ALCYONE LEGEND FOR 170馬力への挑戦Vol 14


加工の終わったピストンです。

右側画像をよく見ると上側の穴が少しずれていますね。

効果はないかもしれませんが軽量化という事では役に立っているかなと思い、重さを量ると0.5グラムしか貢献していませんでした。


ピストンの寸法を計測しています。

ボーリング屋でシリンダーを拡大してもらっていますが6本のシリンダーが全て同一寸法ではないのでシリンダーの寸法
とピストンも同じ理由で6個共計測して各々の寸法から一番バラつきの無いように組み合わせます。

この作業は大切なもので、何気なしに組み立てたエンジンでも一番大きなシリンダーの所に一番小さい寸法のピストンが
入るとそれだけでマイナス要因になります。

エンジンはあくまでバランスなので重量差のシビアな管理と同じく、この辺りにも気を使って組み立てます。

最近のメーカーから出荷されてくる車はこれらと同じような事をしていてシリンダー寸法の管理を行ってそれらに合わせたピ
ストンを組み合わせてきていますね。

右側画像はピストンリングです。

このリングも重要な部品でこのリングとの相性が悪いとオイル消費が激しくなったり、所定の性能が出ないなどのトラブルが
発生します。

リングの円周上が一部切り欠いてありますがこれはピストンへの組み付けとシリンダー内で膨張した時にお互いの合い口の
端面が接してシリンダーを損傷させないようにシリンダー内に入った時の寸法が決められています。

特にターボ車では過剰な加給圧による燃焼圧でこの合い口が突っ張ってしまいシリンダーを傷つけるトラブルがよくあります。

当然、新品の部品でも一回シリンダーに挿入してセットされている時の合い口の隙間の寸法を計測してチェックせねばなりま
せん。

リングをピストンにセットする時はリング各々の合い口方向がありますので整備マニュアルを見ながらチェックします。

ちなみに筆者は今回のピストンを組むのにシリンダーとの隙間を1/100という寸法でくみました。


これは通常、ピストンの外径とシリンダーの内径は寸法が違っていてシリンダーの方が僅かに大きくなっています。


エンジンが暖まってくるとピストンとシリンダーの寸法もそれなりに大きくなってくるのですが、材質の関係でピストンの方が
大きく膨張してきますので、この辺りを考慮してエンジンの最適温度になった時にシリンダーとピストンの大きさが適正にな
るように、見越して寸法をメーカーでは指定しています。

通常のエンジンですと0、03から0,06ミリ位の隙間で組み立てるようにするのですが筆者はシリンダーとの隙間を0,01
という隙間になるように仕上げました。

あまり隙間が小さいと膨張した時点でシリンダーとの隙間が無くなり最悪、焼き付きの可能性があるのですが筆者の今まで
のEA82のターボエンジンの経験から大丈夫という自信を持ってやりました。

したがって慣らし走行は十分に行って、走行距離も1000キロではなくかなり走り込まないとシリンダーとの馴染みは出ない
と思っていますが、その分当たりが出た時には素晴らしい圧縮を確保してくれると思います。

レース用エンジンでは性能重視なので、エンジンを組む時に柔らかく組み立てたりする場合がありますが、この柔らかくとい
うのは各部の隙間を広い目に取って抵抗を少なくするという意味です。

反対に固い目に組んだエンジンは耐久性はありますが性能からすると柔らかいのとトレードオフの関係にあります。
日常の整備でもカムシャフト一本、組み付けるのでも個人個人の好みがあり、ボルトの締め付けトルクでも整備マニュアル
の範囲の下限値で締めるか、上限値で締めておくかでも全体の仕上がりとしては変わってきますね。

筆者はいつもエンジンを組み立てる時はフルオーバーホールの場合は上限値で締めて、ヘッド関係だけの場合は腰下の
走行距離からのバランスを考えてメーカー範囲の指定値で変動さします。

当然、締める時に使用するトルクレンチは半年に一回、校正に出してコンディションを整えておきます。


ピストンリングを組んだ状態のピストンです。

画像が少し不鮮明ですが上から順にトップリング「主に燃焼圧力がクランクケース側へ逃げないようにシールする役目」、セカ
ンドリング「トップリングと同様な働きでシリンダー壁のオイルを少しだけ掻き落とす役目もある。」、オイルリングはシリンダー
内のオイルが燃焼室側へ行かないように抑制する役目」をそれぞれ持っています。

通常はエンジンに必要な個数がワンセットになって販売されていますが今回のプロジェクトでは6気筒の為に2個セットを使用
しましたので2気筒分余りました。

右側画像はシリンダーに挿入する前にピストンピンを入れる方向と反対の方には先にピンの抜け止めのサークリップをピストン
にセットしておきます。

画像ではピストンピンが入った状態になっていますがピストンピンは後から挿入します。


ピストンリングコンプレッサーです。

ピストンリングはピストンに組み込まれた状態では張力により、ピストンの外径以上に開いていますのでそのままではシリ
ンダー内に円滑に入れる事が出来ないのでこういう特殊工具を用いて先にリングを縮めておく必要があります。

右側はこれからコンプレッサーをセットする所です。


コンプレッサーにセットされたピストンです。

セットといってもたいそうなものではなく、ただリングの所にコンプレッサーの筒部分をかぶせてネジを締めていってピス
トンの外径と同じようにするだけでして、ただネジを締めていけば自然とピストンの外径迄縮めば止まります。

右側画像はシリンダーにピストンを挿入している所です。

セットされた状態でピストンのスカート部をシリンダー入れて、ピストンのトップ部分をハンマーの柄で叩いて押し込むだ
けなのですが、コンコンと軽く叩いていって少しでも引っかかりがある時はリングがシリンダーの入り口でつかえててい
る場合がありますので再度、取り出してリングを締め込んで再トライします。

当然、入れる時にはピストンのフロント方向を間違えないようにして先に真ん中のシリンダーから先に挿入していきます。

これは前後方向にもピストンが入ると真ん中のシリンダー部の所でコンロッドとの結合がやりにくくなる為であります。


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