横田<miskij>萬や 若草山から見て考える


大和北道路有識者委員会 が、第17回の有識者委員会を経て提言を発表したのですが、正直、未来に顔向けできるのか自信がありません。
同じく、2004年1月末からキトラ古墳の発掘調査が再開されたのですが、 周囲を家屋で囲っての厳重な管理にも関わらず壁面の漆喰の剥がれかけなどが確認されているのを顧み、 地質的にも完全に解明されているとは言い難いと周囲からも指摘されている状況で地下案を推奨するのは、「万が一」を考慮しているとは感じにくいです。

もう1つ、換気塔という文字もやっと出てきた感はありますが、このモンタージュ画像が見られないです。
換気塔を安直に建てれば市民に限らず世界的にも強い批判を受けるのでしょうし、 一部にとっては不都合なものとはいえども、あらゆる可能性を示して公共に問い掛けるのがパブリックインボブルメントの理念であり、 そのことを有識者と呼ばれる委員はよくよくご承知のはずだと思うのですが…。
関連:(土木学会第6回 今後を見据える『パブリックインボルブメントの広がりと技術者育て』)


若草山から見る

12月末の午後、若草山から撮影してみました。はっきりいって南寄りは空気が白んでいてあまり良くないのですが、 便宜的に若草山山頂の山林をと地上を別々に調整してあります。
以下に示す画像をクリックすると6400x700ドット程の拡大画像になります。500KB近くありますのでご注意ください。

元画像は500KBあります

委員案の平面図(東西方向は1/2に圧縮)および断面図の推定図を以下に示します。
北半分の推奨案は、厳密には国道24号線に沿ったコースのようです。 ここはJRも並行しており、建造物が既にあるからという理由かどうか、バッファゾーンから除外された細い空白地域となっており、言うなればそれに便乗した巧妙な設定とも感じるのですが、 東西の広がりを持たせているバッファゾーンの理念から言えば結局は「縦断している」他にならないわけで、委員の苦しい心情を察します。
国道24号線の標高差はほとんどなく、なだらかな上下になるのですが、以下の断面図では、北半分の地勢状態を示す意味で、直線に設定しています。

委員案の平面地図
委員案の断面地図

気付いたこと


トンネル工法について

委員の報告のうち96ページ目、「4.道路建設が及ぼす地下水への影響検討」では、
また、トンネル坑口付近は、図−8に示すように開削工法になり、それによる地下水の流動阻害 が懸念されるが、これに対しては、図−8に示すような対策(通水管の設置などの事例がある)に よって防止できる。
とあるのだが、「通水管」をどのように設置すれば良いのかが明確になっていない。
地下水の流れは二次元ではなく、三次元的であり、また、トンネル自体も三次元的なものと考えると、 通水管が設置されていないトンネルの壁(高さ14mとも言える)につきあたった、「万が一、認知していない」地下水流はどのように動くのだろうか?
完全に防水されたトンネル壁というのならば、壁にそって別な所へ行き先を求めるものと思われる。
つまりトンネルの壁にそって「全く新しい地下水流」が発生したり、またそれによって既存の地下水流が消失することも考えられる。
場合によっては第一地下水層〜第三地下水層をトンネル自体が繋いでしまい、最悪の結果を引き起こす可能性がないとは言い切れないのだろう。
現実に、道路のいきなり陥没の原因となる地下に埋めた水道管からの漏水を完全に防げていない事をふまえると、影響がないと言うのは、なおさら早計に感じる。
(蛇足ながら、私が住む千葉市の京葉道路でも、完全に通行止め寸前になる所だった陥没が2001年に発生していました)

シールド工法も、各社の技術解説を見ると、「周囲を凍結しながら…」というのが散見される。
言い換えれば建設中は、地下水流をせき止めている他にならないのだろうか?それによって引き起こされる事象は全くないと言い切れるのだろうか。
ただ単に視認できる形で現れていないだけという見方もできるはずである。
102ページ目では「過去において、シールドトンネルを施工することにより、地下水位低下の事例は発表されていない 」とされているが、「発表されていない」という表現には引っかかりを感じてしまう。
北陸新幹線の飯山トンネル工事で発生した陥没事故(2003年9月12日)では、当初は「けが人はいない」と発表していたのが、実は3人が怪我をしたと訂正があったように、都合の悪い情報を伏せようという意向が発生しない保証はどこにもないことを示されたと感じる。
また、この調査委員の報告では、「足立紀尚京都大名誉教授「(工事中の)トンネル先端の上部に水がたまっている層があったと思われるが、地質状態の把握は難しい」と述る.」とある。
この飯山トンネル工事はシールド工法とは明示されていない。地質状態の把握が難しいと発表した点に留意いただこう。

「万が一」を考える
建築関係のweb siteでは「我々の仕事は常に『危険サイド(前田建設番外編 この人に聞く)』で考えるべきなんだよ」と示されている。
google:「危険サイド」


世界遺産都市のパリと比較する

ユネスコ本部があるパリでは、高速道路は縦貫していない。東西で11km、南北で8km程の環状道路を構築し、網状に道路を張り巡らしている。
環状道路の内側には大型車両は進入せず、小型車両に積み替えて市内に出入りしているという。
この環状道路を奈良市と比較してみよう。パリの地図は、道路情報サイトの地図から手書きでなぞって引用。
ちなみにパリ市内の地下鉄、バス網、近郊の鉄道網はこちらで参照できるので参考にご覧いただきたい。

パリ市街奈良・郡山市
パリ市街 奈良・郡山市

パリの地図に引かれた紫色の線はアウトバーン、つまり国際高速道路である。そして青色はセーヌ河。
赤色は一般道路であり、太さは道路の規模に合わせてあると解釈していただこう。
縮小比を揃え、パリの環状線内に、奈良市のバッファゾーン全体が収まるように重ねてみたのが以下の地図である。
こうしてみると20km迂回しても高速道路としては十分に機能していると感じる。
通行速度が時速120キロ以上という前提の違いはあるのだが:-)
先の道路情報サイトを見ると、 環状線南端から出ている高速道路は南にあるオルリー空港にもつながるが、 どこかの国みたいに1系統の高速道路に纏めず、環状線への東回りと西回りに連絡する2系統(A6AとA6B)建てになってる模様。
北にあるドゴール空港近辺も下手に合流させない格好になっているのが見える。

奈良・郡山市

高速道路を縦貫させなくとも十分に国際的な観光都市として機能している理由を委員はじっくり追求していたのだろうか、と思う。

社団法人 著作権情報センター無断でリンクを張ることは著作権侵害となるでしょうか。
2004.2.22 参照リンク2カ所追加

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