世紀末車内最強伝説
私が、朝の通勤で、「通勤快速」という電車を使うようになって、早2年の歳月が流れた。
いつもの時間のいつもの場所、気紛れに、椅子取り戦に参戦することがあれど、普段の場所に寄りかかり、本があれば読み、電池の続く限りRio300で音楽を聴きながら通勤していた。
そして車内には、いつもの見慣れた顔が多く見られる。
そんなありきたりな通勤風景。
蘇我駅に到着する前に車内を見渡すような向きで壁に寄りかかっていた私は、電車がドアを開いたところで向きを180度切り替え、壁と正対した。
ここら辺で電車の乗車率はピークを迎え、とても壁に背中から寄りかかった状態では正面の人が近すぎて読書に集中出来なくなってしまう為だ。
電車は進む、終点まで・・・・・・・。

ふと背中にかかる体重が気になり始めた。
恐らく、立ったまま眠りこけた御仁が居るのだろう、私は運転席と乗客を隔てる壁に埋め込まれたガラス窓を鏡代わりに、後ろの人物を確認しようとした。
この辺は単純な男心、寄りかかってくるのが女性であれば、喜んでその背中を利用して頂いても構わないのだが、これが野郎だった場合は、何が何でも排除するという精神構造である。
因みにいくら女性でも、おばちゃんに関しては、その限りではなく、これまた排除しようとする私は、人間狭いっすか?狭いんすか?
狭いかって訊いてんだろうが、ごるぁっ!!!

暫くお待ちください

ともかく背後を確認してみると、私より随分背が低いご様子で、茶系の髪をしている以外、女性であることを除きわからない状態だった。
まぁ、相手が女性ならば、私も文句は言うまいと硬く心に誓い、女性が体重を預けるままに任せ、再び読書に集中するのであった。
して、そこから更に数分後・・・・・・・。

ゴン、ゴゴン、ゴン・・・。
なにやら壁に何かが当たる音が響いてきた。
何やら連打したり、単発であったり、その音は不規則であったが、私には何やら懐かしい気分に捕らわれていた。
この音、どこかで聴いた懐かしい音だ。
私は再びガラスを鏡に背面に目を向ける。
そして私は見たのだ、見てしまったのだ。
ガラスに映ったそのお顔。
簡単に忘れられる訳が無い。
貴女は明美(過去何度も言う通りあくまで仮名)さん?!
ここ暫くそのご尊顔を拝しておりませんでしたが、貴女様にお変わりは無く、元気に帰っていらしたのですね。
しかも壁に額を連打して額をおさえる事も無く、そして目をはっきり覚まされる無く超然と構えるその姿、爺は、爺は嬉しゅうございます。
そうなのだ、明美(仮名)さんは、私の記憶に深い傷を残し、そして去っていた、まさに青春の光と影の象徴である。
銀河鉄道999で言うところのまさにメーテルってなモンである。
そして彼女は過去、私の前に数々の進化を見せ付け、人の進化は終わらないという重要なテーゼを残してくれたのである。
そして、誰に知られること無くその成長を見つめ続け、私から最強の名を与えられたなどと知らない彼女は、私の背中に寄りかかって眠っている。

いやー、私も正面から彼女のヘッドバッドを喰らわなくて済んで良かった良かった。

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