国交省の中期計画に対する意見3通


国交省が道路整備の中期計画に対する意見公募を実施していたので、計3通を送付しました。


2007/4/28送付分

自動車専用道路(高速道路)と並行する国道やバイパス道路が4車線に整備されているように、一般道路(バイパス)へ接続するのが効率的であるとみなせる場合は、高速道路を別個に引くのはいささか無駄があるように思われます。
例えば:圏央道千葉東金2期
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/machoman/jh-chiba/doc018.htm
大和北道路は複数ICの追加や改良と既存道路の連絡、あと少しの延長事業並びに既存国道の立体交差改良だけで間に合います。
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/miskij/nara024d.html

圏央道の千葉(茂原区間)では、自然の豊かな山稜を削るとなると、余計にコストも掛かりますし、自然も損なわれることになるでしょう。 奈良の場合、大和北道路のトンネルを通すことになると、世界遺産に登録されている要件が永久に損なわれる危険性も指摘されています。

また、地域利権者に不当な額の金が流れるような事業の進め方は、財政事情の改善精神にも反することになるのは明白です。 当初の高速道路網の計画は、無制限に高速道路を引いて財政破綻を起こさない理念のために、採算性などを以て厳しく審査していたと聞いていますが、現在は高速道路網に洩れた地域道路を高規格道路網として追加した印象がしています。

そしてこれらは利用実績が、事前の利用見込みを下回っていると聞いています。当初の採算性などを元にした厳しい審査が正しかったと言えるのではないでしょうか。

また、今後の各道路の補修も必要になってくるはずです。これにも金が掛かるようになってくるという意味では未来に借金を負わせる形になりはしませんでしょうか。それも山間部など、高額な事業であればあるほど、震災などでの損傷に対する修復費用もさらに高額になるのではないでしょうか。

PIや、関連する説明会も、事業者(行政)に都合の良い人しか呼ばなかったり、また情報の公開度が低いのは問題でしょう。原発などでは隠蔽体質が指摘され、地域からそっぽを向かれかけていますが、道路行政においてもその轍を踏みかねないでしょう。

本当に問題のない事業であれば、完全に公開できるのでしょう。 住民が本当に必要としているのであれば、米のPI(MTIA)の理念にあるように「あなた方市民がコミュニティエンゲージメントプロセス (Community Engagement Process)においてあなた方の意見を反映させない限り、主催者は責任を果たすことができません。」、 住民主導で事業の必要性を討議してもらうのが妥当と考えます。

全国規模の道路網に位置づけるのであれば、国民主導で必要性を討議してもらうようにしてください。 それによって発生する負担は、住民、国民に掛かるということをしっかり認識してもらえば、事業は必然的に合理的な方向(必要十分・低予算)へと収束していくはずです。

クルマの利用を適度に抑え、鉄道などの公共機関の利用を促進したいのなら、公共機関の料金が、クルマを使うよりも高かったり、好きな時に利用できない、という点を、道路特定財源で少しでも解消していく必要があると思います。

昨今も、地域鉄道の廃線が相次いでいますが、ある路線では、廃止してしまうと、転換バスだけでなく、それまで鉄道を利用するだけで済んでいたはずの世帯もクルマを使うようになり、鉄道と並行する道路がさらに渋滞するという試算が発表され、地域のクルマ利用者も鉄道存続に賛成されています。

外環の千葉区間については、動線を考えると、千葉北道路(国道464号)を松戸へつなげば、成田空港と外環との物流動線をそちらへ回せるという考えもあると思われます。

そうすれば外環の千葉区間の流量がその分減ることになり、道路規模を抑制出来ることになりませんか? このような柔軟な発想で、当初の計画に対する代替案を考えられるようにしてください。

注釈
その後、5月末に都道府県各自治体からの意見が揃って掲載されたのですが、奈良県は「今後補修費用が増えてくる」と雄弁されてました。


2007/6/22送付分

アンケートについては前回送付しましたので、略させていただきます。
Q4について、もう少し具体的に意見を申します。

1.
中間とりまとめは行われないのでしょうか。
注:各自治体からの意見のことだと気づかなかった^_^;)

2.
外環は規模が大きすぎるのも問題だと思います。市川では半地下方式で計画していたものを外部機関に評価してもらったところ、 サービス道路も含めた豪華な構造では環境被害が甚大と判明したとあります。

このような計画案で、各所で環境被害が指摘される今の状況で、建造を見切り発進させた場合、東京大気汚染訴訟がまた起こらないとも限らないと考えられます。
自動車メーカーもまた補償金を支払うことになるのは避けたいと考えるでしょう。

車線の絶対数を半減するなりして総量規制を行い、環境被害を充分に抑制できるようにしたものを複数設置する方向も考えられると思います。

南北往来を複数選定し、それぞれに一方方向の2車線程度の連絡道路を半地下か高架で併設するというものです。これは既存路線が3車線ほどあれば足りますし、 車線の絶対数は4車線+速度抑制+定速通行で環境被害を抑制、というものです。

例えば東京では
武蔵境通り+ひばりヶ丘通り(埼玉県道36号)に南行きを追加
小金井街道+志木街道(埼玉県道40号)に北行きを追加
です。

千葉では、
松戸街道(県道1号)+県道283号(千葉県)に北行きを追加
千葉北道路(国道464号)を設置したうえで船取線(県道8号)に南行きを追加
になります。

速度抑制はETCによる乗り入れ先での課金割引や、違反車には夜間割引の取り消しなどが考えられます。

3.
通行時間の改善比較を示す時は、既存道路の渋滞状況も勘案する必要があると思います。たとえば、圏央道では、R16より短縮されるとありますが、 拝島近辺の隘路を解消しないままで発生している渋滞も含めて通過時間を評価しているのであれば、あまり公平とは言えない気がします。

また、主要道路では信号同調を図り、所定速度・所定容量であれば信号に掛からずにかなりの距離を無停止で通行可能とありますが、 地域によってはまるで逆に信号のたびに停止を強いられている所もあるそうです。

これではいくら圏央道が出来たとしても、該当する道路を利用する地域には圏央道は役に立たないのとほぼ同義となり、 税の使途としても首を傾げざるを得ないのは正直なところです。


2007/7/31送付分

米ではMTIAという主要交通機関投資分析が行われています。
日本の道路計画は、計画を発案した当時の調査技術によって決められたわけなので、最新の調査技術を反映したうえで 再評価することで、計画の廃案も視野に入れた最適化を図られるのではないでしょうか。
調査技術の進歩として、以下のものが考えられます。

・搬送トラックの殆どはETCを搭載していると思われるので、ETCの通行記録を基に、長距離〜短距離の移動を細かく分析できます。
もちろんETCを一般道路に設置して通信すればさらに精度を上げられます。
通行情報の管理に関してはホンダのインターナビのように扱えば問題は少ないでしょう。

・一般道路でも、ナンバー認識を用い、通過時刻を元に、一定区間の通行時間を測定し、おおまかの目安を提示できています。

・信号制御を丁寧に行うようにして、停止時間の短縮が図られた。(JAF MATE今月号で報道)

このことから、再精査を行う意義はあると思います。
この結果、たとえば運送業の過労操業の発覚など、一部には不都合・不利益な情報が発生することも予見されますが、これらは是正し、 労務環境を向上させていく機会とするものであり、隠蔽・放置するものではないでしょう。

別部署では鉄道搬送に対する助成も行っています。省内の縦割り体質を解消すれば、もっと効果的な交通体系を構築できるでしょう。

圏央道では健全な形で話し合いを行ってきたのかが疑わしいと感じます。
最近になり、別の事案(外環道など)はPIの形でいくつか実践されてきてはいますが、交通分析の精度が粗く、先の鉄道搬送などを組み入れていないなど、 表面的・形式的・矮小的なものに留まってきているきらいがあります。
そもそもMTIAの概念に則った正確な情報がきちんと提供されていないようでは、世論誘導と批判されてもおかしくはないでしょう。

杜撰な事前調査で甚大な被害を引き起こし、その後の操業再開さえも、新たな断層の発見などにより絶望視されている柏崎原発を教訓にされることを希望します。

大和北道路に関しては、環境アセスメントが国交省の下請け機関によって行われている事が判明し、ユネスコが求めている「第三者機関」に反していたり、 秋田市の市街縦貫トンネルは地盤沈下の公表を3年も黙っていたりと、国民どころか国際面でも信頼を得られない対応が繰り返されています。

ちなみに、圏央道の啓蒙PRでは外国と比べて環状道路が不足していると説明していますが、有料道路だけで比較しているのでしょうか、 フランスの環状道路は一部は無料なので、R16や環7、環8なども含めて評価するのが妥当と思います。

そのような恣意的な進め方では、各事案においても心情的な反感もあり、反対意見が絶えないのは当然なのではないでしょうか。

電子機器の中古品販売に関するPSE法では、不手際があったと経産省が謝罪していましたように、非があればきちんとわびるようにし、 信頼関係を構築するようにして欲しいです。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0707/17/news088.html

圏央道に関しては、「自然は損なわれるが、首都圏の環境は改善される。」と平気で主張する人も見られますが、そのような人が出現するに至った背景には、 双方の歩み寄りが殆どなく一向に進行しない現状に対し、反対者に対する苛立ちに鬱屈し、独自の理屈を考案してきたものがあると察します。

これは自然に配慮しようとしている各関係者の意欲を萎えさせませんか。
本来は、「自然を損なわずに、首都圏などの交通環境を改善する」方法を、皆できちんと考えていくものでしょう。
それを他方を損ねて良いと言わんばかりの世論を醸成させてしまうのは、正常な社会とは思いにくいです。

これらを踏まえて、既存計画の「見直し」も中期計画に組み入れてください。
手前味噌ですが、千葉県の健康福祉政策では、いったん発表した計画に対し、「見直し」も含めた意見交換会を実施していました。

双方の歩み寄りの象徴的な例としては、成田空港ではないでしょうか。
会談を行うことによって、不当な反対団体は自然に離れていったように感じています。三番瀬問題も、円卓会議を行うようになっています。

どうぞ、隠し事のない情報公開をもとに、国民の信頼を名実とともに得られるようにしてください。


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