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Green Book

グリーンブック(原題:Green Book)

監 督 ピーター・ファレリー
出 演 ヴィゴ・モーテンセン/マハーシャラ・アリ/リンダ・カーデリーニ
脚 本 ニック・バレロンガ/ブライアン・ヘインズ・クリー/ピーター・ファレリー
音 楽 クリス・バワーズ
製作年 2018
製作国 米

Green Book 劇場予告を見て、これは鑑賞しておかないとな、と言う事で見てきた。

(しかし、ここ、もうシートが限界だな)

「本作は事実に基づいて書かれた」と冒頭にテロップが流れる。
(Inspire By A True Friendshipって書いてあった)

脚本の原案を著したのは本作の主人公でもあるイタリア系移民トニー・“リップ”・バレロンガの実の息子。
ブロンクス出身のイタリア系なので、多分親子共々ろくな者では…いや、裏社会を知り尽くしている存在だろう。
ショービジネスに関わっていたので当然のことながらマフィアとの関係もあるはず。


一方の主人公は幼い頃から天才の名をほしいままにした音楽家。
しかし、アメリカ音楽会の因習により黒人故にクラシックの世界では名を成す事が出来ない。
そんな二人がアメリカ東部で出会い、黒人音楽家はイタリア移民を運転手兼マネージャーにルーツ探しか自分探しか、ディープサウスへと演奏旅行に出る。
時は1960年代。未だ人種差別が合法だった時代。
手にした物は“Green Book”を呼ばれる旅の手引き書。

Green Book グリーンブック
(The Negro Motorist Green Book 又は The Negro Traveler's Green Book)

人種隔離政策時代、1936年から1966年までヴィクター・H・グリーンにより毎年出版された黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブック。ジム・クロウ法の適用が郡や州によって異なる南部で特に重宝された。通称グリーン・ブック。

ジム・クロウ法(ジム・クロウほう、英語: Jim Crow laws)
1876年から1964年にかけて存在した、人種差別的内容を含むアメリカ合衆国南部諸州の州法の総称。アメリカ合衆国南部における人種の物理的隔離に基づく黒人差別の法体系。しかし、広義には、アメリカの黒人差別体制一般をいう。ジム・クロウとは、1828年ケンタッキー州で上演され、ヒットしてヨーロッパでも流行したミュージカルの黒人登場人物の名前で、その後黒人の蔑称となり、人種隔離のことを呼ぶ様になった。


Green Book まず、主人公の二人。
天才黒人ピアニスト役マーシャラ・アリ、う〜んどっかで見た事が…
と思ったら、つい先週見たアリータ: バトル・エンジェル
これの顔役で出てたじゃないか。(グリーンブックの方が先だが)
原作銃夢のキャラクターそのままで凄く良かったのだが、あの悪役イメージを全く想起させない、品の良い人格になりきっている。

そう言やぁドリームにもちょろっと顔を出していたな。


Green Book で、もう一人。
この人、どう見てもイタリア系には見えないのだが、デンマーク系らしい。
あっと驚く、指輪物語の野伏アラゴルン:Aragorn(馳夫:Strider)、後の中つ国再統一王国の初代上級王…
だって言うのだが、言われなけりゃ絶対分からない。
筋肉質精悍なアラゴルンを演じた時より数10kg増量して本役に就いている。

指輪物語三部作は2001〜3年に製作されており、勿論私は全作観ているのだが…
いやこれ、アラゴルンちゃう!

 指輪物語:ロード・オブ・ザ・リング三部作
  旅の仲間
  二つの塔
  王の帰還


Green Book そして、トニーの妻役リンダ・カーデリーニ。
この人が良いんだ。
実際の歳は40チョイ過ぎらしいが、もう一寸老けた感じに演じている。まさに下層移民の草臥れたママさん。
それがね、シワやら年齢なんざぁどうでも良いんだよ、と言う位に可愛らしいんだ。
若い時の写真はもの凄く綺麗だが、いや、一寸お年を召した今の具合が実に素敵だ。
この人の存在がなければ、本作はここまで素晴らしい完成度にはならなかっただろう。


さて本作、'60当時当たり前に行われていたアメリカの人種差別を描く。
比較的差別の少ない東部で活動していた主人公は、敢えて差別の激しい南部へ演奏旅行に出る。
それもWASP(ホワイト・アングロ-サクソン・プロテスタント: White Anglo-Saxon Protestant)ではないイタリア移民と。
黒人故に本来の領分であるクラシックではなくポップス風味のイージーリスニング演奏家として。

アメリカの人種差別は言葉では知っているが、実際の所日本で暮らす日本人である私には解らない。
なにしろ、フライドチキンが、過酷な奴隷仕事を強いられていた黒人が体力をつけるために好んだソウルフードとされ、「黒人の好物」というステレオタイプがある。なんてぇ事だって初耳だったし。

しかし、音楽映画としての盛り上がりは上々。
それまでブラックミュージックを聴いた事がなかった芸術家がツアーの最後に行うセッションで鳥肌が立つ程ゾクゾクした。
そこに彼は自分探しを完結したのだろうか。

長いツアーを終えて心を通じ合わせた運転手兼マネージャー兼用心棒とのおわかれ、そして…

エンディング、実に心温まるシーンで結ばれる。
かれは居場所も見つける事が出来たのだろう。

いや、これ、アカデミー賞、当然だわ。

Green Book 本当の主役
ターコイズ(青緑色)のCadillac Sedan DeVille(1962年製)
390立方インチ(6.4L)V-8/325馬力(SAE gross)

【国内映画ランキング】「ドラえもん」首位、「翔んで埼玉」「グリーンブック」でトップ3なんだってね…(2019.3.4.)



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