単有名義を共有に、共有名義を単有に訂正する場合

・マンションを購入し、所有者を夫名義にしたところ実は妻が半分資金を出しており、後で、妻から夫への贈与ということで、多額の贈与税が課されることが判明した。

・マンションを購入し、所有者を夫と妻の共有名義にしたところ実は夫が資金をほとんど出しており、後で、夫から妻への贈与ということで、多額の贈与税が課されることが判明した。

持分の決め方 motibunwariai.htm(参考)

上記のようなケースで、登記名義の変更を依頼される場合があります。zouyo.htm (参照)

登記手続上、問題となる点を説明します。

一般的には、「錯誤」を原因として所有権の更正登記をします。「真正な登記名義の回復」を原因として移転登記での訂正も可能です。金融機関の担保がついている場合や所有権移転登記の訂正の場合で、金融機関や前所有者の協力が得られない場合は、「真正な登記名義の回復」を原因として移転登記で訂正することになります(担保がついたままの移転になります)。

所有権の更正登記の場合、抵当権などの担保がついているときは、その抵当権者の承諾が必要になります。金融機関に承諾書を出してもらわないと、訂正ができません。

これは、「錯誤」を原因として所有権の更正登記をすると、抵当権の範囲が縮小されてしまうためです。

例えば、Aさん名義をA・B共有名義に更正すると、抵当権は、Bの持分には及ばなくなってしまいます。また、A・B共有名義をA単独名義に更正すると、抵当権は、更正前のA持分にしか及ばなくなってしまいます。もともと所有権全部に及んでいた抵当権が縮小されてしまうため抵当権者の承諾書が必要となるのです。

ですから、後で、抵当権の範囲を全部に及ぼす手当てをする必要がでてきます。そうでないと金融機関は承諾書を出してくれません。

例えば、A名義をA・B共有名義に更正した場合は、B持分へ抵当権の追加設定が必要になり、A・B共有名義をA単独名義に更正した場合は、抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更が必要になります。

所有権移転登記の更正の場合、前の所有者が登記手続に関与することになります。

所有権保存登記の更正の場合(単有を共有に更正)

AをA・Bに

 

添付書類

登記手続

(金融機関の抵当権が設定されている場合)

1、所有権更正登記

権利書

Aの印鑑証明書

Bの住民票の写し

(A・Bの委任状)

抵当権者(金融機関)の承諾書

金融機関の代表者の資格証明書・代表者の印鑑証明書

 

2、持分抵当権設定登記(追加)

抵当権追加設定契約書(原因証書)

権利書(更正登記の登記済証)

Bの印鑑証明書

(金融機関とBの委任状)

金融機関の代表者の資格証明書

共同担保目録

所有権移転登記の更正の場合(単有を共有に更正)

AをA・Bに

 

添付書類

登記手続

(金融機関の抵当権が設定されている場合)

1、所有権更正登記

権利書

Aの印鑑証明書

Bの住民票の写し

(A・Bの委任状)

抵当権者(金融機関)の承諾書

金融機関の代表者の資格証明書・代表者の印鑑証明書

前所有者の印鑑証明書と権利書(と委任状)

 

2、持分抵当権設定登記(追加)

抵当権追加設定契約書(原因証書)

権利書(更正登記の登記済証)

Bの印鑑証明書

(金融機関とBの委任状)

金融機関の代表者の資格証明書

共同担保目録

所有権保存登記の更正の場合(共有を単有に更正)

A・BをAに

 

添付書類

登記手続

(金融機関の抵当権が設定されている場合)

1、所有権更正登記

権利書

Bの印鑑証明書

(A・Bの委任状)

抵当権者(金融機関)の承諾書

金融機関の代表者の資格証明書・代表者の印鑑証明書

 

2、抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更

抵当権追加設定契約書(原因証書)

権利書(更正登記の登記済証)

Aの印鑑証明書

(金融機関とAの委任状)

金融機関の代表者の資格証明書

 

所有権移転登記の更正の場合(共有を単有に更正)

A・BをAに

 

添付書類

登記手続

(金融機関の抵当権が設定されている場合)

1、所有権更正登記

権利書

Bの印鑑証明書

(A・Bの委任状)

抵当権者の承諾書

金融機関の代表者の資格証明書・代表者の印鑑証明書

前所有者の印鑑証明書と権利書(と委任状)

 

2、抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更

抵当権追加設定契約書(原因証書)

権利書(更正登記の登記済証)

Aの印鑑証明書

(金融機関とAの委任状)

金融機関の代表者の資格証明書

登録免許税は、所有権の更正が不動産1個につき1000円、抵当権に関する登記が不動産1個につき1500円。

(非常に実務的な問題―単有から共有に更正する場合で、更正前の所有権の登記をする際、家屋につき住宅用として減税を受けているときは、更正によって追加される共有者に住宅用家屋証明書がない場合、減税は更正前の所有者にしか適用できないとされ登録免許税の差額分を要求される場合があります)

マンションなどで100条2項により所有権保存登記されているA単有名義を、A・B共有名義に所有権更正登記する場合、表題部所有者(敷地権たる権利の名義人)―通常、分譲業者―の所有権譲渡証明書・承諾書(印鑑証明書付、法人の場合代表者の印鑑証明書・資格証明書付)が必要になります。

ちなみに買戻特約がついている場合は、その買戻特約の登記も同時に更正登記をする必要があり、現実的には、買戻権者の了承をとりつけた上で、真正な登記名義の回復を原因とした登記をすることになると思います。

持分のみの更正(例えば、A2分の1、B2分の1をA4分の1、B4分の3に更正)の場合は、抵当権者の承諾書は不要であり、前所有者の関与も要しません。

贈与税等の課税の問題は、税務署などでよく相談してください。

参考 司法書士試験 kousei2.htm Q&A QA2.htm

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