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キレル人々2


最近はブログでもいろいろな文章を書いています。「心の癒しと意識の目覚めのために」もご覧下さい。

このところ世間を騒がせ続けているL社のH前社長。ワイドショー好きの妻から聞いた話によれば、彼は子どもの頃に父親からはかなりひどい暴力を、母親からはネグレクト(養育放棄)といってもいいような虐待を受けていたということです。

彼の著書の中には「家族の愛情なんて信じない」という言葉がある、ということはどこかで読んだことがあったので、きっとずいぶん辛い子ども時代だったのだろうな、と思ってはいたのですが、やっぱりそうだったのか、という気持ちが強いです。

その話を聞いたときに、最近読んだ本(※)の中で知ったレーガン元アメリカ大統領の話を思い出しました。レーガン氏は子どもの頃のアルコール依存症の父との関係の中でひどい心の傷を負って、自分の感情との接触を完全に閉ざしてしまっていたので、「現実と作り話を区別することができなかった」ということなのです。

具体的な例として、軍隊の勲章の受賞式で勇敢なパイロットの話を涙ながらにしたのに、その話は実際にあったことではなく映画の1シーンだった、ということが挙げられています。

怒りや悲しみのような感情を心の奥に抑圧してしまうということは、自分の現実(本当の気持ち)と切り離されてしまうことになり、そのことが周囲の現実(自分のまわりの世界)の知覚をもひずめてしまうのです。あまりにもみえすいた嘘を平気でつくような人は、同じような心の働きを持っているのかもしれません。

H前社長の心の中でも、自分の行っていることが現実なのかパソコンのディスプレイの中で展開されているゲームなのかよくわからなくなっていたのではないでしょうか。

法をおかしたことに対しては、もちろん厳正な処分を受ける必要がありますが、彼の心の中で起こっていたのと同じようなプロセスは、実は程度の差こそあれ、多くの人の内面でも起こっていることです。

ありのままの自分の姿とのつながりが欠けている分だけ、現実の世界を自分のフィルターを通してみているのです。

自分がどんなフィルターで世界を見ているのか、ということに気づいていくと、自分と周囲の世界との関係がずいぶんよくなってくるでしょう。

  ※「身体が「ノー」と言うとき〜抑圧された感情の代価」
    日本教文社、ガボール・マテ著、伊藤はるみ訳

【まほろば通信】vol.112掲載2006/01/30)


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Written by Shinsaku Nakano <shinsaku@mahoroba.ne.jp>
Last Update: 2006/03/05