横田<miskij>萬や 高円山から見て考える


公開されなかった2点

2004年5月、「日本の道と街並みを考える会」から報告書が届く。
締め切り当日(2003年9月15日)にメールで送付した4点は、現在の薬師寺全景と朱雀門の北側から東方を見た景色と、それぞれに換気塔を推定で書き加えたものです。
薬師寺は"奈良の景観を考える(2003/8/3)"のトリミング範囲を変更したものなので、そちらを見ていただくとして、朱雀門はこんな感じ。

未来の朱雀門付近

事務局の判断で非公開とされたものとは別の写真を加工しました。ちなみに応募に際しての写真の加工などについては規定にはありませんでした。
なお、旧・奈良そごうの建物の軒高は30.5m、最高の高さは30.95m(当該地域の高さ制限は31m)だそうです。
これは現在入居しているイトーヨーカドーの社会文化開発室から教えていただきました。

シールド方式の盲点

「若草山から見て考える」では地下40m案について触れており、実現性はほとんどゼロです。
では地下5m案はどうかというと、地上に出る区間はどうしても「開削方式」にならざるを得ず、この区間が平城京のすぐわきになります。
地上に出る区間が「開削方式」になることは、大手K社の最新の工法リリースでもはっきり明示されています。
しかし、「開削方式」において、単純とはいかない地下水の流れを完全に保護できると公言した会社はあるのでしょうか。もし、そうならば、委員の報告書に、学会での発表論文や、会社のリリースなどの出典がきちんと記されていいはずです。
もちろん、「絶対」であることが前提です。
それが出来ないことは、ユネスコの「決議案」で「地下水位に影響を与えないことを確保」することを求められていたのが、 日本政府の動議によりかなりトーンダウンされた「決議文」からも判るように、明らかにされています。
本当に影響を与えないという自負があるのなら、日本政府は動議を掛ける必要もなかったはずですし、決議案のままになったはずです。
これで地下水脈を完全に守れるという保証はどこにもない…とは早計でしょうか?
ちなみに遺産保護条約の中には、「損傷があれば補償する」という一文も記載されていますが、もし木簡などが消失してしまったら、どういう形で補償するのでしょうか?木簡もどきを作り、それを埋めてはい1300年、という訳にはいかないでしょう、そんなことしたら捏造もいいとこです。そんなのより、まずどういう形で補償できるのか説明しておくものと思います。物理的・金銭的に可能な、住居の補償とは訳が違うのは誰の目にも明らかと思います。

もう1つの景観破壊

地下40m案、地下5m案にしても、南側については「高架になる」のをうっかりしていたのですが、若草山・高円山から見える景観は、 今のところは八条のJRと佐保川をまたぐ連続橋が目に入るだけですが、これがずらっと郡山ICまで連なるんじゃないでしょうか?
高円山からの景色はこんな感じです。(谷さんが撮られたものを分けてくださいました。ありがとうございます)

高円山からの景色

八条高架の付近をアップしてみました。

八条高架は肉眼で見えます

郡山は十字型ジャンクション?

さらにもう少し南に下り、郡山で西名阪と交差するわけですが、このジャンクションがどういう構造物になるのか、も考えたほうが良いのではないでしょうか? 奈良に近い所では、第二阪奈道路と阪神高速、近畿自動車道が交差する東大阪ジャンクション、第二京阪道路と京滋バイパスが交わる久御山ジャンクション、南阪奈道路の美原ジャンクション。関東では外環の三郷ジャンクションですが、地図上では直径300mになります。
十字ジャンクションだと道路の交差が2重にならざるを得ないようです(その上、既存のインターチェンジとの兼ね合いも出るんですよね?)。T字ジャンクションなら1重で済みます。
南阪奈道路から降りて美原JCTの下へ出た所です。このような東大寺よりも大きく、広範囲に渡り圧迫感をもたらすような建造物が、果たして奈良にふさわしいのか、はなはだ疑問です。

美原JCT

東回り案の南半分の処方

公聴会では、東回り案の南半分(須坂〜郡山IC)が非現実的だと述べてしまったのですが、これとは別に名阪国道の小倉付近への広域農道の計画があるようです。
これを使えば名阪国道で西名阪にも出られるわけですが、問題は天理のΩカーブにおける速度減少による渋滞・事故。
普通ならトンネルを造ってしまうのですが、今度は排気ガスの処理問題。・・・普通ならそこで諦めてしまうのですが、たまたまレンタカー(ホンダ・Fit) を借りて大台ヶ原を往復したら、なんとリッター35km。理論的には有り得る値だそう。特に下り坂でエンブレを利かせている時は燃料噴出を停止するそう。
ということは、ずっと下り坂なら燃料を全く消費しない…つまり排ガスも理論的にはゼロになりうる。
天理Ωの南にループトンネルを造ってみる ならば、西行きの下り車線だけ、新しくトンネルを造れば、換気設備もあまり掛からずに済む(現実には既存車両の排ガス換気が必要でしょうけど)はず。
高速道路の勾配限界が4%として、200mの標高差を稼ぐには5km必要となるのですが、直径1.5km弱のループ状トンネルを左回りに造れば間に合う計算。 これをΩ区間の前後で分岐・合流させればOK。2ないし3車線の山岳トンネルで良いので、1キロ30億円としても150億円。
東行きの上り車線はどうするかというと、Ω区間の4車線を全部上り車線にしてしまえば、車線数が倍になる分、速度低下による流量の減少もチャラ、という計算です。
…というわけで東回り案がずっとおトク、ということになります。(ちなみにR369〜須坂の北半分は200億円と推定。須坂〜小倉or福住もどーんと造って200億円)
しめて、550億円。

西回り案はいくらかかる?

西回り案・クリックして原サイズに切り替わります どうせならパリよろしく環状道路を完成させてみましょか、となるわけで、西回りについても少し触れてみよう。
大和中央道の末端(奈良工業高校付近)から、宝来ランプまでの間、直線にして2.3kmに道路を引くとした場合、その間にある家屋には立ち退いていただくしかない。
そこであえて何戸くらいが対象になるのか、家屋の形まで判明するmapfan.comの1/1562の地図を元に、既存の道路をできるだけつなぐ格好で、この道路の真下に余裕のある2車線の地下道路を造ると考えて、どうしても民家に掛かる部分を数えた結果、少なくて125軒ほど。4車線の場合でも2倍どまりと推定。
1軒あたり、充分すぎるくらいの補償に1億円をあてても125〜250億円。これに道路建設費で50億円ほど。
宝来ランプでは、そのまま第二阪奈と出入りする。北から学園前や西大寺への出入りは、現在の道路連絡で間に合うし、 もともと南北往来の強化で考えれば、阪奈道路との追加連絡は必要ないはずです。(むしろ、阪奈道路と完全に連絡させようとすると、ひどい事態になるはず)
第二阪奈から、県道7号(枚方大和郡山線)に出入りできるよう中町交差点にICを設け、県道7号を完全4車線化。30億円ほど。
また県道7号の中町内区間になる砂茶屋〜阪奈道路三碓付近(浜大橋)の隘路を迂回する形で新設するとして10億円ほど。
南下し、県道7号から県道249号に切り替わり、R25と交差し(可能なら立体化して欲しいところだけど)、西名阪道路と交差する所にT型インタチェンジを設置。
ここは西名阪道路の郡山IC〜法隆寺ICのほぼ中間になり、前後のICへの集中を分散させる効果も出るだろう。20億円ほど。
しめて、最高でも400億円。
立ち退きに応じない世帯の問題については、「住み慣れた所を離れたくない」のであるならば、近所で(例えば付近の高級住宅地への)移転に応じていただける世帯と住居を交換し、双方ともにハッピー、という方法もとれるのではないでしょうか。昔よりも、現代は、ずっと遙かに個の幸せを考えてやれるはず。
個々の各世帯の問題に対し、きちんと取り組まずに、移転戸数の多寡だけで評価する委員の姿勢には幾ばくかの疑問も残る所です。

国内最古のほうき

2004/2/29 橿原・西新堂遺跡で京奈和道路建設に伴う発掘調査で出てきたそう。意図的に置かれたか、「川岸から投げ込まれた」のなら、佐保川の近辺にも何かありそうな気がしてくる。 同種が平城宮跡から3点も出土してたとなるとなおさら、かも。

奈良は空襲を免れた?

俗説です。奈良にも数発の爆弾が投下されたり、機銃掃射を受けていました。この機銃掃射の跡が、かのJR奈良駅旧駅舎に残っています(という駅舎探検記事を新聞で読んだ記憶があります)。
よくぞ、JR奈良駅舎を残してくれたものです。
ついでに言えば京都も原爆投下地域の候補に入っていました。詳しくはgoogleで検索して勉強してください。

「世界遺産 平城宮跡を考える」ケイ・アイ・メディア発刊

p.194 で「今、一杯の飯が食えない時に、文化財が考えられるか」という問いに「両方やります」という回答が紹介されています。
これは「交通問題が深刻なのに健康、補償、文化財とたくさん考えられるか」も「全てやります」とも言えるんじゃないでしょうか。

史跡文化センター(1982/5/1開館-2004/3/31閉館)

杭が地中22mの深さまでに達していたというのは驚き。これで平城京近辺に悪影響が出なかったのは奇跡的。
「杭を抜くと損傷を与える可能性が高い」ことから、周囲の地中組成を下手にいじることはできないと実証したという解釈もできるかな。
ちなみにすぐ近くの市庁舎は1977/2/11落成、県庁舎は1965年。コンクリ建築物の寿命を考えると県庁舎はそろそろ・・・なのでしょうね。
毎日新聞の奈良局の局長が離任される際、「建て替えるならホテルが一番でしょう」という提案を出されていたのは納得できる。
少なくとも県庁舎を建てる際、調査は済ましているはずだろう、とのこと。

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