NEC「得選街」

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PC-8801FE2とは

PC-8801FE2

 PC-8801FE2は、1989年 10月に「テレビとつなげる本格パソコン」 というキャッチコピーで PC-8801MCと共に最後の PC-8800 (PC-88) シリーズとして登場、エントリーモデルの流れをくむ PC-8801FEの後継機です。

 上位機とは異なり汎用拡張バススロットが無く、FDDも 5インチ 2Dドライブ (当時の主力は 2HD) を搭載、TVとの接続用にビデオ出力端子を装備するなど主にゲームユースやパソコン入門者 (主にお子様) 向けを強く意識したモデルとなっています。それを裏付けるのが本機のカタログの裏で、NECから子供を持つ両親に向けた熱いメッセージが刻まれています。PC-8801に興味を持ったお子様がこれを持って両親を説得する訳ですな。時はバブル景気の後半ということもあり説得しやすかったとかそうでないとか (^ ^;;

 前モデルの PC-8801FEとは、メモリアクセス・ノーウェイト動作による演算処理の高速化が大きな違いです。他にフロントマスクデザインが変更され、標準価格が値下げされました。登場当時の価格は、119,000円(税別)でした。

 ちなみに、上位モデルの PC-8801MCは、PC-8801MA2の後継機で PC-88シリーズの中で最初で最後のミニタワー型 (白い墓標ともいうらしい) でした。大きな特徴としては、メモリアクセス・ノーウェイト動作による演算処理の高速化もそうですが、旧 NECホームエレクトロニクスの家庭用ゲーム機 PC Engineの CD-ROM^2 (CDロムロム) 完全互換の CD-ROMドライブを搭載していた点でしょう。ただし、ソフトウェアレベルでの互換性は無く、登場当時すでに PC-88末期ということもあり対応 CD-ROMソフトは完全新作を含めても数えるほどで、ほとんどが旧作ソフトに CD音声を追加したものでした。

 さらなる余談として、PC-88アーキテクチャ搭載パソコンの最終モデルは、翌年に発売された PC-98DO+です。前モデルの PC-98DOと並び PC-88ユーザを PC-98に誘導するという使命を持った機種でしたが、無理やり PC-88と PC-98をニコイチにしたような構成でどちらとして使うにも制限が厳しくどっち付かずとなってしまい非常に残念なマシンでもありますが、YM2608の機能をフルに使えることもあり一部のコアなユーザからは強い支持を得ていたようです。
 なお、このマシンで PC-88モードのセットアップモードに入るには、PC-98DO及び PC-98DO+付属のキーボードが必要になります。その他の PC-9800シリーズ用キーボードでは呼び出せません。中古で入手される場合はご注意ください。

 なお、本ページでは、PC-8801FE2のハードウェアに限って解説しています。PC-88自体のアーキテクチャやハードウェアの共通仕様などにつきましてはここでは解説を省略します。PC-88について詳しく知りたい方は wikipedia等を参考にしてください。m(_ _)m

搭載 CPU

NEC製 uPD70008AC-8

 PC-8801FE2に搭載されている CPUは、Zilog Z80をベースに拡張した NEC製 μPD70008AC-8 (8MHz) です。

 上位モデルの PC-8801MC同様に本モデルでも、PC-88VAに搭載されていた CPU 8MHz動作時のメモリアクセス・ノーウェイト動作「8MHzHモード」が追加されています。従来と比べてどのくらい速いかはベンチマークソフトが無いので数値的には分かりませんが、ゲームソフトでのグラフィック画面表示の切り替えでは体感的にはっきり分かるほど速いです。(^-^)

 ただし、ゲームなどのソフトウェアによっては速過ぎて操作できない等、正常にプレイできない場合があります。ソフトウェアがうまく動作しないときに備えて、セットアップモードで動作クロックを従来互換の「8MHzSモード」(1ウェイトモード) と 4MHzに切り換えることもできます。

 ちなみに、PC-8801MCでは「8MHzHモード」では正常動作しない拡張ボードがありますのでご注意ください。

メモリ

 PC-8801FE2のメインメモリは 64KBです。上位機とは異なり後から増設はできません。JIS第一水準、第二水準、非漢字の 256KBの 漢字 ROMは標準装備されていますが漢字辞書 ROMは未実装で追加もできません。

 ビデオ出力に対応しているモデルでは、文字フォント ROMが 2倍の 4KBで、2セットの文字フォントを搭載しています。これは、ビデオ出力時に文字が見にくくなることを考慮し太文字のフォントを搭載しているためです。

 ROM BASICはデフォルトでは起動しない設定になっています。その場合は必ずシステムディスクが必要になります。BASICの動作モードは、V1H、V1S、V2の 3つから選択します。どのモードで動作しているかは、電源投入時またはリセット時に画面表示で確認できます。

 各モードの意味は、V1モードは 初代 PC-8801、PC-8801mkII互換モードで、V2モードは V1モードにサウンドとグラフィック機能を強化したものです。PC-88用のソフトを入手したのに PC-8801FE2で正常に動作しない時は、次の表を参考に設定してください。

ソフトウェア 対応機種 BASICモード
N88-BASIC無印、または V1の表示 PC-8801
PC-8801mkII/mkIISR/mkIIFR用
V1S, V1H
N88-BASIC V2、または日本語 BASICの表示 PC-8801mkIISR以降用
(mkIISR/MR/FR/TR/FH/MH/FA/MA/FE/MA2/FE2/MC)
V2

 N-BASICについては、[N][8][0]の 3つのキーを押しながらリセットをかけると起動します。このときに GVRAMの内容が残るので、画面の取り込みに利用できます。前モデルの PC-8801FEと PC-8801MA2では V2モードからの起動は不可能でしたが、本モデルと PC-8801MCでは、V2モードからでも起動が可能です。

補助記憶装置

TEAC製 5インチ FDDの FD-55BR

 PC-8801FE2に搭載されているフロッピーディスクドライブ (FDD) は、標準で 5インチ 2Dタイプのドライブ (TEAC製 FD-55BR、P/N:19307350-21) を 2ドライブ搭載しています。記憶容量は 320KBです。このモデルには HDDは内蔵できません。

 PC-8801MC等の上位機では、PC-9800シリーズ同様 5インチ 2HDの FDDを 2ドライブ搭載していますが、PC-88用ゲームソフトに限って言えば 2HDタイプのソフトはほとんどありませんので特に問題にはなりません。

 もしこの 5インチ 2Dドライブが故障した場合は、2HDタイプのドライブを流用することも可能です。試しに PC-98DO+に搭載されていた TEAC製 FD-55GFRを繋いでみたところ問題無く 2Dメディアの読み書きが出来ました。

 ちなみに、発売当時は 5インチメディアが主流で、メディアの単価も 3.5インチが 1枚 300円に比べ 10枚 1,200円と安かったので重宝しました。特に、システムソフトのキャンペーン版大戦略IIを始めるとすぐにデータディスクが一杯になってしまいます。

 一方、MSXでは 3.5インチメディアだったのでデータディスク一枚でも結構辛かった思い出があります。今では、とんでもなく安くなりましたが、フロッピーディスクドライブ自体が既に終息となりました。(^ ^;;

グラフィック機能

 PC-8801FE2のグラフィック機能について最大解像度は 640×400ドットです。カラーは 640×200ドット時に 512色中 8色表示が可能です。640×400ドットではモノクロですがテキストアトリビュートで 8色の指定が可能です。VRAMは 48KB搭載しています。

 24kHz対応の専用高解像度ディスプレイ以外 (標準ディスプレイ) では、640×200ドットで 512色中 8色までの表示が可能です。モニタ出力は、アナログ RGBの水平同期周波数 15kHzと 24kHz、ビデオ出力を使った「ビデオディスプレイモード」から選択できます。ちなみに、ビデオディスプレイモードに設定してもアナログ RGB出力は切れません。

 画面出力選択の方法は、電源投入時、もしくはリセットボタンを押してから特定のファンクションキーを BASICモードが表示されるまで押します。

キー 画面モード 水平同期周波数
f・8 高解像度ディスプレイ (デフォルト) 24kHz
f・9 標準解像度ディスプレイ 15kHz
f・10 ビデオディスプレイモード

 上記の切り替えは、PC-8801FEPC-8801MCでも共通です。また、PC-98DOPC-98DO+でも有効で専用キーボードでは無くても本設定が通ります。モニタを繋いで画面が正しく表示されないときは試してみてください。もちろん、ビデオディスプレイモードに付いては対応していない本体では切り替えることはできません。

 ちなみに、HYUNDAI製 IPSパネル液晶ディスプレイ W241DGは非公式に水平同期周波数 15kHzと 24kHzモードに対応しており PC-8801に最適です。参考 HYUNDAI 24型液晶モニタ wiki

サウンド機能

 PC-8801FE2のサウンド機能は標準で音源チップ YAMAHA YM2203を搭載しています。FM音源 3和音、SSG 3和音のモノラル出力が可能です。

 このサウンド機能はオプションの YAMAHA OPNA YM2608と 256KBの RAMを搭載した「サウンドボード II (PC-8801-25)」を本体内の専用スロットに増設することにより、FM音源 6音、リズム 6音、SSG 3音、ADPCM録音再生機能のステレオ出力にアップグレードできます。今では非常に入手の難しいパーツです。

PC-8801-25サウンドボードII専用コネクタ

 サウンドボード IIの実装位置は、第一ドライブの後ろにあるマザーボード上に「SOUND」とシルクで書かれたコネクタに取り付けます。取り付けた場合は元の内蔵音源を置き換える形になります。

 また、ATARI (MSX) 仕様ジョイスティック用コネクタはマウス (PC-8872U) 用として存在します。余談ですが PC-8872Uは MSXでも使えます。(^ ^)b

 PC-98用のバスマウスは互換性が無く使えません。また、PC-8001mkIIや PC-8801mkIIの汎用 I/Oポートとも互換性が無いのでこれにも注意が必要です。

インタフェース

位置 種類 形状
本体前部 キーボード ミニ Din 5pin、付属キーボードは「TYPE C」
マウス D-Sub 9pinオス、ATARI仕様ジョイスティック兼用。
本体後部 アナログディスプレイ D-Sub 15pin、15MHz, 24kHz対応、切り替え可。
デジタルディスプレイ Din 8pin
ビデオ出力 ピンジャック
LINE入力 ステレオピンジャック、デフォルトでは無効。サウンドボード IIを増設時に使用可能。
LINE出力 ステレオピンジャック、デフォルトではモノラル出力。サウンドボード IIを増設時にステレオ出力可能。
RS-232Cシリアル D-Sub 25pin、最高 9600bpsまで対応。
プリンタ アンフェノール 14pin、双方向非対応。

 PC-8801FE2では PC-8801MCのような上位機とは違い汎用拡張スロットはありません。PC-8801用拡張ボード類や拡張ボードが必要になる周辺機器は使用できません。

セットアップモード

 PC-8801FE2にはハードウェアディップスイッチ等のスイッチ類が一切無く、CPU動作モード、シリアル通信等の設定はすべて画面上で設定できるソフトウェアディップスイッチ (セットアップモード、PC-8801FH/MHより搭載 PC-98より先に採用) で行います。起動する場合は、電源投入時、もしくはリセットボタンを押してから「PC」キーを押します。

 セットアップモードとカレンダ時計のバックアップは、ニッカド (Ni-Cd) 電池でバックアップしています。よって、しばらく通電しないと設定内容が消去されてしまい青い画面で「設定し直してください」と警告が表示され、工場出荷時設定に初期化されます。

 実装されている Ni-Cd電池は液漏れしやすいのでこれにも注意が必要です。すでに製造から相当年月が経過しているので出来る限り早くに取り外すようにしましょう。

その他の特徴

 PC-8801FE2の特徴としては、メモリアクセス・ノーウェイトもそうですが、なんといってもキャッチコピーが示すようにビデオ出力があることです。今後の将来に最悪 24kHz対応モニタが入手できなくなっても家庭用のテレビに繋ぐことができます。ただし、MSXなどと同様に画質は期待できません。(^ ^;;

 そんな PC-8801FE2ですが、こればっかりは改造のしようが無いと思いますので、持っている人は大事に使いましょう。某祖父地図では、1999年当時とんでもないボッタクリ価格で売られていました。それだけでは寂しいので、小ネタを一つ。

 PC-8801版 テトリス (TETRIS) で [ESC] キーを押しながらゲームを起動するとサウンドテストモードに入れます。当方では、TETRIS専用機と化しています。CPU「8MHzH モード」でプレイすると表示が速くて爽快ですよ。(爆

RE:birth OPNAモジュール RE1-YM2608の接続

「for PC-8801FE/FE2 KIT」と「RE1-YM2608」
改造パーツ「for PC-8801FE/FE2 KIT」と「RE1-YM2608」

● 改造上の注意点 (重要)

 始めに、PC-8801FE/FE2に RE1-YM2608を接続して運用する際には次の点にご注意ください。

  •  PC-8801FE2のサウンドボードII専用コネクタに純正オプション以外のボードを取り付けることはパソコンの改造行為に当たります。動作保証は一切有りません。自己責任でお願いします。NECに問い合わせないでください。
  •  RE1-YM2608は専用マザーボードで使用する物ですので、今回の用途では改造扱いになります。PC-88での使用については動作保証は一切有りません。自己責任でお願いします。また、FM音源伝説 Project RE:birthさんは直接係わっていないので詳細を聞かれても分からないとのことです。
  •  RE1-YM2608には ADPCMサンプリング回路は無いので再生専用です。ADPCMの録音機能を使用するソフトは正常動作しません。ライン入力端子は使えません。
  •  PC-8801FE/FE2側にモジュールを内蔵するスペースは無いので外付けになります。基板むき出しでの使用は故障の原因になるので別途ケースを用意する必要が有ります。
  •  PC-8801-25コネクタ周辺の電解コンデンサを保守等で交換している場合に、背が高いコンデンサを使っていると基板がぶつかって実装できません。ご注意ください。

● RE1-YM2608

RE:birth OPNAモジュール「RE1-YM2608」

 RE:birth OPNAモジュール「RE1-YM2608」は、FM音源伝説 Project RE:birthさんが開発した同人ハードです。YAMAHAの音源 IC YM2608と DACの YM3016を搭載可能なモジュールです。このモジュールは本来は制御用マザーボード (RE1-MB100 REV1.3) と本 YM2608 (OPNA) や YM2203 (OPN)、YM3812 (OPL)、YM3526 (OPL2)、YM2413 (OPLL)、YM2151 (OPM) 等の音源 ICの載ったモジュールを組み合わせエミュレータではなく、実際に音源 ICを制御してサウンドを鳴らす仕組みのハードウェアです。いずれもハンダ鏝を用いた組み立てキットになっています。

 RE:birthシリーズについての詳細と、入手については次のサイトをご参照ください。

 FM音源伝説 Project RE:birth http://ym2203.com/rebirth/

 家電のケンちゃん http://www.kadenken.com/

 なお、RE1-YM2608には、通常版(青い基板)と Premium Edition(白い基板)が有ります。違いにつきましては、家電のケンちゃんのサイトでご確認ください。筆者はコスト重視で通常版を使用しました。(T T)

 RE1-YM2608の場合は、ADPCMのメモリ周辺回路で表面実装部品の取り付ける必要が有るので他のモジュールに比べると敷居は高いです。SOP ICの取り付けにはフラックス (プリント基板フラックス BS-75Bなど) をたっぷり使うのがコツです。組み立てには 2〜 3時間程度かかります。

 なお、基本的には YM2608、YM3016と言った音源 ICと DACは別途ユーザ側で用意する必要が有ります。筆者はジャンクの PC-9821As2/U2のマザーボードから調達しました。ちなみに、YM2608が載ったジャンクマザーはまだ何枚かあるので、音源チップと DACが欲しい方は有償 (外すのにコストが掛るので) にてお譲りします。所内売店よりお問い合わせください。

● RE1-YM2608B for PC-8801FE/FE2 KIT

RE1-YM2608B for PC-8801FE/FE2 KIT

 「RE1-YM2608B for PC-8801FE/FE2 KIT」は、RE1-YM2608を PC-8801FE/FE2の サウンドボードII接続コネクタに接続する同人ハードです。RE:birthさんとは別の方が製作したものです。こちらは完成品の基板と接続ケーブルのセットになっています。こちらも家電のケンちゃんの通販で購入可能です。
 RE1-YM2608と組み合わせることで外付けにはなってしまいますが、PC-8801-25 サウンドボードII互換のサウンド再生環境を構築できます。音声出力は PC-8801FE2側のスピーカとライン出力から出力されます。RE1-YM2608の設定方法や取り付け方法、使用方法について写真付きの詳しいマニュアルが付きますので安心です。

 オンボードのサウンド機能と本キットに接続した RE1-YM2608を切り替えるジャンパが有りますので、キットの方は一度取り付けてしまえば外す必要は有りません。

 フラットケーブルの筺体外への引き出しについては、バックパネルの間隙を上手く利用しているので結構スマートです。思わず唸ってしまいますな。(^ ^)

● 結果

PC-8801FE2と RE1-YM2608

 PC-8801FE2に RE1-YM2608を接続し、30分程度 PC-8801版 テトリス (TETRIS) を動作させ、正常に音声が再生される事を確認しました。(^ ^)

 ボリュームが 2個ありますが、一方が FM音源の音声出力の調整、もう一方が SSGの音声出力の調整です。

 今回の用途はあくまでも改造で本来の使用から外れますので今後何らかの不具合が見つかる可能性は有りますが、サウンドボードIIの入手は非常に困難ですので、代替品として有意義なパーツだと思います。

 今のところ RE1-YM2608の完成品はまだ無いようですですので、ハンダ鏝を握った事が無い方や自信が無い方向けに組立ての代行を有償にて承ります。組立て作業の内容にもよりますが全組み立てで 5,000円位を目安としてください。ご希望の方は技術部へご相談ください。本体の修理や整備、取り付けも承ります。
 なお、当方はあくまで一ユーザです。組立ての代行につきまして FM音源伝説 Project RE:birthさんとは一切無関係です。迷惑がかかるのでそちらに問い合わせをしないようにお願いします。m(_ _)m

PC-8801FE2の保守

PC-8801FE2は 2015年で製造から 20年以上経過しています。今後も正常に使用するにあたって幾つかのポイントを挙げておきます。

● FDD

 PC-8801FE、PC-8801FE2で使用されている FDDは、TEAC製の「FD-55BR」という VFO無しの 320KB対応の 5インチドライブです。このドライブは、ヘッド部分の磁気シールドが導電スポンジの劣化によって脱落して FDメディアを挿入できなくなります。

磁気シールド金具(赤丸部分)の外れた FD-55BR FD-55BRの磁気シールド金具

 画像左は磁気シールド金具が外れた FD-55BRです。赤丸部分がドライブのヘッド、この上に磁気シールド金具が付きます。

 本体を搬送中にカラカラ音がする、メディア挿入時に奥で何か引っ掛かる感じがするときは、メディアを破損するので無理に挿入してはいけません。

 対策としては、当該部品 (画像右) を除去すれば実用上は OKです。手順としてはだいたい次のようになります。金属部のエッジは手を切りやすいので軍手を装備して怪我をしないようにご注意ください。

  1. ルーフカバーを開ける。ネジは左右 2本、背面 1本。
  2. ドライブ上部のシールド金具を外す。ネジは左右 2本。
  3. ドライブのレバー手前に引いて外す。初めて外す場合はかなり硬いです。プラスチック製の定規を使ってください。ドライバーはNG。
  4. ドライブの信号ケーブルを外す。フィルムケーブルなので万が一の破損を防止するためです。
  5. ドライブを固定している土台の金具のネジを外す。左右 2本。
  6. ドライブを背面に少し引く。完全に外す必要は有りません。
  7. ドライブ上部の金属製パネルを外す。ネジは左右 2本。
  8. 外れたシールドを取り除く。
  9. 逆の手順で組み上げる。

 内部の埃の掃除や磁気ヘッドの溶けたスポンジがヘッドに付いている可能性もあるのでヘッドの清掃もしておきましょう。

 なお、PC-8801MA2等で使用されている TEAC製の「FD-55GFR」もヘッド部分のつくりは同じなので同じく脱落します。PC-8801本体を縦に保管する事は避けましょう。(^ ^)b

● FDメディア

 PC-8801FE2に限らず FDメディア全般の話しとてフィルムに発生するカビの問題があります。高温多湿になりやすい押入れ、屋外の倉庫に保管しておくと磁気フィルムのカビが生えてメディアが読み取れなくなります。風通しのよい乾燥した場所に保管し、晴れた空気の乾燥する時期に時々ケースを開けて虫干ししてください。

 カビの生えてしまったメディアは、イソプロピルアルコールなどでこすってカビ落とせば読み取れる可能性がありますが、磁気フィルムの強度が落ちているので比較的早い段階で傷がついて読めなくなります。「シャリシャリ…」という擦れる音がしたらもう駄目です。早急にバックアップを取りましょう。

● カレンダ時計バックアップ電池

 PC-8801FE2で使用されている電池は、GS (日本電池:現、GSユアサ) 製「GB50H-2」という 2.4V 50mAhの Ni-Cd電池です。

 これが非常に液漏れし易く、液漏れを起こすと周辺パターンや部品を壊してしまいますので直ぐに外す事をお勧めします。半田鏝が無い場合は電池の足をニッパー等で切ってしまえば簡単です。次の画像は電池の搭載位置です。第二ドライブの後ろにあります。

PC-8801FE2の Ni-Cd電池搭載位置

 なお、外した場合は、起動毎にブルーバックに「メモリスイッチの設置を工場出荷時に戻しました」と云う内容の画面と連続でビープ音が鳴り停止します。これは「RETURN」キーを押すかリセットボタンを押せば OKです。リセット後は、日付と時刻、メモリスイッチの設定をやり直す必要があります。

 代替品としては、RSコンポーネンツが販売している 2.4V 80mAhの Ni-MH電池 (RS品番 525-837) が通販などで入手し易いです。価格も 264円 (2015年 3月現在) と格安、送料は 450円掛かりますが合計しても千円以下です。

 ちなみに、RSコンポーネンツは、ユーザー登録が必要ですが個人でも登録可能です。

 厳密にはNi-Cdと Ni-MHは充電時の特性が違うので其のまま交換して良いのか気になるところではあります。充電池は取り扱いを誤ると発火や破裂が有りうるので Ni-MHタイプを使用する方はご留意ください。

 寿命としては、普段使っていて概ね 5年ぐらいです。交換時期の目安とすると良いでしょう。ケーブルで延長して液漏れしても影響なさそうなところにコネクタを介して固定する方法を取ると良いでしょう。長期間使わないときに外しておく事で効果的な液漏れ対策となります。
 なお、コネクタを介する改造をしたからと言って繋いだまま放置しては意味がありません。漏れたバッテリー液はビニール線内を伝い、コネクタも通過します。ビニール袋に入れても無駄です。絶対安全ではありませんので油断は禁物です。(^ ^)b

● マザーボード、電源ユニットのコンデンサ

PC-8801FE2のマザーボード PWD-829

 PC-8801FE2に限らず大半の PC-8801では、普通の電解液の電解コンデンサを使用しているので、通常の使用状況であれば電解コンデンサの液漏れで故障する例は殆ど有りませんが、高温多湿な環境に通電せず長期保管すると液漏れする可能性が有ります。

 なお、PC-8801MA2では、マザーボードの正面側の正面から向かって右側に 1個だけニチコン PCという四級塩タイプの電解コンデンサが有りますのでご注意ください。

 押し入れ、屋外の物置に保管するケースが多いと思いますが、高温多湿になりやすい環境ですのであまりお勧めできません。風通しの良い部屋に保管するのがベストでしょう。ユーザー自身が快適に過ごせる部屋は、レトロPCにとっても快適な環境です。(^o^)
 また、数カ月に一回程度定期的に通電してください。筺体内の湿気を飛ばし、電解コンデンサの劣化が防げます。

 運悪く液漏れしてしまったら、早めにアルコール系の洗浄剤で拭き、交換しましょう。

 マザーボードの電解コンデンサの選定については、まず第一に高さを合わせるようにしてください。正面側のIC48横の電解コンデンサやサウンドボード II用コネクタ周辺の電解コンデンサは、高さが有ると上が閊えて不具合が出ます。

 ちなみに、動作不良やコンデンサ、電池交換でお困りの場合は、技術部にて修理や保守を承りますのでご相談ください。改造パーツの取り付けもいたします。

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