愚行連鎖 銘 木 図 鑑

このページについて

昨今のアコースティック・ギターは「ブーム」に近いモノがあるが、何故か、系統立った楽器用木材についての情報が何処にもなかった。
木材の名称の様な基本的なことであっても、いざ外国の資料を当たろうとすると、その正式な綴りさえも不明だったのだ。
別項でまとめた楽器の手入れ法弦の素材分類についても同様である。

そんなわけで、元々は、ギターのカタログを読むため、自分のために書き貯めたデータだった。
しかし、「情報は公開したと同時に“自己専有物”ではなくなる」と言う当たり前の事実を痛感せざるをえなかった。

稚拙な情報ながら、多くの方に参照いただき、更には、ご指導やご助言を頂いて浅薄な自分を恥じ入ると同時に、新しい知識を蓄積して行ける幸せを感じている。

このページに限らず、ご意見やご助言を今後ともいただければ幸いである。

木材の名称について

我が国で木材として実際によく使われるのは50〜60種、そのほか輸入材が150〜200種程度と言われている。
樹木は植物学的に科・属・種の順で細分され、更に変種、品種等に分類される場合もある。
国際的に共通の名称は、「学名」(ラテン語)であり、同一種同一名が原則となっているが、学術的に必要な時以外には、その土地で使っている標準的名称で呼ぶのが普通である。
一般的な木材名称は植物学的分類よりも材質や用途が基準となって付けられるようである。
その他、我が国では“商業的通称”として秋田スギ、吉野スギ、屋久スギの様に産地の名前をつけて呼ぶことがあるが、楽器材の名称で問題となるのは主に外国産材の“商業的通称”である。
“商業的通称”には全く異なる種の木材に《世界的に商品価値が高い木材》に似た名称を付ける場合が多く、これが混乱を呼ぶ原因ともなっている。
更に問題を増加させるのが、同じ木を違った名前で呼んだり、全く異なる木に似たような名称を冠していることが少なくないことである。
楽器材としては、例えばレッドシダー等は、原産地の北米ではウェスタンレッドシダーと呼ばれているが、我が国の材木業界では昔からスギの代替材としてベイスギ(米杉)の名で取引されてきた。楽器材としてはレッドシダーと言う名称の方が一般的だが、レッドシーダーという名で呼ばれる広葉樹材もあるらしい。


GB楽器博物館

銘 木 図 鑑 INDEX

>アルファベット順INDEX

アッシュ
(Ash)
セン
(栓:Sen)
バスウッド
(Basswood)
メイプル
(Maple)
バーズアイ・メイプル
(Birds EYE Maple)
カーリー・メイプル
(Curly Maple)
キルテッド・メイプル
(Quilted Maple)
ソフト・メイプル
(Soft Maple)
マーテル/マートル
(Myrtle)
     
マホガニー
(Mahogany)
バールド・マホガニー
(Burled Mahogany)
セドロ
(Cedro)
コリーナ/コリナー
(Korina)
レースウッド
(Lacewood)
サペリ
(Sapelli)
モンキーポット
(Monkeypot)
リンバ
(Limba Wood=korina)
ウォールナット
(ウォルナット:Walnut)
シカモア
(Sycamore)
スプルース
(スプルス:Spruce)
シトカスプルース
(Sitka Spruce)
シダー
(Cedar)
レッドシダー
(Red Cedar)
ベイマツ
(Douglas Fir/Oregon pine)
エゾマツ
(蝦夷松:Ezo matu)
ローズウッド
(紫檀:Rosewood)
ハカランダ
(Jacaranda,BrazilianRosewood)
ニューハカランダ
("New"Jacaranda)
コーラル・ローズウッド
(Coral Rosewood)
フェルナンブコ/ペルナンプコ
(Phernambuco)
     
ココボロ
(Cocoboro)
ソノケリン
(Sono keling)
オバンコール
(Ovangkol)
パドック
(パドウク:Padauk)
ブビンガ
(Bubbinga)
パープル・ウッド
(Purple wood)
モラド
(Morado)
コア
(Koa)
シャムガキ
(シャム柿:Siam-Gaki)
タガヤサン
(鉄刀木:Bombay black wood)
アガチス
(Agathis)
アメリカンチェリー
(American Cherry)
ナトー
(Nato)
ラワン
(Lauan)
メランティ
(Meranti)
マンゴー
(Mango)
エボニー
(黒檀:Ebony)
マッカーサー・エボニー
(縞黒檀:Macassar Ebony)
グラナディラ
(Grenadilla)
 
ヒノキ
(桧,檜:Japanese Cypress)
ブナ
(椈・山毛欅:Beech)
ツゲ
(柘植・黄楊:Boxwood)
ハードウッド
(Hardwood)

その他(非木材)の素材

☆水棲生物
アバロン
(アワビ:Abalone)
黒蝶貝
(Black Pearl)
白蝶貝
(White Pearl)
ベッコウ
(鼈甲:Tortoiseshell)

☆陸上生物
牛骨
(ボーン:Bone)
象牙
(Ivory)
マンモス
(Mammoth)
水牛
(Water buffalo)

☆人工素材(ナット/サドル等の新素材)
ミカルタ
(マイカルタ:Micarta)
コリアン
(Corian)
タスク
(Tusq)
 

☆人工素材(半合成樹脂)
セルロイド
(Celluloid)
ナイトレイト
(Nitrate)
アセテート
(Acetate)
アイボロイド
(Ivoroid)

☆人工素材(合成樹脂)
ABS樹脂
ボルタロン
(Boltaron)
エボナイト
(Ebonite)
 

☆人工素材(その他の素材/複合素材等)
グラスファイバー
FRP
カーボンファイバー
(Carbon Fiber)
   

☆人工素材(圧縮積層素材等)
HPL
(High Pressure Laminate)
ストラタボンド??
(Stratabond)
   

● ギター材について




Ash

アッシュ(Ash)

アメリカ、カナダ
学名 Fraxinus mandshurica Rupr.(タモ)Fraxinus americana L.(ホワイトアッシュ)
[モクセイ科]日本タモ、塩地、桧の代替としても使われる。

別名アメリカトネリコ、西洋トネリコ
比重:0.65〜0.69
メイプルに似た特性を持っており、エレクトリックギターによく使われる。
比重の軽い物(Light-Ash)から重い物(Heavy-Ash)があり、用途によって使い分けられる。
トネリコは野球のバット材のイメージが強いがOvation Collector1993のトップに見事な木目の材が使われていて、個人的にはその印象がすごく強い。
バットに使う位なのだから、堅い木なのであろう。

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Sen

セン(栓:Sen)

北海道、本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、千島、サハリン、ウスリー、中国東北部
学名 Kalopanax pictus Nakai
[ウコギ科]広葉樹


別名ハリギリ
比重:0.52
比較的軽い癖の少ないバランスに優れた材である。
これもエレクトリックギターによく使われる。
アッシュに似た木目をもつが、アッシュよりも甘いトーンを生む。
なんと、桐の代わりに下駄にも使われるそうな。
センと言う名称が日本語なのか外来語なのか解らないが、「せん」を辞書で引くと

【栴】
セン=栴檀(センダン)。(sandalwood)
びゃくだん科の常緑高木。インドネシア原産。香りが非常に強い。香料・薬用に用いられる。〈同義語〉旃檀。白檀(びゃくだん)と総称される事もある。
梵語では candana 旃檀那。せんだんじゅ【栴檀樹】とも言う。

「栴檀は二葉より芳し(せんだんの木は、芽が出て二葉になったころから強い香りがある。偉人は子どものときから普通の子どもとどこかちがったところがあるたとえ)」として「平家物語」の中で使われている。
白檀は仏像・器具等に使われ、皮も香料・薬料に供する。

白檀、と言うと箪笥の虫除けや中国土産の薄木細工の扇子を思い出してしまうが、このセンがあれと同じ物かどうかは不明である。



遠藤利明さんからメールで貴重な情報を頂きました。

 Sen

 「栓の木」センノキ。東アジア(中国、朝鮮半島、日本列島など)特産の落葉広葉樹で、正式の和名は、ハリギリ。和名は、その材が桐のように軽くて白く丈夫で、葉も似ており、若い枝には、バラのような鋭い針が付いていることからきている。葉は、同じウコギ科に属するヤツデのような大きな掌状であり、成長が比較的早く、天然林内には大きな木が多い。センノキの名称は、もと東北地方の方言名で、日本では北海道が主産地であることから、木材取引にともなって、広く使われるようになったと思われる。
センノキの木材は普通、単にセンと呼ばれる。辺材は、ほぼ白色、心材は明るい褐色で、年輪が明瞭であり、木目が美しい。堅さは中程度で加工が容易であり、光沢に優れ、また、大径材が多いので、家具材などの木工材、内装用合板など、非常に重要な用途を持つ。

…と言うことで、白檀と栓は全くの他人の関係のようである。
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basswood

バスウッド(Basswood)

北米、カナダ、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア
[トウダイグサ科]シナの木、俗称・チーズウッド、ホワイトミルクウッド

別名 エンドスペルマ、ラブ、セセンドック、グバス

材質は軽く軟らかで弱く毛羽立ちやすい。加工は容易で粘りが有る。
新鮮な間は淡黄白色で日が経つと黄褐色になる。

アコースティック楽器に使われている例は余りない様だ。軽く癖のない材なので楽器本体の設計やピックアップによってキャラクターが変わるらしい。


遠藤利明さんからメールで貴重な情報を頂きました。

 Basswood

 シナノキの仲間の北米での名称。一般的な英語名は、lime(果樹のライムとは別)で、ドイツ語のLindenも広く用いられる。
(あの「菩提樹」です。(お釈迦様のインドボダイジュは、葉の形がにているというだけで、全く別の種類です)
シナノキの仲間は、温帯(アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、ロシア、中国北部など)に広く40種以上が分布する。北米には4種、日本にはシナノキ、オオバボダイジュなど4種が分布しており、ブナ、ナラ(オーク)、カエデ(メイプル)、トネリコ(アッシュ)などの仲間と並んで、温帯落葉広葉樹林を形成する主要樹種の一つである。葉は一般にハート型で、イチジクの仲間であるインドボダイジュに似るため、「菩提樹」と呼ばれる種もある。材は辺材、心材ともに白く、年輪は目立たず、緻密であるが、軟らかく、傷がつきやすい。手工具でも容易に工作できるため、彫刻や木工に好んで使われる。日本では、良質な合板材として多く用いられるほか、木彫り熊など、小木工品に賞用されている。シナノキの仲間の木材は普通、単にシナと呼ばれる。樹皮の繊維が強いので、古来、ロープや布として利用され、また、花は良質な蜂蜜源である。日本での主産地は北海道。

…ふうむ、リンデンバウムは死してなお、楽器となりて歌を歌い続けるのだった…
ロマンチックかな?ちょっと。
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Maple

メイプル(Maple)

アメリカ、カナダ
学名 Acer saccharum Marsh
[カエデ科]
メープルシロップ 別名ハードメープル、シュガーメープル、ブラックメープル、ロックメープル
比重:0.71
カエデ、モミジの類、どちらかと言うと日本の楓に近い種類。
比重はローズウッドとマホガニーの間位。
木目が美しく、音抜け、サスティーンに優れ、クリアーな音響特性をもつ。
強度耐久性が高いのでネック材にも多く使われる。
シュガーメープルからは、あのホットケーキの必需品、メープルシロップが取れる。

Birds EYE Maple

バーズアイ・メイプル(Birds EYE Maple)


メープルの中でも不規則な鳥の目状の美しい杢が出た物。
Curly Maple

カーリー・メイプル(Curly Maple)

カナダ・アメリカ北部

ハードロック・メイプルと呼ばれる事もあり、アコースティックではサイド・バック材に使われる事が多い。
ハードメープルの中の特定の柄の通称。
耐久性・強度・弾力性に優れ、音質は歯切れ良くやや硬め。
Quilted Maple

キルテッド・メイプル(Quilted Maple)

カナダ・アメリカ北部太平洋岸

サイド・バック材として使用される事が多い。キルテッドと呼ばれる鱗状の木目を持ち、カーリーメイプル等と比べると軽く、加工し易い。
ハードメープルの中の特定の柄の通称

Soft Maple

ソフト・メイプル(Soft Maple)

カナダ・北東部アメリカ

カーリーメイプル等に比べると比重が軽く、強度・硬度ともにかなり柔らかい。

カーリーメイプル以下のサンプルはかなり着色がしてある。本来のメイプルは白っぽい木目のはずである。

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Myrtle

マーテル/マートル(Myrtle)

原産地 地中海地方
学名 Myrtus communis Linn.
英名 Common myrtle
[フトモモ科ギンバイカ属]


Myrtle
別名 ミルツス/ミルテ/マートル/ミルタス/イワイノキ/ギンコウバイ(銀香梅)/ギンコウボク

分布 地中海沿岸、北アフリカ〜西南アジア、イラン、アフガニスタン。

明治末年日本に入る。


Lowden S-35-2 MYRTLE Net上で発見したLowden S-35-2 MYRTLEと言うギターに使われている材。
ギター材としてはかなり特殊な物と思われる。
上はサイドの板目、下はバックの正目。
写真で見る限りでは、目が詰まった木目でメープルに印象が似ている。
園芸の世界では“ギンバイカ(銀梅花)”として結構ポピュラーな植物のようだ。

常緑低木(2〜3mにはなるらしい)。葉は対生または三片輪生、短柄で卵形または披針形、鋭頭で全縁または暗緑色で光沢が多く、葉肉に香気がある。花は、単生、腋生で純白または帯紅白色でウメ(梅)の花に似ており芳香あり。果実は青黒色で食用になる。小球形または短楕円形である。種子は7〜9個で扁平、中央部は褐色。
葉にはユーカリに似た香気あり。 木材や観賞用として以外にも用途が多く、甘い果肉は生食または乾果や挽いてスパイスに、葉はスパイスとして肉料理の香り付けにしたり、ハーブやポプリ、アロマテラピー用精油に利用される。
その他、薬用としても使われ、「かゆみ」には葉を水で煎じて肌に直接塗布したり、生理血が多い時、葉を蜂蜜と一緒に食用するという用法もあるらしい。


Myrtle
古代エジプト時代から愛と歓喜、繁栄の象徴とされており、アダムがエデンの花園を逐われた時、この種子を身につけて世界に広げたと言う。 ギリシャ神話にも頭の飾りに月桂樹と共に使ったと言う記述がある。 美の女神ヴィーナスに捧げる花もこれであることから、愛の象徴として結婚式のリースにも使われる。
イギリスでは、古くから花嫁の花束にマートルの枝を入れ、嫁ぎ先で挿し木をして幸せを願う習慣があったそうだ。
ギリシアでは不死・再生のシンボルともされ、愛の象徴であるこの花は、1840年、イギリスのヴィクトリア女王が結婚したとき、手にした花束にも添えられていたと言う。
ウェールズ地方では、玄関の両側でこの木が茂れぱ、その家は愛情と平和に恵まれるという。


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Mahogany

マホガニー(Mahogany)

東南アジア・南アメリカ
学名 Swietenia macrophylla King
[センダン科]常緑高木。広葉樹


別名アカジョ、モグノ
比重:0.56
比較的軽い材
この材もサイド・バック材やネック材として多く使われる。
南部メキシコからコロンビア、ベネズエラからアマゾンの上流まで分布し、主産地はメキシコ、ホンジュラス、ペルー。
産地ごとに材質、密度、型さ、色調等が異なっている。
心材は紅褐色で肌目はやや粗い。比重0.55。
重さ・硬さはほぼ中庸、欠点が少なく耐朽性が高い。加工性、仕上げが良好である。楽器の他高級家具材、船舶用材等に用いられる。

マホガニーの特性は倍音域が幅広く、中低音が豊かで暖かい音質を産み出す。
産地によって硬度や比重に差がある。ギター用としてはホンジュラス産がベストとされている。
MartinのD-18やo16NY、Gibsonレスポールの音を好む人はマホガニーだから良いと言う。
確かに独特の音が出るのだな。

マホガニーも本来はもう少し薄茶色に近いイメージの木材であるが、楽器材として使われる時はサンプルや、あるいはもっと濃い赤茶色の着色がされる事が多い。

Burled Mahogany

バールド・マホガニー(Burled Mahogany)

アフリカ

サイド・バック材に使われる。硬く抜けの良いメリハリのある音質になる。
Cedro

セドロ(Cedro)

南アメリカ
学名 Cedrela odorata Linn.
[センダン科]
別名 マルーパ、シマルパ、マルバ、カセッター

(セドロ:西洋杉)と呼ばれる事もある様で、Cedarは辞書で調べるとシーダー(スギの一種)を意味するが、セドロはマホガニーに近似するもので、杉の類ではない。
葉巻箱の材として有名らしく、南米では高級家具などにも使われるようだ。
楽器材としてはインディアン・ハープとも称されるパラグアイのハープ(竪琴)“アルパ”にも使われる。
アルパ

我が国でアルパと言うときは中南米のハープ全般を指すことが多い。
しかし、本来アルパ(Arpa)はスペイン語やイタリア語でハープのことなので、言語圏によっては全ての竪琴をアルパと呼ぶ。

スペイン人が持ち込んだことからそう呼ばれるようになった、フォルクローレでお馴染みのアルパは、クラシックで使われるグランドハープ(コンサートハープ)と、アイルランド音楽に使われるアイリッシュハープ(Irish Harp/ケルティックハープ:CelticHarp)の中間くらいのサイズである。

ちなみに「アルペジオ」はイタリア語で「ハープのように」という意味(arp-e-ggio)だそうで、納得なのである。

セドロはアコースティック・ギター全般の材としては余り馴染みのない名前だが、クラシックギター材としては意外に多く使われているいるようである。
かつてのヤマキ・ギターがネック材として使用していたこともある。
現地では”苦い汁”という名を持ち、昔、木の皮が薬に使われていたそうで、“セドロ”で検索すると怪しげな薬品とも健康食品ともつかないものが多数ヒットする。

Korina

コリーナ/コリナー(Korina)

西アフリカから中央アフリカ
学名:Terminalia superba
[シクンシ科]広葉樹
比重:0.54

成木は45メートルほどの高さに成長する。
別名:リンバ、コリーナ(Korina)、アファラ(Afara)、フラケ(Frake)

コリナーあるいはコリーナはGibson等が使った通称で、リンバ(Limba Wood)が正式名称。

Gibson Flying V,Explorer マホガニーに似た特性を有し、やや高価。
部位によりブラック、ホワイトがある。
加工性に優れ、釘打ちなども容易。耐久性は低い。

家具材、楽器材、合板、内装材、構造材などに用いる。
加工の際に皮膚炎を起こすことがあので注意を要す。

58年に登場したギブソンのフライングVやエクスプローラーのボディ材として使用されたことでも有名で、58〜59年にかけてフライングVは98本、エクスプローラーは22本のみが生産されたという記録が残されている。
稀少材である為に入手は困難であるが、どちらのコリーナ・モデルも近年物のリ・イシューモデルがあるらしい。

写真は
 '58 Gibson Flying V(左)
 '59 Gibson Explorer(右)

Sapelli

サペリ(Saplli/Sapele)

アフリカ
学名:Entandrophragma cylindricum Sprague
[センダン科]広葉樹
別名:サペリマホガニー

クラシックギターでは比較的ポピュラーな素材のようだ。
外見的には非常にマホガニーに近く、一見区別が付かない。
特性的にも近いのではないだろうか。


Lacewood

レースウッド(Lacewood)

オーストラリア
学名:Platanus hybrida Mill
[スズカケノキ科]広葉樹


サイド・バック材に使われる事がある。
マホガニーに近い特性を持つ。


Monkeypot

モンキーポット(Monkeypot?)

正しくは Monkeypod(モンキーポッド)
中米から南米北部、西インド諸島
学名 Samanea saman
[マメ科]

この木なんの木 サマン:Saman、アメリカネムとも呼ばれ、ネムに似た薄紅色の花を咲かせ、樹冠が広がるので、Rain Tree(レインツリー)とも呼ばれる。
大江健三郎の作品にも登場し、身近なところでは、日立の「この木何の木」のコマーシャルも有名。
比較的軽い材であり、幅広い倍音域を備え、豊かな中低域、甘く温かなトーンが特徴。
エレクトリックギターに使われているのは見た事があるが、アコースチックギターでも使われるのかは不明である。

次の時代に、新しい風を吹き込んでいきます。
(C)(株)日立製作所

上の“この木何の木”については日立グループのホームページ『日立の樹オンライン』で詳しくご覧頂けます。
当該写真は著作権者のご厚意でお借りしています。著作権は (株)日立製作所に帰属します。


モンキー・ポットの名称の由来

モンキーポットは直径20cmもある木質性果実を付ける。
果実は熟すと先端のフタが離れ、中の種子を放出する。その落果した果実を猿が見つけ中の種子を一杯に握りしめると手が抜けなくなり、果実をぶら下げて歩くことから、モンキーポット(猿の壷)と呼ばれている。

夢の島熱帯植物館パンフレットより

うーん…そうすると、私が見つけだした“正しくは Monkeypod(モンキーポッド)”と言う話がまた怪しくなって来てしまう…
壷なら“Pot”、“Pod”なら豆類のサヤなどの意味もある。猿の豆鞘…と言うのも何となくありそうな名前。
謎は深まるばかり…

“教授”yoshidaさんから情報提供

モンキーポッド
モンキーポットは別種のようです。
モンキーポットの記述のある。ナッツ屋さんの元記事はここみたいなんですが、建築用木材のリストにサブカイヤという木材が無いのです。これの実際の用途は何なのでしょうか実際のところは不明です。ともかく楽器にはモンキーポッドの方が使われていているのは間違いでは無いでしょう。

ふむふむ…
モンキーポットの方は サプカイア(SAPUCAIA)
学名:Lecythis spp.
科目:LECYTHIDACEAE(サガリバナ科)
和名:パラダイスナッツノキ」
と言うんですね。
このナッツ屋さんの元ネタとなったと思われるParque Ecologico de Gunma:アマゾン群馬の森の記述では
材は建材、家具材、楽器材などに利用されます。また、果実部分は特徴的な形を生かして什器や装飾品に利用されます。
とあり、モンキーポッドの方には
用材としての用途は余りありません。サラダポールなどの刳り物にされて使われます。
とありますが…
どちらもかなり大きな木のようですね。
イメージだけからなら、「マメ科」の高木の方が楽器材に向きそうな印象はありますね。
材としては、どうやらマホガニー系の素材と言うことになるようです。

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Walnut

ウォールナット(ウォルナット:Walnut)

ヨーロッパ、アメリカ、日本
学名 Juglans hindsii jeps.(クラロウウォルナット)Juglans nigra L.(ブラックウォルナット)Juglans Sieboldiana(クルミ)
[クルミ科]

クルミの実 比重:0.53〜0.66
家具などにも多く用いられる。

加工し易い柔軟性のある材で暖かい音質と中低域の優れたサスティーンが特徴。
3ピースネックに挟み込む事によりネックの強度向上や狂いを押さえる目的にも使われる。
Ovationのブリッジにも使われている。
クルミの実

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Sycamore

シカモア(Sycamore)

コートディボアール、ナイジェリア、アンゴラ、ケニア、ウガンダ
学名 Aningeria sp.
[アカテツ科]
辞書によると、米語ではアメリカスズカケノキ、英語ではセイヨウカジカエデ
他にエジプトイチジク(シリアおよびエジプト産)を指す事もあるが、楽器でこの名称が使われた時は恐らくズズカケの類と思われる。
比重:0.55
軽く美しい中高音の鳴りが特徴で、アコースチックギターのトップに使われる事も多い。

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Spruce

スプルース(スプルス:Spruce)

カナダ・北ヨーロッパ
学名 Picea sp.
[トウヒ・マツ科]常緑針葉樹、エゾマツに近い種類。

割箸 別名ベイモミ、ホワイト、ブラック、エンゼルマン、マウンテンスプルス

針葉樹特有の細かくまっすぐな木目を持つ。
比重:0.42
軽量、かつ優れた音響特性をもつ。アコースティック楽器のトップ材の定番である。
だが、殆どはパルプの原料になってしまうらしい。
(ううむ…フラットトップの銘品になるか、ティッシュペーパーになるか…運命というのは奇なモノ)
嘘か誠か割箸の材料でもあるらしい。確かにそんな木目ではある。

Sitka Spruce

シトカスプルース(Sitka Spruce)

カナダ、アメリカ西部、アラスカ
[マツ科]木曽桧の代替として使われる。

別名ベイトウヒ、シトカススプルース、アラスカヒノキ

流通上はスプルース=シトカスプルースなのだそうである。
北方産の材の方が良質である。
楽器では、特に「良質なモノ」と言う意味合いで、“シトカ”の名称が使われるようである。
Martinの高いのなんか、みんな“Top:シトカスプルース”みたいである。
(“シトカ”のスペルが調べても分からなかった。どなたか教えてください)
↑自己解決しちまった。…見つけました。
他のスプルース分類のスペルも発見したので記録します。2000.5.15.

イングルマン(Englemann)
アディロンダック(Adirondack)
ジャーマン(German)…これは蛇足。

経年変化で色が赤くなることが多い。
(これがギターフリークスにはたまらない…)

なんと、シトカスプルースは航空機材にも使われるそうで、あの有名なハワードヒューズが全財産をかけて製作した世界最大の飛行機、ヒューズHK-1(発動機8、全長67m、全幅98m)飛行艇は木造で、この木材を利用していたのだそうだ。

   →参考:ヒノキ


yoshidaさんからメールを頂きました。

ちょっと銘木図鑑読んでていて気がついたんですが
シトカ・スプルースのSitkaはアラスカの地方の名称で
この地方でスプルースの種として認定されたんでこの名称がついたそうです。
これはスタインウェイのたしか”ピアノの出来るまで”という絵本にかいてありました。
(\4,000.ぐらいするんで立ち読みです)
ピアノの場合処女林つまり原生林の木を正目だけ切り出して響板にするようなことを書いてあります。楽器として残るかトイレットペーパー、割り箸として消費されるかは人間の運命を象徴しているような気がします。

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Beech

ブナ(椈・山毛欅:Beech)

学名 Fagus crenata
[ブナ科ブナ属]
分布 北半球温帯の広範


家具などに使われる「オーク」は北半球の温帯に広く分布する広葉樹のブナ科コナラ属の総称で、樫(カシ)とされるのは誤訳である。オークは日本でのミズナラやクヌギなどに近い。

日本に存在するブナ属の樹木はイヌブナ(学名:Fagus japonica)で、ブナ科には他にナラ属、コナラ属、クリ属、マテバシイ属、カシ属などがある。いずれも堅い実(俗に言うドングリ)を結実する馴染み深い木である。
ブナは冷温帯林の重要な構成種であり、冷温帯林のことをブナ帯と呼ぶ。

ブナの実 我が国では古来より建築材や家具材として用いられていたが、「育成に時間がかかる」「ねじれがある」「耐久性が低い」といった理由から近代に入ってヒノキや杉などの針葉樹よりも下に見られていた。
漢字表記では椈・山毛欅、JISには規定がないが国字では木偏に無でブナと読ませる。
これは木材としては価値が無いという意味だったらしい。
ヨーロッパでは木の実を食用や家畜飼料、実から採れる油を食用や灯油として活用していた。
昨今では生態系におけるブナ林の重要性が認識されている。

楽器用としては、YAMAHAのSilent-Bassの補助フレームにも用いられている。


Boxwood

ツゲ(柘植・黄楊:Boxwood)

学名 Boxus mivrophilla var. japonica
[ツゲ科ツゲ属]
分布 北半球温帯の広範


比重 0.97
ツゲ科の低灌木の木材で国内産のものを本柘(ホンツゲ)と呼ぶ。タイ周辺から輸入した物を(シャム柘)と呼ぶ事もあるがこれはツゲに良く似たアカネ科の木材であることが多い。見た目は本柘とまったく変わらないようだが若干脆いらしい。
素材としては櫛や将棋の駒が身近で、算盤の珠、印材としても多く使われている。
ツゲは日本にある木材の中で最も緻密で均一な材質であって、強度のあるプラスティックが作られる迄は柘植は重要な素材として重用された。
学名のBoxus、洋名ボックスウッド(Boxwood)は小箱等を作る材料として使われたことに由来する。

バイオリン・フィッティング 硬質・軽量で木目も美しいので、楽器材としては、バイオリン属のペグ、テールピース、顎当て、リコーダーのボディなどに使われることがある。
Boxwoodと一口に言っても、黄色っぽい色や、ムラのあるものなどさまざまだが、楽器用としては茶系のものが珍重される。
そもそもがあまり大きくならない樹木なので、材質的には優れていても、こうした小物に使う程度の木取りしかできないのでは無かろうか?



Cedar

シダー(Cedar)

ヒマラヤスギ属の樹木、スギ、ビャクシン(柏槙:イブキの一品種)、ヒバ。
楽器の場合はシダーと言えばヒマラヤスギ材を指す様だ。

Cedar

レッドシダー(Red Cedar)

こちらは“レッドシダー”
上のシダーの写真が不鮮明なので参考掲載。

シダーも針葉樹特有の細かくまっすぐな木目を持つ。
スプルースよりも柔らかめの音質になる場合が多い。
クラシックギターのトップには好んで使われ、Lowdenのトップ材としても有名で、これもアコースティック楽器のトップ材の定番である。
これまた高級割箸で見かける木目である。

Douglas Fir

ベイマツ(Douglas Fir/Oregon pine)

北アメリカ
学名 Pseudotsuga menziesii Franco
[マツ科]

比重:0.53
クラシックギターの表板には良く使われる。
フラットトップギターでも時々目にすることがある。

Ezomatu

エゾマツ(蝦夷松:Ezo Matu)

日本、樺太、中国、朝鮮
学名 Picea jezoensis
[マツ科]

比重:0.5前後
北海道を代表する樹木で「北海道の木」にも選ばれている。
楽器材として優れ、ヴァイオリンのトップ、ピアノ響板など、また、パルプ材としても高品質で、スピーカーのコーン紙としても使われる。
ギターではYAMAHA FGがトップに使っている。
トウヒ、スプルース、ホワイトウッドとは同属であり、蝦夷松そのものがスプルース、ホワイトウッドと呼ばれて流通することもあるらしい。

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Rosewood

ローズウッド(紫檀:Rosewood)

ブラジル・インド
学名 Dalbergia latifolia Roxb.
[マメ科]
別名インディアン・ローズウッド、パリサンドル(バリサンダー)。
シタン(紫檀)材。かすかにバラのような芳香がある。
比重:0.87
マメ科の常緑高木。インド・スリランカ原産。高さ10mに達する。葉は三〜五枚の羽状複葉。黄色の蝶形花を総状につける。材は暗赤色で質堅く重く、銘木・器材として賞用。古くは材の紅色色素を染料として用いた。類似の数種も含めて紫檀材とされることがある。
吸水性が高く、重く強度がある。アコースティックギターのサイド・バック材の定番で、指板やブリッジにも使われる。


Jacaranda

ハカランダ(Jacaranda,BrazilianRosewood)

ブラジル
学名 Dalbergia nigra Fr.All.
[マメ科]
()ジャカランダと発音する人もいる。別名ブラジリアン・ローズウッド。
比重:0.87
サイド・バック材に使われるが現在はワシントン条約により輸出入が禁止になっている稀少材。
'60年代までは普通に使われていた材で、当時のカタログ等には単に“ローズウッド”としか書かれていない事が多い。
現在ではMartinのStyle45に代表される“超高級”ギターの必須条件の様なイメージになってしまった。
市場にあるハカランダ材の楽器はストックの材で作られた物で、既に材そのものは入手困難。手に入りづらいが故に妙に名前が一人歩きしてしまっているのではないかという感もある。
確かにきらびやかな音が出る…様な気はするのだが…。

園芸店などで鉢植えで売られているジャカランダと言う植物があり、説明に「楽器の材として使用される」と書かれていることがあるようだ。
園芸店にあるジャカランダは街路樹などにも良く植えられている紫色の桐に似た花を付ける植物で、学名:Jacaranda sp.[ノウゼンカズラ科]で和名ではキリモドキと呼ばれる、全く別の植物で、同一名称による混乱であり、楽器に使われる材ではないと思われる。

オランダ在住のみっちさんからご指摘頂きました。(2006.8.24.)
Jacarandaをジャカランダと発音するのは、英米系の人たちで、語学的センスの無い人たちばかりです。
ラテン系の国では、「JA」を「ジャ」と読まずに、「ハ」と読むところもあるのに、自分たちの言葉でしか、考えられない人達なので、「ジャ」と誤読してしまいます。



ニューハカランダ("New"Jacaranda)

南アメリカ・アフリカ
サイド・バック材に使われる。

ブラジル政府がハカランダを禁輸にしたので、アフリカ辺りから似た材を探してきたらしい。
よく似ているが、ハカランダとは種類が違うような気がする。

Coral Rosewood

コーラル・ローズウッド(Coral Rosewood)

西アフリカ・ブラジル
サイド・バック材として使われる。

こちらも稀少材となったハカランダやローズウッドの代替材だろう。
Acoustic Guiter Book(7)によると、YAMAHAの名器と言われるFGシリーズに使われていた“ニュー・ハカランダ”はこのコーラル・ローズらしい。

Phernambuco

フェルナンブコ/ペルナンプコ(Phernambuco)

ブラジル
学名 Caesalpinia echinata(Paubrasil,Pau-brasil wood,Brazil-wood)
[マメ科]

別名:ブラジルウッド
ヴァイオリン属の弓(楽弓)に使われる事が多い。
ガンバなどのボディに使われることもあるらしい。
エレクトリック・ベースの指板に使われているのも見たことがある。

ブラジル北部大西洋岸のペルナンブコ州周辺で産出される赤褐色の高級材で、極めて硬質なので現在は金属加工機械による加工がなされる。
名称は“Phernambuco”、または“Pernambuco”と綴られ、楽器材としては“フェルナンブーコ”という表記が一般的だが、“ペルナンブーコ”や“ペルナンブッコ”などの表記も見られる。
フェルナンブコと呼ばれる木材は、楽器材としては明確に区別されている、paubrasil(Brasil wood)と同一の物と思われる。
Brazil-woodの語源は「“brasa”(起きた炭)のように赤い木」と言う意味だそうで、ブラジルの国名の由来でもあるらしい。
この木は、楽弓材に用いられることからも分かるように、微細な繊維が縦横に絡み合い、硬質堅牢で非常に弾性に優れる。また、赤色色素を含み染料原料にもされ、蘇芳(の一種)と呼ばれることもある。
蘇芳:すおうはマレー語の「サパン」が語源だそうで、「スオウの木」と呼ばれるモノは東南アジア各国にも多くの種類がある。
かつてはブラジルの重要な輸出品目だったが、これも現在は伐採が禁止され、希少材となっている。
ヴァイオリン属の弓材として好まれるが、近似代替材も多く、現在ブラジルウッドやフェルナンブーコ等と明記された製品が真正のpaubrasilであるとは限らないらしい。

Cocoboro

ココボロ(Cocoboro)

中南米
学名
[マメ科]

中南米に自生するマメ科(Leguminosae科)Dalbergia属の植物を総称して中南米ローズウッド(ハカランダ、ココボロ、アマゾンローズウッド等を指す紫檀系の高級唐木)と呼ぶ。

ココボロとアマゾンローズウッドはワシントン条約の対象外。
ココボロはココボロローズ等とも呼ばれる油脂分を多く含む重く硬い木。
色合いが美しく硬度はあるが加工が容易。
磨くと光沢が出て美しくなるが、脂分が多いため接着性が悪い。
高級ナイフの柄や宝石箱などの小型装飾品、ステッキ、釣り竿のリール・シート、ビリヤード・キュー、楽器ではクラリネット等にも使われる。

ココボロは比重が若干ハカランダより重いとされている。
アマゾン・ローズウッドは若干色に赤味があるのが特徴。
ハカランダ・ココボロ・アマゾンローズウッドは植物学的にも大変に近いものである。

ベースビルダーの方のサイト
強烈な毒性を持っており、ネック1本完成させるまでに、全身かぶれたようになりました。
2度と扱いたくない木ですが、そういうのに限って唯一無比の、個性的なトーンを持っていたりします。
と言う記述を見つけた。
パドックの項でも述べたが、ギター材として知られる木材の多くは実は毒性を持つ。
漆による皮膚炎にも見られるように、毒性に対する反応にはかなり個人差もあるようである。
毒性被害は主に製作作業中などに発生する粉塵が元凶のようで、完成した楽器には特に危険はないようだが、知って置いた方が良い事実であるとは思う。

>危険な木材について


Sono keling

ソノケリン(Sono keling)

インドネシア
学名
[マメ科]

目が粗い。粘りが有り、木理はやや粗。
比重:0.90。直径は50cm程度。
インドローズ種の種をインドネシアで育てたもの。
インドローズより多少木理が粗く、光沢はないが、近年は量が少なくなったインドローズの代用として広く用いられている。大径木はない。価格的にはインドローズの半額である。
インドネシアは気温も高く雨量も多いので育ちが早く、30年で直径50cmにもなる。ただし、育ちが早い分だけ、目が粗い。曲木にも使えるほど粘りがある。

そもそもローズウッドは、薔薇の香りがする高価で貴重で美しい木を総称して呼んでいるらしい。硬く粘りが有り、狂わず虫にも強く、何より木目が美しいので珍重される。ブラジリアンローズ、インドローズ、パオロッサ、ソノケリン、シタン、テチガイシタン等が代表的なものなのだそうである。
ソノケリンも楽器材としては“安価な代替品”だろうが、木材としては高級な部類にはいるようである。

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Ovangkol

オバンコール(Ovangkol)

東南アジア・西アフリカ(象牙海岸)
学名 Guibourtia ehie J.Leon
[マメ科]

アコースティックのサイド・バック材に使われる。
マホガニーに似た特性を持っている。

木理はやや詰まる。
比重:0.80。
辺材は黄白色〜灰色。心材は黒褐色〜灰褐色で、狭い黒色の縞をもつものと、鋼色の光沢をもつ縞ものがある。
板目面に白色の沈積物“やにだまり”が見られることがある。
乾燥には長時間を要する。
楽器ではローズウッドの代用材として主に中級品までのギターなどに使われるが、これも最近は余りカタログでは見られない。

Padauk

パドック(パドウク、パドーク:Padauk)

西アフリカ
学名 Pterocarpus soyauxii Taub.
[マメ科]

比重:0.64〜0.80
目は粗い。オイルフィニッシュで仕上げられることが多い。
削ったときに出る木の粉に発癌性があるということで、現在はあまり使われていないらしい

(アンダーライン付加:2002.7.23.)
アンダーライン部分、我ながら極めて逃げ腰ないい加減な表現をしている。
金沢建具協同組合 福田吉栄さんにBBSでご質問、ご指摘いただいて、きちんと応えられなかった恥知らずである。
詰まるところ、Net上で未確認情報を拾って原稿を作った私の不徳の致すところなのだ。

あくまでも「発癌性があるという話」の又聞き(書き)で、結果「現在はあまり使われていないらしい。」と言う、事実関係が極めて不明瞭であると言うのが真相。
現状では内容は全く信憑性に欠けるものなのである。
いずれにしても我ながら些か無責任な記述であったことをお詫びする次第。

続報

当方が提供した、未確認情報の出所にまで情報を追った 福田吉栄さんは、先方の些か無責任な回答に落胆され、一時はインターネットに失望すら感じられていた。
しかし、この結果では満足なさらなかった福田さんは、「独立行政法人森林総合研究所」にまで問い合わせをされたのだった。

インターネットは情報の宝庫であるが、石も珠も併せ蓄える世界。
無責任な流言飛語も多いが、責任ある情報提供者からは責任ある情報がレスポンスされるのだ。

****の****と申します。ご質問お寄せいただき,ありがとうございます。
さて,お問い合わせの件ですが,研究者に照会しましたところ,下記のような返答がありました。
よろしくお取りはからい下さいますよう,お願い申し上げます。

----- ここから -----

パドークはマメ科の木材で、一般に家具、内装材に使われています。これまで、健康障害があるといった話は聞いたことがありませんが、専門家でないので良くわかりません。
この種の木材の抽出成分については木材工業ハンドブック(改訂3版、p.164)に抽出成分の名前が挙げられています。この本では、健康阻害物質が含まれている場合はそのような記述がされていますが、パドークには記載されていません。従って、HPでどの物質を発ガン性物質としたのか確かめる必要があろうかと思います。

パドークは、Leguminosae(マメ科)のPterocarpus(産地、アフリカ、東南アジア)です。 ***************************************
 署名 ******
研究管理官(木質資源利用研究担当)
部署名、個人名は伏せ字にしました。(愚行連鎖:GB 2002.7.26.)

福田さんが最初に問い合わせをした(私が未確認で引いた)元データの書き手からは…
「昔読んだギター雑誌に書かれていたが、そこには“体に有害である”程度の記述だった。
人から『発ガン性物質だ』と聞いたのをそのまま書いただけ。」
との回答があったとのこと。
これ以上の、この方への質問は無意味であると思われる。
しかしながら、自分が納得がゆくまで追跡する、真摯な姿勢に福田さんの本当の職人魂をかいま見せていただいたと同時に、確認もせずに“ガセネタ”を流布してしまった自分の愚かさを恥じるばかりである。
謹んでお詫びをいたします。

>危険な木材について


Bubbinga

ブビンガ(Bubbinga)

中央アフリカ(ナイジェリア北東部からカメルーン、ガボンを経てコンゴ地域に分布)
学名 Guibourtia sp.
[マメ科]広葉樹

カメルーンではブビンガ、ガボンではケバジンゴと呼ばれる。
製材の方法により、ケバチンガと表記されることもある。
他にエシンガン、オベシ、ワカ等の別名もある。
木理は比較的まっすぐでやや詰まっており、比重は0.90。木は直径2〜3mになる。

辺材は白っぼく、広いものでは10cmもある。心材は桃色または赤褐色、紫色の縞模様をもつことがあるが、色合いや柄は個体差が大きい。
重く硬く、加工が困難。弾性があり、裂けにも強い。接着性に優れる。強度は高い。
家具や、楽器ではローズウッドの代替として使われる。
化粧ベニアや、直径2mを越えるので、最近はケヤキの代替として大径和太鼓の胴にも使われたりもする。

Purple wood

パープルウッド(Purple wood)

南アメリカ(ブラジル ボリビア)

前から気になっていたのだが、我が家にあるStufford Electric Gut Guitar SSC・1000Xの側・裏板にこの材が使われている。
一見紫檀材(ローズウッド)に良く似ており、Moradilloと言う名称もあるようだが、最近Martinの指板やブリッジに使われ始めたMoradoという材と同一なのだろうか?
1年に1mm程度しか成長しない大変硬い木材で、赤褐色の濃い紫色の縞があるのが特徴。
育成の状況により、100本に1本位 の割合で出来る非常に暴れた木目を木工職人の間では通称として“マッスル”と呼ぶ。
他にモラドと呼ばれる植物には、果皮が赤褐色のバナナの品種や、南米産の薬用樹木であるタベブイア・アベラネダエ(ノウゼンカズラ科タベブイア属)等があるが、恐らく、楽器材のモラドとは無関係であろう。
ちなみに薬用植物のモラドはアルゼンチンでの呼び名で別名ラパーチョ、ブラジルでは「紫イペ」、コロンビアでは「タヒボ」などと呼ばれ、主に傷薬や薬用茶として使われている。


Morado:Pauferro

モラド(Morado)

別名ボリビアンローズウッド。


他に、モラディーリョ、パーフェロー、パウフェロー、リオグランデパリサンダー等と呼ばれることもある。
“ボリビアの”ローズウッドの名を持つが、正確にはローズウッドではないらしい…
木材業界ではインディアン・ローズウッドをパリサンドル(バリサンダー)と称していることもあり、似たような性質・木目を持つモノはもう一緒くたなのである。
よって、上のパープルウッド(Purple wood)との関係も不明である。
パープルウッド(Purple wood)の別名Moradilloがモラドの別名モラディーリョと同じものを指すのかどうか…

材質的にはエボニーにも匹敵する程密度の高い硬質な材。
Martinの廉価版の指板などに使われている。Morrisでもかなり使っているようである。

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Koa

コア(Koa)

ハワイ諸島
別名ハワイアン・コア。

高級ウクレレやアコースティックのボディーに使われる。
音質は硬く歯切れ良くなる。
これも稀少材。
Takamineのニューヨーカー・コアモデル。絶版になったみたい。欲しかったなぁ。
たまにビンテージのオールコアのMartin 0-Sizeを目にすることがある。
やっぱり渋い!

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siam-gaki

シャムガキ(暹羅柿:Siam-Gaki:Ciricote)

タイ、中南米
学名 Cordia dodecandra DC.
[カキノキ科]


別名:タガヤサン、ウェンジ、ジリコーテ
“シャム”はタイの旧称で、シャムから来る柿(の木)の意味であろうか?
木理は詰まり、直径60cm程になる。
比重:0.87-1.0
大柄な赤黒い濃淡の模様があり、重く加工性が悪い。建築材としては床柱として珍重される。
最近は品薄でタイ(シャム)から入らなくなったので、中南米産のよく似た木をシャムガキと呼んでいる。
最近は余り見られないが、かつてアコースティックギターのカタログで良く目にした。
これもローズウッドの代替材として使われていたのだろうが、それすらも入手困難となっているのは何ともな話である。



ランディングネット:Tsugeさん作とシャムガキ 戦うおやじの応援団Tsugeさんからメールを頂きました。

シャムガキ(暹羅柿)についての記述がありましたが、あれは最近ジリコーテという名称で、結構注目されている様です。

僕も平板で所有していますが、縞黒檀のような色に複雑怪奇な杢がからみ、なかなかおもしろい雰囲気をかもしだしています。

しかしメキシコ産です。

シャムガキの殆どがシャム(タイ)でなくメキシコ産とはこれいかに??

TsugeさんはBLUESの名手であるだけでなく、フライフィッシングの達人でもあります。
オリジナルウクレレの製作や、釣り用のランディングネットなどの製作も見事です。

写真はTsugeさん製作によるネットとシャムガキの平板


タガヤサン

タガヤサン(鉄刀木)

東南アジア
学名 Cassia siamea Lam.
[マメ科]

別名:ウエンジ(ウェンジ:Wenge)、ジゲラ(Dikela) 、アカプ、ジャハール、キレット(Kilet)、英名:ボンベイブラックウッド(Bombay black wood)。
ベトナムではMuong denと呼ばれる。
比重 0.69〜0.88
シャムガキの別名をタガヤサンと称することもあるようだが、タガヤサンという名称で流通している別の銘木もある。
こちらはマメ科で、紫檀材として一括されてしまうこともあるらしい。
木材業界では製品に現れる木目や木質でまとめているようなので、名称と現物が異なったり同名が存在したりするのは当たり前のことのようだ。
全く別種の植物、クラリンドウ[クマツヅラ科]学名:Clerodendrum wallichiiもタガヤサンという俗称を持つので更に紛らわしい。
銘木として流通するタガヤサンは紫檀、黒檀ともに代表的な唐木の一つ。
材には粉末を有し、角膜炎などの原因になり、根は、駆虫剤、花は食用になるらしい。
肌目は粗いが、磨くと美しい光沢を放つ。重硬で強度は高く粘りがあるが、乾燥に狂いやすく、加工は困難だが耐久性は高い。

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Agathis

アガチス(Agathis)

東南アジア
学名 Agathis alba
[ナンヨウスギ科]

色は桃色がかった淡黄色。
比重:0.52
南洋材としては珍しい針葉樹で木理は真直で軽く軟らかい。
アコースティックギターの材としては余り目にしないが、エレクトリックではたまにカタログで見かけることがある。
最近ではYAMAHAの中級品がボディに使っているようだ。

American Cherry

アメリカンチェリー(American Cherry)

アメリカ、カナダ
学名 Prunus serotina Ehrh.
[バラ科]

比重:0.58
桜材である。
ギターに使われることは珍しいが、カナダのアート&ルシアーがフラットトップのボディ材に使っている。

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Nato

ナトー(Nato)

東南アジア、オーストラリア、インドネシア、パプアニューギニア
学名 Palaquium sp.
[アカテツ科]俗名:南洋桜

ニヤトー、ニャトウ、ペンシルシダー、ニアトウ、チョルニ、スンタイ、パラキューム等々表記の違いも含めて多くの別名を持つ。
やや詰まった木理で色は淡褐色〜桃色〜赤褐色〜濃黄褐色などで、材に色むらがある。
縞や波状杢がでることがある。
材質は軽く軟らかいものから重く硬いものまで比重、強度、耐朽性も個体差がありばらつきが大きい。
比重は0.40〜0.88、直径40cm位になる。
比較的加工し易いモノが多いが個体によって材質が異なるので、材によって用途も異なる。
虫害に侵され易いらしいので、楽器の保管には要注意。
楽器に使われるのは、木材としては上級のものだが、実際には廉価版の楽器の材料となる場合が多い様に感じる。
用途としてはマホガニーの代用だろうか?中級品程度までのネックなどによく使われる。

でもね、かつてはラワン材のギター(私が中学の頃買ったのもラワンだった。虫喰ったりするのよ…)なども結構あり、ナトーのギターに憧れたりしたモンです。

呼び名は楽器ではもっぱら“ナトー”だが、木材業界関係では“ニヤトー”と表記されることが多いようだ。

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Lauan

ラワン(Lauan)

東南アジア
[フタバガキ科]材の重さ・硬さが中庸から軽軟なものの総称名


マレーシア・インドネシアではメランチ、サバでセラヤというものがおおよそ該当し、英名をフィリピンマホガニーという。
ラワン材は南洋材の代名詞的な使い方をされているが、ラワン材は南洋材のほんの一部に過ぎない。ラワンはフタバガキ科の木材をひとまとめにしたグループの名称で、東南アジアの熱帯降雨林の最も主要な樹種で、きわめて多数の種類が含まれる。
元はフィリピンのタガログ語で、我が国が南洋材を輸入し始めた頃の輸入元がフィリピンで、ほとんどがラワン材であったことから、南洋材=ラワン材と言う呼び方が定着したと言われている。
(我が国ではラワンが一般的だが、国際的にはメランチの方が通じ易いらしい)

一般的な“ラワン”には生長輪(年輪)が無く、フタバガキ科の通性として垂直樹脂道を多くもつ。
心材は淡灰褐色から紅褐色にわたり、材色により赤ラワン・白ラワン類・黄ラワン類の三グループに分けられる。
肌目は粗い物が多い。
ヒラタキクイムシの格好の標的で、虫食い穴が開いているモノは少なくない。
輸入南洋材のうち最も多く、建築、家具、器具、車両、船舶その他各方面に広く用いられ、わが国の合板用材の最も主要なものであり、パーティクルボード、ファイバーボード原料として大きい部分を占めている。

よーするに、“ベニヤ板”のイメージなんだよな。


Mweanti

メランティ(Meranti)

東南アジア
[フタバガキ科]ラワンの別称
セランガンカチャ(Selangan kacha) 、セランガンクニン(Selangan kuning) とも呼ばれる。

ラワンの項で述べた「マレーシア・インドネシアではメランチ」の表記違い。
楽器業界と木材業界では呼び名に差異があるという見本。一般人には混乱の元。
SAMPLEの色が極端に異なるのは、恐らく商品化時の着色による物だろう。
特長としては、節が無く垂直。適度な硬度があり、加工性に優れる。
インドネシアなどでも産出し、フィリピンのラワンと、マレーシアのメランティは同じ種類。ラワンに比べてメランティは比重が軽くて、柔らかい。
水に浮かべると、ラワンは7〜8割が水に沈むが、メランティは半分ほどしか沈まない。それほど柔らかいので、木材加工の面からしてマレーシアの原木はそれほど価値は高くない。
メランティも楽器用とするほど良質なラワンが入手困難となったので使われているのではないかと思う。

更にメダン(medang/リツェア:litseaとも呼ばれる)と言うメランティ代替材もあるらしい。


Mango

マンゴー(檬果:Mango)

原産地:インドからインドシナ半島周辺
[ウルシ科]
学名 Mangifera indica L.

南国フルーツの代表的なものの一つで、近年非常に人気の高まっている果物でもある。

インドでは4000年以上前から栽培が始まっており、仏教の経典にもその名が見られる。
現在では500以上の品種が栽培されており、インド、メキシコ、フィリピン、タイ、オーストラリアが主な生産国で、日本では宮崎県、鹿児島県、沖縄県、和歌山県で主に栽培されている。

常緑高木で、樹高は40m以上に達する。
近年、ウクレレのボディ材としてしばしば目にするようになった。
Bug Hole(虫食い穴)が非常に多い木材だそうで、楽器用として虫食いを避けて製材すると非常に高価になるという。

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Ebony

エボニー(黒檀:Ebony)

東南アジア
学名 Diospyros sp.
[カキノキ科]

黒檀(こくたん)
熱帯産のカキノキ科の常緑高木数種の材の総称。
インド南部およびセイロン原産。高さ約6m。葉は長楕円形、水平の枝に二列に互生。初夏、葉腋に淡黄色の柿に似た合弁花を開き、雌雄同株。球形の液果。材は黒色で緻密、器具材に賞用。烏文木(ウブンボク)。烏木。黒木(クロキ)。

ローズウッドよりも摩耗に強いが高価なので、指板、ブリッジ材等として高級ギターに使われる事が多い。確かに指板のタッチは黒檀が一番気持ちが良い…。
非常に硬く、強度があり重い材である。
良質な物ほど黒く硬く、研磨すると光沢が出る。
独特の縞模様がある物は縞黒檀と呼ばれるが、縞が無く漆黒の物の方が珍重され、価格も高い。

“エボニー”と言うと高級ギターの条件みたいだけど、“黒檀”と言うと「仏壇・仏具」を連想してしまうのは私だけ?
“ベニスの商人”の商い物って、確か黒檀じゃなかったっけ?

聖書にも登場する歴史的銘木「黒檀」は世界に500種近くほどあり、ゴルフクラブのヘッド材の北米産パーシモンや、渋柿などの柿黒檀の仲間だが、熱帯多雨林地帯の東南アジアが特に多種で、木材業界ではその中で黒色の心材を有するものを「黒檀」と称している。

Ebony

マッカーサー・エボニー(縞黒檀:Macassar Ebony)

東南アジア、インドネシア、スリランカ、セレベス

[カキノキ科]

縞黒檀(しまこくたん)
別名:マッカサル、ゼブラウッド

黒檀には流通分類上、本黒檀、縞黒檀、青黒檀などがあり、本黒檀は本来インド・スリランカで産出される漆黒の材料をさす。
縞黒檀は、縞杢(しまもく:年輪の模様とは異なり、色素によって縞目模様を呈する杢)を有したものを言う。
ギター材としては指板やブリッジに使われることが多く、一見ローズウッドにも見えるほど赤みががったものもある。
老舗楽器店“K”のマスターによると、楽器用としては黒黒檀よりも縞黒檀の方が強度的に優れるので一概に漆黒の指板やブリッジの方が良いとは言い切れないとのこと。

ちなみに青黒檀(産地:東南アジア・タイ・インドネシア・インド)は黒檀の中でもっとも重硬で緻密だが、光沢に乏しく導管中に緑色物質が詰まるため、全体に緑がかって見えその緑色故黒檀としては上質な物としては扱われないようだ。


Grenadilla

グラナディラ(Grenadilla)

アフリカ
学名
[マメ科]

グラナディラはアフリカのサバンナに生息する樹木で、堅くて密度の高い(比重1.2〜1.3程度)高級素材だが加工が難しい材。
Castanuela profesional de granadillo negro その色は暖かみのある黒からダークブラウンで、弦楽器の指板やフルート、クラリネット、オーボエなどの吹奏楽器の管体、フラメンコ用の高級カスタネット等に使用されるが、弦楽器で使われているのは余り見たことがない。

しばしば「黒檀の一種」という表現がされることがあるが、グラナディラはマメ科でローズウッド(紫檀)に近い種類である。黒檀はカキノキ科なので、まったく異なる樹木である。
クラリネット等の管体として加工できるようになるには、100年近く必要であるといわれる。
グラナディラ自体も黒い色はしているが、クラリネットとして加工する際には、割れを防止するなどの意味で黒い塗料が塗られる。つまり、クラリネットの色としてイメージのあるあの漆黒は、グラナディラ本来の色ではない。

クラリネットの安価なモデルではABS樹脂エボナイトもある。その他、ローズウッドやココボロなどを用いた楽器もある。
近年では良質なグラナディラの入手が困難となってきていることから、グラナディラの粉末とグラスファイバーなどを混合して成形した材も出現している。

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Hardwood

ハードウッド(Hardwood)

写真はR & Bell Electric Upright Bass UB-S 指板

[-- 科]

ハードウッドは、辞書的には…

  1. (カシ・マホガニーなどの) 堅木、 堅材
    [形容詞的に] 堅材の。
  2. 広葉樹
    秋になると落葉する樹木(Deciduous trees)。
    またこうした樹種から生産された材
ということになる。
植物学的には被子植物門 Angiospermae (Magnoliophyta)に分類されるものを指すらしい。
つまり“ハードウッド”という名称の樹木は存在しない、というわけ。
逆に、Softwoodといった場合には、針葉樹(Conifers trees)を指すのだそうだ。
つまり、“ハードウッド”、“ソフトウッド”という呼称は実際の木の硬さとは、ほとんど無関係なのだ。
しかし、広葉樹(Hardwood)はその名の通り字の通り堅く重い材が多く、針葉樹(Softwood)は一般に繊維が長く、柔らかく弾性が高い材が多いことも確か。
広葉樹は長い材が取りにくく、針葉樹に比べて割り高になる場合が多いが、傷が付きにくい・すり減りにくいなどの特長を持つモノが多い。一方針葉樹は広葉樹に比較すれば長い材が取りやすいので、構造材等に使われることも多い。しかし、腐り・染み・反り等が出やすいという欠点がる。

R & Bell Electric Upright Bass UB-S の指板は白っぽい材を黒染めしたモノだが、結局何の木なのかは分からない。

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ギター材について

現在は木材資源も枯渇しはじめ、良い自然材が入手し辛くなっているのが現実である。
超高級品やコレクターズアイテムのオールド、ビンテージ以外は、Martin社が試みている合板でも良い音を出す方法や、Ovationのリラコード(カーボンファイバー)、国産ではMorrisやAriaのABS樹脂ボディ等の素材的にも供給も安定した合成素材に移行してゆくのも時代の流れかもしれない。
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その他(非木材)の素材

☆水棲生物

Abarone

アバロン(アワビ:Abalone/Abarone)

学名 Notohakiotis discus(REEVE)
[腹足綱/前鰓亜綱]

夜光貝とも呼び、真珠母貝のうち唯一の巻き貝。
内側の殻を使用する。非常に美しく高価。
黒く浮き出た線状模様と、緑系の色調が美しい。
ギターのインレイ装飾用としてはメキシコ産が珍重される。
スペルはAbalone/Abaroneの両方が見られる。

Black Paerl

黒蝶貝(Black Pearl)

タヒチ,フィージー諸島,パナマ近海
学名 Pinctada margaritidera(LINNE,1758)
[二枚貝綱/翼形亜綱/ウグイスガイ目]

ブラックパール(Black Lip Pearl Shell)。
南太平洋に生息し、その多くはタヒチ産。
黒真珠の母貝である真珠貝。貝殻の縁の色は暗緑色または茶褐色で、中心が灰白色。貝殻の黒い部分の肉厚が非常に薄いので厚みのある製品は作ることが難しい。非常に美しいがとても高価。

White Paerl

白蝶貝(White Pearl)

日本、オーストラリア、インドネシア
学名 Pinctada fucata(アコヤ貝)Pinctada maxima(白蝶貝)
[二枚貝綱/翼形亜綱/ウグイスガイ目]

別名マザー・オブ・パール(Mother of Pearl)
日本産はアコヤ貝(Akoya Peral Oyster)と呼ばれる真珠貝。
白蝶貝(White Lip Pearl Shell)はオーストラリア北部のアラフラ海からインドネシア、東南アジアなど、南洋の水温の高い熱帯の海域に生息する真珠貝。

ベッコウ

ベッコウ(鼈甲:Tortoiseshell)

玳瑁(タイマイ)の甲羅


タイマイ タイマイ
学名 Eretmochelys imbricata
英名:Hawksbill turtle
[爬虫網/無弓亜網/カメ目/潜頸亜目/ウミガメ科]体長150cm
(写真は剥製)


ピックガードやピックに使用されることがある。
殆ど収縮しない素材のため、ピックガードに使うと木部の収縮によりサイズ差が生じ、剥がれや表板の亀裂の原因となることがある。
ワシントン条約取引が禁止されている事もあり、最近の鼈甲模様ピックガードは殆どが樹脂製品となっている。
海亀・タイマイの甲羅から作られる細工材を日本では鼈甲(ベッコウ)と言っているが、実はこれは誤り。
鼈はスッポンの事であり、日本に伝わった時に日本人が鼈をタイマイと誤訳したらしい。
本来、鼈甲(ベッコウ)は漢方ではスッポンの甲羅を指し、解毒剤や熱さましなどに使用する。
   →参考:タイマイ

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☆陸上生物

Bone

牛骨(ボーン:Bone)

牛の大腿骨。
ごく一般的なナットやサドル材などに使用される。
安価で安定供給が可能。
オイルドボーンは牛骨にオイルを含ませたもので、質感が高く、経年変化に強い。

「牛の大腿骨」と書いたが、老舗楽器店“K”のマスターによると、楽器用に売られているブロック状に切り出した物は、最近では骨をそのままカットした物ではなく、一旦粉末にしてから固めた物が多いらしい。

Ivory

象牙(アイボリー:Ivory)

ゾウのキバ。
正確には上顎の間歯にあたる「牙」

ねばりと耐久性に優れ精密な彫刻ができるので、装飾品、細工材、印鑑などに珍重される。
ギターではナットやサドル、エンドピン、ブリッジピン、ペグのポタンなどに使用される。
これも、周知の通り、ワシントン条約の対象。(最近限定解禁されたらしい。)
我が国では平成11年3月18日より象牙を取り扱う業者は通産省登録を義務付けられている。
象牙はその多くが印材(要するに判子)として使われ、基準も印材としての物が標準となる。象牙材にもダイヤモンドや真珠と同じようにその品質や印材採取場所によってランクがあり、価格差が生じる。
部位では、芯の部分「芯持ち」となり最高級となり、色合いや目の細かさなどでも品質が異なる。 象牙は中心部に向かうほど目が細かく揃っている。 また象牙にはソフト材とハード材があり、現在流通している象牙のほとんどがソフト材で、その材質上、特上はない。ハード材は硬度、光沢、質感等に優れるが品薄で高価なので、市場にはほとんど出てこないらしい。

削り出すと断面に美しい縞模様が現れることがあり、何とも言えない風合いがある。

Mammoth

マンモス(Mammoth)

マンモスの牙

マンモスアイボリー。サンプルは皮付き。
皮を剥がして磨くと象牙のような縞模様が出ることがある。
ギターの場合は、芯の部分をナットやサドル、エンドピン、ブリッジピンなどに使う。
氷河や永久凍土に閉じこめられたマンモス死体の牙で、象牙の代替品として出てきたが、非常に高価。
既に絶滅した生物なので、ワシントン条約には無関係らしい。
Martinでは“Fossil Ivory”(化石化した象牙)と表記している。確かに間違いではないとは思うが…
不確実ではあるが“Mammoth”が商標権に抵触するので表記できないと言う話もある。

水牛(角)

水牛(Water buffalo)

水牛の角

最近、この水牛のブリッジピンが何処の楽器屋でも手にはいるようになった。
ナットやブリッジに使っている方もいるようで、その性能はなかなかの物のようだ。
質感も高く、楽器材としてはかなりポイントが高い。

本来は印鑑材や高級和包丁の口金、鼈甲に代る高級素材としてメガネフレーム等に使われることもある。
加工のしやすさや象牙に比べるとその価格の手ごろさから印材として人気がありポピュラーである。
印材では“オランダ水牛:別名白水牛”と呼ばれ、白飴色の中に若干のまだら模様が入った物が珍重されるが、名前とは裏腹に実は多くがオーストラリア産である。
また、名前は“水牛”であるが実は水中生活などはしない“陸牛”。
かつてオランダがヨーロッパでの飼育牛の集積地として有名だったので、「牛の角」というとオランダになってしまったということらしい。
陶磁器を総称して「瀬戸物」と呼ぶのと同じであろう。
更にそれが陸牛なのに水田地帯などで多く使役牛として飼われている東南アジアのイメージと重なって、水牛ということになって現在に至っているというのが真相だとか。
印材としては白色の物が高級とされているようだが、ギター材としては黒色の方が非常に興味深い。
黒水牛は多くがインドやタイ産であるが、白水牛を黒く染めた材もあるようだ。
牛の角は、皮膚が角質化して出来た物なので牙や骨と違い、まれに歪んだり変形することや、虫に食われる場合もあるので注意が必要かも知れない。

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☆人工素材(ナット/サドル等の新素材)

Micarta

ミカルタ(マイカルタ:Micarta)

Micarta Industrial Composites:商品名
貴石や樹脂の粉末、紙、木、布などを何層にも積層し、樹脂で加圧成形したもの。
元は絶縁体基板用に開発されたとか、銃把(拳銃などの握り)として開発された等と言う話もあるが、ナイフ用ハンドル材としても適し、多用され、ナイフの世界では通常“マイカルタ”と呼ばれる。
積層した素材により、キャンバスマイカルタ、リネンマイカルタ、ウッドマイカルタ等があり、色々な着色や木目に似た積層模様の物も製造できる。経年変化がほとんどなく、人工素材なので均質な物が得られる。
'75からMartin製ギターのナット/サドル(ナットは'90頃まで)に使われており、Martinでは“ミカルタ”と表記している。
Martinのサドルは恐らくはストーン・マイカルタの類であると思われる。
(詳しくご存じの方は御連絡ください)

Corian(R)

コリアン(Corian)

デュポン社製の人工大理石:商品名
'90頃からMartin製ギターのナットに使われる。
天然の鉱物質を主体とし、MMA樹脂注(メチルメタクリレート)で化学的に融合させたもの(メタクリル人工大理石)。
デュポンコリアンはメタクリル樹脂、水酸化アルミ、顔料の複化合物で、同様の製品はクラレ(商品名:ノーブルライト)等他メーカーでも製造している。
メタクリル人工大理石の主用途は建材用で、一般住宅用キッチンカウンターや洗面ボウル、トイレ廻り等に使われる。
人工大理石には、用途・製品に応じ、ポリエステル系・アクリル系があり、成型方法も注型法・プレス成形・噴出成形・真空成形など様々である。
この中でも主成分としてメタクリル樹脂(PMMA)を使用したアクリル系の人工大理石をコリアンと呼んでいる。
人工大理石は天然石に近似した比重を持ち、熱伝導性がよく、切削・切断・接着等の二次加工性に優れ、また、経時変化や物性の低下が小さく、耐候性に優れている。


この他、樹脂系ではメラミンやユリアなどもナットやサドルに使われることがある。
この辺りは、殆ど過去の学校給食の食器である。

TUSQ

タスク(Tusq)

人工象牙TUSQ:商品名
合成樹脂のナット・サドル・ブリッジピン材。
詳しいことは未調査。
一度手にとって調べないといけないのだが、見た目からは流石の私も食指が動かない…
販売者は人工象牙を銘打ってはいるが、とてもその風合いは“象牙”を標榜できるような物には見えない。
(まるでエアフィックスのプラモデルのような…と言ったら怒られるか?)
音響性能はコリアン・ミカルタ等は足元にも及ばず、牛骨より優れ、象牙を凌ぐ…とパッケージにはある。
TUSQ比較チャート

TUSQ® is far superior in sound and appearance to synthetics such as Micarta™ and Corian™ The high levels of heat and pressure used in making TUSQ® results in its exotic ivory-like appearance.
Join those who have invested in the best new Man-made Ivoryavailable!TUSQ® is used by:Taylor,Larrivee,Gibson AcousticGuitars,Tacoma Guitars,Ovation,Rick Turner,Garrison Guitars,Breedlove,Manuel Rodriguez,Rainsong,Carvin,and Landola.
…だ、そうで。
実際に使われた方の評判は上々だし、販売者ご本人も「抜群」だというのだが…


上のチャートは今ひとつ分りづらいので、下に訳してみた。

COMPARISON CHART
比較表
  TUSQ
タスク
IVORY
象牙
MICARTA
ミカルタ
BONE
CORIAN
コリアン
Increases sustain
サステインの増加
Improves tone
音色の改善
Consistent quality
均質性
No grain or soft spots
材料の目(方向性)部分的弱点
Environmentally friendly
環境にやさしい
Files &polishes easily
切削研磨の容易さ
Flake &chip resistant
耐薄片・小片剥離
Beautiful finish
美しい表面仕上げ

販売者は「非の打ち所のない商品」と言いたいらしい…

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☆半合成樹脂

Celluloid

セルロイド(Celluloid)

ニトロ・セルロースに樟脳をまぜて製した半透明のプラスチック。※広辞苑より。
歴史の古い合成樹脂であり、色や模様の自由度が高い。サンプルは石鹸箱。
ギターではバインディング材やピックなどに使われる。
ギター本体に使われる物は白一色や鼈甲柄が多い。
セルロイドは消防法第5類危険物に属し、製造、貯蔵、取扱は充分注意しなければならないのだが、セルロイド起因の火災事故がギターから発生したという話は余り聞いたことがない。
セルロイド製品は、かつては日用品や玩具などに幅広く使われていたが、現在は余り目にすることが無くなってしまった。
その引火性の高さにより、百貨店火災が起ったとき玩具売り場の被害が激しく、この火災以降玩具の原料として事実上葬られてしまったのである。
元々が実験中の事故で偶然合成され発見に至った物だが、最初はビリヤードのボールの材料として重宝され、普及したという話を聞いたことがある。

MartinギターのバインディングやWaverlyチューナーのノブに使われる象牙風の縞模様が入った乳白色の素材、“アイボロイド(Ivoloid)”が、単なる“アイボリー色のセルロイド”なのかどうかは定かでない。

Ivoroid

アイボロイド(Ivoroid)

商品名(らしい)
前項で、「“アイボロイド(Ivoloid)”が、単なる“アイボリー色のセルロイド”なのかどうかは定かでない。」と書いたが、いまだに確証がもてるだけのデータが揃わない。
あちこち探し回ったが、実は「Ivory色をしたCelluloid」だとばかり思いこんで、「アイボロイド(Ivoloid)」とスペルミスをしているのである。これでは見つからない。
アンドロイド(andr :人+ oid)等と同じように、セルロース(cellulose)に「〜のようなもの」を意味する「-oid」という接尾辞をつけて「セルロイド(celluloid)」になったと思われるが、「Ivoryのような」なら「Ivor + oid」で“Ivoroid”になるのだ。
FRETS.COM Illustrated Glossaryで、次のような記述を見つけた。

The imitation "natural" celluloid is often called "ivoroid" or "pearloid." Ivoroid, in particular, has been known by many trademark names, including "Ivorine" and "French Ivory."

FRETS.COM によればデュポンでは“Pyralin”の商標を使っていたらしいが、現在のデュポン社の製品一覧には記載されていない。この“Pyralin”はベガやギブソンに使われたとも書かれている。
探し方が悪かったようだ。
Pyralin®
パイラリン®

半導体用ポリイミドコーティング剤;半導体ウエハープロセス用絶縁膜・保護膜などの形成
とある。何だか今ひとつ良く分からないが、何となくこれはアイボリーのような“セルロイド”ではないような感じではある…
パイラリンは日立化成 デュポン マイクロシステムズ(株)の登録商標である。
また、アイボロイドをシャレで"Mother Of Toilet Seat" (MOTS)等と呼ぶこともあるらしい。
うーん…「便座の母(貝)」ねぇ…
“パーロイド:pearloid”と呼ばれる真珠風模様の樹脂もセルロース由来の物らしい。
どちらかと言えば、パーロイドの方が「便座の母」と言ったイメージではある。

ボタンコレクターのサイトには…
Ivoroid - (Trade name given to a celluloid which imitates ivory.)

との記述もあった。
「ivoroid」はどうやら商標のようで、“Ivoride”“Ivorine”“Ivorite”“French Ivory”等の別名もあるらしい。
“French Ivory”は、1866年にザイロナイト社(Xylonite Company)によって最初に作られた。と言う記述も発見したがこのザイロナイト社はWeb上では見つけられなかった。
(“Xylonite”のサンプルはこちら
そもそも“Xylonite”も“Ivoroid”と同様に人造象牙の商品名であったようだ。
他に“Cellonite”等の名称の人造象牙もあったらしい。

No Sample

ナイトレイト(Nitrate)


Martin社のカタログによると「'85 ピックガードを塗装後に貼付ける方法に変更。それに伴いべっこう模様ピックガードの材質をアセテート製からナイトレイト製に変更」とある。
アセテート製以前、'67頃までのMartinの鼈甲模様合成ピックガードはこのナイトレイト製だったという。
Martinのナイトレイト製鼈甲模様ピックガードは透明の成型品で、裏側に鼈甲模様を印刷した物である。ナイトレイトという素材が成型時に色柄を付けられないのか、ピックガードという製品の特性から、模様に傷が入りにくいように裏側印刷にしたのか、はたまた、かつての「貼付けた上から塗装を施した、いわゆる“塗り込みピックガード”のイメージ」を再現するためにこの製法を取っているのかは定かではない。
ナイトレイトは一般的な素材名から言えば、かつては映画のフィルムなどにも使われていた物質で、ナイトレイト(硝酸セルロース)フィルムは科学変化を起こし易く、劣化すると粉になってしまう。また発火点が低く強い可燃性を持ち爆発的に燃えるので、1920年代から不燃性の酢酸セルロース・フィルムへの移行が進み、1950年代に製造中止になったと言う代物である。
(映画フィルムは、現在は安全性・耐久性の高いポリエステルが主体になっているそうだ)
ナイトレイトには硝酸薬の意味もあり、心臓病薬や観賞魚用の塩素除去材などにもこの名称が使われる。
基本的には、硝酸セルロース(綿火薬:綿の繊維に硝酸と硫酸を加えて作る爆発性素材)をアルコールと樟脳で処理したものをセルロイドと呼ぶ。
Martinが言うところのナイトレイトとセルロイドがどう違うのかははっきり言って不明である。
このナイトレイトにしても、ミカルタ、コリアン、アイボロイドやボルタロン等々、全く説明無しに一般的でない名称の素材名をカタログに書きっぱなしにするのはいかがな物かと思うのだが…
カタログという物は基本的には購入前に商品を見極めるための物であって、そこに書かれた用語が汎用性を持たないのは既にユーザーの用途を拒否していると思うのは私だけだろうか。

コロジオンを利用した薬品 ちなみに“コロスキン”等の商品名を持つ通称水絆創膏コロジオンとセルロイドは同一の材料から作られる。
…というよりもうっかりこぼしたコロジオンが固まったのを見てセルロイドが発見されたらしい。

液体包帯とも言われるコロジオンは、硝酸セルロースをアルコールとエーテルに溶かして作るが、傷に塗ると丈夫なフィルムになり傷が治った後にはきれいにはがすことができる。
お馴染みの魚の目取りなどの基剤にも使われているようだ。(右写真)

Acetate

アセテート(Acetate)

第一次世界大戦後、イギリスの「セラニーズ社」よって開発生産された、木材パルプの天然セルロース成分に酢酸を反応させてつくる合成樹脂。
セルロースは天然のものであり、酢酸が合成であることから、半合成樹脂に分類される。
これも歴史の古い素材であり、色や模様の自由度が高い。
サンプルはピックガード。(只の黒塗り潰しで面白くもない)
一般的にアセテートは布地として知られ、レーヨン、ポリエステルなど他の繊維と混繊(2種の繊維を混ぜて1本の糸にすること)することで、婦人服地等に使われる。
繊維として生産するときは反応させた材料を有機溶剤で液状にして、トコロテンのように微細な穴の空いた口金から押し出して製造する。
繊維の性質は、植物繊維(セルロース繊維)と合成繊維の中間的な性質を持つ。
その特性を活かした用途として、タバコ用フィルターにも用いられる。
ギターでは板状に製造した物がピックガードやピックなどに使われるが、前項のセルロイドもアセテートも植物由来の素材故に、伸縮率や吸水性が木材と近似するので、ギター素材として適している。



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☆合成樹脂

No Sample

ABS樹脂

1940年、アメリカのUSラバー社(現ユニロイヤル社)で開発された
ACRYLONITRILE(アクロル二トリル)
BUTADIENE(ブタジエン)
STYRENE(スチレン) からなる熱可塑性アクリル系樹脂素材(特殊樹脂素材)。


耐衝撃性・剛性に優れ成形もしやすい素材で、家庭用電化製品や自動車部品など、幅広い用途に使われている。
低温に、やや弱いという一面があるが-5℃の状況下では衝撃に耐えにくくなるというというものなので、通常の環境では殆ど問題はない。

近年、木粉ABS樹脂 POSTWOOD(ポストウッド)等という物も現れ、

等の特徴を持つので、楽器用新素材としても期待できるかも…


Boltaron

ボルタロン:Boltaron

Empire Plastics:商品名
PVC(PolyVinylChloride:ポリ塩化ビニル)要するに「塩ビ」、の一種。CPVC(Chlorinated PolyVinylChloride:後塩素化ポリ塩化ビニル)と呼ばれ1932にドイツのIG社が湿式紡糸による繊維化成功、出願(成立は1934)、当時“Pe-Ce Fiber" と命名し1934に試験生産開始したもの。
日本では第二次世界大戦が終わった1945年以降に本格的な生産が始まり、戦後復興のための電線、水道管、食料増産のための農業用フィルム、果ては、衣料品、日用品、装飾品、産業用資材等、生活のあらゆる分野で使われ、プラスチック時代の先駆となった素材。
塩ビの原料は「石油」40%、残りの60%は「塩」で、100%石油に依存する他のプラスチックス類と異なるので「省資源性プラスチック」等とも言われている。

ボルタロン・シースのナイフ 写真の「ディフェンダー」と言うアメリカ製のナイフ・シース(鞘)はボルタロン(特殊プラ)となっている。
1960年代の中頃からMartinのD-28等でバインディングやエンド・ピースに使われている白い合成樹脂と同じモノとはにわかに思えないが、“Boltaron”と言う名称は登録商標なので、これはどちらも同じ「塩ビ」系の素材なのである。
ナイフの、それもこのような実用的デザインのナイフの鞘に使う素材なので、耐久性耐候性に優れているだろうし、もちろん用途から言ってもセルロイド類のような発火性等もないと思われる。
ナイフ材とギター材のニーズが非常に近似しているのは面白い現象ではある。


Ebonite

エボナイト(Ebonite)

エボナイトは生ゴムに硫黄(イオウ)を加えてつくられる、一種の硬質ゴム。
外観が黒檀(ebony)に似ていることからエボナイトと名付けられた。
チャールズ・グッドイヤーにより開発され、ゴムを長時間加硫して硬化させたものである。
耐候性、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性に優れ、金属に匹敵する機械的強度を持つ。ボウリングの球や、万年筆の軸・インク供給部フィード、サキソホン、クラリネットといった楽器のマウスピースや喫煙用パイプのマウスピースに用いられる。絶縁性も極めて高く、かつては電材として絶縁体に広く用いられてきたが、現代では殆ど使わなくなり、一般の人が目にする機会はほとんどない。
弦楽器に使われる例は余り見たことがないが、管楽器、特に前述のように木管楽器のマウスピース(吹き口)では一般的な素材である。
通常は黒い色をしているが、顔料を混ぜたマーブル柄などの色エボナイトも存在する。
合成樹脂に分類したが、エボナイトは生ゴムに硫黄を加えて製造されるものであり、一般的に言われるプラスチックとは似て非なるものである。

特長は、手触り、質感に優れ丈夫な材質だが、水気とか光で表面に硫化イオウの被膜をつくり、それが曇り変色の原因となることが欠点でもある。
現在では株式会社日興エボナイト製造所が国内唯一のエボナイトメーカーとなってしまった。


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☆その他の素材(複合素材等)

・FRP(Fiber Reinforced Plastics)

Glass Fiber(Seat)

グラスファイバー(Glass Fiber)

グラスファイバーは、熱を加えて溶かしたガラスを急速に引き伸ばして細い糸状にしたものでFRP樹脂の主な複合材となる繊維素材。(写真はシート状の製品)

重ね束ねるほど強度も増し、軽量で曲面形にも加工しやすい特性を持っている。
物理的、熱的、化学的、電気的に安定した無機質繊維で、その名の通りガラスの繊維で、単体よりも複合材として使用されることが多い。
住宅用の断熱材、断縁材として自動車のパーツなどでも馴染み深い素材で、トランクや楽器ケースにも使用されている。電子機器の基板などもFRPである。
一般にFRPというと、このグラスファイバー製品を指す場合が多いが、FRPの正式な名称は“Fiber Reinforced Plastics”=『繊維で補強したプラスティック』という意味で、グラスファイバーに限定はしていない。
FRPと言った場合、重量比で20〜60%の繊維(主にグラスファイバー)を有する樹脂(主に不飽和ポリエステル)系の素材である。
ファイバー、レジン等と呼ばれることもあり、総称的に“FRP”と言った場合、多くはガラス繊維と樹脂をつかって成型されたもの、と言う程度の意味に使われている。
しかし、FRPには、分類的にGFRP(Glass)とCFRP(Carbon:後述)、KFRP(Kevlar)等があり、それぞれ元になる繊維が異なる。
ちなみに、ケブラー(商標)は1971年に米国デュポン社が開発したパラ系アラミド繊維で、高強度・高弾性率、難燃性・耐熱性・耐切創性・耐薬品性、等々の特徴を持つ。防弾チョッキ素材などで有名である。

Carbon Fiber

カーボンファイバー(Carbon Fiber)

炭素繊維。CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plasticsとも呼び、先端複合材料(Advanced Composite Materials)FRPの一種。
炭素繊維は、レーヨンやアクリル繊維などの合成樹脂の糸を、無酸素状態で蒸し焼きにし、炭化させることで作る。炭素は原子間の結合力が強く、軽くて非常に丈夫な繊維となる。

Ovation Adamas 成型品等を作る場合は、炭素繊維で織った布に樹脂を染み込ませて張り合わせたり、プリプレグという2枚の板の間に、アルミなどのハニカム素材(蜂の巣状の板)を接着剤で接着して作った、カーボンコンポジットを使ったりする。この時の樹脂は、熱硬化するエポキシ樹脂が多く使われる。整形には、オス型整形とメス型整形があり、オス型整形は型の外側に貼り付けて整形、メス型整形は型の内側に張貼り込んで整形する方法。現在の主流はメス型整形。
軽く丈夫なので、F1マシーンのウィングやモノコック・フレームやウィング、競技用自転車のフレーム、航空機の翼等航空宇宙素材、スポーツ用品などに使用されている。

これは元祖エレ・アコ、Ovation Adamas。
トップにカーボンファイバーが使われている。
最近では全身が炭素繊維製のギター等も出現している。



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☆圧縮積層素材等

HPL(High Pressure Laminate)

HPL(High Pressure Laminate)

サンプルはMartin X-Seriesの裏板内側。

Martinのニューエイジ・モデルやロワークラスにボディ材として使われている。
てっきり超高圧圧縮積層板…単なる高級ベニアだと思っていた。
紙ベースのメラミン系木素材の様である。
要するにペーパー・マイカルタの木材版とでも言うか…
しかし、ウッド・マイカルタという物もあるので、コレはきっと製法が少し違うとか、組成が一寸違うとかそう言った類の物なのだろうか?

しかし、紙…か。
紙のギターねぇ。
Martin X-Seriesなんか良い音してるけどナァ。
確かに最初のこの素材のギターのサウンドホール内を覗いたとき「何だかボール紙のような質感」と思ったのは正直なところ。


“教授”yoshidaさんから情報提供

ハイプレッシャーライネイトで次の記述を見つけました。

HPLは、High Pressured Laminate の略で、古紙を和紙のような状態にしたものを数十枚重ね、これにフェノール樹脂を加えて高圧縮をかけた素材です。この上にメラミンという色素のあるフィルムを貼り、その上に透明のフィルムを貼って仕上げています。大変強度の高い材質(木と鉄の間)で、スウェーデンではトラックの荷台などにも使われています。
変色しにくく高温にも強く、傷もつきません。落書きをされてもすぐに消せるので、いたずらなどに強い素材だと言うことができます。
メラミン系ではなくフェノール樹脂のようですね。

参考:遊具メーカー 株式会社アネピー

Stratabond

ストラタボンド??:(Stratabond)

Rutland Plywood Corporation:商品名
これも高圧圧縮積層木材系素材のようである。
ロワー・クラスのMartinのネック材に使われているが、積層が見事な木目模様を描き出し、かなり美しい素材である。
元々が銃把等の素材だそうで、猟銃なら湿気がどうの以前に濡れたりぶつけたりすることは大前提だろうから、狂いの来ないギター材として期待できる。


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