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おめでたき日々

(2003年3月)
今月のことば:Namazuを飼おう


2003年3月29日

岩波文庫『友情』改版

●3月の新刊として発売された『友情』を店頭で手にとってみた。現在の基準に合わせて表記がえが行われ、活字も大きくなり、行間も広がるなど組版は一新されている。内容は大きな変更はなく、1966年の解説(河盛好蔵)を再録したぐらい。巻末の年譜はあっさりしていて期待はずれ。
●以前は背表紙の文字が読めないくらい薄かったと思うが、今度は厚みも出て他の本と遜色ない。何を読もうかと本屋に行って、薄いから選ぶのは『友情』と内村鑑三『後世への最大遺物』だった頃とは違う本のようだ。さすがに版違いでコレクションするほど焼きが回っていないので、購入はせず。→Amazonで買うならこちら

東京地方で桜が開花

●東京は3月27日にソメイヨシノの開花宣言をした。予想より2日、平年より1日早い。宣言の目安となるのは靖国神社の桜だそうだが、それより内陸の調布でもほころび始めた。
●つつじヶ丘駅にある実篤記念館の掲示板にも「3/27桜がそろそろ咲きそうです。」と掲示されていた。今日も暖かかったので、少しずつ咲き始めたのではないだろうか。
●開花から満開まで約1週間。一年でいちばん落ち着かない時期が始まる。梅もコブシも春の花はみんな好きだが、桜は別格だ。美しい盛りの桜を見たいと、物狂おしい思いに駆られる。

実篤の書は“ゆっくり派”

●4月からのNHK「趣味悠々」のテキストが店頭に並んでいる。その中の一冊『岡本光平の文字を楽しむ書』(NHK出版)が気になったので手に取ってみる。
●いろいろな書の書き方が紹介してあり、堅苦しい入門書みたいでなくて良い。講師の岡本光平の書だけではなく、一休、慈雲、副島種臣など古今の書が大きくカラー写真で紹介されていて、それを見ているだけでも楽しい。さらにめくると志賀直哉の「徳不孤」という字が出ていた。文章を読むと、うまく書くためにはゆっくりと書くことが必要で、速く書いて即興的な味を求めるべきではないとある。うまいというか、ゆっくりと書くことで良い書になっている「ゆっくり派」として、古くは良寛、近代では志賀直哉、武者小路実篤、勅使河原蒼風、中川一政の名前を挙げていた。
●この説明の部分は、第4回(4月28日)の放映予定にあたっている。実篤の書はともかく、テキストにある志賀の書は紹介されるのではないだろうか。昔から、こういう本に実篤近辺の話題があるのではないかという「嗅覚」は利くのだが、役に立つんだか何だか。→Amazonで買うならこちら


アサヒビール大山崎山荘美術館(京都府乙訓郡大山崎町)では「民藝とランドスケープ・プロダクツの出会い」展を明日まで開催している(1月7日(火)〜3月30日(日))。民芸ということで濱田庄司、河井寛次郎、芹沢けい^介、バーナード・リーチらが挙げられているが、ルーシー・リーは違うのではないか。作陶の態度は近いところもあるが、リーチといっしょにされるのを彼女は好まないのではないかと、ちょっと過敏に反応してみる(2002年6月1日の「お目でたき日々」参照)。
●いっしょに名前が挙がっている、ヴィルヘルム・コーゲ、バーント・フリーベリ、スティング・リンドベリ(北欧系かな)については、後日また調べてみたい。

兵庫県立美術館の「英国ロマン主義絵画展」ではターナー、バーン=ジョーンズ、ピアズリーと一緒にブレイクも展示されている(1月28日(火)〜4月6日(日))。これは千葉県立美術館(2002/08/24〜10/06)、郡山市立美術館(2002/11/22〜12/27)で展示されたもの巡回のようだ。

2003年3月23日

丸ビルで「パーカーの歴史展」をやっているというので先週某日に行ってみた。コナン・ドイルや武者小路実篤、司馬遼太郎らが愛用した万年筆というので、ちょっと足をのばしてみたのだが、なんのことはないホールで販促をやっているだけのこと。香港返還記念の限定品とか、だれそれが調印に使ったペンだとかが並んでいるのだが、夜に行ったら展示ケースに明かりがついていないものがあったり、やる気のないこと。よくよく考えたら、実篤が使ったペンは記念館にあるはずで、少し前に展示で見ているではないか(ほんとうに落ち着け>自分)。パパ・ブッシュがロシアの大統領と軍縮条約に締結した記念のペンなども展示されていて、時節柄考えさせられるものがあった。

●3月20日(木)午前(日本時間)、アメリカがイラクを攻撃。報道はこの日、戦争一辺倒。遠く離れたイラクでこの状態だ。北朝鮮と事を構えたら、日本のマスコミはどうなるのだろうか。太平洋戦争当時の日本を想像する。
●戦争反対と叫ぶことはたやすい。しかし、北朝鮮との兼ね合いもある。だが、無辜の人びとが傷つき死んでいくのだ。無辜と無知。それでは我々は我々じしんの国について何を知っているのだろうか(例その1その2)。日本の今回の報復テロ対策でも、イラクでも、そして北朝鮮でも、国民ひとりひとりが守られるということは決してないのだ。守るべきものは「政府組織」であり、その「指導者」であり「国の誇り」なのだ。

●外環道が大深度地下方式で建設されることになったらしい。土地の所有権は及ばなくても、地下水への影響や地上への排気ガスの問題は残るはず。さらに注意して見守っていきたい。

2001年分の「日々」も月単位に整理済み。着々と整理が進んでいるような、いないような。

2003年3月16日

来年度の展示予定をフライングで紹介

●「あいぼりー」27号(京王線各駅にて無料配布)を配布初日に入手。その中の京王沿線イベントガイドによると、実篤記念館は「書簡展〜新しき村編〜」が4月13日(日)に終わると、次は「自伝『或る男』の青春」(4月26日〜6月1日)が予定されているそうだ。たぶんこれが春の特別展になると思うが、公式ホームページよりも早い情報でちょっとうれしい。テーマが「或る男」とは、これまたおもしろそうだ。


●自宅のPCに、全文検索システムNamazuを導入。思ったよりも簡単だった。これで、これまで作成した文章や書きかけのメモ、素材として保存したwebページなどを一括して検索することができる。より効率的に、よりおもしろい文章が書ければと思う。導入の経過については、「武者組B」の方で書いていく。

2003年3月14日

「TV50年」(ステラムック、NHKサービスセンター)という本で、初めて「あかつき」の写真を見る。昭和38年に放送された朝の連続テレビ小説で、実篤の「暁」などが原作になっている。主人公の老画家を中心に家族が集まる白黒写真だが、「武者小路実篤の作品を軽妙に映像化」というキャプションがついていた。あとは実物を見るには、川口のアーカイブまで行かないといけないかなぁ(物好き)。

●青空文庫で有島武郎の「かんかん虫」が公開されていた。「電子化された白樺派」を更新。著者ページが移転したのも修正。

●電子メールの受信箱を見ると、「あのねメール通信」というのが届いていて、すわ、「“あるね”ニュース」にライバル出現?!と、ちょっとドキッとした。よく見ると絵本で有名な福音館書店のメールマガジンだった(落ち着け>自分)。申し込んだのはおぼえていたが、マガジン名まではおぼえていなかった。開いてみて、ああ、これね、たしかに登録したおぼえがあると一安心。

●かぼちゃの絵と言えば、実篤と思っていたが(茄子とかも可)、これからは草間弥生になるかもしれない。湯河原に草間の作品を展示した「かぼちゃ美術館」がオープンしたらしい(via 「museum topics No.255」2003/3/13)。(参考:神奈川新聞の記事

2003年3月9日

「歴史読本」4月号(新人物往来社)の特集は「華族134年の真実」。総覧的なものではないので武者小路家も出てこないが、「華族のお墓アルバム」というコーナーで勘解由小路家が出ていた。菩提寺は 東京・港区の善光寺(地下鉄表参道駅近く)だそうだ。当主第11代資淳(すけあつ)氏は一時実篤の養子になっていたと紹介されていたが、どこかで読んだ気がするが詳細は失念した。気になって調べると、1999年10月17日のメールニュースで書いていた。内容はまったく覚えていなかったが、書き留めておくものだ。
●巻頭には「復活する華族社会」(佐藤朝泰)という文章がある。文中、細川・甘露寺という名前が見えたので、再度チェックが必要か。

「文學界」4月号(文藝春秋)では「昭和恋愛思想史(3)『失恋小説』の誕生」(小谷野敦)の冒頭に、「お目出たき人」が登場する。今では花袋の「蒲団」がエポックメーキングと目されているが、「お目出たき人」こそ失恋小説としてその後の文芸に大きな影響を与えたとのこと。しかしながらそれ以上の言及はなく、久米正雄の漱石の娘への求婚話になっていく。


●久しぶりに「総目次」のページを更新。

2003年3月8日

『爆笑問題の死のサイズ(下)』(扶桑社文庫)

Yahoo!ブックスで「武者小路実篤」を検索すると上位に出てくるので、図書館で取り寄せてみた。2000年6月に扶桑社から出版された同名の単行本の文庫化(2002年7月30日初版)で、「死のサイズ」とは新聞の死亡記事の大きさから来ている。マンガ家、作家、俳優、総理大臣と取り上げられているが、1人あたり4ページ程度とページ数が少ないので、そう気の利いたことは書いていない。「志賀直哉・武者小路実篤」の項もとりたてて書き留めておくことはない。3行しかない志賀の略歴を回覧雑誌「望野」から書き起こしたり、武者を「奔放な作風のエッセイを多く執筆」と書いたり、なんだかちょっと変。
●それよりも高村光太郎の項で、光太郎と智恵子の関係に、太田光が自分と妻を重ねている(自分よりお笑いの才能があるのに、事務所の社長をさせている)のが興味深かった。夫婦で八百屋をやっていてもお互いにジェラシーを感じないと思うが、芸術だとそうはいかないと話を進め、「光太郎は智恵子と八百屋みたいな夫婦になりたかったのかもしれないぜ。少なくとも光太郎はそういう幸福に憧れを持っていたと思うよ。(略)嫉妬とかそういうものを一度抜き去った、友情めいた境地に行き着きたかったのかもしれないな。」という太田のコメントでこの項をしめくくっている。

「ゴッホのある美術館 世界一周完全網羅110館」(アエラ)

●生誕150年(3月30日)を前に、ゴッホの作品が世界のどの美術館に所蔵されているかをまとめた記事が、「アエラ」(2003年3月10日号)に出たので、数年ぶりに同誌を買った。国別に美術館名と所蔵作品名が記されていて、代表的な作品には小さいが写真もついている。もっとアカデミックなまとめ方もあるとは思うが、きれいに整理されていて概観するにはちょうどいい。
●日本も損保ジャパンの「ひまわり」をはじめ、先日落札された「農婦像」など計9館。1枚ずつ写真も出ている。国内にもこれだけあったのだと、ちょっとびっくり。「医師ガジェの肖像」もちらっと触れられているが、公的に購入したものではないとはいえ、なんとなく責任を感じる。

2003年3月3日

●昨日追加した全文検索を試しながら、検索結果にテキストファイルが多いのが気になり、数を数えてみた。テキストファイルとHTMLファイルは、ほぼ同数の約200ファイルずつ。ファイル容量は、テキストファイルが約500KB、HTMLファイルが約1MB。もっとHTMLの方が多いと思っていたが、拮抗しているのがおもしろい。

メールニュース 2003/02/26号で紹介した、『愛慾・その妹』のオンデマンド出版だが、新潮社でも広告が出ていた。同社のPR誌『波』2003年3月号だが、「欲望に苛まれ、劣等感や偽りの愛に打ちひしがれた男の暗黒の心理劇」というコピーがしっくりこない。「愛を見つめる小説フェア」と称して、田村泰太郎『肉体の門・肉体の悪魔』、吉行淳之介『美少女』、三浦哲郎『愛しい女』などといっしょに並べたから、こんなコピーになったのだろうか。
●造本・体裁が載っていたので紹介しておくと、四六変形判(天地191ミリ×左右133ミリ)、三方断ち切り表紙、本文9.5ポ43字×18行。オンデマンド用に本文を組みなおし、通常の本と同じ書体を使用とのこと。表紙は作品名のみのシンプルなものになりそうで、文庫本のような実篤みずからの装幀にはならないようだ。
●『愛慾・その妹』デジタル出版の方は、電子文庫パブリにも出ていた。今回発行の6冊の中でもファイル容量がとりわけ小さく、85KBというのがちょっと気になる。

●記念館には関係ないが、今日と明日は深大寺のだるま市。ちょうど記念館の休館日と展示替え休館に重なってしまって残念だ。せっかく多くの人がつつじヶ丘を訪れているのだが。

「文藝春秋」3月号は「日本語大切」という特集だったが、広告を見ると志賀の名前があったので立ち読みしてみた。「志賀直哉という手本」(大久保房男)がそれだが、昔の文士はいかに苦労して文章を書いたかという思い出話レベルで、見るべきものはない。

「10daysbook」に岩波文庫が参加したとは最近聞いたが、見てみると有島武郎の『小さき者へ・生まれいずる悩み』(300円)もラインナップに加わっていた。漱石、鴎外、藤村等々、かなりの数が近刊も含めて登録されていて、漱石では小説に加えて、日記、書簡集、俳句集、文学評論も予定されている。データは独自のebook形式。

●また、Web新潮で連載された「生まれ出づる悩み」もサイトが整理されたので、掲載場所がちょっと変わっている。

2003年3月2日

「美はどこにも」展、見学

●実篤記念館の「美はどこにも」展を最終日にようやく見学してきた。後半生の美術関係を中心にした展示。美術論、淡彩画、油彩画。今日は天気も良くてあたたかく、午後の陽が梅満開の中庭を通して室内に差してきて、なかなか幸せな感じ。
●白梅がとても良い香り。休憩室には子ども用の鳥の絵本や図鑑があり、ムクドリやメジロ、シジュウカラなど実篤公園にやってくる鳥に付箋がつけてあった。それを見てから公園に出ると、どうしても鳥に目が行く。春を迎えて、鳥の鳴き声もひときわ高くなってきている。気がつくと実篤公園は高い木が多い。鳥たちにもとてもよい場所なのだろう。そんなことを気づかせてくれる心づかいに、さすがと思う。
●それから、記念館友の会の登録を更新してきた。4月始まりの年度単位なので、入られるならば3月中をおすすめする。「友の会ニュース」や展示の案内などが送られてくるので、興味のある方はぜひどうぞ。


●去年の「おめでたき日々」も、今年と同じ月単位のファイルに分割した。たくさん書いた月、全く書かなかった月とばらつきがけっこうある。下半期は少なめ。
●それから、サイト内全文検索の違うツールを入れてみた。動作はしていると思うが、テストとして下に検索用窓をつけておく。お使いになって、不都合な点があれば、お知らせください。

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