旧型国電の作り方

本文へジャンプ


第2章 けがき(罫書)

けがき(罫書)とは設計図を具体化するモノ作りの原点です。
クモハ43のケガキをしている写真です。

実感的な模型は正確なケガキから始まります。ここではハイトゲージと定盤、そしてVブロックという定番ツールを使っての解説です。
ハイトゲージというと何か取っ付きにくい印象があるかも知れませんが、物を作るための基本のツールです。写真のハイトゲージは
ミツトヨのダイアルハイトゲージで509シリーズHI−15という製品で定価34,300円です。昨今はデジタルばやりですが、私は写真のようなアナログの製品をお勧めします。理由は「大事に使っていれば長持ちする」からです。私はもう20年近く使っています。

定盤(じょうばん)はハイトゲージとセットで使う基本中の基本ツールです。私の物は幅30センチ長さ40センチというサイズで昔知人から貰いました。最近の価格をネットで調べてみましたら「
大西測定(株)」という会社の「箱形定盤OS−105というシリーズがありました。模型で使う分には一番安い「機械仕上げ」という物で充分です。ちなみに同サイズですと定価22,000円となっていました。
使い方ですが、必ず油を塗って使用します。使う種類は私は昔「スピンドル油」と教わったのですが、ホームセンター等では手に入らず「刃物研ぎ用油」というのを使っています。本来は油砥石と一緒に使う物ですが、粘度が近い感じです。油を塗った上でハイトゲージを使うとまるで滑るように動きます。当然模型も手も油まみれになりますが、この程度の油ですと家庭台所用の中性洗剤と温湯(手が洗える程度の温度)で充分に落ちます。ですからけがきが終わったら適当なスポンジに洗剤をふりかけ、模型と手を一緒に洗えば終わりです。
定盤は使い終わったら表面に付いている油を軽くティシュペーパーで拭き取り(というよりもむしろ全体に塗り広げる)という感じで、新聞紙を被せておけば(防錆紙なら理想ですが)まず滅多なことでは錆びません。私の物はもう30年以上使っています。

最後がVブロックなのですが、これが紹介するのに頭を抱えてしまうのです、要はピンキリなのです。写真の物は「マグネット付き」と称する物で定盤の上で固定出来、便利なのですが非常に高価なのです。約5万円します。まあ手作業で研磨してある代物なので仕方がないのですが。ちなみに安い物は機械仕上げで高くても数千円です。
最初はハイトゲージと定盤にしっかりとした物を選び、Vブロックは安い物でというのも選択肢かなと思います。
いかがですか、昨今の鉄道模型の価格にはさすがに私も引いてしまいます。プロ並みの工作精度のための「電車1両くらいのキット、部品代」の投資だと思いますが。
測定やケガキに必要なアイテムです。 そのほか、けがき、測定で使うツールです。下から「ケガキ針」長持ちする物ですから、良質な物を選んで下さい。写真の物はクロム、バナジウム鋼、スイス製との刻印がありますが、もう長年使っており当時いくら位の価格だったのか覚えていません。つづいてステンレススケール、写真の物は15センチですが30センチの物もあれば便利でしょう。検定済みの物を選んで下さい。次はノギス。ハイトゲージを持っているならノギスは一番安いバーニヤノギスで充分です。サイズも写真の15センチで良いでしょう。こちらも検定済みの刻印のある物を選んで下さい。目の弱い方は、ダイヤル付きのタイプの方が見やすいかも知れません。
最後に写真上部の「スコヤ(直角定規)」あまり精度の必要ないケガキに便利です。例えば床下関連ですと、最初にハイトゲージで中心線さえ引いておけば、これを使い現物あわせで大体けがきが終わってしまいます。値段の方はピンキリで、写真の物は検定マーク無しです。ただ狂いやすいのでしっかりした物を選んで下さい。写真では判りにくいのですが、2本の腕の固定箇所がピン2本のかしめ止めになっています。
さて購入場所ですが、模型屋さんですべてが揃うことは希だと思われます。さりとて最近は「工具屋」さんもめっきり見かけなくなりました。ホームセンターの他「東急ハンズ」にもそこそこ有るようですし、店員さんも相談に乗ってくれるようです。
クハ68の前面のケガキの様子です。 ここから本題に入ります。ハイトゲージによるケガキの場合、その名の通り基準面(定盤)からの高さを計ります。そのためまず最初にアームを一番下まで下ろし表示が(0)で有ることを確認します。(もし(0)で無いときは校正します。その後私の場合「雨樋」をまず最初にケガキます。下から27ミリの所です。(別にどこからケガキ始めても構いません。また常に下から何ミリなので、以後「下から」の表記は省きます。
次に12.5ミリの所、窓の下の線をケガキます。(ウインドシルの上の線)次に1.6ミリ下がったところに線を引きます。(ウインドシルの下の線)何故1.6ミリかというと、ウインドシルは1.5ミリ幅のなので1.5ミリでけがくとケガキ線が見えなくなってしまうのです。同じように23.5ミリ(窓の上)に線を引きます。(ウインドヘッダーの下の線)そして1.1ミリ上がって(ウインドヘッダーの上の線となります。以降(ドア表示灯)や写真のテールライト下のステップ等の線をけがきます。
クハ68側面のケガキの様子です。 写真は側板部分のけがきが終わった状態です。このあと車体を倒し車体の中心線をけがきます。まず車体幅が35ミリになっていることを確認し、17.5ミリの線を書きます。電動車のパンタ周りの場合パンタかぎ外し装置の基準線になります。またベンチレーターの位置変更にも必要となります。前面の場合にも中心線は有効で、上の前面の写真では貫通路ドアの上につり掛けフックのけがきを行っています。
そのほか幌座はピノチオ模型の製品の場合約11.5ミリのため幅12ミリでけがいています。パンタ変更などの場合は(PS−11からPS−13など)先に中心線17.5ミリをけがきそこから上7ミリ、下7ミリというようにケガくとうっかりミスが防げます。その後車体をVブロック等で支え立たせます。パンタ変更の場合は既存のパンタ穴の中心を基準にした方が良いでしょう。
中心線をけがいていると、まれに中心線とベンチレーターの穴が合わないことがあります。(安物のボディキットに良くあります。)その場合は既存のベンチレーターの穴に合わせてけがくことをお勧めします。
ドアの手すり用のケガキです。 「飯田線」の場合「半自動扉」の取っ手も重要です。位置は線区によっても違い例えば飯田線と大糸線では取り付け高さが違います。おそらく塗り分けに起因していると推測されるのですが、飯田線の場合ウインドシル下の線から0.2ミリ下がったところを起点にし、さらに1.5ミリとしています。理由はエコーモデルの客車用の既製品の手すりを使えるからです。

「モノ」を作る上ですべての出発点となるケガキ(罫書)の解説でした。この重要な事柄が今までの解説書ではほとんど触れられてきませんでした。その事へのフラストレーションが、今回ホームページを立ち上げようとしたきっかけのひとつです。「正確なケガキ(罫書)無くして正確な模型などありえない」私の持論というより、むしろ「モノ」を作る人間の常識です。それは「設計図」が無い」ことと等しいくらいだと思います。

Home | 作り方トップへ |前へ次へ | このページのトップへ

   Copyright (c) 2010 mikeneko All Rights Reserved