横田<miskij>萬や 通信


おしながき

「DTMFコードリーダー」が分かり難いとの指摘を色々いただいております。
このような表記、通称を考えてみたのですが、どうでしょうか。

表記:文字多重音声通話(システム、〜における表示装置)
通称:ピポパ文字通話機能(ポケベル、と入れると、ポケベルの先入観から逃れられなくなるため)


ごあいさつ


難聴者といっても色々なタイプがありますが、私は高齢難聴者に近いといえるかもしれません。
  1. 普通に話すことができる。
  2. しかし音声の識別については千差万別。確実なのは文字による伝達。
  3. 高齢化による難聴者は今後とも増加傾向にある。
これまで、私は相手の声自体を識別できない(端的にはモザイクが掛かる) ために電話は一方通行にしか使えませんでしたが、 それで足りていました。
しかし、ある出来事がきっかけで、やはり対話性は必要になると判断し、一念発起の上、 DTMFコードリーダーを制作しました。
  1. 自宅に迎えの車をお願いしたが、たまたま車がだせなかった。
  2. 交番が出払っており、駅前のタクシーの運転手に電話をお願いしたが拒否された。
  3. 救急車を呼べなかったために、最愛の配偶者を失った方がいる。
1.のケースは、「いつも来てくれる」という見込みで電話したのですが、「はい」以外の選択肢を 確保できなかったために、親がタクシーで迎えに来て、またタクシーで帰るという羽目になりました。 こんなこと、普通の人は、まずやらないでしょう。しかし、近いうちにみなさんも同じような 苦い思いをしてくるようになるでしょう。耳の遠い祖父・祖母が「迎えにきてくれ」というときに、 たまたま車がなかったらどうしますか?

2.のケースは、本当にありました。なまじ、私が普通に話せたばかりに、「話せるんだから電話くらい できるだろう」と誤解されたのかもしれません。タクシーの運転手が問題なのではありません。 その場で自分自身で警察や救急車を呼べるという体制が確立していないことが問題です。
これは生存権にもかかわってきます。

3.は、最近は各地で救命センターや警察にも緊急用のファクス番号が設置されてきていますが、 それとて完全ではありません。相手が見えないだけでなく、番号自体が統一されておらず、 旅行先では困ったことになります。
それ以前に、「クチで話すことができるんだったら、そっちの方が早い」です。

つまり、相手の返事をその場で確認する手段が必要なのです。

アメリカでは、TTY というパソコン通信方式のチャットが圧倒的に普及しており、空港では あちこちで見かけるそうです。また、企業でもTTY 専用番号を用意したり、またTTY を通訳する リレーサービス業もあります。
ただし、これはパソコン通信方式とあるように、双方に同じシステムが必要になります。

また、キーボード主体での対話になりますが、これを年配の方に強制できるでしょうか?
これまで普通にクチで話して用件を伝えられるのに、慣れないキーボードで対話させるのは、 逆にバリアにもなると解釈できます。

では、音声と文字を混在させられるPCによるマルチメディア電話は、となりますが、 全国の駅前にごまんとある公衆電話に搭載することは可能でしょうか?非現実的ですね。
また、双方に同じシステムが必要ということも忘れてはいけません。

音声認識は?これも現実的ではありません。
しかし、ピポパ音を利用して外出先から留守電話を操作したり、ビデオの予約をすることができる ようになっています。このピポパ音は、機械での認識が容易に行えるのです。

そこで、通話中のピポパ音(DTMF)を認識し、文字に変換して表示したらどうだろうか?と思って いたところ、これを自分の手で実現する手段をようやく得ることができました。

長くなりましたが、「DTMFコードリーダを使ったおしゃべり」にて 詳細を解説してあります。

情報通信六法

あまり知られていませんが、障害者への利用を促進する条文が定められています。

○ 身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に
関する法律(平成8年版2410頁)


もし難聴者に配慮を示すと、どういった事になるでしょうか?
たとえば、駅での案内を考えてみましょう。
音声放送だけの所を、電光表示盤でも案内するようにしたらどうでしょう。
煩くて放送が聞き取れなかったり、聞きもらしたときでも、情報を受けることが容易になります。
つまり、難聴者にとって便利なことは、普通の人にとっても便利であることが多いのです。
そして、聴覚に依存しないことは、静けさを得るにも等しいといえます。

携帯電話は、電子回路の塊という構造上、どうしてもノイズを発生させ、これが補聴器に雑音となって影響を及ぼす ことが多々にしてあります。イヤホンマイクなどを用いてある程度は解決できるのですが。

それでも、少しでも聞こえる難聴者は「もっと聞こえやすくしろ」とのたまいます。
しかし、ちょっと待ってくださいな。聴力がさらに落ちて、声の識別が困難になったり、完全に失ったり したらどうするつもりですか?

視覚対話、つまり文字対話も利用できるようにすれば、この問題を回避できるだけでなく、これまで聴覚対話が 不可能だった難聴者にも、漸く利用してもらえるようになるのです。なぜ、通信事業者はこのことに注目しないの でしょうか。手帳交付者で60万人、潜在的難聴者は600万人という推定値があるにも関わらず。

RTS
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