設計施工一括請負の宿命


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記載者:Webmaster安達 on September 01, 1999 at 22:18:32:

元の記事:アドバイス有り難うございました /記載者:渡邉 智裕 on August 31, 1999 at 10:07:16:

渡邉さん、とりあえず良かったですね。
私の方こそ「JIAそのものは中立」というタイトルの付け方は、渡邉さんにとっては一見つれない言い回しだったかも知れません。
でもこれは渡邉さん宛ての言葉ではなく、アクセスして来た一般の方々に協会としてのJIAと、個々のJIA建築家の責任の違いをご理解いただくためのフレーズです。
あの中で私が(今回渡邉さんが体験された)「調査依頼」とそれによる「有償コンサルティング」についてあらかじめ書き込みをしたのも、その有償プロセスと責任の所在のことが一般には周知されないまま渡邉さんのみの経験に留まってしまうのを避けるためでした。

(以下は安達個人としてのレスポンスです)
さて、「施主で工事監理」とのお話ですが・・・
現場監理というのは、施工の内容をいつも先回りして把握し、工事手直しの効くベストのタイミングで指示を出さねばなりません。常駐でない重点監理の場合はなおのこと専門的経験をもってタイミングを的確に捕らえねばなりません。
私の実感として、一般の方が(ご自分の住宅についてという限定で)この業務を専門家になり代わりやろうとするなら、毎日仕事をしないで工事現場でフルタイム過ごすしかないでしょう。
しかもそんな時間のある人は皆無に等しいので、そのようなシチュエーションのための書籍はまず無いのでは。(あったとしたらかなり性能レベルの設定の低い書籍と想像します。)
従って監理に必要な知識は、「建築知識」等の専門書籍を現場にへばりつきながら、かつ日曜日も、読みふけることになると思います。
多分、それでも無理な部分が多いでしょう(後段ご参照)。時間と労力、したがってその間に失う収入を考えると、全く割に合わないと思います。

逆に言うと、もともと施主に監理をさせなければならない(施主が監理しなければ不安だ)というのはメーカーが製造物責任を負うている以上、全くおかしな話です。
設計事務所が介在せず、工事請負業者が設計も一括で受注する場合(メーカー請負もこれに該当)でも、品質管理として上記のようなチェック労力が内部的になされていないと良いものが出来るはずがありません。
今回を例に言えば、基礎のずれは、貴方より前に、請負メーカーが発見して自発的にやり直していなければいけません。貴方が発見するなんて本来は異常です。
ついでに言えばアンカーボルトを例にとっても、筋交いとの位置関係こそ大切で(職人さんは力学的に把握していないので)これをチェックしなければなりません。基礎ずれはそれよりもっと初歩的な話なのです。
「施主で工事監理」とおっしゃっても、貴方が筋交い交点とボルトの離れをメジャーで一つ一つ当たっている図は、やはり変です。

メーカーの自主チェック業務(請負内容)を施主が代わってやりたくなる不安感は、一括請負というシステムが宿命的に持つ限界そのものと言えるかも知れません。しかし、例えば今回の基礎やり直し=下の土が荒れる可能性あり=仮に荒れたら一方法としては基礎を何cmか深くする・・などさらに必要となるチェックは、渡邉さんがなさるのではなく、請負金額の中でメーカー自身(あるいはメーカー間で作る性能保証機構のようなもの)がするべきでしょう。問題はそれで満足が得られるか、目下の現実としてはどうなのかというところ。
「メーカーならいざという時の責任を取れるから」と、一般の方々はメーカーに頼むのでしょうけれど、その「いざ」が今回のようなケースで、このような例は世の中後を絶ちません。全体として見ればこういう現状は「メーカーならいざという時」と考えてしまう施主層の自己責任に帰する部分もあるわけです。
つまり施主層がどこまでの品質を求めているかです。結局は、100点満点にどれだけ近づけるかのレベルの問題なのですね。限りなく満点に近いものを求めるなら設計・監理と施工とを分離するのが有利なのは歴然です。設計事務所(建築家)の存在理由の一つはそこにあります。


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