相反則不軌について

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相反則不軌とは

相反則不軌とは
相反則不軌とは「ある一定のシャッタースピードより遅くなると(露光時間が長くなると)起こる現象」であり、フィルムに露光するという化学変化における現象です。(従ってデジカメにはありません)
具体的には「カラーバランスの変化と露光不足」が起こります。
対処法ですが、フィルムメーカーのデーターチャートには、各フィルムごとにシャッター速度における補正のためのゼラチンフィルターの値、露光補正の目安が記されています。(プロ用フィルムのみ)
しかし趣味の世界では逆に「特殊効果」として利用した方が面白い写真が撮れます。

フィルムの発色原理の違いにおける発色の差
昨今のデジカメ世代の方には耳慣れない言葉が続きますが、知識として理解しておいて下さい。
リバーサルフィルムはその発色の方法において、下記の2種に大別されます。


その1 外式カプラーのフィルム
フィルムに塗られた感光乳剤に色素を持たないもの。現像処理のなかで各色ごとに染色する。現像処理(K-14処理)が複雑で手間が掛かるが退色性に優れた色素を使えるため、長年の保存に耐える。私が所持している物の中では、約45年前の実弟の写真が退色もせず残っている。当時のエクタクロームは退色が進み、国産フィルムに至っては画像が残っていないものもある。注、当時はまだ国産カラーフイルムは黎明期であった。最初にさくらフィルム(現コニカ)あとから富士フイルムが製品化した。勿論ネガカラ-なぞ存在しない時代である。アグファゲバルトも輸入されており、撮影した記憶があるが残っていない。派手な色だった記憶がある。
コダクロームが有名で過去には幾つかのバリエーションが存在したが、近年本国アメリカでも製造販売が中止された。残念なことである。
モノクロフィルムと同じく「銀の層」を持っており、そのため黒の締まりが良く独特の発色であった。愛用者も多かったが、同時に気難しいフィルムであった。一時期ラボの処理の品質が低下し多くのファンが離れていった。「マゼンタカブリ」である。しかし皮肉なことに現代のスキャナーでの読み込み時に完璧に近い形で復元できた。今となってもっと使っておけばと後悔する次第である。
このタイプは相反則不軌において「濃い青色」に発色が偏ります。下記の作例を参考にして下さい。

その2 内式カプラーのフィルム
はじめから乳剤内に色素(カプラー)を持ち現像処理が簡単なのが特徴。エクタクロームが代表格だが現在売られているリバーサルフィルムはすべてこのタイプ。退色性は外式のものに劣る。現像処理はE-6処理と呼ばれ事実上の標準処理である。しかしながら実際にはフィルムメーカーによって微妙に異なり、またラボによっても発色に差が出る。
現像処理とは本来厳重な管理が必要である。通常はある規定本数現像したら「補充液」と呼ばれる液体で、現像液の中の減少した成分を補うのであるが、残念ながらきちんと管理されていないラボも存在する。過去に問題となった事があり「フジカラー純正処理」とはこのような「管理がきちんとされている」という、フィルムメーカーのお墨付き処理だったのだが、どれほどの方がご存じだったかはなはだ疑問である。そんなわけで現像処理は信頼できるラボに依頼されることをお勧めします。
このタイプは相反則不軌において緑色の色調に偏った発色をします。詳しくは下記の作例を参考にして下さい。

初めて挑戦される方へのアドバイス
オリンパスのOM−2、OM−4シリーズを使えばフルオートで撮影できます。
絞り優先モードで使用し、絞りを何段階か変えて試してみて下さい。
他のメーカーのカメラでも8秒位までのシャッター速度が用意されていれば、チャレンジしてみて下さい。
露出は不足となりますので、同時に1段オーバー、2段オーバーも撮っておくと良いと思います。ただ必ずしも適正露出が良い写真とは限りません。アンダー気味の方が雰囲気が出て良い場合も多々あります。以下に作例を示します。参考にして下さい。

 コダクローム64での例その1 1979年(昭和54年)11月18日撮影 
東塩尻駅の「夜明け前」です。 夜明けが近い時間帯です。この後461列車が入線するのが6時8分ですから、その少し前という時間帯です。
完全に「夜」という時間帯ですと、空は真っ黒にしか写りません。
461列車の発車待ち光景です。 この461列車は6時11分発車ですから、かなり空が白けてきた訳です。このあと列車はヘッドライトを点けずに発車して行きましたから、肉眼ではかなり明るくなっている状態です。
 コダクローム64での例その2 1981年(昭和56年)2月14日撮影
441Mの発車風景です。 441Mの発車です。この列車の発車時刻は7時33分。肉眼ではかなり明るくなっています。ヘッドライトは点灯していません。当時は昼間のヘッドライト点灯義務はありませんでした。
441Mの補正後の写真です 今度は相反則不軌をスキャナーでの読み込み時に補正した写真です。
私が使っているEPSONのGT-X970という機種には「退色補正」という機能が付いています。
この機能は相反則不軌ばかりでなく、現像の際の「青カブリ」やコダクローム系にありがちな「マゼンタカブリ」にも有効です。今まではフォトショップでいちいち手作業で行っていた作業が、一発でそこそこまで来るので大分楽になりました。
なお電車が傾いて見えますね。今回改めてフォトショップでガイドを当ててみたのですが、信号機(2本)と駅長さんは垂直でした。当時私は三脚と雲台の間にレベラ-を入れており、水準器で水平を出していましたので、おかしいな?とは思います。多分現場はほぼ水平部分(3.5パーミル)から急勾配(25パーミル)にさしかかる部分で、逆カント状態ではと推察されます。
注、シーサスクロス(ポイント)は25パーミルの勾配上にあります。
 エクタクローム64での例 1981年(昭和56年)2月14日撮影
469列車の発車町風景その1です。 今度はエクタクロームの相反則不軌です。
ご覧のように緑色になっています。
富士フイルムの製品もみな基本的にこのようになります。
469列車ですので6時8分到着6時11分発車です。

なお上の写真の461列車と時刻は同じ時間ですが、昭和55年10月の時刻改正で列車番号が変りました。
469列車の発車町風景その2です。 上と同じ列車ですが、ほんのわずか空が明るくなっただけで、このように発色が変化します。
やはり「仕上がってみないと判らない」世界ではありますので、無駄を承知で数カット撮影することをお勧めします。
単5397列車です。 こちらは単5397列車です。
6時48分着6時52分発車です。
絞り開放近くでの撮影です。
これはこれで朝もやの雰囲気がでていますので、補正無しもアリかと思います。
上の写真の撮影条件の違う写真です。 上と同じ列車ですが、今度はわざと絞りをf11位に絞り、長時間露光としたものです。画面が青くなり明らかに相反不軌の影響なのですが、同時に露出アンダーであることも注目して下さい。
「適正露出」という表現も現実にはかなり曖昧で、シーン毎に「適正露出」が存在すると考えた方がいいでしょう。それがまた写真を奥深いものにしてくれます。
 このページの撮影条件 OM-2N  135mmF2.8


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