC-9821N-K08」を プリンタポートに接続することで外部 MIDI音源や、Sound Blaster互換のジョイステックを接続できます。

 また、EBAP (Enhanced Bass Amplifire) 回路付き、出力 0.5W + 0.5Wのステレオスピーカとマイクロホンを搭載し、CD-ROMドライブベイに搭載した、CDの音声もこのスピーカより出力できます。NECはノートパソコンの音声再生環境には古くから力を入れており本機においても音質はクリアでなかなかグッドですが、残念なことに電源由来のノイズが載り易いという欠点があります。(^ ^;;

● Windows95でのサウンドドライバインストール時の注意

 Windows95の製品版や HDD内の Cabsフォルダには、PC-9821Na13のサウンドドライバは含まれていません。このドライバは、PC-9821Na13に付属の「バックアップ CD-ROM (OS除く)」または、PC-98対応版の Microsoft DirectX5.0以降にありますが、インストールはやや複雑で後期の 98Multi CanBeシリーズ同様に「98 CanBe PCM/Mixer Driver」、「外部 MIDIポート」、「内部 OPL3 FM音源」、「ジョイスティック」を個別にインストールします。

 インストールの手順を間違えるとフリーズや例外エラーで停止するだけでなく、Windows95を起動できなくなるのでご注意ください。手順を間違えて起動しなくなった場合は、Windows起動時にセーフモードを立ち上げて、コントロールパネルからサウンドのドライバを一旦すべて削除し、インストールし直しください。

インターフェースと拡張スロット

● 本体のコネクタ

位置 種類 形状
本体後部 テンキーボード ミニ Din 8pin
バスマウス D-Sub 9pin
LINE出力と入力 ステレオミニジャック
ヘッドフォン出力 ステレオミニジャック
RS-232Cシリアル I/F アンフェノールハーフ 14pin、最高115,200bpsまで対応
プリンタ用双方向パラレル I/F アンフェノールハーフ 20pin, (MIDI/Joystick対応)
アナログディスプレイ出力 ミニ Din 10pin
拡張バス 198pinタイプ

 カラー CRTを接続するには、接続ケーブル (PC-9801NS/L-01, PC-9821N-K06) が必要です。また、一般のデスクトップ機とは、シリアル I/F、プリンタ I/Fの形状が違うので接続の際には、別のケーブルが必要です。

 この機種では、プリンタポートに別売りのMIDI/JOYSTICK変換ケーブル A 「PC-9821N-K07」または、MIDI/JOYSTICK変換ケーブル B 「PC-9821N-K08」を接続することでサウンドブラスター互換の MIDI/Joystick対応機器を接続できます。Aと Bの違いは、前者は、プリンタポートとの同時使用ができないのに対し、後者では可能となっている点が異なります。

● 拡張スロット

 PC-9821Na13の拡張には、以下の 4か所があります。

拡張スロット 主な対応機器 補足
PCカードスロット メモリ系、I/O系 PCカード。 PCMCIA 2.1/JEIDA 4.2規格の PCカードが使用でき、TYPE IIIが 1枚または、TYPE IIが 2枚使えます。ただし、Card Busには非対応です。
98 NOTEベイ セカンドバッテリ、PCカード増設スロット、FDD、TVチューナーパック。 TVチューナーパックのみ、PC-9821Na15では非対応。
CD-ROMドライブベイ CD-ROMドライブ (倍速、4倍速)、FDDパック、バッテリーパック。 PC-9821Nx、PC-9821Na7で初めて採用されたベイ。PC-9821Nb、PC-9821Nrシリーズとはそっくりですが互換性はありません。
198pin 拡張バス 外付け FDD、拡張ボックス「PC-9801-N08」やポートリプリケータ「PC-9821N-U06」、
ドッキングステーション「PC-9821N-U04、PC-9821N-U05」等。
旧規格の 110pin用の機器を接続する場合は、変換アダプタ「PC-9821N-U07」が必要になります。
また、Cバスボードを利用するためには、拡張ボックスまたはドッキングステーションが必要になります

● ドッキングステーション

PC-9821Na13/H10とドッキングステーションCD PC-9821N-U05

 PC-9821Na15、PC-9821Na13、PC-9821Na12、PC-9821Na7、PC-9821Nf、PC-9821Np、PC-9821Ns、PC-9821Nxのオプションとしてドッキングステーション「PC-9821N-U04」、ドッキングステーション CD「PC-9821N-U05」が有ります。ノートパソコンを搭載した時の重量はなかなかの物になります。
 ドッキングステーションの取っ手は手前側に引くことでそのままアームレストになります。縦置きも可能ですが、Cバススロットに増設したボードよっては不可能になります。

 前者はファイルスロット仕様、後者はファイルベイ仕様という違いが有ります。PC-9821N-U04はファイルスロット仕様の SCSI機器が使用可能で差し替えも可能です。PC-9821N-U05の方は 5インチベイ対応の SCSI機器が使用可能ですが、元のドライブと交換する事は想定されていませんのでご注意ください。

 ドッキングステーションには、PC-9801-92相当の SCSI I/F、両サイドにスピーカが内蔵されています。Cバススロットは 2スロット搭載していますが、グラフィックアクセラレータや LAN I/F、 FDD I/F等、一部のボードは使用できません。

 使用上の注意としては、見落とされがちですが電源ボタンはドッキングステーション側のボタンを使用します。他に、マニュアルに記載が有りませんが、Sound Blaster等の音源ボード経由で MIDIドータボードを使用する場合に「PC-9821C3-B02」を使用すると原因は分かりませんが必ずドータボードが壊れますのでご注意ください。他のドータボードだと問題ないようです。

本体ディップスイッチの設定

 ハードウェア Dip SWはなく動作環境設定に「98NOTEメニュー (デスクトップ機でいうセットアップメニューに相当)」 があります。呼び出し方は二通りあり、電源投入後もしくは、にリセットボタンを押してから 「HELP」 キーを押し続ける従来の方法と、プリインストールの Windows95に限りますが、「98NOTEメニュー」で Windows上から呼び出す方法です。Windows95の方は設定後に復帰できますが、設定変更できるのは、マウスとタッチパネルの設定変更など一部の物に限られます。

 また、本体後部にバックアップメモリスイッチがあり通常に本体を使うときは ONにしておきます。特にレジューム機能等を使うためには、ONにしておかなければなりません。
 ただし、内蔵する周辺機器を取り付けるときは、必ず OFFにしてから行わなければなりません。マザーボードは通電状態になっているので周辺機器を壊してしまう可能性があります。

 ちなみに、しばらく電源を入れておらずレジューム用の Ni-Cd電池のが切れると「セットアップが初期化されました、セットアップを実行してください」というメッセージが出ます。その場合は、放っておいても実害はありませんが、気になるようでしたら「98NOTEメニュー」で設定を確認してください。時刻やメモリスイッチの内容はリチウム充電池でバックアップしているのでこれが原因で狂う事は有りません。

バッテリ駆動時間

 PC-9821Na13のバッテリ駆動時間は、付属のバッテリパック 「PC-9821N-U03」 装着時にH10モデルで約 1.0〜1.4時間、C10モデルで約 1.0〜1.5時間、さらにCD-ROMドライブベイに別売りのセカンドバッテリパック 「PC-9821NA-C02」 を装着することによりH10モデルで約 2.0〜2.8時間、C10モデルで約 1.0〜3.0時間に延長することができます。 12.,1"TFTモデルの H10の方が、わずかに駆動時間は短いですが、Pentiumマシンとしては、ほぼ標準的です。

 また、バッテリ充電時間は電源 ON時には、約 2.6時間 (CD-ROM未搭載時のみ可能)、電源 OFF時には、約 1.5時間となっています。ただし、これらは、動作環境やバッテリの状態によって変化します。

 ちなみにACアダプタは、「PC-9821NA-U01」が付属しています。

その他の特徴

 PC-9821Na13では、ポインティングデバイスとして、98スライドパッドが搭載されています。しかし、感度はあまり良くなくカーソルがあちこちに飛んでしまう事もしばしば、 DOSゲームの様な頻繁な操作には向かない上、なれるまではかなり苦労します。自分は、マウスを接続しています。(T_T)

 ノートパソコンなのでレジューム機能に対応しています。また、バッテリパックを装着していれば突然停電になっても安心です。(^-^)

CPUの換装 (TCPパッケージ編)

● はじめに

 ここでは CPUの換装について書かれていますが、メーカーの禁止している改造行為に当たるので自己責任で行ってください。特にTCPパッケージのノート PCの場合、CPUが壊れても個人では交換できないため、マザーごと交換となり修理代は数万円から十数万円と非常に高額になります。

 また、全ての PC-9821Na13でうまくいくとは限りませんし、何の前触れもなくいきなり不安定になったり最悪壊れることも考えられますので十分ご注意ください。たとえ、動かなかったり故障したりしてもこちらに文句をいわないでください。詳しくは注意事項をお読みください。これは改造の上での常識です。

● TCPの Pentium

 さて、だいたい PC-9821Na13のことが分かったところで CPUの換装です。と言いたいところですが、この PC-9821Na13の CPUであるPentiumは、マザーボードに直付けされているうえ、TCPタイプ (薄いフィルムに CPUコアが固定されている) のため、一台、数億円といわれる専用のリペア装置が無い限り換装ができない、と言ってよいでしょう。ユーザーの中には拡大鏡を使って手ハンダで実行した猛者もいるようです。

 後の PC-9821Nr12〜 PC-9821Nr166の様カートリッジ形式になっていればよかったのですが、残念ながらそうではないので CPUのパワーアップは、個人では出来なくもないですが出来ません。(T_T)

 なお、2002年 5月現在では、MAXUSコンピュータ社が、有償で CPUを張替える改造を請け負っていました。これを利用することにより最高 MMX Pentium 266MHzまでパワーアップできます。価格は、3万円ほど (CPUの張替え、電源部の改造、ただし、往復の送料、消費税は別) かかります。

 メリットは、動作クロックが倍になるので処理速度が、数段パワーアップするほか、Mobile MMX Pentiumは、動作電圧が 2.0VとPentiumの 3.3Vより大幅に低いので発熱や消費電力が少なくなります。しかし、グラフィック周りはそのままなので体感的には、それほど変わらないかもしれません。
 ただ、同じ MMX Pentiumを搭載している PC-9821Nr, PC-9821Nwシリーズには拡張バスが無い他に同 266MHzクラスの 98液晶ノートは、まだ 2002年時点で中古でもかなり高価なので買いかえるよりは、安上がりだと思います。試してみる価値は、あるかもしれません。(^-^)

● 標準内蔵 Pentiumの 166MHz化

 それでもどうしても高速化したい場合は、Pentiumの内部逓倍設定を変更する方法があります。ハンダ鏝必須の改造です。また、133MHzを 166MHzにしたとしてもグラフィックアクセラレータを交換できない、ノート PCでは、体感的にほとんど変わりません。

 CPUをオーバークロック動作させているとCPUの寿命が縮みます。前日まで動作していても翌日には、いきなりお亡くなりになることがよくあります。

 Pentiumは、ご存知のように設定ピンをいじることにより動作倍率を 1.5〜 3倍に切り替えることができます。PC-9821Na13では、動作倍率が、2倍に設定 (66×2 = 133) されているのでこれを 2.5倍や、3倍に切りかえればそれぞれ、166MHz、200MHzで動作するようになりますが、Pentiumは、オーバークロックに対する耐性が高くないのでどちらも厳しいと思います。(^ ^;;
 なお、どのピンが、倍率設定ピンなのかは、データシートを入手し、ご自分でお調べください。

 ただし、CPUは、規定クロックを超えて動作するので発熱が増え、OSや、アプリケーションのフリーズ、暴走の原因となるほか、確実に CPUの寿命が縮みます。特にノート PCでは、筐体内にスペースが無く小型のファンがついているだけなので発熱の増加は、デスクトップ機よりも大きな問題となりますのでくれぐれもご注意ください。

 では、改造法ですが、自分は試していませんが、方法は、次ぎのようになります。

 まず、あらかじめ、システムセットアップメニューでビープ音のボリュームを調整しておきます。その後、電源アダプタを外し、バックアップメモリスイッチを切ります。筐体をばらして、マザーボードを取りだし、ハンダ鏝を使って、CPUのピンを直接いじるか、ピンを辿って、接続先のパターンを切るか繋ぐ (あとで簡単に元に戻せるような場所を選びます) かして、2.5倍になるように設定しなおします。3倍設定でも良いですが、恐らく無理だと思います

 これが終わったら改造箇所を、良く確認し、ハンダ箇所に不必要なショート等が無ければマザーボードを仮組みし、バックアップメモリスイッチを入れ、電源アダプタを繋いで電源を入れてチェックします。

 「ピポッ」と鳴ればひとまず成功です。鳴らなければすぐに電源を切って、改造箇所をチェックしなおしてください。あとは、問題が無ければ元通り組み上げて Windows等 OSを起動し操作をして負荷を掛けて様子を見ます。二、三時間程度たってもフリーズ等の異常が無ければ終了です。

 あとは、CPUの発熱対策を取る必要があります。おすすめは、PCカードスロットに挿す PCカード型クーラです。PCを改造していなくても長時間稼動などで発熱が原因で動作が不安定な時は、かなり効果があるそうです。

メモリの増設

 CPU換装による高速化はできませんが、Windowsを使う場合は少しでも快適に使えるようにメモリを増設しましょう。メモリの増設は、スライドパッド右側の専用メモリソケットに増設します。
 ただし、メモリが増えると発熱が多くなるほか、消費する電力が増え、バッテリーが消耗しやすくなるので注意が必要です。

 メモリ増設の際のカバーの外し方は、蓋を閉じて、本体を裏返し、CD-ROMドライブベイからCD-ROMまたは、FDDを取り外します。外したらネジがあるのでそれを外し、本体を表側にして、蓋を開き、スライドパッド右側のカバーを横にスライドさせると外せます。

 PC-9821Na13用のメモリは、PC-9821Na9/ Na12/ Na15/ Nb7/ Nb10/ La7/ La10と共通で純正品では、「PC-9821NA9-B01/02/03/04」、サードパーティー製では、I-O DATA製の 「Nb34シリーズ」やメルコ製の 「ENBシリーズ」があります。これらを 1枚増設して、容量を最大 80MB (79.6MB) まで増やすことができます。

代表的な 専用メモリボード (専用メモリモジュール )

メーカー 製品名 容量 枚数 標準価格(税別) 現状
NEC PC-9821NA9-B01/02/03/04 8/16/32/64MB 1枚 35,000円〜540,000円 生産終了
メルコ ENB 8/16/32/64MB 1枚 26,000円 (64MB) 生産終了
IO DATA Nb34 8/16/32/64MB 1枚 26,000円(64MB) 生産終了

 * PC-9821Nb7は 64MBのメモリモジュールに非対応となっていますが使用可能です。

内蔵ハードディスクの換装

● はじめに

 PC-9821Na13は、Windows 98SEまで正式に対応しています。Pentium 133MHzに加えセカンドキャッシュを 256KB搭載しているのでビジネスアプリであれば快適に利用できます。

 しかし、 Windows 95以上でおおいに活用するには、標準の HDDでは 1.0GBと容量が少なくネットに繋ぐようになればすぐに一杯になってしまいます。なので容量の大きい HDDに交換した方が良いでしょう。PC-9821Na13の IDE I/Fは、1ドライブ辺りの容量が、4.56GB (未フォーマット時) までの 2.5インチ HDDで厚さは、12.7mmまでのドライブが内蔵可能です。

 一般的には NECフィールディングやサードパーティー製品を利用した方が無難ですが、サードパーティー製品は 2002年 5月現在、すでに入手が困難になりつつあります。

● 交換の手順

 交換の方法は、PC-9821Na13に限らず、Na系, Nd系 ,Ne2, Ne3, Nf, Nm, Np, Ns, Nx各機種でも同じ方法ですので以降は、Nxの 記事を参考にしてください。(^ ^;;

 ネジ穴については、純正品の HDDパックだと合わない可能性が有りますが、I-O DATAの HDNSシリーズや BUFFALOの DNNシリーズの 4.3GBモデルで有れば新旧のネジ穴が有るので対応できると思います。

 ただし、バルクの 2.5"HDDで容量が 4.56GB (未フォーマット時) 以内の物は、現行製品では、最低でも 6.4GBとすでにありません。実際、メーカー製 HDDパックでも搭載されているのは、6.4GBのドライブで出荷時に制限をかけ、容量 4GBに見せかけています。

 万が一入手できない場合は、フリーソフト (Vectorなど、ネット上を検索してみてください) 「ICC」等で容量を 4.56GB以下に制限することで使えるようになります。なお、その操作を行う場合は、容量 4.56GBの IDEドライブを接続できる PC本体が別に必要になります。「ICC」使ったことが無いので各自、そのソフトのヘルプファイルを確認してください。(^ ^;;

 PC/AT互換機をお持ちの方なら (というよりここをパソコンで見ている人で持っていない人はいないと思いますが)、企画課 第8回 PC-98と HDD容量制限を参考にどうぞ。

 データ蒸発の懸念が有りますが、取り扱いに気をつければコンパクトフラッシュや SDカードを使用した疑似 SSDを HDDの代わりに使うのも便利です。企画課 第6回 PC-98の SSD化を参考にどうぞ。

PC-9821Na13の保守

● はじめに

 PC-9821Na13に限らず PC-9821Na、PC-9821Nxシリーズ共通ですが製造から既に20年近くが経過しているので経年劣化によって様々な不具合がでます。ここでは出やすい不具合を整理してみます。

● 電解コンデンサの液漏れ

 マザーボード電源部のコンデンサが液漏れを起こして電源が入らなくなるケースが多いです。前兆としては FDDや CD-ROMドライブの動作不良が挙げられます。FDDや CD-ROMドライブが正常なのに、ドライブ自体を認識したりしなかったりという状態に陥った時は、使用を中止して早めに電解コンデンサの交換を検討しましょう。

 マザーボードには面実装タイプの白い角型のコンデンサが搭載されていますが、経験上液漏れはほとんど見られません。電解液が変わっているのかもしれません。

 また、盲点になりやすいのが、ACアダプタ「PC-9821NA-U01」です。ACアダプタ内ではかの悪名高い四級塩電解コンデンサが使用されているので、こちらも早めに交換をお勧めします。ちなみに、ACアダプタのラベルに隠れてネジが有ります。歯車型のヘクサロビュラ (トルクス) タイプですが、真ん中に弄り止めの出っ張りがある特殊な物です。

 筆者は Amazonの安ものを使用していますが、これでも実用上十分です。

 

● バッテリの液漏れ

 本体の右パームレストの内部にメモリソケットと並んでレジューム用 Ni-Cdバッテリが有りますが、非常に液漏れしやすいです。この下にはチップセットの LSIがあり液漏れによってパターンが腐食し、起動不能となる例が多いです。長らく使用していない状態だと青い結晶が付着していると思います。交換するか直ぐに外しましょう。
 現在は環境汚染の問題が有りカドミウムを使用したニッカド (Ni-Cd) 電池の入手は難しくなっていますが、ニッケル水素 (Ni-MH) タイプで置き換えても保証はしませんが大丈夫だと思います。ただし、充放電特性が異なる点はご承知ください。秋葉原の名店である若松通商にちょっと高いですが幾つか有るので元の電池の電圧と同じになるように組み合わせて使用すると良いでしょう。

 また、バッテリパックも劣化が進んでくると液漏れします。充放電できない状態のバッテリパックを取りつけていると熱を持ちプラスチックの外装が溶ける例が有りますので、劣化したバッテリパックは外すか、ビニールテープなどで端子を絶縁しましょう。
 軽くしたければ殻割して中の電池を捨ててしまっても良い (廃棄についてはお住まいの自治体の指示に従ってください) ですし、ここでは紹介しませんが詰め換えるという手も有ります。

 カレンダ時計バックアップ用リチウム二次電池は、左のパームレスト内です。Panasonicの「VL2320」が使用されています。時刻が狂うようであれば、ひとまず一日中電源を付けっぱなしにして充電してみてください。これで復帰しなければ交換時期です。この電池の液漏れについては余程劣悪な環境に保管されていたという事でも無ければ液漏れは有りません。
 なお、この電池の代わりに、CR系一次電池や、ML2430等の電池は絶対に使用してはいけません。正常に充電されない程度ならばいいのですが発火、破裂の恐れが有ります。稀に、ブログなどで CR系への置き換え (しかも直接ハンダ付け、指が吹っ飛んでも知らんよ (^ ^;;) を記事にしている方が見受けられますが、ネットの情報が全て正しいという事ではありません。絶対にまねをしないように。(^ ^)b

 カレンダ時計バックアップ電池が必要な方は、所内売店保守部品フロアへどうぞ。新品の物を 1個 1,000円から 1,280円でお分けします。

● 液晶パネルの劣化

劣化した液晶パネル
劣化した液晶パネルの例、白い枠の様なものや斜めに走る筋が見える

 この機種の液晶パネルは 2014年の時点でこの後の PC-9821Nr系機種よりも劣化しやすい印象です。液晶パネルに使われている偏光フィルム (アセテートフィルム) が高温多湿な環境に置かれていると加水分解を起こし酢酸ガスを発生させるようになります。これは、ビネガーシンドローム (Vinegar Syndrome)といい、この種のフィルムでは一般的に起こります。同系統のフィルムを用いている公文書の保存等で使われるマイクロフィルムや写真や映画のフィルム、アニメのセル画などでも発生するので近年大きな問題となっています。

 液晶パネルでは、フィルムを接着している接着剤が剥がれ、気泡や膨らみ、白っぽく濁るようになってきます。この時点でかすかに酸っぱい臭いがします。さらに進むと、フィルムが変質し表面に斜めに引っかき傷の様な模様が現れるようになります。この状態になるとかなりの酢酸ガスを発生させているので臭いもきつく人体にも有害です。

 液晶パネルのビネガーシンドロームの怖さはそれだけではなく、発生した酢酸ガスでそばにある液晶パネルをウイルスに感染するがごとく次々劣化させていく点にあります。ある程度狭い空間に密集して保管していると一台の液晶パネルの劣化から、保管している液晶パネルがすべてダメになる事も往々としてあります。大量に保有している方は直ぐに点検しましょう。

 液晶パネルによりますが、PC-9821Na13の NEC NL8060BC31-01では表面よりも裏面のフィルムが劣化しやすい印象です。裏側なので電源を入れバックライトが点灯しないと分かりませんが、懐中電灯を当てパネルを下からのぞきこむようにすると見えるかも知れません。

 現時点で劣化してしまった液晶パネルを修復する手段は (足りない頭で研究していますが (^ ^;;) 廃棄以外に選択肢は有りません。液晶パネル用の偏光フィルムを入手できれば良いのですが、元の仕様が分からないので個人での入手は不可能です。剥がしていくら表面を洗浄してもフィルムの内部から再びガスが発生します。そうならない為にも、次の点に注意しましょう。(^ ^)b

  • 高温多湿な環境に放置しない (押入れ、物置き、屋外の倉庫への保管は絶対 NG。ビニール袋への個別密封とシリカゲルによる除湿がベストかも)
  • 定期的に通電する (通電時の熱によって湿気を飛ばす)
  • 定期的にパネルを点検し表面に気泡、白濁、酸っぱい臭い等の異常があったら直ちに隔離するか廃棄する (他の個体への感染防止)

 劣化した偏光フィルムは接着剤を溶かし剥がれ易くなっていますが、絶対に興味本位で剥がさないでください。高濃度の酢酸ガスが放出する可能性が有ります。濃度の高い酢酸ガスは目や鼻、呼吸器などの粘膜を強く刺激し大変危険です。ビニール袋に入れてお住まいの地方自治体の指示に従って廃棄しましょう。

 今後、劣化によって液晶パネルが次々死んでいきますので、交換用パネルの入手が困難になることが予想されます。普段から適切に保管する事を心がけビネガーシンドロームの防止に努めましょう。(^ ^;;

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