2003年5月24日の日本考古学協会総会で配布された文書(会告)である(検証報告書にも掲載されている)。既に広く配布されているが、公益性に鑑み、ここに掲載する。本文書は前半と後半で性質が異なる。前半は捏造であった遺跡の調査関係者による発表要旨が主であるが、後半は客観的な研究動向紹介が主である。
●表中に記載された執筆者等は、各文章の文責者であるが、問題の資料をどういうスタンスで記述したかは個々の文献に当たるしかなく、その態様は一律ではないだろう。本文書(会告)の主目的は、協会として協会発行物に含まれる問題資料を列挙して「学術資料」として使えない部分を示すことにあると考えられる。具体的な批判を行なう場合は、個々の文献に当たって頂きたい。
●特に、☆印は部分的に捏造関連資料を含む文献であり、それ以外の部分に問題は及ばないとされている。また後半に示された『年報』31〜52の「動向」紹介と『日本考古学』6については、動向紹介の都合上ふれざるをえない事情があるし、会告でも資料としての「注意」喚起にとどまっている。それぞれ本文書中の但し書きの通りである。
●[03.6.2追記…03.6.13岩手追加]年報52の発行は2001年5月1日であるから、捏造発覚(2000年11月5日)後である。年報52の北海道・岩手県・宮城県の動向は、既に捏造発覚を反映して記述されている。検証報告書の正誤表にも載ったので、ここでは北海道・岩手県・宮城県については打消線<del>を適用しておく。またそれらの原文の該当部分を別ファイルに示しておく。一方、他の県の記述は未だ「捏造発覚」を無視している。これは入稿や校正のタイミングの問題かもしれないが、当初の捏造告白が2箇所(総進不動坂と上高森)に留まるという事情の反映かもしれない。いずれにしても、年報の動向紹介は、地域における主な発掘調査が、実施された事自体を羅列的に紹介したものが多く、執筆者といっても、いわばその年度の執筆当番としての役割にすぎない。こうした注釈にも関わらず、風評被害の可能性が残るかもしれないので、ここでは年報「動向」に関しては執筆者名を出さないことにする。☆印のついた文献も同様の扱いとする。  →メッセージフォーム
●[03.6.2追記]また「会告」では指摘されていないが、年報には旧石器時代研究動向の英文版も署名入りで掲載されている。当然「前・中期旧石器」への言及部分は訂正の対象になるので、注意されたい。
●[03.7.2追記]年報49の動向10 群馬県を独自に追加(内容上、明らかに捏造関連)。


日本考古学協会会告

旧石器発掘捏造問題関係の日本考古学協会発行図書の取り扱いについて

日本考古学協会委員会

以下の日本考古学協会刊行図書の報告・論文・記事等は日本考古学協会前・中期旧石器問題調査研究特別委員会や関係自治体等による検証の結果、捏造と判断された事実や資料に基づくものであり、旧石器時代研究の成果およびその成果に基づく歴史記述としては適正でないと判断されますので、日本考古学協会は、旧石器時代研究資料としてこれらの事実や資料を利用してはならないものとします。 (2003年5月24日)

『日本考古学協会総会研究発表要旨』・『大会報告』および『資料集』

☆印は一部に捏造資料を含むもの
 発行総会・大会表題発表者・報告者
 1981第47回総会仙台市山田上ノ台遺跡発見の前期旧石器岡村道雄・早坂春一9〜10
 1982第48回総会座散乱木遺跡第三次発掘調査岡村道雄10
 1984第50回総会宮城県多賀城市志引遺跡の調査−特に前・中期旧石器文化について鎌田俊昭8
 1985第51回総会青葉山B遺跡の調査成果須藤隆・梶原洋・佐川正敏13
 昭和60年度大会宮城県の"前期旧石器文化"と中国の中期旧石器文化シンポジウム(東アジアと日本)(1)日本旧石器文化の起源と東アジア2〜3
  昭和60年度大会I日本旧石器文化の起源と東アジア『東アジアと日本』研究発表参考図録日本考古学協会昭和60年度奈良大会実行委員会1〜3
 1986第52回総会宮城県古川市馬場壇A遺跡の調査鎌田俊昭・藤村新一12〜13
 1988第54回総会日本における『前期旧石器』研究の現状−多摩ニュータウンNo.471−B遺跡の成果舘野孝10〜12
1990第56回総会富沢遺跡(第30次調査)における旧石器時代の生活環境22〜25
 1991第57回総会宮城県築館町高森遺跡の調査について石器文化談話会・鎌田俊昭・藤村新一・梶原洋9〜11
  1991年度大会前期旧石器時代−馬場壇A遺跡−シンポジウムI:旧石器時代における人間活動の復元山田晃弘8〜10
 1991年度大会後期旧石器時代−富沢遺跡−シンポジウムI:旧石器時代における人間活動の復元11〜12
 1992第58回総会福島県西白河郡西郷町大平遺跡の調査−4.5万年前の旧石器時代の遺跡−柳田俊雄11〜13
 1995第61回総会日本列島旧石器時代前期文化の系譜−宮城県築館町上高森遺跡の調査から−藤村新一・鎌田俊昭・横山裕平13〜16
  第61回総会山形県尾花沢市袖原3遺跡第2次調査梶原洋・藤村新一・鎌田俊昭・横山裕平・藤井誠二17〜20
 1996第62回総会上高森遺跡第3次調査−石器群形成に関わる石材供給と移動・補給システム−テーマ発表:生産から流通・使用・廃棄まで藤村新一・鎌田俊昭・横山裕平・梶原洋13〜17
  第62回総会岩手県岩泉町ひょうたん穴遺跡藤村新一・菊池強一・鎌田俊昭・梶原洋・熊谷常正・横山裕平63〜64
 1997第63回総会山形県尾花沢市袖原3遺跡第三次調査梶原洋・藤村新一・鎌田俊昭・横山裕平43〜46
  第63回総会群馬県北群馬郡子持村加生西遺跡−10万年前の中期旧石器時代の遺跡藤村新一・関谷晃47〜50
 1998第64回総会岩手県岩泉町ひょうたん穴遺跡−1996・1997年度調査について藤村新一・菊池強一・鎌田俊昭・梶原洋・熊谷常正・横山裕平27〜29
  第64回総会東北地方南部の前期旧石器時代の様相−福島県二本松市原セ笠原遺跡の調査−柳田俊雄・藤村新一30〜33
 1999第65回総会北海道新十津川町総進不動坂遺跡の調査−着柄痕を有する斜軸尖頭器について−長崎潤一・藤村新一・鎌田俊昭・梶原洋12〜15
  第65回総会ひょうたん穴第4次発掘調査の成果について藤村新一・鎌田俊昭・梶原洋・横山裕平16〜19
  第65回総会上高森遺跡第4次調査について−日本最古の石器制作について−藤村新一・鎌田俊昭・梶原洋・横山裕平20〜23
  第65回総会宮城県中島山遺跡の調査について−山形県尾花沢市袖原3遺跡との遺跡間接合について−藤村新一・鎌田俊昭・梶原洋・横山裕平24〜27
  第65回総会関東地方の中期旧石器文化関谷晃28〜31
 2000第66回総会北海道における前期旧石器発見とその成果−総進不動坂遺跡第2次調査−長崎潤一・藤村新一・鎌田俊昭・梶原洋21〜24
  第66回総会ひょうたん穴第5次調査について藤村新一・鎌田俊昭・梶原洋・横山裕平25〜29
  第66回総会上高森遺跡第5次調査について藤村新一・鎌田俊昭・梶原洋・横山裕平30〜32
  第66回総会山形県尾花沢市袖原3遺跡・6遺跡−第5次発掘調査の成果−藤村新一・鎌田俊昭・梶原洋・横山裕平33〜34
  第66回総会宮城県色麻町中島山遺跡−第2次発掘調査の成果藤村新一・鎌田俊昭・梶原洋・横山裕平35〜36
☆印については、当該の事実や資料に関して学術的な意味がないのであって、会告はこの点にのみ関わることです。それ以外の部分には及ばないことを念のため申し添えます。

『日本考古学年報』掲載の発掘調査概(略)報

☆印は一部に捏造資料を含むもの
 発行号数表題執筆者図版番号頁・行
 198031・1978年度4−16鹿原D遺跡岡村道雄 157−16〜31
198434・1981年度宮城県山田上ノ台遺跡189〜92
 198738・1985年度宮城県馬場壇A遺跡東北歴史資料館・石器文化談話会(文責・柳澤和明)4346〜354
 198940・1987年度東京都多摩ニュータウンNo.471−B遺跡の調査成果舘野孝11393〜396
199041・1988年度宮城県富沢遺跡9・10415〜419
 199546・1993年度宮城県栗原郡築館町高森遺跡阿部博志 423〜435
 199647・1994年度山形県尾花沢市袖原3遺跡梶原洋・藤村新一・鎌田俊昭・横山裕平・藤井誠二 489〜499
 199748・1995年度宮城県栗原郡築館町上高森遺跡藤村新一・鎌田俊昭・横山裕平・梶原洋4472〜476
☆印については、当該の事実や資料に関して学術的な意味がないのであって、会告はこの点にのみ関わることです。それ以外の部分には及ばないことを念のため申し添えます。

日本考古学協会創立50周年記念講演会

 1998『21世紀への考古学』岩宿から上高森まで芹沢長介23頁18行目〜25頁


また、以下の『日本考古学年報』の動向等の旧石器時代関係記事ならびに『日本考古学』第6号「日本考古学の50年」の一部には捏造問題の検証結果から見て、今日では不適当と考えられる記述がありますので、注意されるよう願います。

『日本考古学年報』

号数発行年タイトル
31・1978年度版1980発掘と調査 4 宮城県 動向
32・1979年度版1982発掘と調査 2 宮城県
33・1980年度版1983先土器時代研究の動向
  各都道府県における発掘調査の概要 4 宮城県
34・1981年度版1984旧石器時代研究の動向
  各都道府県における発掘調査の概要 5 宮城県
35・1982年度版1985旧石器時代研究の動向
  各都道府県における発掘調査の概要 5 宮城県
36・1983年度版1986旧石器時代研究の動向 東日本
  各都道府県における発掘調査の概要 4 宮城県
37・1984年度版1986旧石器時代研究の動向
  各都道府県における発掘調査の概要 4 宮城県
38・1985年度版1987旧石器時代研究の動向
  考古学と自然科学研究の動向
  総括
  各都道府県における発掘調査の概要 4 宮城県
39・1986年度版1988旧石器時代研究の動向
  考古学と自然科学研究の動向
  各都道府県における発掘調査の概要 4 宮城県
40・1987年度版1989先土器時代研究の動向
  各都道府県の動向 4 宮城県
  各都道府県の動向 13 東京都
41・1988年度版1990先土器時代研究の動向
  各都道府県の動向 1 北海道
  各都道府県の動向 4 宮城県
  各都道府県の動向 10 群馬県
  各都道府県の動向 13 東京都
42・1989年度版1991旧石器時代研究の動向
  総括
  各都道府県の動向 4 宮城県
43・1990年度版1992総説
  旧石器時代研究の動向
  各都道府県の動向 4 宮城県
  各都道府県の動向 7 福島県
44・1991年度版1993学際研究
  旧石器時代研究の動向
  各都道府県の動向 4 宮城県
  各都道府県の動向 7 福島県
45・1992年度版1994旧石器時代研究の動向
  各都道府県の動向 4 宮城県
  各都道府県の動向 7 福島県
46・1993年度版1995総説
  学際研究
  旧石器時代研究の動向
  各都道府県の動向 4 宮城県
  各都道府県の動向 6 山形県
  各都道府県の動向 7 福島県
47・1994年度版1996学際領域研究
  旧石器時代研究の動向
  各都道府県の動向 4 宮城県
  各都道府県の動向 6 山形県
  各都道府県の動向 7 福島県
48・1995年度版1997旧石器時代研究の動向
  各都道府県の動向 3 岩手県
  各都道府県の動向 4 宮城県
  各都道府県の動向 7 福島県
49・1996年度版1998旧石器時代研究の動向
  各都道府県の動向 3 岩手県
  各都道府県の動向 4 宮城県
  各都道府県の動向 6 山形県
  各都道府県の動向 7 福島県
  各都道府県の動向 10 群馬県(03.7.2独自追加)
50・1997年度版1999旧石器時代研究の動向
  各都道府県の動向 3 岩手県
  各都道府県の動向 6 山形県
  各都道府県の動向 7 福島県
  各都道府県の動向 10 群馬県
51・1998年度版2000旧石器時代研究の動向
  各都道府県の動向 1 北海道
  各都道府県の動向 3 岩手県
  各都道府県の動向 4 宮城県
52・1999年度版2001旧石器時代研究の動向
  各都道府県の動向 1 北海道(捏造への言及)
  各都道府県の動向 3 岩手県(検証への言及)
  各都道府県の動向 4 宮城県(捏造への言及)
  各都道府県の動向 6 山形県
  各都道府県の動向 7 福島県

『日本考古学』

以下の『日本考古学』第6号「日本考古学の50年」の一部には捏造問題の検証結果から見て、今日では不適当と考えられる記述がありますので、注意されるよう願います。
『日本考古学』第6号「日本考古学の50年」1998戦後50年の日本考古学をふりかえる横山浩一
列島初源の人類文化を追う戸沢充則
地域考古学の歩み 東北工藤雅樹
地域考古学の歩み 関東石井則孝
日本考古学協会略年表勅使河原彰


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