そんなある日のこと
風邪をひいた。
月曜の朝からなにやら鼻の奥が痛いのである。
腫れて一回り大きくなったという感じが一番しっくりくるであろうか、ともかく違和感があるのである。
で、可及的速やかに善処する必要を認めた私の脳は、月曜の帰宅後、即刻風邪薬の投入を決定。
普段投入されるべきところの2倍を投入し、尚且つビタミン剤投与まで実施した。
翌日火曜から若干寒気が残るなど、諸弊害が私を襲うが、なんとなく仕事は出来るので休まず出勤する。
更にその翌水曜日、鼻の通りが悪くなり、その所為か若干頭が重くなる。
そして木曜日くらいになり、鼻水が出る。
金曜日、鼻水と寒気のみとなる。
土曜日、甥っ子のクリスマスプレゼント購入に付き合わされ、

「ぶわっかもん(莫迦もん)、戦車のラジコン贈るなら、東京マルイ謹製の90式に決まっとろーが!」

と意見を述べる。
そんな私は英軍戦車ファンである・・・・・・。

まぁ、そんな具合に風邪とともに一週間を生き延びてきた私であるが、年の瀬を迎えるにあたり、どうしてもやらねばならないことがあった。
それは部屋の障子貼りである。
ここ何年も私の部屋の障子は破れたままになっていたり、まったく貼っていなかったりと、複雑な状況だった。
これを打破するには即ち、

「障子紙を貼りやがれ」

という実に明快な回答へ帰結するものであり、昨今の冷え込みに対抗するために、私の部屋に課された最後の課題でもあったのだ。
そんな訳で私は一路地元のホームセンターに向かい、障子紙を購入。
うららかな日曜日の昼に、親が「後で剥がし易いから」という事情で、親自ら練った糊を片手に、ぺたぺたと障子貼りをする私の姿が見られた。
ぼへーっと糊を塗り、本人もぼへーっとしていると、

「あ、そういやそろそろ蛍光灯も買い換えなきゃ遺憾(いかん)」

とか考えていたのはまぁ別のお話。
親は親とて、正月飾りなど作っている。
(我が家では未だに正月の飾りは藁を編んで作っている)
この後は、新しく立て直したお墓の掃除だということだ。
時間にして一時間あまり、4枚ある私の部屋の障子は、実に数年ぶりに障子が全て貼られたのであった。
(待てやゴルァ!)
そして夜。
乾してあった布団に寝っ転がり、消灯の上睡眠をむさぼろうとする時である・・・・・・。

「な、なんか部屋が暖かい」

そうなのだ、それまで薄手のカーテンだけで乗り切っていたが、深夜の窓ガラスは容赦なく部屋の温度を下げまくっていた。
だがしかし、障子に紙が貼られた今、新たな城壁を私は得たことを実感したのであった。
こうして私は暖かな部屋を入手した。
この冬は電気ストーブをはじめ、様々な暖房器具が導入されたが、その機能を発揮できる土俵が出来たのである。
これでこの冬は完璧だ。

と、ここまで喜んでいたのは良いのだが、親曰く「剥がし易い糊」という事は、自動的に、
「剥がれ易い糊」
と言ってる気がするのは、愚息の浅はかな要らぬ心配なのでしょうか?



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