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規格案の文書(1995年6月付け)の全体は、序言、1〜6章、付編(実例の紹介)から構成されている。3章が規格案本体である。印刷版が頒布されているが、ここではWeb版を参照した。序言と1.1(規格の目指すもの)は、別稿の新しい概要紹介(1997年6月付け)と内容がだぶるので、ここでは省略した。また本稿は、この規格の存在を日本に紹介するのが目的であり、公式なものではないが、考古遺跡班の責任者(Henrik Jarl Hansen氏)に許諾を得ている。正式には、オリジナルの文書を参照されたい。本稿はあくまで1995年6月付けの文書を紹介するもので、1999年春の近日中に規格の最新版が出ることに注意されたい。
序言と1.1(Aims of the Core Data Standard)は省略した。
なお、序言の末尾に班の構成メンバーが紹介されているが、イギリス5名、カナダ1名、アメリカ1名、フランス1名、デンマーク1名、アルバニア1名、ルーマニア1名、ポーランド1名、ロシア1名の構成である。
共通データ規格(3章に規格案本体)は、国ないし地域レベルのデータベースで採用されたデータモデル(情報項目)と、併用されるべきである。多くの場合、データモデルは、個々の機関の仕様を反映するよう修正を余儀無くされるだろう。4章(データモデル)は、共通データ規格を適用する際に役立つガイダンスと参考情報を提供することを期している。
共通データ規格(共通情報項目規格)は細分されているが、これは、企画、管理、学術、その他の目的において、史跡/遺跡の合理的な評価のために必要な、最小限の情報カテゴリ(情報項目)を表すためである。なお、史跡/遺跡の詳しい理解と保護のために必要となる参考情報も、データベースや情報センターで提供されてよい。
共通データ規格の中で、必須とされるセクションは、索引的な項目と記述的な項目の作成に必要な、最小限の情報量を規定する。任意とされるセクション、サブセクション、項目は、遺跡についてもっと詳しい情報を記録しておくためのものである。例えば、ある遺跡の記録は、もっと大きな遺跡複合の一部分として、あるいは同一遺跡の異なる調査次として、相互に参照されるかもしれない。また、調査機関が所蔵するしないに関わらず把握している、もっと詳しい情報に、相互参照を行うこともできる。なお、記録のレベルは、個々の調査機関の必要性と、利用可能なリソースによって、様々であろう。
全てのセクションが必須ではない。サブセクションの数は、セクションによって様々であるが、あるものは必須で、あるものは任意である。無論、そもそも情報が存在しないかもしれない。例えば、発掘調査されたことのない遺跡も存在する。
多くのサブセクションは任意であるが、その一部でも記録しておくことを決定したなら、同じサブセクション内の項目の多くは、必須項目ということになろう。例えば、発掘調査の記録への相互参照を記録するならば、文献番号と文献作成機関の名称も記録されるべきである。
実際のセクションは以下の通りである:
項目の多くは、一つの情報しか記入されないだろう(規格上、一意と称される)。しかし特定の史跡/遺跡に関して、一つの項目に複数の表現があてはまる場合がある。例えば、遺跡が複数の行政区域にまたがる場合、あるいは複数の発掘調査が一つの遺跡で行われた場合である。そうした場合、規格上はセクションないしサブセクションのレベルで、項目を反復すべきである。一つの項目に複数の情報を併記してはならない。だから、複数の発掘があったなら、それぞれ別扱いとし、それら全部の間で相互参照が繰り返される。
ここで提示された共通データ規格は、全くの案にすぎない。世界中で、別々の利用経験を通じて、再検討されることを期している。CIDOCの考古遺跡班は、世界規模で、慎重に選ばれた遺跡情報化プロジェクトを通じて、この共通データ規格を検証することを予定している。世界中の経験と検討結果を土台に、規格案の第2版を作成するつもりである。このことは強調しておきたいが、共通データ規格は、ガイド(指針)である。国も異なる、様々な機関が、別々の理由で、様々な詳しさのレベルで考古学的記録を作成している。ゆえに、多くのセクション・サブセクション・項目は、必須ではなく、任意である。各機関は、それぞれの目的とリソースに応じたレベルの記録を作成できる。
共通データ規格は、理論的な前提に従って組み立てられている。在来型のアナログなシステムでも、コンピュータシステムでも、適用可能なはずである。具体的には、第4章を参照して頂きたい。
本規格は、理論的には4つの基本要素からなっている。
※原文のまま「アイテム」とした方がいいのかもしれないが、とりあえず和訳して「モノ」とした。認識上の対象だから、本当は「これ」かもしれない(が、「これ」は文脈を離れると主語にしにくい)。あるいは漢字で「此」「是」「物」「要素」「事物」「項」など考えられるが、いずれもしっくりこない。「モノの集合」は、「括り」「一括」「集合体」がいいかもしれない。スペースは空間上の位置だから、ある拡がりを持っている。だから「空間域」とすべきかもしれない。しかし「点」は日本語では特定の範囲を意味するから、矛盾はない。
考古学的な「モノ」は、考古学の基本であり、遺物、自然遺物、遺跡/史跡の部分(壁、柱穴、あるいはデータの意図によっては建造物の全体も)などが相当する。「モノ」は、既知の考古学的関連や連想によって、理論的な「モノの集合」に位置付けられる。例えば、フリントの剥片・ツール・コアのセットは、フリントの石塊を構成するだろうし、土器片の接合は個体を復元するだろう。異質な「モノ」ならば、構造的な集合(墳土、石室、濠)だったり、遺物の集合(貴石、石器、焼物)だったり、自然遺物の集合(骨、花粉、焼土)として、集合化されるだろう。
考古学的な「モノ」は、物理的な空間上の位置を占める。例えば、現場で記録される地点は、空間的な相互関係を示し、遺跡台帳なら、法律で保護された土地の範囲を示す。
地点の集合とは、複数の地点の集合であり、モノやモノの集合が位置づけられる、より大きな次元での「地点」を意味する。例えば、複数の土地を一括して、法律上の保護を受ける区域を構成する場合、あるいは溝と覆土のように、異なる発掘のレベルの集合である。地点の集合は、必ずしも連続している必要はない。一つの直線的な遺構が、現代の撹乱によって完全に分断されている場合もあろう。異なる要素の関係は、以下の原則にしたがう。
●「モノ」は一つ、または複数の「地点」に存在している
●「モノ」は「モノの集合」の中に存在している
●「地点」は、他の地点と重なってはならない(データが不正確で、そう見える場合があるとしても)
もっと詳しい定義については、用語集(5章)を参照されたい。
(規格案本体は別稿)
第2章で理論的な前提を述べた。これは、在来型の手法でも、最新の情報技術を駆使しても、適用可能と思われる。共通データ規格を適用しようとする機関は、それぞれの機関の記録上の必要性に見合うように、共通データ規格と理論的前提を、読み直すべきである。この章では、調査組織の目的に応じて採用されうる、CIDOCの新しいデータモデルを提供する。
CIDOCの新しいデータモデルは、理論的な考察に加え、同じような原則で実装された、いくつかの機関の実地の経験とに基づいている。それらのデータベースの名称は、DKC(デンマーク)、MONARCH(イギリス)、DRACAR(フランス)、ARCHIS(オランダ)などである。CIDOCのデータモデルは、「モノ」、「モノの集合」、「地点」、その他の属性の間の、相関関係を示している。
(モデルそれ自体は、Webでは公開されていないので、印刷物を参照のこと)
データ規格や考古学的データベースにおいて重要なのは、それを構成するセクション間を、いかにリンク関係で結付けるかである。全てのセクションは、遺跡/史跡を特定し、文献を特定し、作成日を特定する情報を含む、セクション1とリンクされている必要がある。また、他のセクションも、互いに密接にリンクされている必要がある。例えば、時代によって同一遺跡の性格が変遷する場合には、セクション3(種別ないしタイプ)と、セクション4(時代)は、密接に関連する必要がある。
付編で4つのデータモデルの実例を示す。これらは、国機関による考古学的コンピュータデータベースである。本文書で提示されたデータ規格が定式化される以前に開発されたものであるが、これから新しい考古学的データベースを構築しようとする機関にとっては、参考になるだろう。
データ上の用語や記録の一貫性を保持するため、シソーラス(索引語集)、用語集、及び事実上の国際標準(例えば、物理年代の引用法など)に従うことは、極めて重要である。
ほとんどの国機関による考古学データベースは、遺跡の地理的情報を表すため、地図システムの実装を考慮している。地図システムは考古学データベースと共に稼動し、機能するべきである。
2章参照
省略
デンマークの場合:DKC
[要点]DKCはパソコンベースで、Microsoft ACCESSを用い、10万分1及び2万5千分1のデジタル地図をインターフェイスに用いている(地図システムは内製)。ラスター地図を主とするが、ベクター地図も選択的に用いている。
イギリスの場合:MONARCH
[要点]RCHME(英国王立史跡委員会:Royal Commission on the Historical Monuments of England)による、全国遺跡台帳の全情報を統合したデータベース。25万遺跡(沈船、史的建造物含む)の詳細な情報、3万5千の発掘調査、20万点の資料を含む。システムはORCLEを用い、現在はUNIXマシンで、WAN(ワイドエリアネットワーク)を組んで運用している。MS-DOS版のデータベースは、ローカルな文化財台帳で使われている。 MONARCHのデータモデルは、3つの基本構成からなっている。それは史跡・記録・発掘に関する情報である。これらは最上位のデータ型で、例えば史跡のデータは、関連する発掘調査のデータ、及び写真・図面・ノートといった記録と結び付けられている。
フランスの場合:DRACAR
[要点]DRACARはフランス国内の既知の遺跡を全て管理するよう設計されている。UNIXベースで、ORACLEを用いて開発されている。
オランダの場合:ARCHIS
[要点]ARCHISは、発見地点や史跡のデータを格納し、ラスターベースのGIS(地理情報システム)を活用している。システムにはINFORMIXを用いている(GISはGRASS)。やはりUNIXベースである。
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