特定調停について

経済的に破綻するおそれのある債務者(特定債務者)の経済的再生をはかるため、特定債務者が負っている金銭債務にかかる利害関係の調整を促進しようとするもの

多くの借金をかかえ、約束どおり支払っていくことができない場合などで、可能な範囲で返済を続けたいとき、債権者と話合い、返済方法の調整をしていく手続きです。裁判所の調停委員会が債務者・債権者お互いの意向を聞き、調整していきます(債権者が1つの場合・法人でも利用できます)。

(利息制限法に基づく債務額の見直し、毎月の可能返済額などを考慮し、調停成立の可能性の見極めも必要。おおよその基準 債務総額の3%程度を毎月返済していけるかどうか)雑談 heisei12.htm

*利息制限法を超える部分の利息は、もともと支払う必要のないものです。利息 risoku.htm

手続

(事前に簡易裁判所で相談。手続、書類の書き方、添付書類など(手続面)を教えてもらえます。収入に対し、債務の額があまりにも大きく、調停成立の見込みがたたないような場合、破産を示唆されたりする場合もあります。)

どの簡易裁判所へ申立をするか(できるか)。基本的には相手方(債権者)の所在地(支店含む)の簡易裁判所。相手方所在地がそれぞれ異なる場合、管轄が一番多数(相手方)になる簡易裁判所。ただし、裁判所の裁量の面―「事件を処理するために適当であると認められるとき」あり。

1、申立。

2、債務者(申立人)がまず裁判所に呼び出され、調停委員と話をする(債務者の事情を聴取し、返済可能額を確定)。

調停委員は、おおむね、債務者(申立人)の返済の意思が確固たるものかどうかを確かめるためか、「厳しいこと」を言います。かなり厳しいことを言われるケースがありますが、それにめげずに前向きに(手続をよく理解して)手続きを進めていけば、結果として、それ程でもない(良い結果が出る)ケースが多いです。

3、次に、各相手方が裁判所に呼び出され、調停委員と話をする。

前もって、相手方(消費者金融会社など)にも取引経過のわかる書類を提出してもらう。

借受金の場合、原則、利息制限法で計算し直し、債務額を確定し、弁済額を決めていく。

将来利息のカットまで要求できるのは、特定調停の「支払不能に陥るおそれのあるもの」等、経済的破綻に瀕しているという要件があるからです。

合意ができれば、調停成立。

(調停が成立すれば、その場で、直ちに1回目の返済を求める債権者もいます)

合意がどうしてもできない場合、不成立・17条決定。

調停成立の見込みがない場合、裁判所が事件解決のため、調停に代わる決定をする場合があります。それを17条決定(民事調停法17条)といいます。その決定に対し当事者から所定の期間内に異議がでなかった場合、調停が成立したのと同様の効力が生じます。信販会社などは、当初から、17条決定に服する旨の通知をしてくることがあります。

(裁判所により、債権者と電話で合意を取りつけ、その上で、17条決定を出すというところもあります。現在、17条決定は、広く利用されています。17条決定は、民事調停法17条のことです)

大阪簡易裁判所の様式(書式は裁判所でもらえます)

1、申立書(各相手方ごとに必要)

記載内容

申立人・相手方

相手方が、会社の場合、本店・商号・代表者名の記載が必要

実際に借りた、もしくは返済しているところの営業所(支店)、支店名、電話番号

連帯保証人は、利害関係人として参加が可能(調停委員会の許可要)、もしくは申立人として。

申立の趣旨

「債務額を確定したうえ債務支払方法を協定したい。特定調停手続により調停することを求める」とする。

紛争の要点

債務の種類(借受金・保証債務など)、保証人・担保の有無

借受金額等(借受年月日・借受金額・利息・損害金・保証人など)いつから借入れをしているかが重要

返済状況・残高

添付する書類を記載

相手方が会社の場合、原則、資格証明書(代表者事項証明書・会社登記簿謄抄本)が必要だが、裁判所によっては、省略を認めているところあり(大手の消費者金融会社などについて)。

貸金業であれば、登録先の財務局や、都道府県の金融課に問い合わせれば、本店・代表者は教えてもらえる。登録貸金業者検索 http://clearing.fsa.go.jp/kashikin/index.php

関東財務局 048−600−1151

近畿財務局 06−6949−6371

大阪府金融課 06−6941−0351(総務)

兵庫県金融課 078−341−7711

申立書については、正(裁判所用)・副(相手に送付する分)で2通作成、自分の控えを含めると3通作成(コピーすればよい)。

ただし、副本は、正本と同様、押印が必要。

添付書類

借用証書・金銭消費貸借契約書(写し)

請求書(写し)

領収書(写し)

その他、書類を要求される場合があります。

2、特定債務者の資料等

財産について、負債について、収入や生活状況を簡潔に記載

希望する調停条項案

例)相手方において、利息制限法所定の範囲内で債務額の確認に応じてもらい、私(申立人)の月々の支払い可能な額の範囲内で、分割払いで返済していきたい。など

借金の使途、借金するに至った経緯、事情等を簡潔に記載

3、家計表

毎月の支払い可能額を算出(支払原資を明らかにする)

4、関係権利者一覧表

関係権利者とは、「特定債務者に対して財産上の請求権を有する者及び特定債務者の財産上に担保権を有する者」

相手方になっているいないに関わらず、関係権利者をすべて記載する。

(特定調停の場合、倒産処理の面があるので、原則、関係権利者は、すべて相手方とする)

添付書類として給与明細書写し(2ヶ月から3ヶ月分)―収入のわかるもの、その他、特定債務者であるかどうか判断するため(また、支払原資を確認するため)家計・財産に関する書類(具体的には、同居者の給与明細書写し、賃貸借契約書写し、家賃公共料金領収書写し、預貯金通帳写し、生命保険解約返戻金証明書、不動産登記簿謄本など)が必要になる場合があります。

申立費用は、一般的には、1社あたり810円(収入印紙300円、郵券510円)

郵券の組合せ10円×3、50円×3、80円×3、90円×1

(収入印紙の300円は、残債務額×0・05が基準となり、相手方1社あたり、残債務額100万円以下であれば300円となります)

相手方が会社の場合、原則、資格証明書が必要。法務局での資格証明書(代表者事項証明書)取得費用1通1000円。

(大阪簡易裁判所)

(神戸簡易裁判所 郵券 1000円×1、50円×1、10円×5、80円×5×相手方数、印紙 相手方ごと300円)

書籍案内

「特定調停法完全実務マニュアル」有村佳人 他 著・日本法令 発行

「多重債務者のための生活再建ハンドブック」クレサラ問題と行政研究会 著・全国クレジットサラ金問題対策協議会 発行(事務局 06-6222-2031)

注意)特定調停では、利息制限法の制限利息での再計算による減額は可能ですが、個人再生と異なり、元本カットまで要求することは困難であり(比較的負担大)、また成立により相手に債務名義を取得させることになり、滞納すれば、強制執行を受けることとなる危険性があるため、十分支払っていける額で調停を成立させる必要があります。特定調停は、数ある債務整理方法の中の一つです。shakkinnseiri.htm