項目辞書・総合的な考古学データベースの構想

●項目辞書(1982年科研費)というものがあります。これは、総合的な考古学データベースの構想(遺跡・遺構・遺物・図面・写真・収蔵・調査組織・行政文書・文献の9データベースに分かれる)の所産でした。今となっては、あまりにも早すぎ、大きすぎ、それゆえに素朴な構想でした。議論の詳細はカバーできませんが、徹底的なコード化を目指しており、コードブックとしての項目辞書が考えられたわけです。これは技術的には必然性のあることで、どんな分野であれ、コードブックの研究は必要なものです。ここでは、遺跡データベースの項目辞書を紹介します(1991)。項目のコンテンツも、しばしばコード化されていますが、時代、遺跡、遺構、遺物については、分類コードを後の方に掲載しておきました。項目番号と項目名は、原文ママです。

●利用可能なコンピュータ技術・思想・環境は大きく変化し、時代は変わってしまいました。現在の目でみれば、この考古学データベース構想には綻びが見えるかもしれません。内容の検討に加え、コード化の及ぶべき範囲についても、運用の面からも研究が必要でしょう。コード化は、用語の規定や数量化には有効ですが、問題は目的です。またユーザーインターフェースとしてのコードは、使いづらいものです(現在の技術やセンスを以てすれば、何とでもなりますが)。なるべく分野を分かち、各々その分野の専門家の動きに委ねるべきでしょう。細部まで規定するというスタンスは、無理があります。MML(電子カルテ、あるいは医療情報システムの情報交換規格)や、ヨーロッパ主体のコアデータスタンダード(共通データ規格)は、参考になります。

●重要なことは、この種の研究が必要だということです。


遺跡データベース・項目辞書(1982)

項目番号項目名具体的には...補足...
0201キーワード 特記事項のキーワード版
0202コメント 平文での特記事項
1101遺跡番号6桁、冒頭2桁は西暦各遺跡、各遺跡群(集合)の各々に付与
1102遺跡調査番号6桁、冒頭2桁は西暦調査毎、年度毎
1103遺跡識別記号英数字の組み合わせ空港の略号と同じ発想
1104遺跡名(漢字)  
1105遺跡名(カタカナ)  
1106遺跡名(俗称)俗称+よみ複数可
1107遺跡番号(集合遺跡) 遺跡群(集合)の固有番号
1108集合遺跡構成遺跡数自然数以上とか以下とか約も可(−、+、?)
1109遺跡認定年月日1982/02/13今なら、1982-02-13
1110遺跡種別コード1〜91.立合、2.確認調査、3.本発掘、8.踏査
1190旧遺跡番号  
1201行政区画コードJISの5桁のコード複数可
1203所在地行政区画内の住所複数可
1204土地所有者コード1〜91.国有地、2.県、3.市町村、4.私有地
1205遺跡指定コード1〜9国指定など、指定日と併記
1206地域メッシュコード8桁第1次〜第3次
1207地図番号−1図葉番号20万分の1地図
1208地図番号−2図葉番号5万分の1地図
1209地図番号−3図葉番号2万5千分の1地図
1301地目コード2桁宅地、公園、道路、畑などをコード化
1302地質分類コード5桁国土数値情報データベース準拠
1303地形分類コード3桁国土数値情報データベース準拠
1304土壌分類コード3桁国土数値情報データベース準拠
1305遺跡位置座標緯度、経度 
1306遺跡標高 (基準高の識別はない)
1401遺跡規模コード1〜9おおよその広さをコード化
1402遺跡現状コード1〜9現存、保存、消滅、未調査、既調査
1501時代区分コード2桁、ないし世紀世紀は記号で細分可能(EML、/、−)
1502遺跡分類コード3桁集落、貝塚、古墳、etc.
1503遺構分類コード3桁住居、柱列、工房、etc.
1504遺物分類コード3桁土器(縄文)、土器(弥生)、etc.

1501 時代区分コード

10旧石器時代30弥生時代56平安時代前期78江戸時代後期
11旧石器時代前期31弥生時代前期57平安時代後期80近代
12旧石器時代中期32弥生時代中期60中世81明治
13旧石器時代後期33弥生時代後期61鎌倉時代82大正
20縄文時代40古墳時代64室町時代83昭和(戦前)
24縄文時代草創期41古墳時代前期67戦国時代84昭和(戦後)
25縄文時代早期42古墳時代中期70近世85平成
26縄文時代前期43古墳時代後期71安土・桃山時代99不明
27縄文時代中期50古代75江戸時代  
28縄文時代後期51奈良時代76江戸時代前期  
29縄文時代晩期55平安時代77江戸時代中期  

1502 遺跡分類コード

111住居・集落116生産遺跡(窯業)121神社・寺院126埋葬
112都城・官衙117生産遺跡(石製品)122国分寺・国分尼寺127交通関係
113貝塚118生産遺跡(金属器)123経塚128軍事関係
114生産遺跡(農業)119生産遺跡(木製品)124その他の信仰関係910散布地・包蔵地
115生産遺跡(製塩)120生産遺跡(その他)125古墳999不明

1503 遺構分類コード

111住居(洞穴・岩陰)133畦畔155埋葬(台状墓)177宝塔
112住居(平地)134灌漑用水路156埋葬(集石墓)178宝篋印塔
113住居(竪穴)135灌漑用水池157埋葬(積石墓)179五輪塔
114建造物(掘立柱)136井堰158埋葬(配石墓)180板塔婆(板碑)
115建造物(礎石)137登窯159古墳181笠塔婆
116穴(柱穴等)138平窯160古墳(内部主体)182石仏
117杭列139炭窯161古墳(葺石体)183磨崖仏
118礫群140採土・採石162古墳(造り出し)184一字一石
119141物原・灰原163古墳(周溝)185磐座石
120土壙142工房164古墳(周庭体)186憑り代
121貯蔵穴143製塩炉165古墳(埴輪列)187祭祀遺構
122144塩田166古墳(墳丘)188
123井戸145溶鉱炉167古墳(横穴墓)189
124環濠146鉄滓等の捨て場168古墳(地下式横穴)190一里塚
125条里147埋葬169火葬墓191関所
126条坊148埋葬(土壙墓)170墳墓堂192石垣
127土塁149埋葬(木棺墓)171積石塚193水門
128基壇150埋葬(石棺墓)172納骨堂194城門
129築地151埋葬(支石墓)173敷石墓195
130152埋葬(甕棺墓)174石槨999その他
131庭園153埋葬(壷棺墓)175木炭槨  
132水田154埋葬(周溝墓)176石塔  

1504 遺物分類コード

111土器(縄文)122土器(陶器)133石製模造品146繊維製品
112土器(弥生)123土器(磁器)134石製容器147骨角器
113土器(土師)124土器(せっ器)135石製装飾品148貝製品
114土器(須恵)125土器(その他)136石製品(その他)149皮製品
115土器(黒色)126土製品137木製品150ガラス製品
116土器(瓦器)127138木簡151動物遺体
117土器(青磁)128埴輪139青銅器152植物遺体
118土器(白磁)129土偶140銅器153鉱物
119土器(緑釉)130石器(打製)141鉄器154人骨
120土器(灰釉)131石器(磨製)142金属器(その他)155自然遺物
121土器(二・三彩)132石器(その他)143紙製品999その他

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