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■ブレスワーク体験記1〜悲しみと怒り■


今回からはわたし自身が受けてきたセラピーの体験、特に自分の癒しと成長に深く関わってきたブレスワークの体験を中心にして、何回かにわけて書いてみます。(箱庭療法の体験についてはこちらのページに箱庭の写真と詳しい解説を載せていますのでご覧下さい)

初めてブレスワークを受けたのは最初の体験から1年半か2年くらい過ぎた頃(1989〜90年頃)だったと思います。その当時は、今よりもブレスワークを行っている個人や団体が多くありました。

最初のときの体験はあまりに強烈で忘れることができません。1時間ほどのセッションの中で、最初から最後までひたすら大声で泣き続けていたのです。それまでは自分が泣くなんてことは考えたこともなかったので、今思えば、そのとき自分に起こっていることが信じられなかったのではないかと思うのですが、その瞬間はそんなことを考える余裕もなく、ただただ泣き叫び続けていたように記憶しています。

終わってみると、またまた世界が変わっていました。一番びっくりしたのは、それ以前の自分は息をしていなかったのではないかと思うほど呼吸が楽になり、身体全体がリラックスして軽くなっていたのです。それほどまでに身体を緊張させて呼吸を抑えていたら、生きていくのが苦しくて当たり前でした。でも、この体験をするまでは、そんなことを考えることすらなかったのです。何度か体験する中で、そのとき感じた感覚が「悲しい」「さみしい」と言った言葉で表現できるものだ、ということもわかってきました。

それから数回のセッションはただひたすら泣くだけでした。いったいこれほどのエネルギーがどこにあったのか、という感じです。セラピストや、グループでのセッションのときにはペアになった人に抱き締めてもらって泣き続けたこともありました。こんな体験は本当にはじめてだったのですが、自分自身を深く癒していくきっかけになりました。

自分の内側に、気づいていない部分、意識できていないエネルギーがあって、それに気づき、その存在を受け止めていくことが大切だ、ということはセラピーを受けに来る方にもよくお話することなのですが、その意味を頭では理解できてもなかなか実感できないことはよくあります。でも、自分のこのときの体験を振り返ってみても、それは最初は仕方のないことかもしれません。だからこそ、生きるのが辛くなっていたわけですから。

ひたすら泣き続けた数回のセッションののち、それまでとは少し違った感覚が内側から起こってきました。「怒り」です。それはまた「悲しみ」とは比較にならないほどの激しいエネルギーでした。

呼吸を続けながら、床を激しく叩いたり、ここでは書けないような言葉を大声で叫び続けたりということが、これもまた何回も続きました。涙もおさまったわけではないので、もう「泣きながら怒り狂う」とでもいうような状態になったりしました。

いったいこの悲しみや怒りはどこから来たのでしょうか。

当時のわたしは、子どもの頃の両親との関係が原因だと考えていました。でも、今は少し違う見方をするようになってきています。もちろん、親との関係は自分の中の悲しみや怒りを引き出してくれたきっかけにはなっていますが、今はそれを第一の原因だとは考えなくなっているのです。

人間の魂は過去に何度も肉体をまとってこの世界にあらわれています。それを前世だと考えてもいいし、宇宙のゲームだといふうに理解してもいいかもしれません。肉体をまとって生きていくということは、それだけでさまざまな苦悩を体験するものです。人間のこころの奥にはそれまでの人生の中で体験してきた多くの悲しみや怒りがもともとため込まれているのです。それは「わたしの悲しみ」ではなくて「人間の悲しみ」あるいは「悲しみそのもの」といってもいいかもしれません。

そして、今回、こうしてこの肉体を持って生まれてきたのは、その「悲しみ」や「怒り」を癒す機会を与えられた、ということなのかな、と感じ始めているのです。この人生の中で体験するさまざまな苦しみは、これまで世界の中に積み重ねられてきた苦しみを癒そう とする宇宙のプロセスの一貫なのかもしれません。

おやおや、ちょっと話がそれてしまいました。

こうして、悲しみや怒りを解放していくプロセスが進んでいったのですが、ただ大声で泣いたり叫んだりするだけでは、何かが違う、という感覚が起こってきました。感情を扱う上でとても大切な気づきが起こるときが、間もなくやってきます。

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Written by Shinsaku Nakano <shinsaku@mahoroba.ne.jp>
Last Update: 2005/12/23