前回報告に引き続き、カタログには載っていない部分の写真を揃えてみた。
この楽器に興味を持たれた方の参考になれば幸いである。
ブリッジ(下駒)はアジャスター付きだが、一般的なコントラバスのアジャスター駒とは異なり、脚基部の左右が連結されたモノで、かなり剛性が高そうである。
(スマートなデザインとは言い難いモノではある…)
この構造が出音にどう影響しているかは不明である。
弦の間に装着されている四角いモノはFishmanのピエゾピックアップを固定するためのクリップ。
コントラバスの駒はこんな形をしている。
左側が一般的なコントラバス駒。
右側が脚の間にアジャスターを装着したモノである。
右側のアジャスター駒はここやここやここ等の専門店で加工してくれる。
Fishmanからは、最近このアジャスター兼用のピックアップ:Full Circleも発売されている。
駒から一寸ずれて、“f”孔付近を見てみる。
写真が上手くなく、確認しづらいが、“f”孔の中に重要なモノが…
更にぐっと“f”孔に寄ってみる。
この楽器の一番の特徴、エレクトリックではなく、コントラバスの血を受け継ぐ部分、が見える。
魂柱である。
エンドピンと同じ位の太さなので12φ位だと思われる。
ギターでは“アーチトップ”と呼ばれる、バイオリン系の楽器の形を模したスタイルがあるが、そうしたギター等には見られない部品がこれ。
駒下(丁度G弦真下辺り)に表板と裏板を支えるように柱が立っている。
これがコントラバス(ヴァイオリン)のあの独特な音を発生する要となる魂柱と呼ばれる部品である。
この魂柱と駒は通常は接着はされず、弦と表裏板の圧力で支えられているだけなので、魂柱と駒の倒れを避けるために、ヴァイオリンやコントラバスでは“調弦を緩めるな”と言われるのだ。
身体検査中に発見。
シリアル・ナンバーなどがどこにあるのかと思っていたら、指板裏に紙ラベルが貼ってあった。
鏡に映して撮影した写真では写っていないが、メーカー名とモデル名の下にナンバーが打ってあった。02*の3桁である。これがLandscapeの製造台数なのか、Atelier Zが販売した数なのかは不明である。(恐らく後者だろう)
実は“Atelier Z”はメーカーではなく、単なる販売代理店なのだが…(ヴァイオリン系楽器の商品知識はあまり無いようだ)
何故か同メーカーLandscapeのギターの方は別の代理店に移っている。
上記のLandscapeギター代理店のサイトにはAR-1 アーチ・トップ・ギターの紹介として、こんな一文が載っている。
製品概要工房の所在地などは一切明記されていないが、楽器店で調べてもらった限りでは、中国であるらしい。
40年間高級バイオリンを製作し続けたマエストロと、30年間世界中のエレクトリックギターを制作してき たマエストロが2000年に出会ったことによってLandscapeブランドが始まりました。その後数多くのギタリストのサジェスチョンを基に制作され、2004年のNAMMショー及びフランクフルトメッセでデビュー、 絶賛されたのがこのSweet Jazz/AR-1です。
スプルース単板トップ及びカーリーメイプル単板バックの絶妙なカーブを描くアーチドボディは、バイオリン工房でマエストロがハンドメイドによって丹念に削りだしたものを使用、また、バイオリンではホディの鳴りを優先する為一般的な手法であるニス仕上げをSweet Jazz/AR-1では採用し、アンティークバイオリンカラー仕上げと相まって高級感溢れる独特な印象を醸し出します。
製作現場を尋ねて
LANDSCAPE AR-1は、ヴァイオリン制作のマエストロの称号を持つクラフトマンの手によってクラシック楽器の製作工房内でそれらと同様の製造工程により削りだされます。それはまさにギターを創るというよりはヴァイオリンやチェロを創るという感覚に近いものがあります。絶妙なカーブを描くLANDSCAPE AR-1のアーチドトップ及びバックには、それらクラシック楽器の長い伝統に裏打ちされたボディの鳴りに対する一つの解答が具現化されているといっても過言ではありません。
また、工房では単に材の最終的な削りだし工程だけをコントロールするのではなく切り出す前の良質な原木を豊富にストックするとともに、材を楽器に最適な状態になるまで十分に寝かし、さらにそこから厳選された材だけを選び抜くという、材そのものに対してもマエストロの目にかなった最高級のものだけが使用されます。
製造技術だけではなく、サウンドや楽器としての根幹となる材への強いこだわりがあるからこそ、LANDSCAPE AR-1が他のギターでは得られないサウンドニュアンスを獲得できるのです。
このLANDSCAPE AR-1の現物を実際に見たが、実に丁寧な造りで美しい楽器であった。
…というわけで、
正式デビューの戦うおやじの応援団忘年会である。
今回はパタータのP.A.にD.Iを介して直結で鳴らしたが、腕はともかく、音質はおおむね好評であった。
楽器サイズについては、徒歩移動時にはかなり後悔の念を抱くデカさ(印象から言うとフルサイズのコントラバスを運ぶ労力と大差がない。事実楽器の重量はコントラバスと殆ど変わらない。)だが、ステージでの使い勝手はすこぶる良い。