実務メモ (TOP index.htm)(新不動産登記 sinfudousantouki.htm

実務で経験した事柄を忘れないように順次記載したもの(1〜)

1、所有者を同じくする不動産A物件、不動産B物件、両方に、共同担保として、抵当権者を同じくする抵当権が2つ(別々の債務)設定されている場合、その抵当権を抹消するにあたり、抹消原因が同一であれば(例えば、平成1641日弁済)、同一の申請書で(1件の申請で)抹消登記の申請をすることができる。その時の登録免許税は、物件2つ、抵当権2つであるが、同一の申請書でするため、物件2つの2000円で足りる。別々の申請書でした場合、登録免許税は、合計4000円になるので、同一の申請書でできるのであれば、そうした方が安くなる。(所有者が異なっても一括申請可か。下記12参照)

敷地権付マンションに賃借権(用益権)を設定する場合、敷地権は持分であるため賃借権設定をすることはできず、賃借権設定は、建物(専有部分)のみにすることとなる。担保として賃借権設定仮登記がなされている場合、抹消費用(見積り)を計算する際、敷地権を含め2000円としてしまうことがあるので注意(細かい(^_^;))。

以前は、賃借権設定仮登記、地上権設定仮登記(担保の一環として設定されるケースが多い)は、不動産1個につき、1000円でできたが、平成154月〜平成183月は、不動産の価額の1000分の25となっているので注意。(これで痛い目にあった経験あり)今後は費用がかかるので、担保として設定するケースは少なくなると思われる。

登録免許税の改正について、相続人への遺贈の登記の登録免許税が、相続と同様1000分の2となっているので注意。租税特別措置法72条。

2、事例が複雑な借金を担保するため抵当権を設定する場合、原因につき悩むことがあるが、当事者間で、あらためて、その債務額を負うという債務承認契約(新たな債務契約)を締結してもらい、「年月日債務承認契約年月日設定」として抵当権設定登記をすることができる。

3、マンションで

規約共用部分になっていない、建物(集会所、倉庫、ボイラー室等)があり、それが全戸の共有となっているものがたまにある(特に古いマンションなど)。

新築マンションを購入した際、この規約共用部分となっていない集会所などが、一括して共有で登記され(1件の所有権移転登記でされている)、その権利証書は、マンションの管理人等が金庫に保管している場合がある。その後、売却等で、権利証書が必要となった時、申込をして交付してもらうようになっている。

したがって、このような場合、所有者自身がその権利証書をもっていないため、把握していない場合がある。

そこで、これが売買や相続において、もれてしまうケースがある。

最近のマンションは、だいたい規約共用部分となっていてその旨の登記がされているが、古いマンションなどは、このように共有登記がされている場合があるので注意が必要である。兵庫県住宅供給公社の古いマンションで多い(上田東町住宅、鳴尾小松住宅など)。

権利証書に記載があれば、それにより確認できるが、そうでない場合、どのように確認すればよいのか。

ポイント

実際、マンションにそういうものがあるかどうか(現地確認)

規約共用部分になっているかどうか

所有者がどこまで把握しているか

管理規約等、所有者が所持している書類に記載があるかどうか

固定資産税の納付書に記載があるかどうか(ない場合が多いと思うが)

評価証明書に記載があるかどうか(ない場合が多いと思うが)

管理組合、管理会社に問い合せる?

司法書士として調査できる範囲は限られているので、提出された権利証書で分かるとか、共同担保になっているとかであればよいが、あとは、建物図面zumennmemo.htm等の調査で、怪しいと思われるもの(別棟で集会所のような小さな建物がある等)であれば調査するが、そうでなければ、所有者の申出、仲介業者の調査・確認にまかせるしかないであろう。実際、もれていたケースに遭遇したことがある。いままでやったマンションの取引につき、そういうもれはなかったと100%自信をもって言えるかどうか。なお、相続の場合は、その死亡者(被相続人)の名寄帳(人ごとの固定資産課税台帳)を取得して不動産調査をする場合があるので、それで判明することがある(名寄帳を取らなければやはりわからない)。しかし、売買の場合は通常、そういうことをしないのでわからない場合がある。集会室、電気室、管理人室などであり、実際もれていても住むことに関して不都合は生じないが、売却する際にもれが判明した場合、困る(知らぬが仏か)。

規約共用部分で表題部に登記されている例「管理人室 平成333日団地規約設定 団地の表示 西宮市○○町200番地1 一棟の建物番号 マンション武庫川 」「種類 集会室 昭和60220日規約設定 一棟の建物の表示 西宮市○○町20番地2 一棟の建物の番号 ○○○西宮の共用部分」一体化処分で所有権の登記はされない。

敷地の場合は、上記のように一括で共有登記をするというのはないと思われる(一部移転、持分移転で順次登記する)ので(もっとも建物でも順次登記していくのが普通だと思うが)、所有者の手元に権利証書はある。敷地権になっていないマンションで、規約敷地などとして、マンションの底地以外に敷地(共有持分あり)となっているケース(ゴミステーション、庭、テニスコート、広場、駐車場等)があるので注意が必要。建物図面、公図、測量図、住宅地図の調査で、マンション底地内に一区画別の土地があるとか、隣接にそれらしき土地があるとかの場合、注意。ただ、これも、マンションから離れたところにある規約敷地については、上記建物と同様、分からない場合がある。みなし規約敷地の存在(建物の一部取壊し、土地の分筆)にも注意。高須町の武庫川団地24号棟、25号棟、26号棟の建物の底地敷地は1番7の土地だが、1番6も駐車場で敷地となっており、持分がある(土地は敷地権にはなっていない)。

マンションでなく、一戸建ての場合でも、ゴミステーションなどの土地が共有になっている場合がある。

取引tatiai.htmの際、権利証書のチェックは、基本的には受付年月日、受付番号でするが、紙ベースでの権利証書は、それ以外の、不動産の表示や、いっしょに綴られている他の権利証書で、もれの不動産を発見したり、いっしょに綴られている名変の登記済証、表示の登記済証などの重要な資料のチェックができ、貴重である。これが登記識別情報に代わると、そういう細かいチェックもできなくなるのか?

4、増改築のためローンを組んだ場合も、要件を満たせば、この住宅ローン控除(住宅取得等特別控除)の適用は可。ただし、例えば、父親所有(父親名義)の家屋に息子がローンを組んで増改築するケースで、もともと父親所有なので、要件である「自分が所有しかつ居住している住宅」にあてはまらないため、住宅ローン控除(住宅取得等特別控除)を受けられない場合があります。増改築分は息子がローンを組み費用を出しているので息子負担分として所有が認められ、そのような登記もすることになります(錯誤による所有権更正登記・真正な登記名義の回復による移転登記・代物弁済による移転登記などが考えられます)。しかし、事前(工事着工前の原因日付)に息子名義にしておかないと適用が否定されるようで、事前にした場合、贈与とされ贈与税課税が心配されます。このような場合で、住宅ローン控除(住宅取得等特別控除)の適用を受けるため、事前に一部息子名義にしておくという方法としては、以下の方法が適当かと思われます。

(1)贈与税基礎控除の範囲内で息子へ贈与による(一部)移転登記をする(息子の住所は当該家屋)。贈与の原因日付もしくは登記日付は工事着工前。

(2)工事完了後、増改築による建物表示変更登記をする。

(3)その後、増改築の価格に応じて「代物弁済」(又は「真正な登記名義の回復」)を原因として息子へ(一部)移転登記をする。

(注、現在、租税特別措置法73条の適用は「売買又は競売」に限られています)

住宅ローン控除(住宅取得等特別控除)という変な税制のため、このような配慮が必要となります。

5、印紙の再使用証明について。1年内。同一法務局で使用可。商業登記・不動産登記相互に利用可。再使用証明を譲渡し、他の人が使用することは不可。

6、当初から敷地権付区分建物になっているマンションで、所有権保存登記が2項保存ではなく、11号保存されているものがある。これは、土地については別途登記されているため、担保の設定の際に必要な権利証書は、建物の保存登記のものだけでなく(これには土地は含まれていない)、土地の権利証書が必要となる(注意!)。建物の保存登記の原因欄に原因の記載があるかどうかで分かる。新築当初から敷地権付マンションで権利証書について安易に考えていると大変なことになる。合筆でマンション敷地としているケースで、土地の権利証書が何十通(合筆前のものすべて)と必要になったケースがある。元もとの地権者が区分建物の所有者になっている場合などです。

7、印鑑証明書について(不動産登記申請につき)

所有権に関する登記名義人が登記義務者として登記申請する場合、その義務者の印鑑証明書の添付が必要。また、所有権以外の場合でも、登記済証・登記識別情報を添付・提供しない場合(事前通知か資格者代理人による本人確認情報の提供が必要)は、登記義務者の印鑑証明書が必要となります(規則第48条、規則第47条)。この印鑑証明書については、作成後3ヶ月以内のものでなければなりません。原本還付は不可。それ以外の印鑑証明書については、新しい方が望ましいと思いますが、法律上は期間の制限はありません。例えば、相続登記に添付する遺産分割協議書に付する印鑑証明書(原本還付可)、利益相反の場合の議事録に付する印鑑証明書(原本還付不可)、承諾書(例えば、仮登記権利者の単独申請の場合に添付する仮登記義務者の承諾書)に付する印鑑証明書(原本還付不可)などについては期間の制限はありません。

所有権登記名義人がその住所をA・B・Cと順次移転したが、登記上Aから直接Cに表示変更の登記を経由した後、登記義務者として登記を申請する場合において、申請書添付の印鑑証明書が中間住所B(旧住所)を記載したものであっても(発行後3ヶ月以内である限り)、別途前記住所移転の経過を明らかにした戸籍の附票等を添付すれば、当該申請は受理される。

参考)なお、商業登記で代表者変更の際、議事録等に付ける印鑑証明書には期間の制限はありません(ただし、印鑑届出書に付ける印鑑証明書には3ヶ月以内という期間の制限があります、現在はこの印鑑証明書は原本還付可になっています)

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8、敷地権付区分建物(マンション)の移転登記に際して取得した評価証明書に、規約共用部分の建物(例えば電気室など)の評価が別途出ている場合。最近の評価証明書は、専有部分の建物の評価として、規約共用部分・法定共用部分を含めた床面積で1つの評価額が出ているものがほとんどであるが、比較的古いマンションで規約共用部分の建物につき、別途、評価を出している場合がある(敷地の土地の評価証明書に記載されていたりする)。マンションとはすこし離れたところにある規約共用部分の建物など。この場合の登録免許税の計算は、一般的に以下のとおりである。

別途出ている規約共用部分の建物(例えば電気室など)の評価額を「敷地権割合」で按分し、その額を移転登記しようとする専有部分の建物の評価額に加え、これを課税価格とする。住宅用家屋の減税は、規約共用部分を含めてすべてに適用がある。

9、所有権移転登記と○○持分全部移転登記(敷地権になっていないマンションと土地、自宅部分と道路共有部分など)は、権利者と義務者が同じであれば同一申請書で一括登記が可能。持分は「後記 不動産の表示の個所に記載のとおり」などとしておき、不動産の表示の個所に記載すればよい。登記権利者・登記義務者・登記原因が同一であり、かつ、持分の移転について第三者の権利に関する登記(処分制限の登記及び予告登記含む)がなされていない限り、所有権移転登記と共有持分全部移転登記は、同一の申請書で申請することができる(登記研究470号)。

10、墳墓地に関する登記については、登録免許税は非課税(登録免許税法第5条)。

11、地役権設定登記については、登記識別情報の通知はなされない。なぜなら、地役権者は登記名義人として登記されないから。地役権の抹消登記等については、要役地の所有権取得した際の登記済証または登記識別情報を添付して登記する。

12、A物件は、甲所有、B物件は甲乙共有で、AB物件が共同担保となっている抵当権の抹消登記、及びAB物件を丙へ移転する所有権移転登記及び共有者全員持分全部移転登記につき、一括申請の可否。

先例等

甲所有のA・B物件を共同担保として抵当権設定登記をした後、B物件につき乙に所有権移転の登記がされている場合であっても、当該抵当権登記の抹消を同一の申請書で申請することができる(登記研究558155頁)。

所有者を異にする数個の不動産を共同担保とする抵当権の変更登記は、同一の申請書によって申請することができる(昭和41421日民事甲第1119号)。

所有者を異にする共同抵当権または共同根抵当権の変更登記については、同一の申請書で申請することができる(登記研究427103頁)。

設定者を異にする根抵当権設定仮登記の抹消の申請は、根抵当権者及び抹消の原因が同じであっても同一の申請書で申請することはできない(登記研究594246頁)。

共同担保であれば、所有者が異なっていても抹消一括申請「可」ということか。上記1参照

参考実例 土地3筆(所有者 2筆はA、1筆はBC共有)、建物 1個(所有者D)の不動産に、共同担保として(あ)(い)(う)3つの(根)抵当権が設定されている。この3つの(根)抵当権の抹消登記は、(根)抵当権者及び抹消原因が同一であれば、一括申請可、登録免許税は、抹消する(根)抵当権は3つだが、不動産が4ということで、4,000円でOK。

甲が、乙から土地を買い受けると同時に、丙からも建物を買い受けた場合の各所有者移転登記については、不動産登記法46条にいう「登記の原因が同一なるとき」に該当しないので、同一申請書によることはできない(明治33821日民刑第1176号)。

乙所有のA不動産と乙・丙共有のB不動産に対し、権利者を甲とする代物弁済予約の契約がなされた場合に、その所有権移転請求権仮登記を同一の申請書で申請することはできない(登記研究391109号)。

申請の当事者及び登記原因の日付を同じくする甲不動産の所有権移転登記と、乙不動産の所有権一部移転の登記とは、同一の申請書ですることはできない(登記研究423125号)。

登記権利者・登記義務者・登記原因日付が同一であっても、所有権移転登記と共有持分全部移転登記とを同一の申請書によって申請することはできない(登記研究448131頁)。−上記9(登記研究470号)と異なる

所有権移転登記と共有者全員持分全部移転登記は一括申請「不可」ということか。

13、

平成11101日、住宅・都市整備公団が、都市基盤整備公団法附則第6条第1項により、都市基盤整備公団へ承継。

平成1671日、都市基盤整備公団が、独立行政法人都市再生機構法附則第4条第1項により、独立行政法人都市再生機構へ承継。

買戻特約や抵当権の抹消日付が、その承継日以降の場合、承継による移転登記(嘱託による)の上、抹消登記をする。

買戻特約や抵当権の抹消日付が、その承継日より前の場合、承継による移転登記をせずに、そのまま承継者として抹消登記申請をすることができる。

敷地権表示されていないマンションに登記されている買戻特約登記は、敷地権表示される際に建物へ一体化されないため、土地と建物、別々の登記として生きています。したがって、この買戻特約を抹消する場合は、土地については、敷地権としてではなく、独立した土地について抹消登記申請をすることになります。敷地権表示された以降に登記された買戻し特約は、このようなことはなく、一体化された建物に登記されています。なお、抵当権は、通常、土地・建物とも、原因や受付年月日、受付番号などが同じであるから、敷地権表示される際、建物へ一体化される。もれもれ - 司法書士とくの日記