不動産を相続したときにかかる相続税について

<相続財産の評価>

相続税を計算するときには、土地や建物などの不動産は、その売買価額ではなく、路線価等で換算されます。建物は、固定資産税評価額をもって評価額とします。市街地にある宅地は、その宅地の面する道路に付けられた1uあたりの「路線価」をもとに、それぞれの宅地の形状などに応じた修正を加えて評価することになります。路線価が設定されていない場所では、固定資産税評価額に一定の倍率をかける「倍率方式」によって相続税評価額を算定することになっています。

特定の住居用の土地や事業用の土地については、200u以下(一定の場合330u以下)の部分の相続税評価額が20%になり、かなり減額されます(80%減額)。せめて故人が住んでいた自宅の敷地ぐらいは、残された妻子や親族のことを考えて相続税負担を軽くしてあげよう、また、ささやかな商売程度の事業を承継するのであれば、その二代目の相続税負担は少しでも軽くしてあげようということです。その他50%減額される場合があります。―小規模宅地等の特例 shoukibota.htm(参考)今後も改正の可能性大(平成11年)

一般的にいって、不動産の相続は、現金等の相続に比べて相続税が少なくなります。

<相続税の計算> 参考)FP講座 souzokuzeikeisan.htm

基礎控除額 5000万円+(1000万円×法定相続人の数)(相続税法第15条 souzokuzeihou.htm

例えば、法定相続人が3人であれば、8000万円が相続税課税価格(相続財産評価額)から控除されます。

故人と苦労を共にした配偶者には、相続税に関しては大きな控除が認められています。配偶者の相続財産取得分が1億6000万円以下なら税額軽減により納付税額がゼロに、1億6000万円を超える場合でも、それが法定相続分以下であれば、やはり納付税額はゼロになります(配偶者に対する税額の軽減措置)一般的に、かなり多くの財産を相続するのでなければ、配偶者には相続税はかからないということになります。この配偶者控除をうけるためには原則、相続税申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに遺産分割が済んでいることが必要です。

未成年者(法定相続人)については、年齢が満20歳に達するまでの年数(1年未満は1年として計算)1年につき6万円が相続税額から控除されます。その他障害者控除などがあります。

相続税の計算は、最初に相続税課税価格(相続財産評価額)を出し、基礎控除をして、法定相続分で相続したとして、相続税額を算出します。そして、その相続税総額を、実際の相続割合(遺産分割などをした)に按分してそれぞれの相続税を出し、最後に配偶者控除や未成年者控除などを考えます。

例えば、課税価格1億5000万円の遺産を、法定相続人である妻と成年の子供2人で相続する場合の相続税を計算してみると、

遺産の相続税課税価格=1億5000万円

1億5000万円−8000万円(基礎控除額)=7000万円

各人の法定相続割合による取得分は、妻2分の1であるので、3500万円、子は4分の1であるので、各1750万円

以下の表(旧)により各相続税額をもとめると、

 

税率

控除額

800万円以下

10%

 

1600万円以下

15%

40万円

3000万円以下

20%

120万円

5000万円以下

25%

270万円

1億円以下

30%

520万円

2億円以下

40%

1520万円

4億円以下

50%

3520万円

20億円以下

60%

7520万円

20億円超

70%

27520万円

妻の相続税額=3500万円×25%−270万円=605万円

子の相続税額=1750万円×20%−120万円=230万円

法定相続分による相続税の総額=605万円+230万円+230万円=1065万円

実際の相続額が妻7000万円、子A5000万円、子B3000万円とすると、

妻の実際の相続割合は、7000万円÷1億5000万円=0.47

子Aの実際の相続割合は、5000万円÷1億5000万円=0.33

子Bの実際の相続割合は、3000万円÷1億5000万円=0.2

妻の相続割合は、法定相続分以下または1億6000万以下の配偶者控除にあてはまるので、妻は相続税0

子Aの相続税額は、1065万円(相続税の総額)×0.33=351万4500円

子Bの相続税額は、1065万円(相続税の総額)×0.2=213万円

ちなみに、退職金や生命保険金はみなし相続財産として、相続財産の中に含めますが、一定額非課税財産となります(相続人の数×500万円まで)。葬式費用は、相続財産から差引くことができます。

<申告>

申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内です。総財産額が、基礎控除額以下であれば、もともと相続税はかかりません。(相続税法第27条 souzokuzeihou.htm

申告書の提出先は、被相続人の死亡時における住所地の管轄税務署です。

相続税の申告期限(死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに、遺産分割協議が整わなかったときは、民法で定めている相続割合で申告することになります。税金もその申告に基づいて納めなければなりません。また、未分割での申告の場合は、当面上記で述べた次の特例が適用できません。

配偶者に対する税額の軽減措置

小規模宅地等の特例

その後分割が決まったら、原則として申告期限から3年以内であれば「配偶者に対する税額の軽減措置」「小規模宅地等の特例」とも適用できます。

納付税額が減った人は、分割が決まった日から4ヶ月以内に「更正の請求」を、申告した税務署に提出して納め過ぎの税金の還付を受けます。税額が増えた人は修正申告書を提出し、差額を納付します。

遺産分割協議が整っていないのに、税金の軽減特例を受けるために、とりあえず法定相続分などでの協議を成立させてしまうケースもあるようですが、税務上は、遺産分割のやり直しを、原則認めておらず(当初の遺産分割協議が法律上、無効であることを証明する必要があります)、後で、あらためて遺産分割する場合、贈与税が課税されたりしますので、注意が必要です。

遺贈によって財産を取得した人は、相続によって財産を取得した人とともに相続開始の時に相続税の納税義務者になります。遺言 yuigon.htm

<相続税対策>

納税資金準備・相続争い防止・節税の3つを念頭において検討します。一般的に節税の方にかたよりがちですが、相続争い防止という点も重視してください。

例えば、金融機関からの借入れにより土地にマンションを建てるなどが相続税対策として紹介されていたりしますが、債務の相続は注意する必要があります。遺産分割に第三者である金融機関が関与することになるため、分割がうまくできないケースもあります。

追加)

新相続税速算表 平成15年1月〜

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1000万円以下

10%

 

3000万円以下

15%

50万円

5000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

3億円以下

40%

1700万円

3億円超

50%

4700万円

相続時精算課税制度 souzokujiseisann.htm

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