貸金債権の利息について(関係法令)

「民法」

利息が生じる債権について、利率の約定がない場合、利率は年5分。民法404条。

(商人間でのお金の貸し借りの場合は、当然法定利息を請求することができますが、商人でない個人間、又は一方が商人でない場合は、利息の約束をしないと利息は取れません。利息の約束をしてはじめて利息が取れ、それにつき、利率を定めていない場合、法定利率が適用されます)

商事法定利率 6分(商行為によりて生じたる債務)。商法514条。

参考)お金の貸し借り(貸金業)については、絶対的商行為(商法501条)でもなく、営業的商行為(商法502条)でもない(銀行取引を除く)ため、会社以外の個人の貸金業者は、商人ではありません(商行為を営んでいない)。ただし、会社は当然商人であるため(商法52条)、会社が貸金業を営んだ場合、それは、附属的商行為(商法503条)として商行為となります。

したがって、個人の貸金業者から、商人でない一般消費者がお金を借りた場合、民事債権として、法定利率は年5分であり、消滅時効は10となります(ただ、この、個人の貸金業者からの借入金につき時効期間10年、については異論もあります)。

ただし、個人の貸金業者から、個人商人が、その営業のため、お金を借りた場合は、それは商行為(附属的商行為)となり、法定利率は、年6分となり、消滅時効も5となります。同様に、例えば、一般個人の親戚から、商売のためとして、商人がお金を借りた場合、法定利率は、年6分、消滅時効は5年です。商法522条。商法3条。

(商行為によりて生じたる債権は、本法に別段の定めある場合を除き、消滅時効5年。ただし、他の法令により短い時効期間がある場合は、その規定にしたがう(商法522条))

会社(商人)のお金の貸付(営業のため)は、商行為であり、法定利率は、年6分、消滅時効は5です。 メモメモ(新) kasikinjikoumemo.htm

金銭債務の不履行、損害賠償の額は、法定利率による。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率による。

不当利得、悪意の受益者は、その受けたる利益に利息を附して返還しなければならない。損害あるときはその賠償の責めに任す。

「利息制限法」

金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が以下の利率より計算した額を超えるとき、その超過部分につき「無効」とする。

元本10万円未満 利息 年20% 損害金 年29・2%(制限利息の1・46倍)

元本10万円以上100万円未満 利息 年18% 損害金 年26・28%

元本100万円以上 利息 年15% 損害金 年21・9%

(損害金につき、平成1261日より)

これを超えるものは無効。例えば、裁判所への訴えで、利息制限法を超える利息分の請求をしても、その部分の請求については、棄却される。また、利息制限法超過の利息で抵当権設定登記をしようと思っても、登記は受付けられず、利息制限法制限内に利息を引き直して登記することになる。

最高裁判決は、利息制限法制限超過利息の元本への充当を認め、さらに、

利息制限法所定の制限を越える金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払った債務者は、制限超過部分の充当により計算上元本が完済になったときは、その後に債務の不存在を知らないで支払った金額を不当利得として返還請求できる(最高裁判決)。とする。

したがって、利息制限法第12項の規定は、実質意味がなくなっている。

「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(いわゆる出資法)

金銭の貸付を行う者が業としてする場合、年利29・2%超える場合(229日を含む1年については、年29・28%、1日あたりについては0・08%の場合)、刑事罰あり。

(平成1261日より。以前40・004%)

ただし、日賦貸金業者・電話担保金融・質屋については、特例あり。日賦貸金業者、年54・75%超える場合、刑事罰あり(平成1311日より)。

業としてでない場合、年利109・5%を超える場合、罰則あり。

業としてする場合の上限金利は次のとおり法改正により引き下げられてきました。

昭和29年(1954年)〜、109・5%

昭和58年(1983年)11月1日〜、73%

昭和61年(1986年)11月1日〜、54・75%

平成3年(1991年)11月1日〜、40・004%

平成12年(2000年)6月1日〜、29・2%

「貸金業の規制等に関する法律」(貸金業法)第43条

利息制限法超過利息の金銭の支払が一定の要件を満たせば、有効となる。利息制限法超過利息の契約自体は、超過部分については無効という点はかわらないが、その無効となった利息の「支払い」を、例外的に、一定の厳格な要件のもと、元本に充当されないこととし、有効な利息の債務の弁済とみなした。

要件(すべてを満たすことが必要)

1、債権者が貸金業登録業者であること。

2、契約の際、貸金業法17条の要件を満たす書面を交付していること。

3、弁済の際、貸金業法18条の要件を満たす受取証書を「直ちに」交付していること。

4、債務者が約定金利による利息を利息としての認識で支払ったこと。

5、債務者が約定金利による利息を「任意に」履行したこと。

(この要件については、裁判所は厳格に解すべきとしており、裁判所でこの要件を満たしているとして認められる例はきわめて希である)

 最高裁判決で、契約に期限の利益喪失約款がある場合、事実上強制を受けるので任意性なしとされた

 

例えば、貸金業者から50万円の借入で、

利息 年18%(利息制限法の制限利率)を超え、年29・2%まで(出資法の罰則ぎりぎり)の利率の範囲をグレーゾーンといい、本来、支払う必要のない利息だが、上記、貸金業法の厳しい要件を満たせば、有効となる利率範囲。

多くの消費者金融やカード会社がこのクレーゾーンの金利で営業している。

上記要件を満たしていない場合、利息制限法所定の制限金利で引き直し計算したところ、支払すぎている額(過払い額)があれば、その額につき、貸金業者でない一般消費者等(知らずに支払った者)は、貸金業者に対して、不当利得として、返還請求することができる。

利息制限法引き直し計算メモ rigennhoumemo.htm 借金整理の方針 housin.htm 取引履歴開示義務の明確化 jimugai.htm

参考(訴状一部の例) akuinojuekisha.htm (一連計算についての準備書面の一例、判例等省略した簡潔なもの) hanron1.htm

最近の最高裁の判例より注意点 itirenkeisankahi.htm 開示請求に対する業者の対応 taiou.htm

争点 - 司法書士とくの日記

酒井司法書士事務所 index.htm

 

損害金(遅延損害金)について

特定調停(もしくは任意整理)では以下のような合意になるケースが多い。

2回分以上怠り、その金額が○○○円(2回分)に達したときは、期限の利益を失う。

借受金につき 年18%

(もしくは利息制限法の上限。元本10万円未満、損害金 年29・2%(制限利息の1・46倍)。元本10万円以上100万円未満、損害金 年26・28%。元本100万円以上、損害金 年21・9%)

立替金(1・2回払い・リボルビング)につき 14・6%(消費者契約法)

立替金(割賦購入)につき 6%(割賦販売法)

借受金の保証委託契約に基づく代位弁済後の求償債権につき 14・6%(消費者契約法)

 

余談

利息契約に基づく利息請求権の要件事実

金銭消費貸借契約の成立

1、金銭返還の約束

2、金銭の交付(貸し渡した・貸し付けた)

3、弁済期の合意

利息契約

4、利息支払の合意(商人間の場合、当然利息発生)

5、一定期間の経過

利率については、利息の合意はしたが、利率の約束がない場合、法定利率による。

民事債権の場合、年5

商事債権の場合、年6