(参考)

  計算方法について

 

原告の計算方法(原告と被告との取引で途中完済により発生していた過払い金は、その後の新たな貸付を受けた時点で、原告がなんらの意思表示をすることなく過払金債権が貸付金債務に当然充当される)には法律上の根拠がないと主張されるが、以下の理由により原告の計算方法が妥当である。

 

(1)違法状態の是正

強行法規たる利息制限法の所定金利を超える金利の支払いにより生じた過払い金については、他に充当できる債務が生じたときには、その債務に当然充当させるのが、その違法状態を是正する、違法な金利の取得をできるだけさせないという観点から妥当である。

 

(2)当事者間の公平

被告からの借入金については、原告は、利息制限法所定の制限金利を超える高金利の支払いを強制され、一方、過払い金については、悪意の受益者としての年5%の利息が生じるにすぎない。さらに、この過払い金につき、貸金業者である被告は、貸金業で利用し運用利益をあげているのである。

過払い金発生の事実は、当時、消費者金融の一般利用者にはほとんど知られておらず、原告にその適切な行使を期待することはできなかった。

この著しい不公平を考えると、過払い金は、新たな借入金に当然充当させることによって、是正されるものと考える。

当然充当するという原告主張の計算方法が、当事者の公平を図ることになり、妥当である。

 

(3)  当事者の合理的意思

民法には、弁済の充当についての規定(民法488条〜491条)があり、ここでは、当事者(特に弁済者)の合理的な意思を重視し、当事者の合理的意思に合致し公平であるかどうかが基準とされている。

また、民法の相殺の規定(民法506条)では、遡及効が認められている。これは、相殺適状を生じた債権を有する者は、その時点で決済されたように考えるのが通常であり、当事者の期待と公平を図った規定であり、ここでも、当事者の合理的な意思と公平が重視されている。

上記の民法の規定を考慮すれば、弁済者の通常の合理的な意思を重視して充当を考えるべきである。

そこで、もし、原告が、平成○○年○○月○○日以降、過払い金の存在を知っていれば、それを直ちに被告からの借入金の弁済に充てるのが通常である。それは、被告からの借入金には利息制限法所定の制限金利を超える高金利が付されており、原告としては、早期に元本を減少させ、利息の減少を望むのが通常であると考えられるからである。

 

(4)契約の同一性

被告は、平成○○年○○月○○日に完済した取引と、平成○○年○○月○○日以降借入れた取引とは別個独立の取引であると主張する。

しかし、利息制限法所定の制限金利による引き直し計算においては、本件取引は、両方、同じ金銭消費貸借取引であり、同一支店での契約、同じ会員番号(××××××)を使用していることから、まったく種類の異なる別々に計算すべき取引と考える必要はなく、また、貸金業を営む被告は、完済後の再利用は予想できるものであり、上記(1)(2)(3)の理由を考えても、一つの取引として一連計算をするのが妥当である。

 

  悪意の受益者について

 

乙第○号証(領収書)が店頭入金の際の、乙第○号証がATMでの入金の際の貸金業規制法の18条書面であるが、これには、貸金業規制法で記載が要求されている「貸付金額」と「契約の年月日」の記載がない。

このように形式面すら要件を満たしていないのであれば、被告が、利息制限法所定の制限金利を超える利息の支払が有効な債務の弁済とみなされると認識していたとは認められない。

被告は、過払い金が発生した時点から悪意の受益者として年5%の利息を負担すべきである。

仮に、悪意でないとしても、貸金業者である被告は、過払い金を、貸金業で運用し利益をあげているのであるから、その運用利益を考えると、年5%程度の利息分は、民法703条の現存利益にあたり、原告の損失分として、当然、原告に返還すべきものである。

 

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