ALCYONE LEGEND For 170馬力への挑戦Vol 3


上記画像はコンロッドの小端部の詳細ですが、ピストンピンの入る所には銅系材質のブッシュがはめ込まれています。

   銅という材質は柔らかくて割と耐摩耗性に優れていて相手の部品に対しての攻撃性が低く、コンロッドのこの部位には必ず使
   用されています。

   ブッシュを入れずにそのままでピストンピンと同じ、寸法に合うように加工して内面を鏡面に仕上げれば焼き付く事なく使用
   は出来ますが、そうするとコンロッドの内面が摩耗した時に使い回しが出来ずにトラブルが起きた時に捨てる事になります。

   製造時のバリ?はメーカーで製作した時の製造時のラインがそのまま残っています。

   強度を上げる為に残してあると言われれば、そうとも取れますが、どうみても無駄な所であります。

   右側の画像のオイル穴はピストンピンを潤滑する為にクランクケース内に浮遊しているオイルの霧滴をコンロッドが上昇する
   時にこの穴に自然に入るようになっています。

   普通の考え方からするとこんな穴からオイルが入るのか?と思われますが、エンジン内部で高速に運動しているコンロッドは、
   そのエンジンの回転数にもよりますが時速に直すと70km/h位で運動しています。

   時速70kmで動いている所にオイルの滴が勢いよくこの穴にビシャッと叩き付けられる事になります。

   強制的にクランクシャフトからオイル通路をコンロッドに開けて潤滑するという方法もありますが、寸法上、強度的な不安が
   あり、少し無理かなと思われます。


上記左側にあるメタルは別名「ベアリング」とも言います。

   普通ですとベアリングと耳にすると丸いボールがたくさん入ったボールベアリングを連想させますがエンジンの回転部分に使用
   されるこういうベアリングは通称、メタルと言われています。

   メタルとクランクシャフトの僅かな隙間にオイルが流れ込み、油圧によりシャフトが浮いた状態でスムーズにクランクが回転で
   きるようになっていますが、ポイントはオイルクリアランスと言われるメタルとシャフトとの隙間で、隙間が少なすぎると過重
   が大きくなった時にメタルとシャフトが直接、接する事になり焼き付きの原因になります。

   反対に多き過ぎると隙間からオイルが逃げてしまって油圧がドロップして正常な働きをしない事にもなります。

   ER27の場合、メタルとクランクシャフトピン部とのオイルクリアランスは0.01mmから0,07mmとほんの僅かな隙間に
   オイルが流れ込んで潤滑しています。

   潤滑のイメージとして直径50ミリの円筒があるとして、その中に49ミリの円筒を入れて空いた1ミリの隙間にオイルを流し
   込んで、どちらかを固定にして片方を回せばスムーズに廻るようになるという感じですね。

   右側の画像はコンロッドの大端部のサイド方向なのですが、わずかに数字が打ってあるのが見えますでしょうか?

   これはコンロッドを製作する時にコンロッドキャップを組んだ状態で丸い穴を加工するのでこの位置しか組んではダメですよと
   いうマークです。

   当然、この部位はシビアな円形が要求されますので製造された時の寸法を守るのが原則でもあります。

   数字には色々な番号が打刻してあり万が一、分解していたコンロッド、数組がバラバラになっても数字が合うように合わせれば
   組立が出来るように配慮されています。


画像2枚は新品のメタル部品ですがパッケージ画像にUS,0,05とあります。

   これは今回のトラブルの原因でもあるコンロッドメタルの剥離によるクランクシャフト側の傷により修正の為にクランクシャ
   フトを削って直径が小さくなった分、オイルクリアランスを適正にする為に為にスバル純正でアンダーサイズベアリングがリ
   リースされています。

   今回、この作業に便乗してコンロッド側だけでなくクランクシャフトのメインのジャーナル部もアンダーサイズに削って、ト
   ータルの摺動抵抗を低減するように努めました。

   コンロッドのアンダーサイズベアリングは補用品として0,03ミリと0,05ミリと0,25ミリの3種類が設定されてい
   ます。

   本当は0.25ミリのサイズを使用したかったのですがメーカーで手持ちの部品が欠品で入手する事が出来なかったのです。

   生産を停止して10年僅かの車でエンジン部品の一部が欠品という状態は考える所は大いにありですね。

   こういう肝心な部分にアンダーサイズを使用できるのはメーカー純正部品の強みでもありまた、コンロッドやピストンを軽量
   にしておく事により過重に対するオイルクリアランスの面積減少に伴う二次的なトラブルを防ぐ事が出来ます。


上記画像は前ページでありましたような大端部でのフロント方向の識別マークです。

   左側の画像と右とを見比べると円弧の中央の横にちょっとだけ張り出した部分があります。

   コンロッド表面を詳細に見ると鋳造の鋳肌がそのまま残っていて、ザラザラしているのがよく分かりますね。

   左側の画像でマジックで矢印が書いてあるのはコンロッドを切削研磨する時にこういう識別マークが無くなりますので確認用
   の為にマーキングしてあります。


上記画像は削り出し途中の過程なのですが、左側画像の金属の鋳肌は製造過程で生じるものなのですが、右側画像のように鏡面
   仕上げする事により表面の粗度が下がり、金属の表面自体の強化に繋がります。

   側面や角にも丸みを全てつけるようにすると、応力が分散され壊れにくくなります。

   応力というのはほとんど尖った部位や角に集中しやすいものですので全体に丸みをつける事により軽量化で失った強度を落とす
   事なく採用できるものです。

   しかし、どこまでエンジンをぶん回して破壊されるかはテストしていないので限界強度というのは把握しておりません。

   ここで私が考えるエンジン内部の空力ですが、表面をピカピカにする事によりエンジン内部を高速で運動しているこれらの部品
   には有効だと思います。

   ノーマルに対してどの程度、いいのかと問われると数字では表せませんが運動中のエンジン内部というのは空気とオイルの霧滴
   がそれなりのムービングパーツに対して抵抗になっている筈です。

   高速になればなるほど気体というのは水飴のように表面にまとわり付く性質がありますので、これらの抵抗でも少なければそれ
   に越した事はないと思います。

   エンジンのパワーを上げるにはとにかく徹底したフリクションロス低減に努めるべきでありましてエンジン内部の空力にも今回
   は気を遣いました。


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